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ひれ伏せ、愚民ども - (2009/03/27 (金) 15:32:35) の最新版との変更点
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*ひれ伏せ、愚民ども ◆KYxVXVVDTE
☆恋の新連載プロット・その1☆
タイトル『市場のぬこ』
◆ネーム◆
M&Aや外法取引がはびこるこの世は金と知恵な猫達の市場、
若きトレーダーとして名をはせる赤猫「アーケード」は実は悪の吸金鬼だった!
ネオニート達の首筋に噛みついて金を奪い取る赤猫に立ち向かうべく、
主人公の青猫「クーキ」は10人の仲間を集めることに!
「襲い来る強敵のためにまずは仲間集めだ……
出来た! ネーム出来た!これで勝t」
「――――ボツだああああああああああああああ!!」
☆恋の新連載プロット・その2☆
タイトル『一瞬もからくれないサーカス』
◆ネーム◆
唐紅に水くくるとは何か?
サーカス団で俳句を詠んでいた少年・酒牙ススムは空中ブランコの最中にいい句を思い付く。
だが空中ブランコの揺れはその句を忘れさせかねない狂気の勢い!
さらに襲いかかる二日酔いの罠!
「酔い止めの有無が……試合の勝敗を決める!
一瞬もからくれないサーカス!」
「没!」
☆恋の新連載プロット・その3☆
タイトル『恋の一日』
「俺の一日を漫画形式にしてみんなに見てもらうんだ。
最近そういう裏話的な漫画多いだろ、意外といい発想だと思うが……」
「だが断る」
☆恋の新連載プロット・その4☆
タイトル「もう、いい加減にしません?」
「あのー、ぶっちゃけ、これ以上思いつかないっつーか……ちょ、やめてー!
ドクドクの実で毒浴びせないでー!!」
「目が霞むか……? 耳がおかしいか……?
両手はもう……使えまい」
「使えなくなったら駄目じゃねーか!!」
「漫画は面白ければいいんだ。面白ければ連載される、それが全ての理。
さあ書け、書いてアンケートで1位を獲れ!」
「だから使えなくなったら何も書けないってぎゃああああ!?
目ェ焼ける! 俺の九尾(自我喪失メーター)がマッハで九本になる!」
――やあ、画面の前のイケてるメンズども。
リア充死ね! と拡声器で叫ばせたらナンバーワン、
○ロワで「幻想殺し殺し」なんて話を書かせてもらった通称・恋っていう男ですが周りの空気が最悪です、助けて下さいお願いします!
「何も問題はない。死んだら虚になって蘇ったあと破面になればいい」
「いやここロワだから! そうそう蘇れないから!」
なんで? なんで俺みかん箱の前に座らされてネーム書かされてんの?
記憶を辿ればアホみたいに強い長ーい髪のオッサンから逃げたあと、
いつの間にかこの亀仙流の胴着を着た奴に連れられてたんだけど、何があったの?
てか、ガチで目ェ焼けてるんだけど……暗いエレベーター内に閉じ込められた絶望感なんだけど
「私は拒絶する!」
「さ、再生していくーっ? 潰れたはずの俺の目が!」
「BLEACHより井上織姫の事象拒絶能力を持ってきた。
全ての事象を拒絶し元の状態に戻せるが、場の雰囲気次第で何故か胸に開いた穴さえ戻せなくなるという謎が多い技だな」
「BLEACH見てない奴には何一つ言ってる意味が分かんねーよ!!
てか、ジャンプキャラの技が全部使えるとかどんだけチートなんだよあんた……!」
てかぶっちゃけチートここに極まれりですよね!
すっかり元に戻った指が動くことを確かめつつ、俺(全宇宙ラブラブプリンス・恋様)は率直な感想を述べてやる。
すまん嘘です。括弧の中は忘れてください。
話を戻して、この亀仙流の胴着を着た青年。
名前はジャンプというらしい――は、
俺とはキャラの“格”が違ういわゆる異能持ち。
なんと驚きゃいいのか、「ジャンプキャラの技が全部使える」らしいのだ。
それも自分がジャンプそのものだからー、とかいうふざけた理屈でだ。
「ちなみに、技を使ったのがジャンプキャラでさえあれば、ゲームや映画の技も使える。
100倍ビックバンかめはめ波とかな。
さすがに瞬間移動や蘇生には制限がかかっているようだが、大して俺には関係のないことだ」
どんな能力が備わってるのかを確認するように、
ジャンプさんは手をグーパーしながら俺に言った。
うわ、「俺には関係のないことだー」だってよ。なんかイラつくよな、こういうの。
さっきから俺がネームを書かされてることからも分かるように、
こいつは“チート能力を持ってんのに、それをロワのために使おうとしない”。
強者の余裕か、本気で何も考えてないだけなのかは分からねーが、
こいつはただ期待の新人を見付けるためだけにここにいるって言ってやがる。
いや、バカじゃねーのか、マジで。
例えばマーダーになれば。
そのチート力を存分に発揮して、優勝も可能だろ?
例えば対主催になれば。
脱出やら何やらに多いに役立つだろうし、何人もの人を守れるだろ?
「そうだな、どちらかといえばその“対主催”とやらに俺は当てはまる。
ジャンプの未来を救うのが何よりも先だが」
さっきそんな旨のことを質問してみたら、こう返された。
こいつが求めてるのはあくまでも、ジャンプの未来を救う新人で。
脱出やらなんやらは二の次という、もう頭おかしい人なんだよな、うん。
「ええい、次のネーム考えてやったぞジャンプさんよ」
☆恋の新連載プロット・その5☆
タイトル『とある恋火の炉心融解』
◆ネーム◆
舞台は小中高大の学園が集まって都市化した学園都市。
恋のパワーがそのまま能力者の能力を強くするという基本設定があって、
レベル0の主人公の能力は右手で触れたカップルを問答無用で破局させる異能「幻想殺し」。
だがそこに10万3000冊のケータイ小説を記憶する謎の少女や電撃結婚を申し込んでくる女子中学生、
果てはロリ教師が混じって主人公に襲いかかってくる!
「そして敵側には恋心の傾き度を操作する性別不明なヤンキーを配置!
ラブとバトルを両立させる画期的な設定じゃないか?」
「そうだな、パクリでさえなければな」
そうだね、でも学園都市くらいならその辺に溢れ返ってる気もするから……
やっぱりダメですよね、あはは。
痛ぇ。心も体も痛ぇ。
……つーか、どうすりゃいいんだろうか、こいつ。
逃げられない、殺せない、さらにはロワやる気ない。
俺の優勝のためには邪魔でしかない存在なのに、対処法なし。
せめて人の話を聞いてくれりゃいいんだが、聞く耳は備わってないみてーだし。
このままじゃ俺、ずっとここでネーム書かされるだけじゃん。
「…………」
せめて、横で魂が抜けたような顔して倒れてるこのオッサンが起きてくれれば、
2対1になって話を進められそうなんだが……魂が抜けたような顔してやがる。
こりゃしばらくは起きないな、うん。
「とにかく! ……恋君にはこれから3年間ネームを練ってもらう。
そして俺が考えたギャンブル漫画“賭博探偵録ヘイジ”を必ず長期連載させてみせる。君なら可能なはずだ」
「俺の意向は完全無視かよ!?
つーかまず3日間生き延びるのすらムズいのにいちいち考えてられるか!!」
「甘いぞヘイジ……貴様がツンデレだと言うことは既に分かっている……!」
「いつから俺はヘイジに!?
……って待て、操り系は反則ッ! 操んないで、机の前に向かわせないでー!」
はい、ついには何やら操り系の技まで使われ、
無理矢理みかん箱へと視線を固定されてしまいました。
ジャンプさんが後ろから目を光らせまくってるのが嫌でも分かる体勢。
なのに俺は振り返れない。蛙に睨まれる恋とは俺のことだ!
……もうさ、5千円くらいなら惜しみなく出すから誰か助けろって! な?
こんなんじゃネームも何も恐怖で書けねーよ!
「もう誰でもいいから……助けてくれぇえ!!」
プライドなんて恋以外にはいらん、思いっ切り叫んでやらあ!!
だから誰か哀れな恋に、愛の手をーー!
「なら、助けてあげましょう」
すると、よく耳に通る声がした。
◆◆◆◆
遠くから。あるいは近くから。
その、高嶺に響くような声が聞こえた瞬間、恋の体は解放された。
「……うお?」
急に自由になった体を制しきれず、段ボールの上へと恋は倒れる。
「助かった……? でも、なんでいきなり?」
潰してしまった段ボールの感触を腹部に感じながら片手で上体を起こし、
後ろへと首を向けた恋は、見た。
「数時間ぶりね、恋」
「あ、アーケード!?」
「否。私の出自はカオスよ」
恋が1つ目のプロットを考えていた時、
敵役のことを考えながら脳内に再生した人物がそこに立っていた。
朝日を浴びて更に輝きを増した七色スーツ。
澄んだ銀色の刃を構えた黒髪の女と、恋は戦ったことがあった。
「kskロワ住人達を探していたのだけれど……貴方に逢えるとは思わなかったわ。
ねぇ恋、私があれから何をされたか分かるかしら? 分からないでしょうね。
全て貴方のせい――貴方のせいで、私は」
彼女の迫力の前では、横で気絶している男や市街地の光景が霞んでしまう。
単調に配置されていただろう、崩れ落ちたブロック塀も。
単純に立ち並んでただろう、縦に両断された電柱達も。
中身のないことが証明された自動販売機も。完全に原型をとどめてない民家も。
もはや僅かに足先を残すのみとなったジャンプ(擬人化)の姿も、恋は背景と捉えることしかできない。
彼女から一瞬も目を離せない。
恋はまるで、彼女の手の平で踊る道化だった。
「なんで、生きてんだよ、お前――?」
「貴方ごときに私が殺せると思っていたの?
私は生きていたわ、当たり前のように。そして辱めを受けた。
何も考えられなくなる程に体中をまさぐられ、二人の男に抵抗出来ないまま持て遊ばれ。
惨めだったわ、とても、とても……」
苦虫を噛み潰すような顔をして、高嶺響は恋の問いに答えた。
そして恋に向かって、すた、すた、と歩み寄っていく。
その度に高嶺響の黒髪が揺れて、恋にある思いを抱かせる。
……何があったのかは、分からないが。
“格”が、違う。
恋と戦った時の高嶺響と今の高嶺響には、
書き手の恋にしか分からない、純粋な格差が存在している。
それはギャグ描写が途端にシリアスになり、そのまま鬱グロ展開に雪崩れ込むような変化。
或いは纏うオーラの違い。
いくらでも言いようはあるが、ただ一つ分かるのは。
勝てないということ。
恋の一日は、ここで終わりだ、ということ。
神々しささえ感じる高嶺響の足取りに、恋は本能的にそう感じた。
「――誰だ、お前は!!」
ふと恋が横を見ると、背景が動いていた。
倒れていた青い短髪の中年、カン=ユーがいつの間にか起き上がり、高嶺響に向かって銃を突きつけている。
やめろ。
その銃は、撃っても意味がない。
「私の名前は高嶺響。主催を倒して主催に成り替わる者よ」
「主催に……ふん、ならば俺を殺すのか、女!」
「ええ、もちろん。このクズを殺した後で、貴方も殺すわ。
……あら? 貴方とも一度会った気がするわね。何時だったか――」
「そうか! なら死ね!!」
引き金が引かれる。弾が飛ぶ。
一瞬の判断。カン=ユーは高嶺響に殺意があると確定した瞬間、モシン・ナガンM1890/30を撃った。
しかし、
「――ああ、そうそう、ロリコンが二人に増える前にロリコンを脅していた奴ね、思い出したわ。
あの時はありがとう。一瞬でも休息が得られたのは貴方のお陰よ」
カン=ユーが放った弾は、高嶺響に取られた。
「何……だと……!?」
「まあ、だからといって貴方を見逃すことはしないけれど」
何が起きたのか理解出来なかった。
真っ直ぐ飛んでいった銃弾に高嶺響の手が被さったと思うと、
次の瞬間には銃弾は消え、高嶺響の握り拳だけが残ったのだ。
「居合いの世界で生きてきた私にとって、一刹那は永遠に等しい時間。
この程度の速さ、とうの昔に見切れている」
作った拳を、七色スーツのポケットへと入れながら。
気丈な態度のままで高嶺響はカン=ユーに言い放ち、
そのまま、恋の背中を思い切り踏みつけた。
――背骨が曲がるような衝撃が、恋にいきなり浴びせられる。
「がっ…………!」
「さて、どう殺してあげようかしら。
指を落としてそのまま体をスライスする?
脳味噌を自らの手で掻き回して自分の眼球を食べる?
好きな方法を選ぶといいわ。その方法を、考えうる限り酷くした殺し方を使うから」
「いや勘弁してくれマジで……がひぁ!」
一度足を離して、もう一度同じ力で。
恋の肺から、悲鳴とも何ともつかない音が吐き出される。
横目に、カン=ユーが銃を下ろして呆然としているのが見えた。
だがそれはもはや背景の一部と化し、恋と高嶺響からは見えなくなっていく。
そうだ、それでいい。
何も出来ないなら、動かない方がいい。
「早く決めないと、殺すわよ」
恋がそう思ったと同時に、三撃目。
さらに四撃。
五、六、
七、
八、
どす、どす、
どすどすどすどす、
高嶺響が恋を踏む間隔は徐々に短くなり、恋の悲鳴の間隔も短くなっていく。
腹の下で潰れている段ボールはクッションにもならない。
考えたネームごときでは、現実の恋は救えない。
「あ、あぐ、あ」
「……ねぇ、何とか言ったらどう? もう何も言えないの?
私を圧倒した時の威勢は何処に行ったのよ、ねぇ、もっと格好つけてみなさいよ!」
「あ、あ、ひあ」
恋が正常な思考を保てたのは、自らの吐冩物に顔を打ちつける二十八回目まで。
断続的な痛みに、恋はただうめき声を上げ、
時折胃の内容物を吐き出すだけの動物と化していた。
しかし、高嶺響はそれでは満足しない。
「……止め忘れぬこと肝要也」
ぐさ、ぐさ、ぐさ。
倒れている恋の左手に、高嶺響は躊躇なく刀を突き刺していく。
手の甲から、手首、腕へ。刻まれる赤い血線。
飛び始めていた恋の意識が、鋭い痛みで引き戻される。
「ぎゃあああああああああああああああああっっ!!?
あっ、かは……い、やめっ」
「……簡単に壊してもらえるとでも、思ったのかしら?」
黙れとばかりに恋の頭を踏みつけ、地面に擦りつけた高嶺響は、尚も恋の左手を刺し続ける。
一撃一撃、一刀一刺しに恨みを込めているかのようだった。
左手が終わると、右手。
逃げようと宙をあがく手を正確に捉え、一本ずつ指を落としていく。
ジャンプ(擬人化)が融解してしまった今、その事象を拒絶することはもう出来ない。
恋はただ、血まみれの手の先から指が消失していくのを見ることしか出来なかった。
数秒立たずに、恋の両腕はまともに使えなくなる。
キーボードを打つことは出来ないし、禁書目録のDVDをデッキに入れることも出来ない。
「…………あぁ」
「まだ終わりじゃないわ」
絶望の声を漏らした恋の目の前に、今度は高嶺響の指が現れる。
銀の刀と七色スーツを恋の血に染め、
恋を散々いたぶった高嶺響は、
恋の背中に腰を下ろし、
恋の頭を手で掴み。
人指し指と中指を恋の眼球に密着させて、
その目を突き刺し破壊した。
「」
終には、声すら出なかった。
ただ目から赤い涙を流し、口を大きく開けた恋がいるだけだ。
もう恋は、主催のデレも、禁書目録のアニメを見ることが出来ない。
ライトノベルも漫画も楽しめない。恋に取っては、それは死の宣告と同義だった。
だが、それでもまだ恋は生きている。
恋の一日はまだ、強制的に引き伸ばされるのだ。
「さて、次は……あら、私のデイパックも貴方が持って行ってたのね」
みかん箱があった位置から少し離れた場所に、恋達のデイパックや武器が置かれていた。
瀕死の恋はいつでも殺せる。高嶺響はデイパックの元へ赴くと、中を物色し始めた。
「私のデイパックの中には何もないわね……ん、これは?」
その隙をついて逃げようと立ち上がるカン=ユーへ古青江を投擲しながら、
高嶺響は驚きの声を上げる。
ジャンプ(擬人化)のデイパックに、二つの支給品が入っていた。
それらを手に取り、高嶺響はしばし考えを巡らせる。
「――ねぇ、そこの男。名前を教えてくれないかしら」
そして、何か思い付いたのか、高嶺響は二つの支給品を取ると、
先程投げた古青江にトランクスを斬り落とされて、その場に直立するカン=ユーに話しかけた。
「カン=ユーだ。何の用だ?」
「貴方を生かしてあげるわ。だから――私と、組みなさい」
二つのアイテムをカン=ユーに突き出しながら、高嶺響は高圧的な表情で“作戦”を語り始める。
支給品の一つは、一対のトランシーバーセット。
もう一つは優れた忍者でも激痛に獣の叫びを上げるという、特製の毒針セットだった。
◆◆◆◆
「あ゛ぁ……アあッアア゛アあ゛アアああァあ゛ア゛あ゛アァ゛ア゛ァッっ!!!」
「こちらカン=ユー。目標は今だ発見出来ず」
『そう。こちらもキリコは見付けてないわ』
どこまで行っても閑散とした町並みの中を、悲痛な叫びが駆け巡る。
“作戦”を聞いた後、高嶺響と別れたカン=ユーは、
定期的に恋の体に毒針を突き刺しながら、どこへともなく歩いていた。
恋は目も見えず腕も使えないが、歩くことと叫ぶことは出来る。
定期的に毒針で苦痛を与えて叫ばせることによって、トランシーバーの向こうの高嶺響には「恋の生死」と、
「カン=ユーが恋と一緒かどうか」が分かるという寸法だ。
「しかしタカネ、この男は殺しても構わんだろう?
相互連絡を取るだけなら一人で充分だ。俺の移動速度も落ちるしな」
『何言ってるの、カン=ユー。貴方、それでも指揮官だったのかしら?
その悲鳴は大事な罠よ。Kskロワ住人達を誘き寄せるための、ね』
“銃を持った男一人”だけでは様子を見て近付かないが、
その男に誰かが囚われてるとなれば姿を現すバカがいるものだ。
叫びで自らの位置を知らせながら歩けば遭遇もしやすいだろうし、
何より私は恋の悲鳴を聞くのが楽しくて仕方ないのだ。
そんな感じのことを高嶺響に言われ、カン=ユーは渋い顔をする。
(全く……いいように扱われたものだな)
一応こちらからも、キリコを見付けたら連絡するよう言ってはおいたが、
面倒な役が全てカン=ユーに押し付けられたのは明白だった。
しかも、恋もトランシーバーも捨てて高嶺響の監視から逃れても、カン=ユーにはメリットが無い。
むしろ、“別の場所の危険を先に察知できる”、
“危険に陥っても増援を期待できる”等のメリットの方が多いのだ。
完全に、カン=ユーは高嶺響に飼われたと言っていいだろう。
悔しいが、認めざるを得ないことだった。
(ここに来てまで“上司”が出来るとはな……)
それも、銃弾を手で取ってしまうような化け物が、だ。
一つ舌打ちをして、カン=ユーはデイパックの中の地図を開く。
この状況が改善されるのは、高嶺響の言う目標と恋が全員死に、高嶺響に命令される必要が無くなった後。
計、三人と一匹が死んだ後になる。
(この傷と毒針の毒で、この男はもう半日も持たないだろうが……)
目標の二人と一匹が死ぬまでには時間がかかるだろう。出来れば、探し出して殺してしまいたいところだった。
「俺は最初湖に居て、爆発に巻き込まれ気を失い、気付くと今は街……ここは南部の街か?
となると雑貨屋やハロワとやらをあたるのが賢明か」
『何言ってるの? ここは北部の町よ』
「何……だと……!?」
『もしかして、放送があったことも覚えてないの?』
「放送……!?」
ここでようやくカン=ユーは、自分の意識の無い内にとんでもない旅をしていたことを知らされる。
カン=ユーの任務は、驚きと共に始まった。
「……目、ど、腕が、使えなぐでも……耳があれ、ば、インデックスの声は聞けるんだ……あぁあ゛っ」
その後ろで小さく恋が呟いた言葉をカン=ユーが聞き逃したのも、無理はない。
【1日目 午前/B-4】
【カン=ユー@装甲騎兵ボトムズ】
【服装】恋の服(軍服はどこかに干してある)
【状態】健康
【装備】モシン・ナガンM1891/30@現実、弾薬34発@現実、毒針の束@バジリスク
【持ち物】支給品一式、手榴弾2つ、トランシーバー@音無可憐さん、ランダム支給品0~2(確認済み)
、1080@シャーマンキング
【思考】基本:皆殺し
1:kskロワ住人、竜宮レナ、カンパネルラを探しだして殺す
2:今は仕方ないからタカネの下に付こう
3:キリコはなぶり殺しにする
【備考】
※記憶を失ってたことと放送があったことを知りました。
※恋から服を奪いました。
※元のカン=ユーに戻りました。
【恋@マルロワ】
【服装】カン=ユーのシャツが腰に巻いてあるだけ
【状態】両手重症、盲目、毒
【装備】なし
【持ち物】なし
【思考】
1:恋ってのは突然燃え上がる、そうだろ?
2:帰って禁書目録を聴く。絶対に。
【備考】
※もう半日も持ちません。
◆◆◆◆
(全く、ちょろいものね)
新しく手に入れた武器……七天七刀で試し切りをしながら、高嶺響は笑う。
二メートルを越える長刀は確かに恋のラブカスを捉え、真っ二つに引き裂いた。
切味は申し分無さそうだがいかんせん長い。基本は古青江で充分だろう。
そう判断し、響は七天七刀をデイパックにしまう。 デイパックの中も、恋から奪った武器でずいぶん増えた。
カン=ユーと分け合ったのは手榴弾くらいなもの。他はほぼ全て、響の手柄になった。
「さて、私もkskロワ住人達を探さなきゃ」
『そうか。では次の定時連絡まで、トランシーバーを切るぞ』
「ええ」
大きく背伸びをすると、響は歩き出す。
おもむろに、片手で七色スーツのポケットをまさぐり――何も、取り出さない。
(二発……少し七色光線を使いすぎたかしら。ちょっと疲れたわね)
さすがの響でも、銃弾は手じゃ取れない。
避けるか古青江で斬るかは出来たが、連弾を避けるために格の違いを見せる必要があった。
どんな技でも、時と場合と使いよう。
(さてと――何処へ行きましょうか?)
【一日目 午前/B-3】
【高嶺響@テラカオスバトルロワイアル】
【服装】七色スーツ
【状態】疲労(中)
【装備】古青江@School days
【持ち物】H&K XM8@現実と予備弾薬、手榴弾2つ、
七天七刀@とある魔術の禁書目録、テトリス携帯機@テトリス、
トランシーバー@音無可憐さん、基本支給品×4、武器ではないがロワで役に立ちそうなアイテム×2
【思考】
1:主催を殺して主催になる。
2:レナ、カンパネルラ、kskロワ住人を探し出して殺す。
3:ちょっとどこかで休もうかしら?
【備考】
※テトリスは100面までクリアするといいことがあるかもしれません。
※銃弾は七色光線で消した後、ポケットに入れる振りをしただけでした。
※ラブカス@ポケットモンスターは死亡しました。
&color(red){【ジャンプ(擬人化)@ジャンプ 死亡】}
*時系列順で読む
Back:[[明日に向かって撃て!]] Next:[[ ]]
*投下順で読む
Back:[[明日に向かって撃て!]] Next:[[ ]]
|[[B-5周辺顛末記]]|&color(red){ジャンプ(擬人化)}|&color(red){GAME OVER}|
|[[B-5周辺顛末記]]|カン=ユー|[[ ]]|
|[[B-5周辺顛末記]]|恋|[[ ]]|
|[[『戦いの詩』]]|高嶺響|[[ ]]|
*ひれ伏せ、愚民ども ◆KYxVXVVDTE
☆恋の新連載プロット・その1☆
タイトル『市場のぬこ』
◆ネーム◆
M&Aや外法取引がはびこるこの世は金と知恵な猫達の市場、
若きトレーダーとして名をはせる赤猫「アーケード」は実は悪の吸金鬼だった!
ネオニート達の首筋に噛みついて金を奪い取る赤猫に立ち向かうべく、
主人公の青猫「クーキ」は10人の仲間を集めることに!
「襲い来る強敵のためにまずは仲間集めだ……
出来た! ネーム出来た!これで勝t」
「――――ボツだああああああああああああああ!!」
☆恋の新連載プロット・その2☆
タイトル『一瞬もからくれないサーカス』
◆ネーム◆
唐紅に水くくるとは何か?
サーカス団で俳句を詠んでいた少年・酒牙ススムは空中ブランコの最中にいい句を思い付く。
だが空中ブランコの揺れはその句を忘れさせかねない狂気の勢い!
さらに襲いかかる二日酔いの罠!
「酔い止めの有無が……試合の勝敗を決める!
一瞬もからくれないサーカス!」
「没!」
☆恋の新連載プロット・その3☆
タイトル『恋の一日』
「俺の一日を漫画形式にしてみんなに見てもらうんだ。
最近そういう裏話的な漫画多いだろ、意外といい発想だと思うが……」
「だが断る」
☆恋の新連載プロット・その4☆
タイトル「もう、いい加減にしません?」
「あのー、ぶっちゃけ、これ以上思いつかないっつーか……ちょ、やめてー!
ドクドクの実で毒浴びせないでー!!」
「目が霞むか……? 耳がおかしいか……?
両手はもう……使えまい」
「使えなくなったら駄目じゃねーか!!」
「漫画は面白ければいいんだ。面白ければ連載される、それが全ての理。
さあ書け、書いてアンケートで1位を獲れ!」
「だから使えなくなったら何も書けないってぎゃああああ!?
目ェ焼ける! 俺の九尾(自我喪失メーター)がマッハで九本になる!」
――やあ、画面の前のイケてるメンズども。
リア充死ね! と拡声器で叫ばせたらナンバーワン、
○ロワで「幻想殺し殺し」なんて話を書かせてもらった通称・恋っていう男ですが周りの空気が最悪です、助けて下さいお願いします!
「何も問題はない。死んだら虚になって蘇ったあと破面になればいい」
「いやここロワだから! そうそう蘇れないから!」
なんで? なんで俺みかん箱の前に座らされてネーム書かされてんの?
記憶を辿ればアホみたいに強い長ーい髪のオッサンから逃げたあと、
いつの間にかこの亀仙流の胴着を着た奴に連れられてたんだけど、何があったの?
てか、ガチで目ェ焼けてるんだけど……暗いエレベーター内に閉じ込められた絶望感なんだけど
「私は拒絶する!」
「さ、再生していくーっ? 潰れたはずの俺の目が!」
「BLEACHより井上織姫の事象拒絶能力を持ってきた。
全ての事象を拒絶し元の状態に戻せるが、場の雰囲気次第で何故か胸に開いた穴さえ戻せなくなるという謎が多い技だな」
「BLEACH見てない奴には何一つ言ってる意味が分かんねーよ!!
てか、ジャンプキャラの技が全部使えるとかどんだけチートなんだよあんた……!」
てかぶっちゃけチートここに極まれりですよね!
すっかり元に戻った指が動くことを確かめつつ、俺(全宇宙ラブラブプリンス・恋様)は率直な感想を述べてやる。
すまん嘘です。括弧の中は忘れてください。
話を戻して、この亀仙流の胴着を着た青年。
名前はジャンプというらしい――は、
俺とはキャラの“格”が違ういわゆる異能持ち。
なんと驚きゃいいのか、「ジャンプキャラの技が全部使える」らしいのだ。
それも自分がジャンプそのものだからー、とかいうふざけた理屈でだ。
「ちなみに、技を使ったのがジャンプキャラでさえあれば、ゲームや映画の技も使える。
100倍ビックバンかめはめ波とかな。
さすがに瞬間移動や蘇生には制限がかかっているようだが、大して俺には関係のないことだ」
どんな能力が備わってるのかを確認するように、
ジャンプさんは手をグーパーしながら俺に言った。
うわ、「俺には関係のないことだー」だってよ。なんかイラつくよな、こういうの。
さっきから俺がネームを書かされてることからも分かるように、
こいつは“チート能力を持ってんのに、それをロワのために使おうとしない”。
強者の余裕か、本気で何も考えてないだけなのかは分からねーが、
こいつはただ期待の新人を見付けるためだけにここにいるって言ってやがる。
いや、バカじゃねーのか、マジで。
例えばマーダーになれば。
そのチート力を存分に発揮して、優勝も可能だろ?
例えば対主催になれば。
脱出やら何やらに多いに役立つだろうし、何人もの人を守れるだろ?
「そうだな、どちらかといえばその“対主催”とやらに俺は当てはまる。
ジャンプの未来を救うのが何よりも先だが」
さっきそんな旨のことを質問してみたら、こう返された。
こいつが求めてるのはあくまでも、ジャンプの未来を救う新人で。
脱出やらなんやらは二の次という、もう頭おかしい人なんだよな、うん。
「ええい、次のネーム考えてやったぞジャンプさんよ」
☆恋の新連載プロット・その5☆
タイトル『とある恋火の炉心融解』
◆ネーム◆
舞台は小中高大の学園が集まって都市化した学園都市。
恋のパワーがそのまま能力者の能力を強くするという基本設定があって、
レベル0の主人公の能力は右手で触れたカップルを問答無用で破局させる異能「幻想殺し」。
だがそこに10万3000冊のケータイ小説を記憶する謎の少女や電撃結婚を申し込んでくる女子中学生、
果てはロリ教師が混じって主人公に襲いかかってくる!
「そして敵側には恋心の傾き度を操作する性別不明なヤンキーを配置!
ラブとバトルを両立させる画期的な設定じゃないか?」
「そうだな、パクリでさえなければな」
そうだね、でも学園都市くらいならその辺に溢れ返ってる気もするから……
やっぱりダメですよね、あはは。
痛ぇ。心も体も痛ぇ。
……つーか、どうすりゃいいんだろうか、こいつ。
逃げられない、殺せない、さらにはロワやる気ない。
俺の優勝のためには邪魔でしかない存在なのに、対処法なし。
せめて人の話を聞いてくれりゃいいんだが、聞く耳は備わってないみてーだし。
このままじゃ俺、ずっとここでネーム書かされるだけじゃん。
「…………」
せめて、横で魂が抜けたような顔して倒れてるこのオッサンが起きてくれれば、
2対1になって話を進められそうなんだが……魂が抜けたような顔してやがる。
こりゃしばらくは起きないな、うん。
「とにかく! ……恋君にはこれから3年間ネームを練ってもらう。
そして俺が考えたギャンブル漫画“賭博探偵録ヘイジ”を必ず長期連載させてみせる。君なら可能なはずだ」
「俺の意向は完全無視かよ!?
つーかまず3日間生き延びるのすらムズいのにいちいち考えてられるか!!」
「甘いぞヘイジ……貴様がツンデレだと言うことは既に分かっている……!」
「いつから俺はヘイジに!?
……って待て、操り系は反則ッ! 操んないで、机の前に向かわせないでー!」
はい、ついには何やら操り系の技まで使われ、
無理矢理みかん箱へと視線を固定されてしまいました。
ジャンプさんが後ろから目を光らせまくってるのが嫌でも分かる体勢。
なのに俺は振り返れない。蛙に睨まれる恋とは俺のことだ!
……もうさ、5千円くらいなら惜しみなく出すから誰か助けろって! な?
こんなんじゃネームも何も恐怖で書けねーよ!
「もう誰でもいいから……助けてくれぇえ!!」
プライドなんて恋以外にはいらん、思いっ切り叫んでやらあ!!
だから誰か哀れな恋に、愛の手をーー!
「なら、助けてあげましょう」
すると、よく耳に通る声がした。
◆◆◆◆
遠くから。あるいは近くから。
その、高嶺に響くような声が聞こえた瞬間、恋の体は解放された。
「……うお?」
急に自由になった体を制しきれず、段ボールの上へと恋は倒れる。
「助かった……? でも、なんでいきなり?」
潰してしまった段ボールの感触を腹部に感じながら片手で上体を起こし、
後ろへと首を向けた恋は、見た。
「数時間ぶりね、恋」
「あ、アーケード!?」
「否。私の出自はカオスよ」
恋が1つ目のプロットを考えていた時、
敵役のことを考えながら脳内に再生した人物がそこに立っていた。
朝日を浴びて更に輝きを増した七色スーツ。
澄んだ銀色の刃を構えた黒髪の女と、恋は戦ったことがあった。
「kskロワ住人達を探していたのだけれど……貴方に逢えるとは思わなかったわ。
ねぇ恋、私があれから何をされたか分かるかしら? 分からないでしょうね。
全て貴方のせい――貴方のせいで、私は」
彼女の迫力の前では、横で気絶している男や市街地の光景が霞んでしまう。
単調に配置されていただろう、崩れ落ちたブロック塀も。
単純に立ち並んでただろう、縦に両断された電柱達も。
中身のないことが証明された自動販売機も。完全に原型をとどめてない民家も。
もはや僅かに足先を残すのみとなったジャンプ(擬人化)の姿も、恋は背景と捉えることしかできない。
彼女から一瞬も目を離せない。
恋はまるで、彼女の手の平で踊る道化だった。
「なんで、生きてんだよ、お前――?」
「貴方ごときに私が殺せると思っていたの?
私は生きていたわ、当たり前のように。そして辱めを受けた。
何も考えられなくなる程に体中をまさぐられ、二人の男に抵抗出来ないまま持て遊ばれ。
惨めだったわ、とても、とても……」
苦虫を噛み潰すような顔をして、高嶺響は恋の問いに答えた。
そして恋に向かって、すた、すた、と歩み寄っていく。
その度に高嶺響の黒髪が揺れて、恋にある思いを抱かせる。
……何があったのかは、分からないが。
“格”が、違う。
恋と戦った時の高嶺響と今の高嶺響には、
書き手の恋にしか分からない、純粋な格差が存在している。
それはギャグ描写が途端にシリアスになり、そのまま鬱グロ展開に雪崩れ込むような変化。
或いは纏うオーラの違い。
いくらでも言いようはあるが、ただ一つ分かるのは。
勝てないということ。
恋の一日は、ここで終わりだ、ということ。
神々しささえ感じる高嶺響の足取りに、恋は本能的にそう感じた。
「――誰だ、お前は!!」
ふと恋が横を見ると、背景が動いていた。
倒れていた青い短髪の中年、カン=ユーがいつの間にか起き上がり、高嶺響に向かって銃を突きつけている。
やめろ。
その銃は、撃っても意味がない。
「私の名前は高嶺響。主催を倒して主催に成り替わる者よ」
「主催に……ふん、ならば俺を殺すのか、女!」
「ええ、もちろん。このクズを殺した後で、貴方も殺すわ。
……あら? 貴方とも一度会った気がするわね。何時だったか――」
「そうか! なら死ね!!」
引き金が引かれる。弾が飛ぶ。
一瞬の判断。カン=ユーは高嶺響に殺意があると確定した瞬間、モシン・ナガンM1890/30を撃った。
しかし、
「――ああ、そうそう、ロリコンが二人に増える前にロリコンを脅していた奴ね、思い出したわ。
あの時はありがとう。一瞬でも休息が得られたのは貴方のお陰よ」
カン=ユーが放った弾は、高嶺響に取られた。
「何……だと……!?」
「まあ、だからといって貴方を見逃すことはしないけれど」
何が起きたのか理解出来なかった。
真っ直ぐ飛んでいった銃弾に高嶺響の手が被さったと思うと、
次の瞬間には銃弾は消え、高嶺響の握り拳だけが残ったのだ。
「居合いの世界で生きてきた私にとって、一刹那は永遠に等しい時間。
この程度の速さ、とうの昔に見切れている」
作った拳を、七色スーツのポケットへと入れながら。
気丈な態度のままで高嶺響はカン=ユーに言い放ち、
そのまま、恋の背中を思い切り踏みつけた。
――背骨が曲がるような衝撃が、恋にいきなり浴びせられる。
「がっ…………!」
「さて、どう殺してあげようかしら。
指を落としてそのまま体をスライスする?
脳味噌を自らの手で掻き回して自分の眼球を食べる?
好きな方法を選ぶといいわ。その方法を、考えうる限り酷くした殺し方を使うから」
「いや勘弁してくれマジで……がひぁ!」
一度足を離して、もう一度同じ力で。
恋の肺から、悲鳴とも何ともつかない音が吐き出される。
横目に、カン=ユーが銃を下ろして呆然としているのが見えた。
だがそれはもはや背景の一部と化し、恋と高嶺響からは見えなくなっていく。
そうだ、それでいい。
何も出来ないなら、動かない方がいい。
「早く決めないと、殺すわよ」
恋がそう思ったと同時に、三撃目。
さらに四撃。
五、六、
七、
八、
どす、どす、
どすどすどすどす、
高嶺響が恋を踏む間隔は徐々に短くなり、恋の悲鳴の間隔も短くなっていく。
腹の下で潰れている段ボールはクッションにもならない。
考えたネームごときでは、現実の恋は救えない。
「あ、あぐ、あ」
「……ねぇ、何とか言ったらどう? もう何も言えないの?
私を圧倒した時の威勢は何処に行ったのよ、ねぇ、もっと格好つけてみなさいよ!」
「あ、あ、ひあ」
恋が正常な思考を保てたのは、自らの吐冩物に顔を打ちつける二十八回目まで。
断続的な痛みに、恋はただうめき声を上げ、
時折胃の内容物を吐き出すだけの動物と化していた。
しかし、高嶺響はそれでは満足しない。
「……止め忘れぬこと肝要也」
ぐさ、ぐさ、ぐさ。
倒れている恋の左手に、高嶺響は躊躇なく刀を突き刺していく。
手の甲から、手首、腕へ。刻まれる赤い血線。
飛び始めていた恋の意識が、鋭い痛みで引き戻される。
「ぎゃあああああああああああああああああっっ!!?
あっ、かは……い、やめっ」
「……簡単に壊してもらえるとでも、思ったのかしら?」
黙れとばかりに恋の頭を踏みつけ、地面に擦りつけた高嶺響は、尚も恋の左手を刺し続ける。
一撃一撃、一刀一刺しに恨みを込めているかのようだった。
左手が終わると、右手。
逃げようと宙をあがく手を正確に捉え、一本ずつ指を落としていく。
ジャンプ(擬人化)が融解してしまった今、その事象を拒絶することはもう出来ない。
恋はただ、血まみれの手の先から指が消失していくのを見ることしか出来なかった。
数秒立たずに、恋の両腕はまともに使えなくなる。
キーボードを打つことは出来ないし、禁書目録のDVDをデッキに入れることも出来ない。
「…………あぁ」
「まだ終わりじゃないわ」
絶望の声を漏らした恋の目の前に、今度は高嶺響の指が現れる。
銀の刀と七色スーツを恋の血に染め、
恋を散々いたぶった高嶺響は、
恋の背中に腰を下ろし、
恋の頭を手で掴み。
人指し指と中指を恋の眼球に密着させて、
その目を突き刺し破壊した。
「」
終には、声すら出なかった。
ただ目から赤い涙を流し、口を大きく開けた恋がいるだけだ。
もう恋は、主催のデレも、禁書目録のアニメを見ることが出来ない。
ライトノベルも漫画も楽しめない。恋に取っては、それは死の宣告と同義だった。
だが、それでもまだ恋は生きている。
恋の一日はまだ、強制的に引き伸ばされるのだ。
「さて、次は……あら、私のデイパックも貴方が持って行ってたのね」
みかん箱があった位置から少し離れた場所に、恋達のデイパックや武器が置かれていた。
瀕死の恋はいつでも殺せる。高嶺響はデイパックの元へ赴くと、中を物色し始めた。
「私のデイパックの中には何もないわね……ん、これは?」
その隙をついて逃げようと立ち上がるカン=ユーへ古青江を投擲しながら、
高嶺響は驚きの声を上げる。
ジャンプ(擬人化)のデイパックに、二つの支給品が入っていた。
それらを手に取り、高嶺響はしばし考えを巡らせる。
「――ねぇ、そこの男。名前を教えてくれないかしら」
そして、何か思い付いたのか、高嶺響は二つの支給品を取ると、
先程投げた古青江にトランクスを斬り落とされて、その場に直立するカン=ユーに話しかけた。
「カン=ユーだ。何の用だ?」
「貴方を生かしてあげるわ。だから――私と、組みなさい」
二つのアイテムをカン=ユーに突き出しながら、高嶺響は高圧的な表情で“作戦”を語り始める。
支給品の一つは、一対のトランシーバーセット。
もう一つは優れた忍者でも激痛に獣の叫びを上げるという、特製の毒針セットだった。
◆◆◆◆
「あ゛ぁ……アあッアア゛アあ゛アアああァあ゛ア゛あ゛アァ゛ア゛ァッっ!!!」
「こちらカン=ユー。目標は今だ発見出来ず」
『そう。こちらもキリコは見付けてないわ』
どこまで行っても閑散とした町並みの中を、悲痛な叫びが駆け巡る。
“作戦”を聞いた後、高嶺響と別れたカン=ユーは、
定期的に恋の体に毒針を突き刺しながら、どこへともなく歩いていた。
恋は目も見えず腕も使えないが、歩くことと叫ぶことは出来る。
定期的に毒針で苦痛を与えて叫ばせることによって、トランシーバーの向こうの高嶺響には「恋の生死」と、
「カン=ユーが恋と一緒かどうか」が分かるという寸法だ。
「しかしタカネ、この男は殺しても構わんだろう?
相互連絡を取るだけなら一人で充分だ。俺の移動速度も落ちるしな」
『何言ってるの、カン=ユー。貴方、それでも指揮官だったのかしら?
その悲鳴は大事な罠よ。Kskロワ住人達を誘き寄せるための、ね』
“銃を持った男一人”だけでは様子を見て近付かないが、
その男に誰かが囚われてるとなれば姿を現すバカがいるものだ。
叫びで自らの位置を知らせながら歩けば遭遇もしやすいだろうし、
何より私は恋の悲鳴を聞くのが楽しくて仕方ないのだ。
そんな感じのことを高嶺響に言われ、カン=ユーは渋い顔をする。
(全く……いいように扱われたものだな)
一応こちらからも、キリコを見付けたら連絡するよう言ってはおいたが、
面倒な役が全てカン=ユーに押し付けられたのは明白だった。
しかも、恋もトランシーバーも捨てて高嶺響の監視から逃れても、カン=ユーにはメリットが無い。
むしろ、“別の場所の危険を先に察知できる”、
“危険に陥っても増援を期待できる”等のメリットの方が多いのだ。
完全に、カン=ユーは高嶺響に飼われたと言っていいだろう。
悔しいが、認めざるを得ないことだった。
(ここに来てまで“上司”が出来るとはな……)
それも、銃弾を手で取ってしまうような化け物が、だ。
一つ舌打ちをして、カン=ユーはデイパックの中の地図を開く。
この状況が改善されるのは、高嶺響の言う目標と恋が全員死に、高嶺響に命令される必要が無くなった後。
計、三人と一匹が死んだ後になる。
(この傷と毒針の毒で、この男はもう半日も持たないだろうが……)
目標の二人と一匹が死ぬまでには時間がかかるだろう。出来れば、探し出して殺してしまいたいところだった。
「俺は最初湖に居て、爆発に巻き込まれ気を失い、気付くと今は街……ここは南部の街か?
となると雑貨屋やハロワとやらをあたるのが賢明か」
『何言ってるの? ここは北部の町よ』
「何……だと……!?」
『もしかして、放送があったことも覚えてないの?』
「放送……!?」
ここでようやくカン=ユーは、自分の意識の無い内にとんでもない旅をしていたことを知らされる。
カン=ユーの任務は、驚きと共に始まった。
「……目、ど、腕が、使えなぐでも……耳があれ、ば、インデックスの声は聞けるんだ……あぁあ゛っ」
その後ろで小さく恋が呟いた言葉をカン=ユーが聞き逃したのも、無理はない。
【1日目 午前/B-4】
【カン=ユー@装甲騎兵ボトムズ】
【服装】恋の服(軍服はどこかに干してある)
【状態】健康
【装備】モシン・ナガンM1891/30@現実、弾薬34発@現実、毒針の束@バジリスク
【持ち物】支給品一式、手榴弾2つ、トランシーバー@音無可憐さん、ランダム支給品0~2(確認済み)
、1080@シャーマンキング
【思考】基本:皆殺し
1:kskロワ住人、竜宮レナ、カンパネルラを探しだして殺す
2:今は仕方ないからタカネの下に付こう
3:キリコはなぶり殺しにする
【備考】
※記憶を失ってたことと放送があったことを知りました。
※恋から服を奪いました。
※元のカン=ユーに戻りました。
【恋@マルロワ】
【服装】カン=ユーのシャツが腰に巻いてあるだけ
【状態】両手重症、盲目、毒
【装備】なし
【持ち物】なし
【思考】
1:恋ってのは突然燃え上がる、そうだろ?
2:帰って禁書目録を聴く。絶対に。
【備考】
※もう半日も持ちません。
◆◆◆◆
(全く、ちょろいものね)
新しく手に入れた武器……七天七刀で試し切りをしながら、高嶺響は笑う。
二メートルを越える長刀は確かに恋のラブカスを捉え、真っ二つに引き裂いた。
切味は申し分無さそうだがいかんせん長い。基本は古青江で充分だろう。
そう判断し、響は七天七刀をデイパックにしまう。 デイパックの中も、恋から奪った武器でずいぶん増えた。
カン=ユーと分け合ったのは手榴弾くらいなもの。他はほぼ全て、響の手柄になった。
「さて、私もkskロワ住人達を探さなきゃ」
『そうか。では次の定時連絡まで、トランシーバーを切るぞ』
「ええ」
大きく背伸びをすると、響は歩き出す。
おもむろに、片手で七色スーツのポケットをまさぐり――何も、取り出さない。
(二発……少し七色光線を使いすぎたかしら。ちょっと疲れたわね)
さすがの響でも、銃弾は手じゃ取れない。
避けるか古青江で斬るかは出来たが、連弾を避けるために格の違いを見せる必要があった。
どんな技でも、時と場合と使いよう。
(さてと――何処へ行きましょうか?)
【一日目 午前/B-3】
【高嶺響@テラカオスバトルロワイアル】
【服装】七色スーツ
【状態】疲労(中)
【装備】古青江@School days
【持ち物】H&K XM8@現実と予備弾薬、手榴弾2つ、
七天七刀@とある魔術の禁書目録、テトリス携帯機@テトリス、
トランシーバー@音無可憐さん、基本支給品×4、武器ではないがロワで役に立ちそうなアイテム×2
【思考】
1:主催を殺して主催になる。
2:レナ、カンパネルラ、kskロワ住人を探し出して殺す。
3:ちょっとどこかで休もうかしら?
【備考】
※テトリスは100面までクリアするといいことがあるかもしれません。
※銃弾は七色光線で消した後、ポケットに入れる振りをしただけでした。
※ラブカス@ポケットモンスターは死亡しました。
&color(red){【ジャンプ(擬人化)@ジャンプ 死亡】}
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|[[B-5周辺顛末記]]|&color(red){ジャンプ(擬人化)}|&color(red){GAME OVER}|
|[[B-5周辺顛末記]]|カン=ユー|[[触れ得ざる声也]]|
|[[B-5周辺顛末記]]|恋|[[触れ得ざる声也]]|
|[[『戦いの詩』]]|高嶺響|[[触れ得ざる声也]]|
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