第14章『あないたちの夜』 蚊山「いや~いい雪やったあ!」 蚊山さんの怒りは頂点に達していた。 男「これはこれは蚊山様。お約束通りに今こやつを屠らんとしてるところでございます」 蚊山「じゃかぁしいわ、このドアホッ!今日の終値はいくらかと聞いとるんじゃボケェッ!」 山澤「…オ…オワリネ……(カヤマ…そしてあの風貌…どこかで…)」 蚊山「なにしとんのや。わしはそんな事指示した覚えはないでえ。今日はカヤマックス社の記念パーチーやからな、物騒な事はせんでええ」 男「はっ…」 蚊山「さて、あとは二木本さんだけや。彼は遅れる連絡あったから先に始めるか」 粉林「貴様ら全員表出ろやっ!」 蚊山「んじゃわれぇっ!?」 男「か、蚊山様!こちらはホニョリ鉄工の御曹司である粉林様であります」 蚊山「じゃかあしいわこのドアホッ!わしの館でどでかい口聞くやつは…」 気がつくと全員表に出ていた。 蚊山「わしの大車輪をお見舞いしたる…!」 男「おや、もうこんな時間。ささ、館に戻って…グウェッへッへッ」 急に男の様相が不気味にすら思えて来た。 空はすっかり暗くなり、未だ到着していない二木本さんを除いて全員がペンションに戻った。 盗流(とおる)「魔裏(まり)、あの不気味な人は誰だろう…?」 蚊山「ああ…あいつはな、うちの社員や。見た目はアントニオ猪木系だがああ見えて気さくな小猪木だったりもすんねや」 男(小猪木)「ッシャア!元気があればッシャア!…ん?」 盜流「おや?」 蚊山「むむ?」 皆がロビーとそのまま繋がっている怪しい部屋から出ると、1階の広間に数人が集まり、騒いでいた。 盗流「いったい何があったんですか?図書(としお)さん?」 図書「カマ子ちゃん達の部屋にこんなものが…」 そういうと図書さんは魔裏に紙を差し出した。紙には何やらワープロで打ったような一行の文が書かれていた。 『コンヤガヤマダ』 一同「今夜…が…山田!?」 図書「みどりぃぃぃッ!!」 図書はそのまま外へ駆け出して行った。 カマ子「どんだけぇ~」 すると蚊山が更にもう一枚の紙切れがあることに気付いた。 『こんや 12じ だれかが タヒぬ』 一同「…タヒぬ!?」 粉林「…タヒぬ…何だかわからんが誰がこんな事を…。」 パルコ「何か意味があるのかしら…」 しばらくの静寂が訪れた後、その空気を振り払うかのように蚊山さんが話しだした。 蚊山「き…きっといたずらや。わざわさこんなペンションに来てこんな事する意味があらへん」 確かにその通りだが気味が悪いのも確かだった。 せっかくのパーチー気分がすっかり冷えてしまった。 ???「やあ!」 その時だった。 なんと仕事で遅れて来た二木本さんだ。 二木本「楽しくやってるかい?いや~、すっかり遅れてしまって申し訳ない」 激しくKYな二木本さんは、蚊山さんのカウンター地獄車であえなくおだぶつとなった。 二本木「ぐ…ぐふっ…。か、蚊山…さん…な、なにを……」 いきなり瀕死の状態になった二本木だったが、誰も助けようとはしなかった。そんな状況に耐えられなくなったのがパルコだった。 パルコ「な、なぜです!?どうして誰も助けようとしないの!?」 パルコは周りを激しく非難しながら二本木に近づき手を差し延べた。 パルコ「さぁ、つかまって」 二本木「わ、わりぃ…」 二本木がパルコの手を掴んだ…と思った矢先のことであった。 パルコ「ニヤッ」 その瞬間、二本木は蚊山邸の天井を突き破り、空に投げ出されつつも空中で踏み止まった。 パルコ「!」 蚊山「ぶ、舞空術!?」 二木本(…ニヤッ) 盗流「…なんというトリックだ…」 魔裏「トリック何回じゃないわ…スーパーイリュージョンよ」 粉林「スーパー…あのコーラをイッキ飲みして…ってやつか!?」 魔裏「それは違うわ、オッス、オラ悟空!、の方よ」 盗流「(パンパン)…おめぇ、女だなっ!」 盗流はどさくさに魔裏にパンパンしていた。 魔裏「そうそう、その悟空よ……ってこの変態っ!!(ゴキッ)」 魔裏の鉄拳が盗流の顔面にヒットした。 蚊山「ゴキッて……ちょっと盗流君、大丈夫か!?」 粉林が盗流の目を開け、ペンライトでパチパチしているうちに午前1時を回っていた。 蚊山「いつの間にかこんな時間になってもうたんやな」 そう、謎の手紙が示唆していた時刻は過ぎていた。フロアには全員揃っているが何も起きていない。やはりただのイタズラだったに違いない。ましてや誰かがタヒぬなんて…。 誰もがそう思い始めていた、その時だった。 ???(ぐわあぁぁぁぁ!!) 全員「!」 2階からだった。男の太い声で、悲鳴であることに疑いの余地はなかった。 二木本「に、2階で何が…!!」 山口「蚊山さん、ここに全員いることは本当に間違いないんでしょうか?」 蚊山「そのはずだが…そうだ、携帯電話があったんや!」 図書「それが一体なんだと…?」 蚊山「ガビーン」 蚊山はビビッて正常な判断が出来ていなかった事に気付き、一方で粉林が蚊山の方を向き、悲しみの表情を浮かべながら首を横に振っているのにも気が付いた。 図書「ちょっ、ちょっと待て!と、盗流くんがタヒってるじゃねぇか……!?」 全員「………」 一同は言葉もなく、盗流の骸を茫然と見つめていた。 ???(ぐわあぁぁぁぁ!!) また2階からあの叫び声だ。 蚊山「と…とりあえず上の声の方も確認せな…気味悪いでえ」 山口「何人かでチームを組んで確認しに行きましょう。何があるかわかりませんから」 山澤「俺も行こう」 蚊山「で…ではわしも」 粉林「3人いれば十分でしょう。私たちはここに残る。」 …10分後、3人は2階のある個室の前に立っていた。一番奥に位置する部屋だ。 山口「他の部屋は全て調べ終わった。なにかあるとすれば後はここしかないな…」 蚊山「今回のパーチーではこの部屋は誰も使ってないはずや」 山澤「よし…せーのであけるぞ。」 念のため山澤、山口、蚊山の3人はそれぞれモップ、ほうき、鉄木魚を手に握りしめた。それらに加えて蚊山は般若の面と踊り子の服を身に付け万全を期していた。 山口「せーのっ」 ドアを開けると3人は同時にそれぞれ手に持っているものを構えようとしたが、その瞬間異変に気付き、顔を見合わせた。 …部屋からは形容しがたい異臭が漂ってきた。 蚊山「さ、先に入ってもらえんか…」 弱気になった蚊山の代わりに山口が先頭を切って中に入る。部屋に置かれたベッドの奥にそれはあった。 山澤「…!」 蚊山「…あ…阿南さんや!?何故こんなとこに阿南さんが!?」 阿南という男、いや、阿南という男だったものは尻が ---- ここまで364