フォルディアはオーバードブーストで最接近しつつ、目前の敵集団にグレーネードが着弾するのに合わせてブーストをカット、急制動をかけ、こちらを見失っている隙を突き、ブーストジャンプでパルヴァライザーの無防備な上を取り、苛烈なトップアタックを仕掛ける。
「まったく・・・進歩ねぇな、コイツら」
編隊を組んで密集している部分を狙い、トリプルロケットの連続射撃を見舞う。
前方からの強烈なグレネードキャノンによる砲撃と頭上から雨のように降り注ぐロケット弾の斉射によりパルヴァライザーの集団は成す術もなく瓦解していった。
編隊を崩され、散り散りになり、右往左往するパルヴァライザーの群れの中にフォルディアはあろうことか自ら降り立っていった。
ブーストを吹かしながら軟着陸すると、生き残ったパルヴァライザーは一斉にルーンへと狙いを定め、取り囲むように急接近してきた。
その光景を見てレイノルズは息を飲む。
正気の沙汰ではない。いくらAランクといえども、自ら敵の渦中に突っ込んでいくなど無謀すぎる。
救援に行こうとオーバードブーストの起動スイッチに手を伸ばそうとしたその時、彼は自分の目を疑わざるを得なかった。
ルーンは次々と襲い掛かるパルヴァライザーの攻撃を悉く回避し、同時に攻撃を加え返り討ちにしていたのだ。
襲い掛かるパルヴァライザーの間を踊るように左右に切り返しながらすり抜け、相手の後ろを取るように素早く旋回して肉薄し、接近戦で威力を発揮するショットガンとハンドガンを無防備な背後や頭部に叩き込んでいく。
パルヴァライザーは、その巧みな機体制御に追従していくことができず、正確無比な射撃によってほぼ一撃で沈黙させられていった。
その戦いぶりにレイノルズは再び見惚れていた。
まるでダンスでも踊るように、ひらりひらりと華麗に攻撃をかわし、無防備な背や脇を晒した相手に不可避の一撃を見舞う。
素早い身のこなしと、強烈な一撃は百戦錬磨のボクサーを連想させる。
フォルディアは迫り来るパルヴァライザーの群れを相手に一歩も引いていなかった。
5年前のアーセナル・ハザードの時に比べればどうという事は無く、個々の性能もその時に比べれば目に見えて低いのは明らかで、弱点や習性を知り尽くしているフォルディアにとってパルヴァライザーは苦戦する相手ではない。
しかし、今回は奇襲から始まった防衛戦であり、自軍の体勢が十分でないことと動きが限定されることがやり辛さを感じさせ、フォルディアをイラ立たせていた。
「ったく、鬱陶しいなコイツら。潰した先から湧いてきやがって。・・・おい、グロリア!作戦課はパルの頭を捜索してんだろうな!?頭を潰さなきゃ、いつまで経っても終わらねぇぞ!!」
言いつつショットガンで目の前のパルヴァライザーの頭部を吹き飛ばし、また1機沈黙させる。
「ムチャ言わないでよ!どこもかしこも混乱してるんだから。フォルディアの言う事も分かるけど、今はここのエリアを確保することを優先して!」
対するグロリアも声を荒げる。
オペレーター部門も相当混乱しており、情報も錯綜している今の状況では迎撃と防衛ラインの確保を指示するので手一杯というのが実情だった。
「フォルディア、聞いて。コーテックスの広域レーダーで確認したけど、今ここに集結しているパルヴァライザーを排除すれば、このエリアを確保できるわ。現時点で敵増援は確認されていないし、コーテックス所属ACの援軍も、もうすぐ到着するわ。あと少しだから頑張って」
グロリアの口調は真剣そのもので、いつもの軽快な声音も息を潜めていた。
「チッ、わかったよ。取りあえず、今ここに居る害虫共をブッ潰せばカタがつくんだな?なら、もうひと頑張りしようじゃねぇか」
軽口をたたくフォルディアであったが、その実表情は真剣で、目は野獣のようにギラついていた。
いくら気に入らないミッションであっても、自分で受けたからには完遂する。それがフォルディアの信条であった。
「テメエらには俺のウサ晴らしに付き合ってもらうぜ。せいぜい足掻きな!」
フォルディアは自ら闘志に火をつけ、より激しく、しかし精密で鮮やかに戦闘機動を展開する。
超至近距離での銃捌きはより精度を増し、近づくパルヴァライザーを片っ端から撃破していく。
ルーンを中心に弾丸の嵐が吹き荒び、その嵐が過ぎ去った後には残骸しか残らなかった。
華麗なステップを踏むように戦場を駆け抜けるルーン。
それを操るフォルディアは戦いを愉しむ一方で現在の状況を正確に分析する。
――残弾がちょいと心ともなくなってきたな。少し遊びすぎたか・・・。
考えつつレーダーに目を走らせる。残り約10機程度。
――格納武器を使えばなんてことはないが、今の状況でメインウェポンをパージするのは上手くねぇな。
一度距離を取るため後退しつつ戦術を巡らせていると、アラート音と共にレーザーの火線が機体を掠め、射撃が合った方向へ視線と意識を向ける。
見ると、大型のハイレーザーを搭載したパルヴァライザーがルーンを狙っていた。
「厄介なのは先に潰しておくに限るな」
言いながら、中型ミサイルとエクステンションの連動ミサイルを展開し、ミサイルロックを開始する。
レティクルの表示が切り替わり、ロック完了を告げ、トリガーを引こうとしたその時、独特の火線が目に飛び込んできた。それは明らかに第三者のものであった。
その砲撃にさらされたパルヴァライザーは凄まじい衝撃力にバランスを崩す。
――誰だ!?援軍か?
パルヴァライザーは、その砲撃に立て続けに襲われ、満足な回避もできないまま構成部品の大半を失い沈黙した。
突然の奇襲に数機のパルヴァライザーは攻撃を止め周辺の索敵を開始するが、その間に目にも止まらぬ速さで肉薄してきた青紫色のACに1機がブレードで胴体部をジェネレーターごと一閃され、派手な爆炎を上げる。
――あれは・・・バイオレットゴースト。
青紫色のフロートACは苛烈な迎撃を開始するパルヴァライザーの間をマシンガンで応戦しつつ巧みな機体操作で潜り抜け、隙を見せた1機を切り伏せつつルーンと合流した。
このバイオレットゴーストとそれを操るイリュージョンこそ、先ほどまでフォルディアと一緒に前線を維持しつづけた人物だった。
コーテックスアリーナBランク1位で中距離からの高速機動戦を得意とする腕のいいレイヴンである。
「イリュージョンか。随分と社会復帰が早いじゃねえか」
「今日は稼ぎ時だからね、なにせ弾薬費も修理費もコーテックス持ちだ。それにお家の一大事とあれば、あのまま引き下がる訳にもいくまい。ここは私にとって居心地がいいんでね」
紳士な口調が印象的なイリュージョンは、未だ群れをなすパルヴァライザーを前に少しも動揺することなく泰然としていた。
「ハハ、違いねえ。それじゃ、さっきのように頼むぜ」
「ああ、陽動と撹乱は任せてくれ。先ほどは不手際を見せてしまったからね、挽回させてもらおう」
イリュージョンはバイオレットゴーストを加速させると、イクシードオービットを起動させ、同時にマシンガンによる高密度の弾幕を張りつつパルヴァライザーへと揺さぶりをかける。
小口径高速弾と中口径徹甲弾による弾丸の雨はパルヴァライザーの群れに降り注ぎ、ゆっくりとしかし確実に装甲を剥ぎ取っていった。
バイオレットゴーストの動きは不規則で掴みどころが無く、まるで幻惑されているかのような錯覚を覚え、それはあたかも本物の幽霊を相手にしているかのような感覚を相手に与える。
今回は機械が相手だがサイティングが非常に困難なのは紛れもない現実であり、事実、パルヴァライザーは集団での迎撃でもバイオレットゴーストを捉えられないでいた。
絶え間ないレーザー射撃を、すり抜けるように回避する青紫色の幽霊はこの場の約半数のパルヴァライザーを引き付けていた。
機械である筈のパルヴァライザーは、それこそ取り憑かれたように執拗にバイオレットゴーストに照準を定める。
そして、それこそがフォルディアとイリュージョンの狙いだった。
まるでフォルディアが駆るルーンの存在など忘れてしまったかのように密集してバイオレットゴーストへと応射するパルヴァライザーにミサイル弾幕と連続射出されたロケット弾が襲い掛かる。
一瞬にしてパルヴァライザーの密集地帯は業火に包まれ、ほとんどの機体はそのまま機能を停止した。
かろうじて生き残った1機も剥げ落ちた装甲から覗く中枢構成部位を高加速された大口径徹甲弾に貫かれ、赤々とした爆炎と共に自身を構成する部品を辺りに四散させた。
「観客がいないのが残念だけれど、仕方が無いね」
事もなげに言うイリュージョンは複数のパルヴァライザーを相手になお余裕だった。
「しかし張り合いが無いな。数が多いだけで個々の強さは大したことが無い」
「やっぱりお前もそう思うか。何かヘンだよな、コイツら。コントロールが甘いっつーか。まあ、ブッ潰すのに変わりはねぇから、どうだっていいけどな」
残り4機となったパルヴァライザーは一度後退して2機のACから距離を取った。
劣勢であることを判断したようだが、それでも撤退するつもりはないらしい。
「これで詰めだな。さっさと片づけるぞ」
「了解、援護射撃は任せてくれ」
「こちらも支援する!残りのグレネードをありったけブチ込んでやる!」
フォルディアがバックモニターに目を移すと、グレネードキャノンを展開したキャノンボールが既にパルヴァライザーへと狙いを定めていた。
それを見て、にやりと不敵な笑みをこぼすフォルディア。
「いいねー、じゃあハデに頼むぜ!お二人さん!!」
その言葉と同時に雷鳴のごとき轟音が周辺を震わせ、大口径の榴弾が連続射出される。
それと同時にフォルディアはオーバードブーストを起動し、パルヴァライザーへと文字通り突撃していった。
眩い噴射炎と共に青い残像を残しつつ目抜き通りを疾走するルーン。
対するパルヴァライザーも最大戦速で迎撃すべく前進を開始する。
4機のパルヴァライザーは自分達にとって驚異度が最大であるフォルディアのルーンのみに狙いを絞り、少しでも相手の戦力を低下させようと判断した。
が、それすらもフォルディアの狙っていた状況であった。
パルヴァライザーが有効射程圏内にルーンを捉える直前、目の前で先ほどの榴弾が炸裂し辺りを業火で焼き尽くす。
しかし、それでも前進を止めることなく、炎に身を焼かれながらもブレードを展開し白兵戦を試みるパルヴァライザー。
一瞬、黒煙に視界を遮られるが、複合センサーで探知した未来予測位置に向かってブレードを振り下ろす。
だが、その斬撃は虚しく空を切り、捉えていた筈の青いACの姿は既になかった。
人間でいえば、まさに呆気にとられた状況と言えるだろう。
そして、先陣を切ったパルヴァライザーはその不可思議な現象を分析する間もないまま、バイオレットゴーストのリニアキャノンで頭部を吹き飛ばされ、沈黙した。
残りの3機はセンサーと
リンクシステムを最大限に稼働させ、見失ったルーンの索敵を開始する。
その内の1機が上空に熱源を捕らえ、カメラアイを反応がある方へ向けた瞬間、光が爆ぜ映像はノイズへと変わり、機体に激しい衝撃が数度走った数秒後、全機能の停止を迎えた。
「ハ、ちっとは学習しやがれポンコツが!」
上空へと舞い上がったルーンはブーストカットによる自重落下で急降下しつつ、未だ背部を晒しているパルヴァライザーにショットガンとハンドガンの一斉射撃を浴びせかける。
そしてブーストをかけながら軟着陸すると同時に全身の装甲を剥ぎ取られたパルヴァライザーへ止めの中型ミサイルを見舞った。
フォルディアは、その機体の末路を確認しないまま機体を左へと急速旋回しハンドガンで応射しつつブレードを振りかざしながら迫る最後の1機をディスプレイ越しに睨む。
「だから・・・芸が無えってんだよ!」
予測通りの軌跡を描くブレードの曳光に目を眇めつつ右へと切り返し、背後へと回り込むと、無防備な後頭部にショットガンの銃口を突き付ける。
「くたばれ、害虫」
吐き捨てるように言うと、フォルディアは至極つまらなそうにトリガーを引く。
鈍い金属音が多重奏を響かせ、頭部を中枢AIごと吹き飛ばし、最後の1機へ引導を渡した。
長いようで短かったこのエリアでの戦闘を終え、掃討完了のすぐ後に合流したコーテックス所属ACとイリュージョンに防衛ラインを引き継ぐと、フォルディアは弾薬を消耗しきってしまったレイノルズと共に後方へ下がり、本日3回目の補給を受けた。
「一度のミッションで3回も補給を受けるとはな・・・記録更新だぜ」
コクピットハッチを開放し、パイロットスーツのポケットから煙草とオイルライターを取り出し、火を付ける。
シートに背を預けながら紫煙を燻らせていると、レイノルズが通信を要請してきた。
コンソールを操作して通信を開くと、ディスプレイにレイヴンには珍しい生真面目そうな顔が表示される。
「よう、お互いツラ突き合わせるのは初めてだな」
「そうだな。今回はありがとう。君が来てくれなかったら、俺は今頃死んでいただろう」
「よせよ。礼を言われる筋合いはねぇさ。言い方は悪いが、別にアンタを助けるためにやったんじゃない。っと、口が悪いのは勘弁な。生まれつきで直らねえんだ、コレが」
若干皮肉めいたニュアンスで口元を釣り上げるフォルディアだったが、対するレイノルズは真剣な眼差しで言葉を継いだ。
「だが事実だ。君がそう思っていても、俺の感謝の気持ちは変わらない。俺には死ねない理由があるからな。」
それを聞いたフォルディアは、今度は自然に微笑みをこぼした。
「ハハ、アンタも硬いねえ。まあ、結果オーライってことで手を打とうや。しかし、あれだけの数を一人で抑えたのは大したもんだぜ」
「いや、その事なんだが・・・実は君が来る直前までもう1機、コーテックス所属ACがいたんだが、いつの間にか戦線を離脱してしまったようなんだ」
「何?本部の指示や許可も無くか?」
「ああ、私のオペレーターも相当困惑していたよ」
フォルディアはレイノルズの話を聞いて訝しんだ。
エデンⅣ支部は贔屓目に見ても所属レイヴンやスタッフの質は高く、コーテックス内部でも群を抜いており、支配企業や他の傭兵派遣企業からも一目置かれる存在である。
そのエデンⅣ支部所属レイヴンとあろう者が背水の陣で臨まなければならない今回の戦闘で敵前逃亡をするなど彼には考えられないことだった。
そもそも戦闘のプロであるべきレイヴンが敵前逃亡など、彼の戦士としての矜持が許さなかった。
意識せず、フォルディアの表情は険しいものへと変わる。
「誰だ、そのナメた野郎は」
「すまないが、分からない。その時はデータファイルを参照している暇も、互いに自己紹介する間もなかったからな」
「・・・そうか、まあアンタが謝る事じゃあねえが」
フォルディアはイラついた心を落ち着かせるべく、煙草の煙を肺に深く吸い込み、ゆっくりと負の念と共に吐き出した。
ちょうどその時、機を計ったかのようにグロリアが通信を割り込ませてきた。
その通信が秘匿モードになっている事に気付いたフォルディアは、手に持っていた煙草をコクピットシートから身を乗り出し、外部装甲板でもみ消して投げ捨てる。
「悪い、スウィートハートからラブコールが入っちまった。ちょいと切るぜ」
ただ事ではないと野生の勘で察知したフォルディアは、それをレイノルズに悟られまいとおどけて見せた。
レイノルズとの通信を一旦終了すると、グロリアとの秘匿通信回線をオープンにする。
「どうした。何かマズイ事でも起きたか」
ディスプレイに投射されたグロリアは浮かない顔をしており、普段の彼女からは想像もできない憂いを帯びていた。
「なんだよ、暗いな。どうした?」
「フォルディア、あなたに新規ミッションが依頼されたわ」
グロリアの軽快な口調はなりを潜め、淡々と事実のみを告げた。それはフォルディアの身を案じてのものだと彼自身、容易に読みとれるものだった。
「あ?新規ミッション?依頼主と内容は」
「依頼主はグローバルコーテックス・エデンⅣ支部、内容は・・・逃亡を企てたレイヴンの捜索と確保よ」
――やはりな。
「現時点で、このミッションを遂行できるのはあなたしかいないわ。依頼という体裁を取っているけど、事実上は命令ね。受けてもらう以外、道は無いわ」
「コーテックスからの名指しとあれば、受けない訳にいかないが・・・逃亡したレイヴンってのは誰だ?」
「っ・・・」
グロリアは一瞬、言葉を詰まらせ不安そうな顔をするが、意を決したように表情を切り替え、言葉を継いだ。
「逃亡したレイヴンは、Aランク2位、ノーブルマインド。搭乗AC、キングスタークよ」
それを聞いたフォルディアも、さすがに眉をしかめた。
「何だと?Aランク2位とあろう者が、敵前逃亡したっていうのか」
ノーブルマインド。エデンⅣアリーナの前身だった北米アリーナの時代からAランク2位に君臨する古参レイヴン。依頼などを受ける事は滅多になく、活動の場はアリーナに限定されているといっても過言ではない。
あまり評判のいい人物ではないが、それでも腕の立つレイヴンである事に変わりは無い。
それだけの地位と実力を持つレイヴンが敵前逃亡など普通では考えられない事だが、フォルディアは口ではそう言っておきながら、思い当たる節が幾つかあった。
――あの野郎、とうとうボロを出しやがったな。
フォルディアはヘルメットを被り直し、コクピットハッチを閉じると、素早く戦闘システムを立ち上げた。
「依頼内容、了解した。ただちに作戦に移る」
「了解。目標が逃亡したと思われる地点へのナビゲートを開始します。――フォルディア、気を付けて。何かヘンよ」
珍しく―と言っては語弊があるが―心配そうな顔をするグロリアに不敵な笑みを見せる。
「グロリア。お前、俺が負けるとでも思ってんのか?」
フォルディアの言葉を聞いてグロリアはハッとする。
「・・・そうね、アンタはいつだって生きて帰って来たものね」
そして、いつもの軽快な口調を取り戻し、表情にも明るさが戻っていた。
「心配すんな。ヤツの首根っこ掴んで引きずって来てやるよ」
「オッケー、頼んだわよ。それから、目標が逃げた方面だけど、重工業区画に向かって。担当オペレーターの話だと、重工業区画に差し掛かった所で、通信とIFFを切断したらしいわ」
「了解。急行する」
フォルディアは重工業区画方面に機体を巡らすと、オーバードブーストを巡航モードで起動させる。
そして、弾薬補給が終了し、戦線に復帰しようとしているレイノルズへと通信を繋いだ。
「レイノルズ、俺はちょいと野暮用ができちまった。後は頼んだぜ。ここまで来て死ぬなよ」
「そうか、了解だ。ここは任せてくれ。君の健闘を祈る」
戦闘モードに移行し、重装AC用のジェネレーターを唸らせるキャノンボールに見送られながら、ルーンは軽やかに重工業区画へと繋がる幹線道路を疾走していった。