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*UNTOUCHABL ◆QkRJTXcpFI 風がビュッーっと吹いた。男の短い青い髪が揺れる。 男、キリコ=キュービィは、気がつくと古びた教会の祭壇の前で立ち尽くしていた。 ぐるりと頭を回し、教会の中を見渡す。 教会はもう使われなくなってずいぶん経つらしい。 床のタイルは剥がれ、参列者のための木の長椅子は所々腐って欠けている部分がある ものが大半だ。祭壇の両側に取り付けられているステンドグラスはいずれも割れており、 そこからは白い月の光が差し込んでいた。 「・・・・・・・」 一通り辺りを見渡した後、キリコは自分の足もとに眼を向けた。 そこには紺色のデイパックが置かれていた。自分たちにこの場所で 殺し合いをしろと言った男が言っていた物だろう。 キリコはしゃがむとデイパックを掴み、窓の外から見えないように 祭壇の裏へと移動し、しゃがみ込んだ。この教会の中にとりあえず人の気配はないが、 用心するにこしたことはない。 すでに人が一人死んでいる。何が起きてもおかしくはないのだ。 デイパックを開けると、中から出てきた物は恐らく普通に食べれば3日から4日、節約すれば一週間ほどもつであろう食料品、 飲料水のたぐい、メモ帳とボールペン、そしてコンパスと地図らしきもの、恐らくこの殺し合いの参加者の名を記したものだと 思われる名簿、 そして、一本のナイフと、一丁の拳銃、そして一丁の短機関銃だった。 とりあえず地図と名簿を足元に置き、武器の確認をする。 ナイフは戦闘用のものではなく、恐らく登山などに使うものだろう。 拳銃はリボルバーだが、キリコの知っているメーカーの物ではない。 短機関銃のほうは、もはや全く知らない形のものであった。 一緒にデイパックに入っていた説明書きによると、リボルバーの方は S&W M60、短機関銃の方はUZIというらしい。 説明書きによるとどちらも中々高性能な銃器らしいが、知らないメーカーの 製品であること、こんな愚にもつかない事に問答無用で人を巻きこむような男に 支給された物である。果たしてどこまで信用できるか・・・・ とりあえずUZIを付いていたスリングで肩にかけ、リボルバーをキリコが いつも着ており、今もやはり着ている耐圧服―AT乗り用の高性能パイロットスーツ―に 備え付けてあるホルスターにしまい、ナイフはデイパックに戻した。 ここで初めて地図と名簿に眼を通した。 地図を見る限り、ここは孤島らしい。自分がいるのはその北東の端、A-9地区だ。 それにしても・・・・ 無表情だったキリコが僅かに眉をひそめる。この地図には載っている島の施設には よくわからない物がいくつもある。そもそも首相官邸とはいったい何を意味しているのか? 考えれば考えるほどよくわからない。 考えてもせんなき事と、キリコは地図をしまい、名簿に眼を通した。 ずいぶんと人数が多い。100人近く、あるいはそれ以上はいるだろう。 その中に自分のしっている名前は・・・・いた。 いることにはいたが、それは意外な人物だった。 カン=ユー大尉。 以前クメン王国で傭兵をしていた時の上官だ。指揮官としては無能といってよかったが、ATの操縦はなかなかのものであり、 またゴキブリのようなしぶとさと、 ナメクジの様な粘着質の執念を持った男だった。 故あって彼がクメン政府傭兵部隊、アッセンブルEX-10と袂を分かった際は、 殺し合った仲でもある。 しかし・・・ 「なぜ・・奴が?」 そうカン=ユーは死んだはずだ。それも30年以上前に。 手を下したのはキリコではない。当時のキリコの戦友だったクエント人傭兵の ル=シャッコだ。確かにカン=ユーはシャッコの手により高所から投げ落とされ 炎の中に消えたはずだ。 (同姓同名の別人か?) その可能性もあるが、いずれにせよこちらから積極的関わるつもりはないので どうでもいいといえばどうでもいいことだ。もし本人ならば恐らく自分を恨んでいる。 ほっておいてもあちらから来るだろう。 キリコは地図と名簿をデイパックにしまうと、 デイパックを背負いは教会の入口へと歩き始めた。 目指すのはこの島の都市部である。そこへ海岸線沿い向うつもりだ。 恐らく都市部には人が集まるだろう。 この殺し合いに乗った人間も、そうでない人間も。 キリコはこのゲームに乗るつもりは鼻から無い。むしろ積極的それを壊しに かかるつもりなのだ。 それは“人を殺すのは良くない”といったような道徳や善意によるものでない。 キリコは元少年兵の傭兵であり、ボトムズ(最低野郎)であり、 味方にすら恐れられた“吸血部隊”レッドショルダーの生き残りなのだ。 今更人殺しを躊躇するような人間ではない。 では何故乗らないか。それは彼の心の奥底宿る物。支配と抑圧に対する野獣のような 反骨心によるものである。それゆえに彼はかつて“神”すら殺したのだ。 そのキリコがただの人に従う道理がどこにあるだろう。 キリコの当面の目的は、ゲームに乗っていない人間に接触し情報得ることである。 そのためには人の多い所に向かうのがてっとり早い。 何事を為すにも今は情報があまりに少ない。 まず情報収集を最優先にするつもりだ。 殺し合いに乗った人間には・・できるだけ接触を避け、たとえ見つかっても逃げるつもりだ。 無論いざとなれば容赦はしない。 「神にだって・・・俺は従わない」 そう言ってキリコは教会の門を潜った。 【A-9:一日目 深夜】 【キリコ=キュービィ@装甲騎兵ボトムズ】 【服装】: AT耐圧服@装甲騎兵ボトムズ 【状態】:健康 【装備】:S&W M60@現実(弾丸は全部で24発)、 UZIサブマシンガン@現実(マガジンの数は全部で4つ) 【持ち物】:登山ナイフ(支給品はすべて確認済)、基本支給品 【思考】 1:神にだって俺は従わない 2:都市部へと向かい、情報収集を行う。 3:カン=ユーが少し気になる [備考] ※ 「赫奕たる異端」終了後からの参戦です ※ 異能生存体としての能力は制限されています。 肉体の再生能力は常人よりも少し上な程度、 彼の身を守る「幸運」は本来の半分程度です。 しかし、コンピューターへの高い適応能力、 AT操縦技術は制限されません。 なお、キリコは首輪による制限に気付いていません。 ところでキリコが教会の門をくぐったちょうど同じ時間・・ 「うぉーっ・・・・わっぷ・・・わっぷ・・・ヒィィィィィツ」 カン=ユー大尉は湖で溺れていた。 【H-7:深夜 一日目】 【カン=ユー@装甲騎兵ボトムズ】 【服装】:軍服 【状態】:健康、湖で溺れている 【装備】:不明 【持ち物】:不明 【思考】 1:あっぷ、あっぷ・・とにかく岸にたどり着く。 *時系列順で読む Back:[[OP(あたし彼女ver)]] Next:[[飛蝗と少女]] *投下順で読む Back:[[OP(あたし彼女ver)]] Next:[[飛蝗と少女]] ||キリコ=キュービィ|[[]]| ||カン=ユー|[[]]|
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