部員めぐり・灼

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部員めぐり・灼 - (2013/07/22 (月) 19:15:57) のソース

833 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/06/30(日) 01:37:47.49 ID:kzFcFqeJo

……
…………
………………

いよいよ部員めぐりも最後の一人・鷺森先輩を残すのみとなった。

彼女は玄先輩と同じクラスということで、最初はそちらに顔を出したのだが――

――玄「灼ちゃん? んー……今はいないみたい。職員室に行ったんじゃないかな」――

――とのことらしいので、その情報に従って歩いている次第である。

京太郎「けどなんで職員室? 呼び出しでも食らってんのかな」

憧「そんなワケないでしょ。須賀くんじゃあるまいし」
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> 須賀くんじゃあるまいし <
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不意打ちはやめて欲しい……

そうこうしている間に職員室に到着した。

憧「失礼します」

京太郎「失礼しまーす」

ガラッ

834 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/06/30(日) 01:58:52.24 ID:kzFcFqeJo

レジェンド「はあ……」

灼「ハルちゃん、どうしたの? 溜め息なんてついて」

レジェンド「灼ァ……もうレジェンドもインターハイもないんだよ……はあぁ……」

灼「落ち込むなんてハルちゃんらしくないよ……?」

レジェンド「放っといてくれ! お前はいいよなァ、どうせ私なんて……」

灼「放っとけない! ハルちゃんを放っておくなんて出来ないよ!」

レジェンド「……灼は、どうしてそこまで私を信頼してくれるんだ?」

灼「え……?」

レジェンド「どうして?」

灼「だ……だって、ハルちゃん最高だから……」ボソッ

レジェンド「聞こえないな。もっと大きな声で言いなさい」

灼「ッ! ハルちゃんは最高です!」

レジェンド「もっと大きな声で!!」

灼「ハルちゃんは最高です!!」

レジェンド「もっとだ!!!」

灼「ハルちゃん最高! いやっほぉーーーーーぅ!!!」

レジェンド「まあまあ良い応援だった。65点といったところだな」

灼「ありがとうございます!」

なにやってんだこの人達。

839 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/06/30(日) 02:20:57.86 ID:kzFcFqeJo

憧「なにやってんのアンタ達」

言っちゃうのかよ。

レジェンド「お? おー憧。須賀くんもいらっしゃい!」

灼「こんにちは」

京太郎「ちわス」ペコリ

憧「で、もっかい訊くけどなにやってんの」

レジェンド「何って言われても……なあ灼?」

灼「うん、ただの暇つぶし」

京太郎「職員室でやることですか」

周りの先生方に怒られたり……あれ? 誰も気にしてない!?

そんな俺の動揺を見て取ったレジェンドがニヤリと笑う。

レジェンド「ふふふ……気付いたようね須賀くん」

京太郎「監督……まさか――!」

レジェンド「そのまさかよ! 毎日やってたら誰も気にしなくなった!!」バーン

京太郎「な、何ィーーーッ!?」ガーン



憧「……新任早々見放され気味?」ヒソッ

灼「しっ。ハルちゃんに聞こえる」ヒソヒソッ

841 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/06/30(日) 02:55:03.46 ID:kzFcFqeJo

レジェンド「でも落ち込んでたのも本当なんだけどね」フー

京太郎「そうなんですか?」

レジェンド「教師とコーチの両立が思ってたよりも大変でさぁ」

京太郎「あ~……毎日お疲れ様です」

灼「お疲れ様」

憧「おつー」

レジェンド「あはは、ありがと。まあ自分からやるって決めたことだしね、頑張るよ!」ムンッ

憧「その意気その意気」

灼「やっぱりハルちゃんナンバーワン!」イヤッホォーゥ

仲良いなぁ。

大人と子供とか、教師と生徒とか。そういう立場の違いを感じさせない気安さがある。

これもレジェンドの人徳……なんだろうか?

レジェンド「さて! じゃあ今から勉強しようかな」スッ

憧「なにその本?」

レジェンド「参考書。全ての女性監督必読の一冊だよ」

京太郎「へー。ちなみにタイトルは?」

レジェンド「おおきく振りかぶって」

京太郎「ダメだこいつ!!!」

860 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/07/01(月) 01:03:20.88 ID:tnaswXc2o

レジェンド「ところで二人は何しに来たん?」

京太郎「あ、そうだった。鷺森先輩を探してたんですよ」

灼「私?」

京太郎「はい。今、部員めぐりってのを個人的にやってまして、鷺森先輩でラストなんです」

レジェンド「へー、そんなことしてんだ。他の子達はどうだった?」

京太郎「なんというか……刺激的でしたね!」キリッ

主に松実姉妹的な意味で。

レジェンド「あはは! 順調に打ち解けてるみたいで何よりだね」ケラケラ

京太郎「お陰様でー」ワハハ

憧「どこが順調なんだか……」ボソッ

レジェンド「で、灼が最後だって?」

京太郎「そっすね。つーわけで鷺森先輩! 俺と楽しくお喋りしま」

灼「お断り」

京太郎「ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

861 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/07/01(月) 01:38:58.03 ID:tnaswXc2o

灼「私はハルちゃん以外と語らう言葉を持たな……」コォォ

ストイック過ぎやしませんか。

レジェンド「あーらーた。せっかく仲良くなろうって来てくれてるんだから、ちゃんと相手してあげなよ」

灼「む……ハルちゃんがそう言うなら……」

レジェンド「よろしい。さあ須賀くん、なんでも訊いちゃってよ」

京太郎「えーっと……じゃあ、まずご趣味は」

憧「お見合いか」

灼「ハルちゃん」

「「即答!?」」

灼「私はハルちゃん以外に何も必要としな……」コォォ

やはりストイック過ぎる。

そういえば自己紹介の時も「好きなものはハルちゃん」とか言ってた気がする(ていうか、それしか言ってなかった)し、まさに筋金入りってやつだ。

864 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/07/01(月) 02:29:02.74 ID:tnaswXc2o

しかし、

京太郎「ぶっちゃけ監督のどこがそんなにいいんですか?」

レジェンド「ぶっちゃけ過ぎじゃない?」

ぶっちゃけ過ぎでした。

対する鷺森先輩の返答は――

灼「……私にハルちゃんのことを語らせたいなら、まず石仮面を被ってくることをオススメする」

京太郎「不老不死になれと!? どんだけ語るつもりですかってか先輩の寿命の方は持つんですか!? 先輩も人間ですよね!?」

それとも座敷童かな?

京太郎「……オホン。じゃあちょいタンマ、質問変えます」

どうしよう。

更に直球を投げてみようか。

京太郎「鷺森先輩はどうしてそんなに監督のこと好きなんですか?」

すると、

意外にも、鷺森先輩は素直に柔らかく微笑んでこう言った。

灼「ずっとファンだったから」

865 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/07/01(月) 03:37:31.03 ID:tnaswXc2o

京太郎「ファン?」

教師と生徒の関係に用いるには、いささか不適当に思える表現だ。

というのが顔に出ていたのか、新子さんが鷺森先輩に言った。

憧「あ……もしかして、他県の人だから知らないんじゃない? 阿知賀のレジェンド」

京太郎「れじぇ?」

そういえば自己紹介の時も「人呼んで――阿知賀のレジェンド!」とか言ってた気がする(ていうか、それしか覚えてない)。

俺が脳内で「阿知賀の」を除いてあだ名として使っているソレとは、きっと意味合いが大きく異なるのだろう。

灼「その発想はなかった……須賀くん、本当に知らない? 阿知賀のレジェンド」

京太郎「さっぱり」

灼「ジーザス」

天を仰いだ。そこまでのことか。

悲嘆に暮れる鷺森先輩。しょうがないなとばかりに新子さんが前に出る。

憧「代わりに説明するけど……10年前、奈良最強と言われるインハイ常連校を阿知賀が倒したことがあって、その時のエースがハルエだったのよ」

京太郎「へー」

そりゃ確かに凄い。

地元の人間からヒーロー扱いされるのも頷ける。

京太郎「人は見かけによらないんですねぇ」シミジミ

レジェンド「よーしちょっとツラ貸そうかー?」ニコニコ

867 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/07/01(月) 04:18:01.04 ID:tnaswXc2o

~面談室~

レジェンド「オラッとっとと座りな!」ドンッ

京太郎「キャー(裏声)!」ドサッ

本当に連行されてしまった。

俺をソファに突き飛ばし、レジェンドも反対側に腰を下ろす。

京太郎「こ、こんなところに連れ込んで……俺に乱暴する気ですね! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

レジェンド「しないよ」

京太郎「あ、はい」

真顔で返された。

さっきまでノってくれてたのに……

京太郎「てか本当になんすか、新子さんと鷺森先輩まで置き去りにして」

レジェンド「別にあの二人は放っておいても問題ないから。ちょっとキミと話しておきたいことがあってねー」

京太郎「オレェ?」

わざわざこんな個室に押し込んでする話。

なんだろう……

868 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/07/01(月) 05:12:10.08 ID:tnaswXc2o

レジェンド「憧とはその後どう?」

京太郎「え」

詰まった。

喉に。

言葉が。

盛大にむせた。

京太郎「ゲッホゲッホゲッホゲッホ!」

レジェンド「あははははははは」

それを豪快に笑い飛ばす阿知賀のレジェンドとかいう鬼畜教師。

レジェンドは苦しむ俺を見て心ゆくまで楽んで、そして改めてニッと笑って、

レジェンド「あの子は難易度高いっしょー」

と言った。

京太郎「あー…………………………。そっすね、なかなかのなかなかです」

そーだろー、と何故か得意げなレジェンド。

873 名前:4月12日(金)[saga] 投稿日:2013/07/01(月) 07:21:04.05 ID:tnaswXc2o

レジェンド「今日とか二人で割と仲よさげだったよ?」

京太郎「部員めぐりには付き合ってくれてますからね。ただし本人曰く監視役で、それ以外では避けられがちってのが実際のところです」

言っててちょっと情けなくなってきた。

レジェンド「ふんふむ」

腕を組み、思案するレジェンド。

その間、俺は彼女のエッジの効いた前髪を眺めることぐらいしか出来ない。

レジェンド「須賀くんはさ」

京太郎「はい」

レジェンド「憧と仲良くなりたい?」

京太郎「はい」

今更な質問に反射的に即答する。

京太郎「せめて他の部員と同じくらいには、と思うんですけど……」

後から付け足した言葉に、レジェンドは黙ったまま頷く。

居心地の悪い沈黙が1分程度続いて――

レジェンド「……っよし! 分かった!」

不意に立ち上がる。

そして驚く俺に向かって、レジェンドはこう言い放った。



レジェンド「私にいい考えがある!!」



わー、嫌な予感しかしねー。

【TO BE CONTINUED...】