440 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/19(月) 23:35:17.24 ID:0GM8XW9Po 京太郎「――ってなわけでして」 と。 昨日考えたことを、そっくりそのままレジェンドに伝えた。 レジェンド「……」 レジェンドは難しい顔をしていた。 かける言葉を決めあぐねているような、迷いの表情。 それでも視線は俺に向いていた。 俺の心の奥の奥を探ろうというような、鋭い眼光。 レジェンド「……考え直す気はないの?」 京太郎「もう決めたことですから」 返事に躊躇はなかった。 それで観念したのか、一度ぎゅっと目をつぶるレジェンド。 また開いて、 レジェンド「そっか」 小さく笑った。 441 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/19(月) 23:37:42.21 ID:0GM8XW9Po レジェンド「だったら私がどうこう口出す筋合いはない、ねっ!」 そして椅子から立ち上がって、俺の背中をバシンと叩いた。 叩かれた。痛い。 レジェンド「とにかく続きは部活の時にみんなの前で、ね?」 京太郎「はい。……あの、監督」 レジェンド「ん?」 姿勢を正してまっすぐレジェンドを見る。 これはケジメだ。 深く頭を下げて、ありのままの気持ちを言葉に乗せる。 京太郎「短い間でしたけど、お世話になりました」 レジェンド「……それを言うのはまだ早いでしょ」 苦笑するレジェンドに背を向けて、俺は職員室を後にした。 443 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/20(火) 00:09:12.06 ID:XpOfENHqo ~教室~ 京太郎「よー、おはよう憧」 席に着いたのは始業ギリギリの時間だった。 何気ない調子で隣に座る憧に挨拶する。 憧「 」 幽霊でも見たような反応が返ってきた。 京太郎「どうした?」 憧「………………今日も休みかと思ってた」 京太郎「ひでえ」 そりゃ確かに遅くなったけどさ。 京太郎「憧が看病してくれたんだから、もうすっかり治ったって」ムンッ 憧「ちょっ、声が大きい!」シーッ 京太郎「あ、悪い」 444 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/20(火) 00:51:31.81 ID:XpOfENHqo とりあえず口を塞ぐポーズを取る俺。 憧はキョロキョロと警戒心MAXで辺りを見回し、今の発言をクラスメイトの誰にも聞かれていないことを確認すると、 憧「須賀くん」ジロッ 京太郎「はい」 俺を強く強く強く睨んだ。 憧「あのね、もし勘違いしてるようなら困るから言っておくけどね」 京太郎「はい」 憧「最近……色々……あったからって、あたしがあなたを完全に信用したわけじゃないってこと、理解してる?」 京太郎「はい」 憧「本当に?」 京太郎「はい」 憧「じゃあなんでそんなにニヤニヤしてるのよっ!」バンッ 京太郎「だってなー」ニヤニヤ 憧は気付いていない。 こんな風に接してくれること自体、以前と比べれば劇的なまでの進歩なのだと。 こんな朝の喧騒の中、膝を突き合わせて説教するなんて、ありえないことだったのだと。 憧は気付いていない。 448 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/20(火) 01:34:45.82 ID:XpOfENHqo 憧「ちょっと! 笑うのやめなさいったら!」ムキー 京太郎「そう言われてもなー」ニヤニヤ だからこそ。 こうしていると、やっぱり惜しくなる。 ここまで来たのに、という気持ちが強くなる。 今日。部活が始まれば、変わってしまう。 あるいは、終わってしまう。 良かれ悪しかれ、今までの関係とは、違ってしまう。 だけど決めたことだから。 ガラッ 担任「おはようございまーす」 京太郎「お、先生来た。ほら、もう前向け前」 憧「な、まだ話は終わってないんだけど!?」 だから、せめて今だけは。 やっと手に入れた「いつも通り」を楽しもうと思った。 449 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/20(火) 02:33:41.18 ID:XpOfENHqo …… ………… ……………… ◇ ~部室~ ガチャッ 憧「おつかれさまでーす」 穏乃「憧! おつかれー!」 挨拶と同時にドアを開けると、すぐにしずの元気過ぎる声が返ってきた。 奥には玄も宥姉も灼さんも揃っている。 憧「ありゃ、あたしが最後かー」 灼「だね」 玄「今日はHRが早く終わっちゃって」 宥「私も~」 ふぅん、なんて相槌を打ちながら、教室の後ろの方に寄せられた長机の上にカバンを置く。 450 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/20(火) 03:13:08.93 ID:XpOfENHqo 穏乃「ところで京太郎は?」 憧「ああ、なんか用事があるから遅れて来るんだって」 穏乃「そっかぁ。ちぇー」 とか言って、椅子に座った体勢で足をぷらぷらさせるしず。 憧「……ていうかしず、あんた須賀くんとずいぶん仲良いわよね?」 穏乃「うん! なんか趣味が合うんだよね」ウェヒヒ 憧「趣味って……」 それはどうなの女子高生。 いくら中身が小学生男子みたいでも、流石にマズいでしょ。 穏乃「でも、憧だって仲良いよね」 憧「……は?」 穏乃「え?」 憧「…………誰と?」 穏乃「京太郎と」 憧「………………誰が?」 穏乃「憧が」 憧「……………………なんて?」 穏乃「仲良いよね」 憧「…………………………はぁ!?」 453 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/20(火) 04:02:46.18 ID:XpOfENHqo ありえないありえないありえない! あたしが男子と仲良し? そんなオカモチありえない!! 憧「な、ななな、何言ってんのよしず! 冗談やめてよね!?」 穏乃「えー? 冗談じゃないよ、最近よく話すようになったじゃん」 憧「あれは向こうが話しかけてくるからっ!」 穏乃「それに赤土先生の指れ」 憧「その話はしないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 思わず絶叫した。 自分でもビックリした。 でも反則だって、いきなり指令の時の話をするのは。 思い出すだけで顔が熱くなるんだから。 454 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/20(火) 07:13:41.26 ID:XpOfENHqo ガチャッ レジェンド「みんな揃ってるー?」 そこに諸悪の根源……もとい、ハルエが現れた。 須賀くんは間に合わなかったな、と思っていると、 京太郎「」スッ いた。 何食わぬ顔でハルエの後から教室に入って来た。 しかもあたし達の側でなく、そのままハルエの隣に立っている。 どうして? 憤怒の形相の灼さんを納得させられるだけの理由があるんだろうか。 と、 レジェンド「今日は部活を始める前に、須賀くんからみんなに大事な話がある」 ハルエが言った。 「大事な話がある」と。 なんだろう、なんて考える暇もなく、須賀くんが一歩前に出て。 そして、まるで本当はちっとも大事じゃないみたいな調子で、 京太郎「俺、今日で麻雀部を退部します」 501 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/22(木) 00:42:38.53 ID:7hgGUdH0o ◆ 教壇からの眺めは、決していいものではなかった。 憧。 穏乃。 玄さん。 宥さん。 みんな一様に、不意を突かれたようにぽかんと口を開けていた。 鷺森部長だけはなんか敵愾心バリバリの表情だけど。 およそ全員、俺の言葉に驚いていた。 穏乃「な、」 その中で最初に口を動かしたのは穏乃だった。 穏乃「なん……で、――」 呟いた自分の言葉にハッとして、 穏乃「なんでっ!?」ズイッ 俺に詰め寄った。 505 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/22(木) 01:28:24.87 ID:7hgGUdH0o 玄「そ、そうだよ! どうして急に!?」ズイッ 玄さんも続く。 この二人に迫られると、入部した日のことを思い出すな。 京太郎「えーっと……一身上の都合で」 穏乃「そんな難しい言葉で誤魔化さないでよ!」 別に難しくないだろ。 玄「私達に言えない理由なの……?」 京太郎「ってわけじゃないんですけど」 俺にも段取りというものがあって、その上でまだ言うタイミングではないだけだ。 京太郎「――」チラッ 二人の肩越しに後ろを見る。 宥「ぁゎゎゎゎゎゎゎゎ」プルプル わけも分からず震える宥さん。 灼「どうどう」ポンポン それを落ち着かせている鷺森部長。 憧「……」 そして、黙ったままの憧。 507 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/22(木) 02:07:28.90 ID:7hgGUdH0o 京太郎「あ――」 穏乃「憧からも何か言ってよ!」 遮られた。 穏乃も玄さんも振り返り、全員の視線が憧に集まる。 憧は、 憧「あ、あたし? あたし、は……あの……」 戸惑っているようだった。 助け舟も兼ねて声をかける。 京太郎「憧には特に世話になったよな。ありがとう」 憧「須賀くん……」 京太郎「これからは俺みたいな素人に気を遣わず、思いっ切り打ってくれよな」 憧「ッ!」 その時、憧の表情が悲痛に歪むのを、確かに見た。 悪い予感が当たった、とでもいうような表情。 そのままの表情で、震える声で、 憧は、 憧「………………あたしの、せいなの……?」 518 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/22(木) 05:59:27.69 ID:7hgGUdH0o 対して、俺は即答する。 京太郎「どっちかって言うと、憧のおかげかな」 憧「おかげ……? なにそれ、あたしは退部の口実ってこと?」 京太郎「違うって。なんで口実なんて悪い言葉が出てくるんだよ」 だって――と口ごもる憧。 京太郎「素直に感謝してるんだよ。おかげで、やりたいことが見つかった」 玄「やりたいこと?」 京太郎「はい」 穏乃「その為に麻雀部を辞めるの?」 京太郎「ああ」 だから――と、今度は俺から一呼吸置いて、 京太郎「何度でも言うぜ。ありがとう、憧」 523 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/22(木) 07:42:29.40 ID:7hgGUdH0o 憧「なによ……そんな言い方……」 小さく呟いて、憧はそれ以上の追及を諦めたようだった。 そっと、傍にいた宥さんが近付いてその肩を抱く。 京太郎「ま、そんなわけだからさ」 次は俺の腕に縋るようにしていた穏乃に声を掛ける。 しかし穏乃は絡めた腕に更に力を込めて、間近から俺を見上げる。 どうにも罪悪感を煽られる構図だ。 穏乃「京太郎は寂しくないの? せっかく仲良くなれたのに……」 京太郎「大袈裟だって。何も二度と会えなくなるわけじゃないんだぞ?」 穏乃「でもぉ」グスッ 穏乃は涙目だった。 よく見れば玄さんも。 なんだろう。不謹慎かもしれないが、嬉しい。 泣かれるほど誰かの中で重要な存在になれた、みたいな。 そんな風に思い上がってしまいそうになる。 528 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/22(木) 08:41:49.76 ID:7hgGUdH0o 京太郎「穏乃」 名前を呼んで頭を撫でてやる。 穏乃「ん……」 ほんの少しだけ表情が和らいで、袖を引っ張る力が弱まった。 そのまま離れていく。 すぐに玄さんが寄り添ってくれた。 これでやっと落ち着ける。 やっと言える。 京太郎「――」 改めて、教壇からみんなの顔を眺める。 憧。 穏乃。 玄さん。 宥さん。 鷺森部長。 俺は右を向く。 そしてそこに立つレジェンドへ、 529 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/22(木) 08:47:07.35 ID:7hgGUdH0o #aa{{{ __ /⌒ヽ ⌒\ ∨ ヽ___ _, ----` ∨ `ヽ、 /´ | \ / ____ / l| | :. \ /// / | |l | : ヽ / / // ,∧ / ,イ l| :. . . / イ / // : l | ' / ! 从 | : :. .'/ ' ' /-|-{ { | /}/ | / } } | . }' / |Ⅵ { 从 ' , }/ /イ } . / イ | l{ { ∨/ ' } ∧ : :. ´ | {|从三三 / 三三三 / /--、| ∧{ 「というわけで、改めて麻雀部に入部させてくださーい」つ入部届 {从 | , ムイ r 、 }} /} \ | ノ ' }/イ/ { _,ノ 人 _,..::ァ r }/ ` ゝ - ' イ |/ ` ーr ´ ___|_ ___| |//////| {|___ノ __|[_]//∧_ /// |____|///////////> 、 ///// | /////////////////> 、 /////// { //////////////////////} //////////∨///////////////////////| }}} 「「「「は?」」」」 #aa{{{ --……-- r―‐⌒ヾ : : : : : : : : : : : : : : : \ |∨: : : : : \ : : : : : : : : : : : : : : : \ |/゚:。 : : : : : : \.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : : : : : . /: : : \:.:.:.:. : : : :\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : : : 。 //: :/ : : \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`:.o。:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :i: ゚ . /イ /: :.:.:.イ:.:. ー┬---:.:.:.:__:.`:.:.o。:.:.:.:.:.|.:..。 i{ | ′:.:.'{_|_:.:.:.:| リV:.:.:.:.:.:.:}:.>匕、: :\j--i || |/: :.:.:∧}リ≫┘o。v――'’xr示=ミト、:.:.\}、 リ {: :.:.:.:.|!:‘, ィ芹≧ュ ’|イi//| 》、:。:.:.:.ぃ、 「いいよー☆」 |:.:.:.:.:.「`ヽ《乂_゚ツ ゞ= '゚ :リ/リ゚。:.:.ト、i |:.:.:.:.小 , , ' , , : /:.:.:.∧:.} リ l.:.:.:.:.:| }ゝ-! jハ:.:.:.:j/}:.| :。.:.:.:{ {:j:八 -==ァ イ }/ j:ノ ゚:。.リ \{≧ュ。. ィ:jソ ″ / ゞ イニ} ` ´ {ニヽ ィニ// ゝ|ニ\_ ┬==≦ニ/ニ7____ __,.|ニニムニニニニニlヽ /ニ|ニニニ/ニニニ|`-―――‐一´|ニニニムニニニニ|ニム . /ニニ:|ニ7ニニニニニ| |ニニニニ}ニニニ=|ニム }}} 憧「はぁ!!?」 579 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/23(金) 00:57:52.50 ID:wvOxtHi9o 京太郎「え?」 なんか大声が聞こえたので振り返る。 と、 憧「ちょっと!! どういうこと!!?」ズイッッッ 京太郎「おぉう!?」ビクッ 憧が。 穏乃も玄さんも押し退けて、憧がいた。 顔が真っ赤なのは、恥ずかしいのか怒っているのか。 兎にも角にも憧だった。 京太郎「ど、どういうことって?」 憧「とぼけてんじゃないわよ!!」ガッ 京太郎「ひぃ!?」ビクビクー 胸倉を掴まれた。 憧とは20cm以上の身長差があるというのに、完全に俺が狩られる側だった。 583 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/23(金) 01:21:45.42 ID:wvOxtHi9o 憧「麻雀部辞めるんじゃなかったの!?」 京太郎「お、おう。辞めただろ、実際」 憧「じゃあその手に持ってるのは!?」 京太郎「入部届」 憧「イヤーッ!」バキッ 京太郎「グワーッ!」バタッ 特に見当の付かない暴力が俺を襲う――!! 無様に床に倒れ伏す。 尋常ならざる痛みに震えながら上体を起こすと、部員全員が険しい表情で俺を見下ろしていた。 ご褒美っちゃご褒美。 憧「須賀くん」 京太郎「は、はい」 #size(15){#aa{{{ /´〉,、 | ̄|rヘ l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /) 憧「説明」 二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/ /__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉 '´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//> `ー-、__,| '' }}}} 京太郎「はい……」 585 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/23(金) 01:43:56.98 ID:wvOxtHi9o 正座する。 とりあえず正座する。 正座して、まっすぐ前を向く。 白い太ももが林立していた。 京太郎「ぐへへ」 憧「……」 スパァンッ! 平手打ちされた。 憧「説明」 京太郎「ウィッス」 痛い…… 京太郎「というかですね、まず俺から質問させていただいてよろしいでしょうか」 憧「許可します」 京太郎「ありがとうございます。皆さんはどうして怒っているのでしょうか?」 スパパパァンッッッ!! 一往復半ビンタされた。 592 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/23(金) 02:07:55.70 ID:wvOxtHi9o 憧「アンタが妙な小芝居で余計な心配させたからに決まってるでしょ!?」ガーッ 京太郎「小芝居!? まるで身に覚えがないんですけど!」ヒーッ 灼「じゃあさっきの辞める辞める詐欺はなんだったん……」 京太郎「あれっすか、あれは俺的にはすぐ入部届を出し直すつもりだったんですけど」 玄「ですけど?」 京太郎「穏乃に詰め寄られてタイミングを逃しまして」 宥「じゃあ、本当はもったいぶるつもりなんてなかったの?」 京太郎「まったくもって。いやーなんもかんも穏乃が悪――」 穏乃「う゛~~~~~~~~~~……」プルプル 京太郎「――勘違いさせてマジすんませんっした!」ゲザァ 土下座した 一も二もなく 土下座した 京太郎、心の俳句 決壊寸前の涙目を見せられたら勝ち目なんてない。 例えチンチクリンでも、女の涙は強い。絶対に強い。 597 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/23(金) 02:49:51.69 ID:wvOxtHi9o しばし半泣きの穏乃をあやす時間となった。 憧「しずー泣き止めー」ナデナデ 玄「しずのちゃーん」ナデナデ 穏乃「んぅー」ナデラレナデラレ 和む。 で、3分後。 憧「じゃ、改めて説明してもらうから」 穏乃「そーだそーだ!」プンスコ 穏乃復活。 怒ってはいるが、それ以上に元気そうで何よりだ。 京太郎「で、まず何から話せばいいんだ?」 憧「そうね……やっぱり、わざわざ退部してから入部し直す理由かしら」 京太郎「了解」 考え自体はまとまっているのだから、即答だ。 京太郎「マネージャーになろうと思うんだよ、俺」 657 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 01:16:07.85 ID:b/eGu72mo 憧「………………は?」 穏乃「ま」 玄「ねー」 宥「じゃ」 灼「ー?」 それどうやって発音してんですか鷺森部長。 京太郎「おう、マネージャー」 穏乃「選手のサポートとか、監督の手伝いとかする、あのマネージャー?」 京太郎「そのマネージャー」 玄「そ、それはいきなりのいきなりだね……」 京太郎「そうですか? これでも結構考えたんですよ俺」 憧「……じゃあ、その考えも聞かせてもらえるの?」 京太郎「ロンオブモチ」 その為に一度退部届まで出したんだ。 聞いてもらわなきゃ困る。 658 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 02:07:28.02 ID:b/eGu72mo 京太郎「じゃあまず、何故俺が奈良に来たのかという理由から」 憧「え、そこまで戻るの……?」 戻るの。 京太郎「つっても入部する時に一度は話したんだけどな。覚えてるか?」 憧「へっ?」 穏乃「えーっと……」 玄「そのー……」 宥「確か……」 灼「巣鴨のコンビニはだいたい16時になる頃に新聞を広げる為に数珠とラッキョウを身に付けて独立した兵隊を屠るべしという家族がおりまして中野から早く逃れたここマヤの文明の元女族長はその一族の長としてとってつけたようなダルいハルちゃん最高いやっほぉーぅ! だっけ?」 京太郎「……須賀家の男子には代々16歳になる年に見聞を広める為に特殊な環境に身を置いて自立した生活を送るべしという家訓がありまして長野から遠く離れたここ奈良の山奥の元女子高はその修練の場としてうってつけだと思い遥々やって来た」 「「「「「それそれ」」」」」 京太郎「………………」 まあいいけど。 京太郎「それなんだが……すまん、嘘をついた」 憧「嘘?」 京太郎「ああ、本当は……」 穏乃「本当は?」 くそ、いざ言おうとすると流石に躊躇しちまう。 それでも、言うんだ。 京太郎「本当は――」 664 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 02:15:52.40 ID:b/eGu72mo #size(18){#aa{{{ _,...---、_,.、 / : /: : / : : ヽー-、 /. : :, !: iハ!/メ、.i | \ イ : :{ ヽN 'i:!/!人iヽi 「女の子にモテたいからなんだぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」 _1: : :i( _ 丶:\ / `Yリヽ '、_)'´!`ー` /:::.. | ,. _/ . /.::、:: ト、ィ' / ::::::|:: !;-! / ::::|:: ! ヽ、 ,:-‐クヽ / ::!::.. ⊥__!_ / ..:ノ) / |::::..  ̄`''''''' ′..::::::::::ノ . /: |::::..... ..............:::_,:::-‐'′ /:: `ー‐┬---r―'''''''"" ̄__ ./__ /! i / iu-゙、 /----、\ ::::/ |:: ⊥ __,...-‐'.i...:ヒノ  ̄ ̄`ー`ー`ー-、/ |::. _,.-‐'" }}}} 673 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 02:48:24.40 ID:b/eGu72mo [6/13] 憧「ふきゅっ!?」ビクッ 穏乃「も゛っ!?」ビクッ 玄「ずがーん!?」ビクッ 宥「ふぁっ!?」ビクッ 灼「( ´_ゝ`)」フーン 京太郎「元女子高なら! 右も左も女子ばっかりで!! あわよくばハーレムも狙えると思ってましたああああああああああ!!!」ウォー 憧「」ポカーン 穏乃「」ポカーン 玄「」ポカーン 宥「」ポカーン 灼「( ´_ゝ`)」フーン 京太郎「しかし、奈良に来てから約一ヶ月……俺はその間……なんの成果も! 得られませんでしたああああああああああ!!!」ヴォー 憧「それは今言わなくてもよくない……?」ヒクワー 680 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 03:14:45.33 ID:b/eGu72mo 京太郎「HEEEEYYYY!! あァァァんまりだァァアァ!!!」オロローン 憧「ぅーゎー……」 穏乃「京太郎、泣いてる……」 玄「大泣きなのです……」 宥「あったかくない……」 灼「すさまじ……」 京太郎「AHYYY AHYYYY AHY WHOOOOOOOHHHHHHHH!!」ジタバタジタバタ 憧「どうすんのこれ……?」 穏乃「私に訊かれても……」 玄「泣き止むのを待ってみる……?」 宥「あったかくない……」 灼「気が長……」 京太郎「フー、スッとしたぜ」スッキリ 憧「!?」ビクッ 684 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 03:33:41.51 ID:b/eGu72mo [8/13] 京太郎「ん? どうした憧、みんなもギョッとして」 憧「いや……なんかもういいわ、ツッコむ気力も起きない」 京太郎「?」 憧「話を戻してもいい?」 京太郎「いいぜ」 脱線してたつもりもないけど。 憧「えっと、つまり須賀くんは、女子にモテたい一心で奈良まで来たの?」 京太郎「そうなるな」 憧「馬鹿なの?」 京太郎「そう褒めるな」 憧「死ぬの?」 京太郎「生ぎたいっ!」 699 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 16:23:03.61 ID:b/eGu72mo 憧「はあ……それで、ここから今回の件にどう繋がるのよ?」 京太郎「うん」 ここからが本題だ。 そろそろ正座している足の感覚がなくなってきたが、我慢する。 ゴホンと咳払い。 京太郎「……女子にモテたい一心で奈良まで来た俺は、気が付けば麻雀部に入っていた」 京太郎「今でもたまに考えるよ、「どうしてこうなった」って」 京太郎「だって、麻雀なんてロクに知らなかったんだぜ? こう言っちゃナンだが、興味もなかった」 京太郎「けど、色々あって偶然この部室に飛び込んで、監督からも誘ってもらって、やってみるのもアリかなって思えた」 京太郎「ちょうど入ろうと思ってた部活もなかったしな」 穏乃「なんだっけ、レスリング部?」 京太郎「ゲスリング部」 穏乃「あ、はい」 憧「だからその部活はなんなのよ……」 700 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 16:23:57.25 ID:b/eGu72mo 京太郎「まあまあ、とりあえず最後まで聞いてくれよ」 憧「……いいけど」 京太郎「サンキュ。で、他にやりたいこともなかったっていう、半ば消去法みたいな選び方で俺は麻雀部に入った」 京太郎「そこから今日まではあっという間だった」 京太郎「最初は見学と牌磨きばっかりだったけど、初めて見る対局も、初めて触る牌も新鮮で面白かった」 京太郎「しばらくして、自分でもやるようになるともっと楽しくなった」 京太郎「でも、何より強く感じたのは――みんなへの尊敬だった」 玄「尊敬?」 京太郎「はい。みんな、めちゃくちゃ一生懸命じゃないですか」 京太郎「あんな密度の濃い練習を一日もサボらず、文句ひとつ言わずに」 京太郎「それって簡単に出来ることじゃないと思うんです」 京太郎「どうしてだろう、って思った。どうしてこんなに頑張れるんだろうって」 言葉を重ねながら、視線を飛ばす。 まっすぐ、キッカケをくれた彼女に。 京太郎「その理由を、憧が教えてくれた」 701 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/24(土) 16:25:19.77 ID:b/eGu72mo 憧「っ」 京太郎「穏乃もな」 穏乃「ぁ……うんっ」 穏乃へ移した視線を、今度は自分の手元に。 空っぽの手のひらを見つめる。 京太郎「――改めて、凄いと思った」 京太郎「夢か冗談みたいに大きな目標の為に、全力で努力し続けられるなんて」 京太郎「少なくとも俺には無理だから」 京太郎「だから尚更、憧や穏乃や、先輩達のことを尊敬した」 心から、そう思った。 あの雨の日に感じた。 その気持ちが今も残っている。 京太郎「頑張ってるみんなを応援したい。俺も力になりたい」 いや、 京太郎「だからマネージャーに志願したんだ」 今の方がずっと強く、そして激しい。 750 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 00:36:13.21 ID:T1fZ8Wipo そこで一旦言葉を止めた。 息を吐く。 喋りっぱなしで疲れたな。 憧「……マネージャーになりたい理由までは分かったけど」 沈黙の中、憧が口を開いた。 憧「どうしてわざわざ退部するの? そんな決まりはないわよ?」 京太郎「あー。そりゃアレだ、ケジメだよ」 憧「ケジメ?」 そう、ケジメ。 ここからが本題の、核心だ。 京太郎「さっき言った通り、俺にはこの部に入部する動機らしい動機もなかった」 京太郎「ただ誘われて。なんとなく。気が向いたから」 京太郎「そんな理由にもならない理由で、この部に居たくなくなったんだ」 755 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 01:32:09.72 ID:T1fZ8Wipo 京太郎「でっかい目標の為に頑張るみんなと……並べなくても、同じ方を向いていたい」 京太郎「同じ物が見えるか、同じ所に行けるか、それは分からないけど――」 だけど。 京太郎「――もう俺は、一分一秒でも今の俺でいたくない」 京太郎「半端な気持ちで入部したままの、格好悪い俺でいたくない!」 だから。 京太郎「お願いします!!」 京太郎「俺をマネージャーとして、みんなの仲間に入れてください!!!」 一世一代、本気の土下座。 761 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 01:50:34.30 ID:T1fZ8Wipo 憧「……」 穏乃「……」 玄「……」 宥「……」 灼「……」 ウォーズマン「……」 京太郎「……っ」 返事は、重い重い沈黙。 当たり前か。 こんな馬鹿げた男の馬鹿げた行動に、かける言葉もないってやつだ。 吐息だけが聞こえる。 そこに、 レジェンド「ちなみに私は賛成したよ?」 声。 772 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 02:18:27.47 ID:T1fZ8Wipo 京太郎「へ?」 灼「ハルちゃん……?」 反射的に顔を上げる。 隣に立つ、ずっと立っていた、レジェンドを見る。 レジェンド「おいおい、なんで須賀くんまで意外そうな顔で見てるかな」 京太郎「いや、だって、」 レジェンド「さっき「いいよー☆」つったじゃん。そもそも、賛成する気がなかったら退部なんてさせないから」 京太郎「えー」 そこは生徒の意思を尊重させようよ教師なんだから。 とか思ってる俺の横で、レジェンドは憧達に――麻雀部の部員達に言葉を掛ける。 レジェンド「私はね、須賀くんの申し出を聞いて、正直すっごく助かるなって思った」 宥「助かる……?」 レジェンド「だってそうでしょ? こんな部員数ギリギリの零細文化部に専属のマネージャーだよ?」 玄「あ……」 779 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 02:43:55.60 ID:T1fZ8Wipo レジェンド「インハイの県予選まで一ヶ月を切った今の時期に、選手が練習に集中出来る環境って本当に大事なんだ」 灼「確かに。純粋な労働力として男手はありがた……」 レジェンド「だろ? どうかな部長、色々思うところはあるかもだけどさ」 灼「ん……私は別に、ハルちゃんが良いなら」 レジェンド「そっか!」ニカッ 快活に笑うレジェンドが、また俺を見る。 レジェンド「これで賛成に二票目だね、須賀くん」 京太郎「え、多数決?」 レジェンド「ってわけでもないけど、まあ目安ね」 適当だー。 穏乃「……私も!」 京太郎「穏乃?」 穏乃「私も京太郎の再入部に賛成するっ!」 781 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 03:15:14.91 ID:T1fZ8Wipo 京太郎「え……いいのか?」 穏乃「うん!」 京太郎「今の俺の話を聞いても?」 穏乃「うん……そりゃ、ちょっとは驚いたけどさ」ウェヒヒ 笑って、頬を掻く穏乃。 穏乃「でもさ、それでも私は、私が信じる京太郎を信じるよ」 京太郎「穏乃が信じる、俺……?」 穏乃「うん」 穏乃「この学校を選んだ理由が不純でも、この部活を選んだ理由が適当でも――それでも!」 穏乃「京太郎は一生懸命だった! ちっとも変なことする素振りなんてなかった!」 穏乃「だから京太郎と、まだ一緒に部活したいっ!」ムンッ 京太郎「穏乃……!」ジーン 穏乃「ですよね、玄さん宥さん!」 玄「……そうだね。そうだよねっ!」ムフー 宥「う、うん……私も、みんなと同じ気持ち……」プルプル 穏乃「(頭撫でてくれたし!)」 玄「(おもち好きに悪い人はいないよねっ)」 宥「(あったかかったなぁ~)」 灼「(ちくわ大明神)」 憧「(いや、あたしだけ変なことされまくってる気がするんだけどそれは……)」 ウォーズマン「(コーホー)」 京太郎「みんな……!」ジジーン 786 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 03:57:32.69 ID:T1fZ8Wipo 穏乃「憧は?」クルッ 憧「へ?」 穏乃「憧は、京太郎がマネージャーになるの、賛成?」 憧「………………あたし、は……」 また、みんなの視線が憧に集まる。 誰もが理解しているのだ。 結局のところ、全ては憧次第だと。 これまで集めた五票よりも重い一票を彼女は持っていた。 バラエティ番組なら大ブーイング必至の茶番だ。 だけど、誰もが真剣な表情で憧を見ていた。 憧「……みんな、お人好し過ぎでしょ」 ぽつり。 そんな呟きから憧のターンが始まる。 787 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 04:25:07.51 ID:T1fZ8Wipo 憧「あたしも今の今まで色々考えてたけど、やっぱり女の子目当てで入学なんてサイテー」ジトッ 京太郎「ぐむっ」 仰る通りです。 言い返せないし、言い返すべきでない。 そうして押し黙る俺に、 憧「……怖くなかったの?」 京太郎「え?」 憧は問い掛けを投げた。 憧「同じ年頃の女子五人にさ、そんな、言わなくていいことまでぶっちゃけちゃって」 憧「拒絶されたらどうしようとか、考えなかった?」 視線を、投げた。 京太郎「……そりゃ考えたよ、当たり前だろ。すっげー怖かった」 憧「だったらどうして――」 その先は言わせない。 京太郎「憧に勇気もらったから」 早速で悪いが、攻守交代だ。 789 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 04:57:43.96 ID:T1fZ8Wipo 憧「あ、あたしに……?」 驚く憧に頷いて見せる。 京太郎「怖くても、やらなきゃいけないことならやる。誰の前にだって立ちはだかる」 憧「ッ!」 これもまた、あの雨の日の。 京太郎「それを憧に教わったから、俺も覚悟を決められた」 京太郎「もし嫌われても、避けられても、俺はやるべきことをやったんだ……って、その事実があれば満足だ」 京太郎「とりあえず、格好悪い俺のままじゃなくなったんだからな」 京太郎「憧のおかげだ」 笑い掛ける。 憧「――」 憧は、 憧「ぁ……ぅ……」 憧は、 憧「っ………………なによ、」 憧は、 憧「ここで反対したら、どんだけ悪者なのよ、あたし……」 白旗を揚げてくれた。 794 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 05:34:42.80 ID:T1fZ8Wipo 京太郎「憧――!」 憧「ただし!」 京太郎「ひょ?」 「先手!」とばかりに突き出される憧ハンド。 ピンと人差し指が立っている。 憧「中途半端はさせないからね。自分から志願したんだから、しっかり働いてもらうわよ?」 京太郎「ぉ……おうっ! 任せとけ!!」 憧「それから、………………あたしとしてる、あれ、も」ゴニョゴニョ 京太郎「え? なんだって?(難聴)」 憧「だ、だから! ハルエの指令よ指令! 本気で協力するって約束、まだ有効だからね!」 京太郎「あ、なんだ指令か。もちろん覚えてるぜ!」 憧「ん……よろしい。それともうひとつ」 京太郎「まだあるのか。なんだ?」 憧「麻雀の指導も引き続き受けること」 京太郎「は!?」 795 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 06:01:19.87 ID:T1fZ8Wipo 憧「この条件まで呑まなきゃマネージャーとして認めないから」プイッ 京太郎「ちょ、ちょっと待てよ! それはおかしくないか!?」 憧「なにがよ?」 京太郎「俺はお前らの負担を減らす為にマネージャーをやるんだぞ!? なのに指導を続けたら……」 憧「お前って言わないで」ギロッ きつく睨まれる。そして憧はコホンと咳払いして、 憧「バカにしないでよね。そのくらい負担でもなんでもないんだから」 京太郎「でもなぁ……」 憧「それに、ド素人にマネージャーが務まると思ってるわけ?」 京太郎「え、関係あるの?」 憧「大アリよ。せめて基礎知識ぐらい完璧じゃないと。そうでしょハルエ?」 レジェンド「んぁ? あー、まあね。そりゃあ知ってるに越したことはないわ」 憧「ほら」 京太郎「ぐぬぬ……」 797 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 07:35:44.02 ID:T1fZ8Wipo 憧「なによ、まだ何か言いたそうね?」ジトー 京太郎「そりゃ――ああもう、いいや、もういい。憧の言う通りにするよ……」ハァ 嘆息しながら、今度は俺が白旗を揚げる番だった。 思ってた展開と違うなぁ。 どうして最後まで格好つけられないんだろうか。 憧「よろしい。………………ん」スッ 京太郎「ん?」キョトン 差し出された手。 に、首を傾げる俺。 京太郎「なんだこれ」 憧「あ、握手よ」 京太郎「…………………………えっ握手!!?」ジェジェジェッ 憧「驚き過ぎ……」イラッ 800 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 08:00:16.60 ID:T1fZ8Wipo 京太郎「だだだだって憧だぞ!? 憧が握手って……前にもやったじゃねーか!」 憧「あ・れ・は! ハルエに言われてやった仲直りの握手でしょ?」 京太郎「おう。それがどうした?」 憧「どうしたって……」 あのねぇ、と憧。 呆れ果てた表情で、しかしどこか悪戯っぽい笑みを含ませて、 憧「あんな握手じゃ友達になったとは言えないでしょ?」 と言った。 京太郎「と、友達……!?」 憧「そ、友達」 憧「だって、下心見え見えの男子なんてマネージャーにしたくないもん」 憧「ただのクラスメイトなんて、ただの部活仲間なんて」 憧「だから――まず友達になろう」 憧「友達になろうよ――」 803 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 08:07:08.71 ID:T1fZ8Wipo #size(20){#aa{{{ . :´ . : . : . : .`: . /: . : . : . : . : . : . :\ /: . : . : . : . : . : . :ヽ: . \ /: . : . : . : . : . : . : . :‘。: . ノ:。 .′ : . : / : . : . : . :ト : . :‘./-‐゚。 |__: . : . : .i: .|: . : . : .|: . : . : .| ゚,:}ヽ/:.‘。 : ぃ /:.┼{ ―--..|:._|__ : //八: . : . :| 匕 }: . }: ゚: . }リ /: イ: .|∧ ミ . : |: .|: //フ7¬ }: . /| ィi爪㍉}:.:|:ハ / 「――京太郎っ!」 /: ./ | : |: ∧\ : |: .|厶斗=ミ /イ 丿 |:il刈 :.:l/}/ :./ : ..|: . ∧ . : |: .|斤:i:i:(_, 弋''ツ |: |: .i ( \ -‐ 、 : / | : |: . : ∧: .ハ:卞::i:lil刈 |: |: .| ヽ у´ ___}_ / : . l: . : . ‘:,⌒!ム ゞ…″ ` :':':':゚|: |: .| │ r  ̄ } |: . 。: . : . :∧ い ゚:':':': -┐ }: |i:∧ | ――‐{ | : ..。 . : . : ∧、vハ ゝ __ ノ / : |i: .‘ | ー―{ /: . : ゚: . : . : . ∧:vハ` ..,, / } |i: . :; ′ -- ′ . /: . : . : 。: . : . : .:∧vハ__  ̄{ ̄: .| }/}: . :.。 /\ }、 ′: . : . : .。: . : . : . : .ⅵ\>―‐n: . :.{ / l: . : ∨/ / \ /:.入 /: . : . : . : ./\: . : . : . : \: \ |{x=xハ 乂: .:// / / / `¨¨´:.:} }}}} 京太郎「アイエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!?!?!!!??!!?」 809 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 09:08:29.77 ID:T1fZ8Wipo 憧「ちょ、なんで絶叫よ!?」 京太郎「だっ、だだだ、だだっだだだだだって、だって憧が! 憧が!」 憧「も、もうっ! そんな風に騒がれるとこっちまで恥ずかしくなってくるから!///」カァッ 京太郎「ああ悪ぃ……けど、なんで急に」 憧「……前に言ってたでしょ、「呼ぶならやっぱり名前だよな」って」 京太郎「あ」 言った。確かに言った。 つまり、憧もあの時の俺と同じ気持ちでいてくれている、ということか。 それは凄く――凄く、嬉しいぞ。 憧「それに、いい加減くん付けで呼ぶ程の人じゃないって分かっちゃったし」クスッ 京太郎「ひっでー」ニヤッ なんて軽口を叩いて、俺達は小さく笑い合う。 笑い合って、視線を交わす。 憧「……まァ、こんな風に、あたしって身内には結構キツいタイプなんだけど……それでもいいんなら、ね」ポリポリ 京太郎「いいよ、大歓迎だ。今までに比べりゃ全然マシだしな――友達になろう、憧!」 そして握手を―― 玄「そうだ、私達も名前で呼ぼうよ!」 憧「は?」 817 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 09:38:10.26 ID:T1fZ8Wipo ――声に。 振り向く。 玄さんが、すっげー得意顔してた。 #aa{{{ .. ---- . . ≦ ミ . / . . . . . . . . . . . . \ / . . . : : : : : : : : : : : : : : : . . . . ヽ . ....: : : : ..:.:./.::.:.. ..:..:..\ ..:.. ヽ: : : ∨‘, / ./../..:.:.:./:./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:..:Vヽ: . ∨ハ / \′:.:.:.:.':.:′:.:.:.:.: |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.Vハ:....ノ i / .7T..ト....:.:i :i| :i:.:.:.:.{:.|、:{:.:.:.:.:ハ:.:.:.:ト::.i一:. . | 「憧ちゃん一人で呼び始めるのは恥ずかしいよね?」 ′/..:|..:|、:.:./|:.|{ :|:.:.:.:.ト:{ \:.、:.:.:/ : ヽ:|:.:.. i: .| : / ..:i|..:{:.\ |:ハ:{、:.:.:.廴__ 斗<:.:|::.:.:.|:.:|:.:.. |: . . |:il .:.::ii:八:{::{ |≧十\:∨ ,. `|:.:.:..ト:|:.:.: |: .{ . |:|!..:.::,| ..:.トド\ _, ` z.、__レ|::.:.:.|´j:.:.:..|: . 「だから私達もこの機会に須賀くんのことを名前で呼ぶのです!」 ,|:{ .::/l| .:小≧==' '^ ´` ̄´`!:.:.: |' }:.:.:..|: . { 八| :ハ| .:.:{:.i xxx , xxx |:.:.:.:|_,}:.:.:..|: . .i (__) | .:. 八 |:.:.:.:}V:.:.:..:: . . { .イ i! .:.:| :i::.. 丶 ノ ,:.:.:./:i::.:.:. :i: . . 「いいかな? きょ……京太郎くん///」 〃{ .}: :.:.{ :|::::i:>... イ/.:.:/i:,′:.::.八 : .l {:i.:{ ハ:.:.:V :::|l:.:.:.}:.r } ̄ __ ノ/:.:./:./:.:.:.:. ::i{: . . { . 八从 ,: .∧ :.{:::::リ::::::ノ 入_/'i{ /ィ /::/:.:.:.:. /::{:. . . . ∨ .:.:.:.\V‐≦ムイ /》___.ノイ 7:.:.:.:. /廴:.. . .八 /;..:.:.:.:.:./ \}! r‐〉ォ´ ̄ }ノ /::.:.:.:./ , ヽ: .∧ . /:/ .:.:::::/ ノ{{ '介′ i{ ./::.:.:.:./ / ∨. ∧ ノイ ..:.:.:./! く 廴. / .|乂 __人/::.:.:.:./ / i: : . .:. __ノ/ ..:..::厶}/ \ ノ{ /j__ 斗-/::.:.:.. / i / {: : . ∧ }}} 京太郎「はあ……まあ……俺は構いませんけど……」チラッ 憧「」 穏乃「いいですね玄さん! みんなで呼びましょうっ!」 京太郎「」チラッ 宥「くろちゃー……」 灼「私は遠慮しとこ……」 京太郎「……よろしくお願いします、玄さん」ペッコリン #aa{{{ / . . . . . . . : : : : : : : : . . . \ , . . . . : : .:. .:..:.:.:.:.:.:. .:. .:.:.:.:.:..ヽ:. . :. ヽ / . . . : .:.:.:.:.:.:.:′.:.:.:.:. i{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:..‘. ∧ / :/ :/:/ ..:.:.:.:.:.:.:.| :.:.:.:.:.:. | :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨. ‘.. . / .イ ′:.:.:.:.:.:{:.:.:.:,| ...:.:.:.: {∧:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:. :. i ././ ′:!.:.|.......:小:.:.ハ__ .:.:.:.:iハ 斗:十:.ト:. .|:.:... i:. : i:.′} . :|. :! :.:.:斗{:.:「 丁i .:.:.:.ト:.V ヘ:.{\:.:.`!:.:.:. |: :| |′.′::l .:|.ト:. .::| ヽ 气{\:.:{ \ ヽ. \} :. : |: :{ 「はい、どうぞよろしくお願いしますっ!」 i . .:.|:八.:.|ヽ{ _ \ ,z≦ミ、| :.: :.!:. |! | : /|.::.:.:.::! ,ァ= =ミ ´ `'^| :. : |:.小 |.:/ :! .:.:.:.ハ ′ /i/, | :. : |:.|i |:′:} .:.: :| ∨ /i ' .:. :. :.!:. l: { ○: :′.:.:.ト. . , 八:.:..:}:. l:.‘ /:.{: :| .:.:.:. {:: 込 ` ´ /}::.:.:./::. :!:. ‘ /:;:.|:.::| .:.:.:. |:::::::个:..... .イ::∨:.:.:/:/.:.′:∧ i:/{:.! .:| .:.:.:. |:::::::/:::::::::ノ}≧ - ´ {入:/.:.:./i/:.:.′:. . ‘. |{∧{..:.i:.:{:.:.:‘:.:.::::::::/ 乂 / /:.:.:/V:.:.:.{:.:.:. . . ‘. .′..:.八:!ム:.七¨⌒} >t_ん /:./「/:.:.: 厂 ̄ ≧ 、 / . rヘ´ ヽ \ | ∧ ∧'ィ斗v′:.:/ ヽ . / . :′ 八_{ ̄≧ V__/イ´ {'リ:.:.:.:′ / } / . . {⌒ヽ 八 z__{ }___, {.':.:.:./ / | .′. .:| \ 《 ハ下 . /.:.:.:.′ , 小 / . . .:.{ ヽ } ∧__/ }ハ ≧7.:.:.:./ / {:∧ . / . ./..:.:} . | く / } ;:.:.:.:.:′ .′/ {:. .‘. / . ./..:.:.:.i ∨ } `≧-ヘ ∧ノ}:.:.:.:.{ . { .′ }:. . ‘. / . :/′:.:.:.} ‘. V| ∨ |:ノ}:.:} j / / {:.:. . ‘. }}} 826 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 10:22:13.82 ID:T1fZ8Wipo 憧「」 京太郎「えーっと……憧ー?」ヒラヒラ 目の前で手を振る。 憧「ハッ!」 気が付いた。 京太郎「大丈夫か?」 憧「う、うん……平気。すっごい台無し感あるけど」チラッ 玄「???」ヘケッ 京太郎「あー……うん。なんか、うん。お疲れ様っす」 憧「どーも。それより……どうする?」 と、タイミングを逃したままになっていた手をぶらつかせる憧。 京太郎「そうだなぁ。ちょっと締まらないけど、やらないよりマシじゃないか?」 憧「かもね」 というわけで、 828 名前:5月1日(水)[saga] 投稿日:2013/08/26(月) 10:27:40.65 ID:T1fZ8Wipo #aa{{{ _ -― 、_ _ -‐ _ >一ー―――- 、__ , ---―- 、 _ .. -‐  ̄ } _ -‐ッ' `ー--、} 「 ̄ 「 ,.-、 ', | } / \ 、 i jノ ノ `丶、 ヽ | `゙´ ヽ } / ヽ | : . . . /ヽ, -‐-、,r"ヽ 丶 .ィ´:、 . : : : : : : : : : : : : : : / 〈 ⌒/ ゝ /⌒ヽ ヽ ∨ 、: 、. : : : :_ .. -‐  ̄  ̄ ―- __: : : : / `´{ / ∠、 \ \__ノ \}_ .. -‐ "  ̄ ―┘ `¨´、 /- /丶、 >‐' `゙'、__/`--' ̄ }}} 俺と憧と、麻雀部のみんなの。 新しい関係が今日、始まった。 憧「ふきゅう……」プルプル 京太郎「……」 先行きは不安だけど。 【TO BE CONTINUED...】 ---- #bold(){ 【須賀京太郎のステータスが更新されました!】 称号:阿知賀学院麻雀部マネージャー(new!) 憧への印象:...→憧ー!俺だー!特訓するぞー! →アレもコレも頑張ろう!(new!) 【新子憧のステータスが更新されました!】 称号:京太郎の友達(new!) 京太郎への印象:...→見られた、知られた、叱られた →ま……よろしくね(new!) 【高鴨穏乃のステータスが更新されました!】 京太郎への印象:...→なんか落ち着く匂い →マネージャー頑張ってね!(new!) 【松実玄のステータスが更新されました!】 京太郎への印象:...→憧ちゃんをよろしくなのです! →きょうたろうくん……えへへ(new!) 【松実宥のステータスが更新されました!】 京太郎への印象:...→憧ちゃんをあったかくしてあげてね →玄ちゃんがごめんなさい(new!) }