そして
ピキピキ カキィィイン
強烈な破砕音と共に茶々丸のボディが文字通り粉砕する。
かろうじて頭部、脚部は無事であるが胴体部――とくにロケットバーニアの周辺の破損は著しいものだった。
ゴン カラン カラン カラン
ほんの数秒前までは人の形を保っていた茶々丸の頭は胴体がなくなると謎の圧力から開放され、
それに伴い体という支えを失ったことによって万有引力―――所謂『重力』によって地面へと墜とされ金属製の落下音を出した。
「茶々丸ッ!」
その光景を見た主は居ても立ってもいられなくなり茶々丸がそうなった原因へと走り出した。
その手にはありったけの魔法薬。
「貴様、喰らえッ!『氷爆!!』」
エヴァンジェリンの言葉と共に魔法薬が、冷気が、氷が、対象の目の前の空間が跳ぜる。
一瞬で爆発は冷気の嵐をあたりに充満させ、周囲の雨を氷雨へと変化させる。
ミシミシ ギギィィイ
そして肝心の対象をも凍らせた。
「貴様はそうして頭でも冷やしていろ。氷の中で」
そういい放ち茶々丸の頭部へと駆け出すエヴァンジェリン。
だが彼女は気がついた。
『氷爆』は相手を氷に閉じ込める技でない、ということに。
ミシミシ ベギィィイ
「なっ………!?」
エヴァンジェリンは震撼していた。彼女は数多くの魔法使いを目にしてきた多くの体験をしてきた、様々な人間、様々な魔法の使い方、破り方を目にしてきた。
だが、冷気を付与した爆発の魔法で対象の体を氷に閉じ込めることは初めてだった。
障壁で防いだならともかく体を冷気と爆発に被われ凍りつきながら、衣服にも傷を負わずに氷を破壊して出でてくる魔法使いを目にすることは一度としてなかった。
目の前のレインコートの存在は完全に彼女の常識を超えていた。
「ならばッ!『氷結 武装解除』」
次に放られた魔法薬と呪文。それレインコートの者の前で弾けるが――
ーーイイィィィン!!
――ソイツを少し押しやったものの、やはり期待通りの効果も示さなかった。
正しく呪文も唱えられたし、魔法も使われ、魔法薬も消費された。
だが―――だが、レインコートは砕けなかった。
まるで鉄か何かのようにレインコートは固定され罅すら入らなかったのだ。
「一体、一体貴様は何者なのだッ!?」
エヴァンジェリンの問いかけにレインコートは反応を示さない。
だが、ただ一言だけエヴァンジェリンへの死刑宣告を呟いた。
ピチャッ バチャッ ビタビタビタ
レインコートが手を横になぐと、手の軌跡に従って雨が固まり、鋭い割れたガラスのような刃を形成する。
そして、レインコートはそれを手に取り振りかぶりエヴァンジェリン目掛けて手放した。
ヒョォォオゥゥン!
鋭利な刃物となった水が空を切り、エヴァンジェリン目掛けて殺到する。
最終更新:2007年01月17日 19:03