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「お互いのことって、今更私達が何を知る必要があるんですか?」

 長い時間に反比例する士郎と咲穂2人の薄い人間関係。
 士郎はそれを冷静受け止め、今からでも遅くないと関係を深めようとしたのだが咲穂の冷徹な一言によって切り捨てられてしまった。
 確かに咲穂の言い分は正しい。
 今この時にも、殺し合いに参加している妹の天草ゆたかがどんな目にあっているか分からない。
 だから、今更何を言うんだという咲穂の言動は実の所もっともだ。

 だが、本来間違いようないほど違うゆたかと咲穂を間違えるほど動揺している自分。
 そして、プロフィール以外ほとんど知らない長い付き合いの知人。
 士郎はこの不安が募る組み合わせを少しでも何とかしたかった。

 士郎としては、ゆたかに死んでほしくないのは勿論だ。
 だが誰であろうとこの死んでほしいとは思わないし、誰かを殺す事も選びたくない。
 その思いは強固だが、目の前にいる知人の江本咲穂は心を同じにしてくれているのだろうか。
 人殺しを進んで行うとは流石に考えないが、ゆたかの為に1人位手に掛けるのではないか。

 士郎の心の中には過剰ともいえる疑心と、殺し合いへの焦りと家族への心配がある。
 それらが彼の心を不安定にさせているのだ。
 だからこそ彼は自身を安定させる意味と、疑心を取り除きたい意味で咲穂と向き合いたかったのだが。

「そもそもすでに情報交換ならしたじゃないですか」

 結果はこの通り。
 士郎には向き合う気があるけど、咲穂にその気は無い。
 彼女はゆたかの事しか考えていない。
 士郎と向き合おうなど、欠片も思っていない。

「殺し合いが始まって2時間過ぎ。
 その間私達が出会うまで、私とオニイサマの見てきた情報は共有したじゃないですか」

 そもそも彼らは出会うまでの間、お互い異能も支給品もロクに調べずゆたかを探して動き回っていた。
 しかしまるで見つからず、しばらく経ってから2人は合流した。
 そしてお互い得た情報を交換し、共に行動するという経緯を経ている。

 士郎はそれじゃ足りないと思うが、咲穂としてはそれで十分だった。

「ほら、早く行きましょうオニイサマ! ゆたかちゃんが待っています!!」

 急かしてくる咲穂。
 ゆたかが心配なのは士郎も同じなので、彼女の言い分を強く否定し辛い。

 し辛いが、それでも一度きちんと向き合おうとはっきり言うべきか。
 あるいは、ここでは一旦妥協して折れ曲がるか。

「……そうだね。行こうか、江本さん」

 士郎が選んだのは妥協だった。
 ここで己の意思を先行させ強要すれば、仲たがいになる事は確実。
 日常であるなら反省し、時間をおけば解決できるかもしれないが殺し合いの最中でそんな余裕はあり得ないと考えるべきだろう。
 だから士郎は今はゆたかを優先した。


 きちんと向き合うのは、ゆたかと合流してからでも遅くは無いよね?


 その考えは悪い物ではないだろう。
 たが彼らは知らない。ゆたかの精神が見知らぬ男の身体に宿っている事を。




 E-4、井戸の家。
 トーマス・ベイカーと鏑木シリカ、2人が出て行った後、島原翼は落胆していた。
 自分と一緒にいてくれないから、ではない。
 他者が殺人を受け入れている、その事実が翼には受け止めきれなかったからだ。
 生きたいから殺す、それは間違っているはずなのに、止める事が出来なかったのが悔しいのだ。
 悔しくて悲しくて、翼はその場にへたり込みたくなる。
 だが翼は無様を晒さない。晒せない。
 なぜならば、後ろには自分よりも小さな丹美寧斗という子供が居るのだから。
 翼が後ろを見ると、寧斗は不安気な顔で翼を見つめていた。

「心配かけたかな? でももう大丈夫」

 心配を掛けまいと翼は笑い、頭を撫でる。
 くしゃくしゃと撫でられた寧斗は、ただされるがままになっているが不安気な表情は消えた。

「そうだ。俺には守るべきものがあるんだ」

 だから折れるわけにはいかない。まだ何もしていないのに、逃げる様な真似は出来ない。
 そんな事じゃ、憧れの衛宮士郎みたいな正義の味方になれない。
 例え士郎ほどの覚悟が無くても、俺は戦うんだ。
 怖いし、死にたくないし、怯えているけど、それでも。

 決意を新たにした翼は両手で自分の顔を叩き、気合を入れる。
 その音で若干ビックリした寧斗に恨むような視線を向けられ、謝りながらこれからの事を考える。

――時計を見る限り放送まで3時間以上あるし、寧斗君を一回寝かせようかな。
 まだ小さい子だし、こんな時間まで起きていたら流石に疲れるだろうし。

 と翼が考えた所で。

 ゴンゴンゴンゴン

 とノックの音が響いた。

「お、お兄ちゃん……」

 ノックの音に怯えるそぶりを見せる寧斗。

「大丈夫」

 そんな寧斗を軽く宥めながら、翼は幸運と勇気の剣を構え扉を開ける。
 そこには首から十字架を掛けた赤髪の美少年と、ツインテールの少女が居た。
 翼の目を引いたのは少女の方だ。
 翼は女性のファッションに詳しい訳では無い。がそんな彼でも思う事がある。
 なんというか、ツインテールが似合っていないのだ。
 うまく言えないが、何かが噛みあわない。
 例えるなら、別人の為のファッションをそのまま適用しているような不自然さだ。
 それだけならファッションに興味の無い子、で済むだろう。
 しかし違う。彼女はどこか誇らし気で上機嫌なのだ。
 以上の事から翼が導き出した結論はこう。

 ――ファッションセンス、あんまり無い子なんだな……。

 そんなことを考え、思わず気が抜けそうになりながらそれでも剣を構えている翼に少年が話しかけてくる。

「大丈夫です、僕達は殺し合いに乗っていません」

 と両手を上げながら言う少年を、翼は戦意が無いと思い信用する。

「俺達も殺し合いには乗ってない」
「そうか、それは良かった。
 僕は天草士郎、こっちは江本咲穂。それで一つ質問だけど、君は――」
「あ、あの!」

 簡単な自己紹介の後、何かを言いかけた士郎を遮って咲穂が勢い込んで尋ねてきた。

「ゆたかちゃんを知りませんか!?」




 ――何で入れちゃうかな、本当。


 勢い込んで尋ねる咲穂を翼は宥め、とりあえず家の中に招き入れる。
 その事に関して寧斗は不満だった。

 そりゃ殺気が無い事くらいは分かるけど、内心を隠しているとか、突如心変わりするとか考えないのかな。
 お前俺を守る気あんの?
 と内心で愚痴をこぼしながら咲穂と翼の会話を聞く。
 要約するまでも無いが、どうやら咲穂は友人を探しているようだ。

「それで、ゆたかちゃんはどこに?」
「いや、そんな名前の子には会ってないけど……」
「じゃあいいです」

 翼がゆたかを知らないと言った途端に、咲穂は立ち上がりこの場を去ろうとする。
 それを見て慌てて翼は慌てて引き留めた。

「ちょっと待って! 決断が速すぎるよ!!」
「ゆたかちゃんが居ないならここに用はありません」
「いやそうかもしれないけど、それならそれで特徴とか……」
「そうですね」

 翼の問いに咲穂は間髪入れずに答える。

「身長は小学生位で髪の色は栗色。そして服装や髪形は私を見てください、全て同じなので」
「「え?」」
「同じなので」

 翼と寧斗は咲穂の返答に唖然とした。特に寧斗は思わず今まで被っていた仮面すら脱ぎ捨てた。
 理由としては彼女の発言内容もさることながら、それ以上に彼女の態度が気にかかる。
 堂々としているのだ。まるで自分はゆたかと同じ格好をするのが必然だと言わんばかりの態度なのだ。

「じょ、女子には流行ってるの、その髪型?」

 服装は明らかにどこかの学校の制服なので、髪型についておずおずと寧斗が咲穂に問う。殺し合いに怯える小学生という皮すら捨てて。
 一方、彼女は質問に対しまたも即答だった。

「いえ、特に。流行とかではなく、私が個人的にゆたかちゃんと同じ髪型にしていますので」
「そ、そっか……」

 咲穂の返答に合いの手を入れたのは寧斗ではなく翼。
 そしてこの返答を聞いた寧斗と翼は、この殺し合い開始以来初めて同じ事を思った。

 ――江本咲穂、こいつヤバくない?

 さっき会ったトーマス・ベイカーは殺しすら躊躇する気の無い男だった。
 それはそれで危ないが、この状況ならその選択は間違っていない。
 寧斗は若干危険視しているが、それはあくまで自分の行動を阻害されるかもしれないというリスクマネジメントの一環でしかない。

 だが江本咲穂はそうじゃない。
 彼女は殺し合いとは一切関係なくずれている。
 でなければ、いくら友人とはいえ似合いもしない髪型に自ら誇りを持つだろうか。
 そうでなくても、なんでもかんでも真似てくる友人をゆたかの方がウザがったりしないだろうか。止めたりしないのか。
 寧斗の心は疑問で山積みだった。

「では、私はこれで。行きましょうかオニイサマ」

 そう言って咲穂は立ち上がり、今度こそこの家を去ろうとする。
 が

「いや待って欲しい江本さん」

 それを天草士郎が阻む。
 彼の言葉に咲穂は不満気に彼を見る。

「なんですかオニイサマ」
「江本さんはここで待機して欲しいんだ」

 士郎の言葉に咲穂の視線は殺気すら帯び始める。
 彼は一瞬慄くが、それでも言葉を続けた。

「いや、ゆたかのスタート地点がどこか分からない以上2手に別れたかったんだ。
 でも僕はともかく、君の異能は戦いに向いてなかったから言い出せなくてね。でも……」

 そこで士郎は言葉を止め、翼と寧斗を一瞥した。
 その視線の意図に気付いた寧斗は内心で叫ぶ。

 ――俺らに押し付ける気かよ、こいつ!?

「島原君なら、守ってくれるだろう?」
「え、いや……。僕はいいけど、寧斗君が嫌がるかも……」

 いきなり話を振られ、しどろもどろになりながら返答する翼。
 その答えは明らかに先延ばしだ。しかし、彼にはなんかヤバそう、という直感でしかない評価を信じて少女を追い出すような真似はできなかった。
 自分で守れ、と士郎に向けて言うのは出来るだろう。が、士郎たちはゆたか捜索を優先としている。
 優先する物の為に2手に分かれるのは、選択肢としては妥当である。
 結果、翼は寧斗に決断を押し付けた。

「ぼ、僕はいいよ……」

 そして寧斗も、殺し合いに乗っておらず、会話から察するに異能が戦闘に向きそうな士郎の不興を買いたくなかった。
 であるならば返答は1つ、肯定しかない。

「2人ともありがとう。じゃあ江本さんは」
「分かりましたオニイサマ。吉報をお待ちしています」

 その会話を最後に、天草士郎は玄関の扉を開けて家を出て行く。
 そして咲穂は翼と寧斗の2人を見て、話しかけた。

「ではお二人とも。情報交換を兼ねて、ゆたかちゃんの話をしましょう」

 その言葉と共に、2人の目は一歩死に近づいた。


【一日目・3時00分/E-4・井戸の家】

【島原翼@衛宮士郎の能力/Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)
[装備]:幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1(本人確認済)、和道一文字@ワンピース
[思考・行動]
基本方針:殺し合いの否定
1:ここで一夜を過ごす
2:戦いはなるべく避け、殺し合いに乗った者もなんとか説得したい
3:寧斗は何がなんでも守る
4:江本さん、やばいかも?
[備考]
※与えられた異能が衛宮士郎のものであると気づきました。
※首輪は能力による構造解析は不可能です
※丹美寧斗の正体が殺人鬼・網空仙一だと気づいていません。
 また寧斗の能力を体色が変化するものだと思い込んでいます。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました

【丹美寧斗@T-1000/ターミネーター2】
[状態]:精神疲労(小)
[装備]:レミントン・デリンジャー(2/2)、デリンジャーの弾丸×12発
[道具]:基本支給品一式、アイスピック
[思考・行動]
基本方針:優勝し、能力を持ち帰って殺人を楽しむ
1:なんかヤバいのが残った……
2:素性と本心を隠しつつ、島原や他の対主催参加者を利用する
3:対主催集団に紛れ込み、利用してライバルを減らしつつ、最終的には疲弊したところを全滅させる
4:他の参加者には自分が子供であると思わせ、能力も体色が変化するだけのものと思わせて本性と能力を悟らせない
5:仮に自分の正体や能力がバレた時は、対象者を暗殺する
6:天草士郎の方がこっち居ろよ
[備考]
※肉体がT-1000と同じものになっていると気づきました。
※腹部にデリンジャーと弾丸を隠しています。
※液体化しても首輪は外れません。(上から液体金属で防御したり隠したりすることは可能)
※参加者に授与された異能は全て相手にダメージを与えるものだと考えています。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました

【江本咲穂@マネマネの実/ワンピース】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3)
[思考・行動]
基本方針:ゆたかちゃんを最優先
1:今はこの場にとどまる。
2:ゆたかちゃんの話をしましょう。星の内海。物見の台。楽園の端からあなたに聞かせましょう。あなたたちの物語は祝福に満ちていると。
[備考]
※自身の異能を把握しています。
※天草士郎の異能を把握しています。


【一日目・3時00分/E-4】

【天草士郎@仮面ライダーキバへの変身/仮面ライダーキバ】
[状態]:精神疲労(小)、罪悪感(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:家族を優先的に探す
2:咲穂と向き合うのはゆたかを見つけてからにしよう……
[備考]
※自身の異能を把握しています。
※江本咲穂の異能を把握しています。


1/6の生きている参加者 時系列順
1/6の生きている参加者 投下順

対ちょっぴり怖い資産家 島原翼
対ちょっぴり怖い資産家 丹美寧斗
知人への一歩 江本咲穂
知人への一歩 天草士郎
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