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バトロワ的ロードショー ダーティ アンジュ◆fCxh.mI40k


 舞台の時間は深夜0時過ぎ。良い子は既に眠っている時間だ。
 なら今回の出演者の少女は全員悪い子? 答えはノー!
 なぜなら今宵はバトルロワイアルの開幕日。
 そして今回紹介するのは二人の激突。ぶつかり合うはどちらもともに見目麗しい美少女。
 さてさて、勝負の行方は? そして結末や…………いかに!!

「殺さなくちゃ。生き残らないと。絶対に死ねない」

 黒髪の美少女渋谷凛
 彼女は両手で拳銃のグリップを強く握り締めている。
 銃はトカレフ。ロシア製で日本でも裏社会ではお馴染みになっている銃の一つだ。
 しかし、渋谷凛は表の世界で生きる華やかなアイドルである。
 スカウトで入り、トントン拍子にデビューを果たした云わばエリートアイドルの道を歩く彼女は、裏世界には無縁だ。
 また女優業も特別やっているわけでもない彼女は、銃の握り方も知らない。
 テレビで何度か見た程度の知識でしかない以上、握り方はぎこちないものだ。
 映画で女スパイでも演じる機会があれば、何か違ったかもしれないが、今更それを言うのも意味が無い。
 現状の武器で戦うしかないのだから。
 そしてそれは全参加者同じ条件。フラットスタートなのだから不満を言う余地もない。
 だがそれでもまだ、渋谷凛は運という点では相当に恵まれているようだった。

「いた。……とにかく殺さないと……一人しか生き残れないんだ……」

 何故なら彼女は先に敵を見つけたのだから。
 その相手は綺麗な金髪が特徴的な女性だった。髪の輝き具合からして染髪でなく、地毛なのは明らかだ。
 最も髪が染髪か地毛かはあまりここでは関係は無い。
 凛にとって幸運なことは相手はまだ自分に気付いてはいないという点である。
 そして自分の手には銃がある。
 これで狙撃を行えば、相手の反撃に合うリスクはない。
 しかも遺体を見ることも無い。
 精神衛生上を考えても、ここでファーストキルでスタートを切れることは渋谷凛にとっては幸運なものだ。
 上手くすれば相手の武器も奪い、装備の追加も図れるだけにここでの一撃は非常に大きい。

―よく狙って……落ち着いて。……時間はある。確か狙うのは胴体……大丈夫! 絶対っ………―

「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」

 自然と息遣いも荒い物となる。
 初めての殺しを前に精神状態はかなり不安定になりつつあった。
 胸の動悸も異常なレベルにまで跳ね上がっている。
 全身を冷や汗が流れ、足は震えが止まらない。腕や手も震えが伝染し、狙いは酷くぶれている。
 もはや狙撃を行うのは不可能だった。
 前言撤退即時撤収。の八文字の言葉を実行した方がベターかもしれない。
 コンディション不良な状態での強行狙撃はこの距離では失敗リスクの方が高すぎる。
 しかし渋谷凛はあくまでも荒事に関してはトコトンに素人だ。
 そして悪い事に、変な所で意地を張るところがあったのだ。

「んっ!」

 闇夜に銃声が轟いた。
 それは金髪女性とは程遠いあさっての方向へと跳んでいった。
 そして当然の如く金髪女性は狙撃手の存在に気付く。

「あっ、しまっ!」

 凛は狙撃失敗の後悔が頭を駆け巡るが、それよりも早く金髪女性は振り返る。

「驚いたわね。まさかいきなり撃ってくるなんて……あんたまさかあんなイカレ男の口車に乗っちゃったわけ?
 ……正気を疑うわ」

 金髪女性は口で言うより驚いていなかった。
 むしろ相手への呆れの割合の方が強い。
 何故なら彼女はアンジュ。いくつもの死線を潜り抜けた激戦の猛者だ。
 そして彼女はその鋭い眼光一つですら、凛を威圧するには十分すぎた。

「だっ、だって……そうしないと死ぬって……わたしあんな風に首が飛ぶなんて……」
「はあっ! あんたまさかそれでもう『殺すしかないぃぃぃ』って私を撃ったっての? バカねっ!ほんとにバカ!」

 アンジュは相手のあまりの短絡思考に更にガッカリしたという姿勢を見せる。
 しかしその態度には今度は凛も反論する。

「だって助かるの一人なんだよ! それでどうすんのさ! 黙って死ぬのを待つなんてできるわけ……」
「誰もそんなこといってないわよ。ただ」
「わたしは死にたくないのっ!」

 アンジュの言葉を遮り、凛は二発目を撃つ。
 いきなりの発砲。
 しかしそれもアンジュのはるか頭上を通過する。

「そっ、そんな……」
「話は聞きなさいって言ってるでしょ!」

 今度はアンジュがデイバックから銃を抜き、凛へとむけて撃つ。
 アンジュの銃はS&W M29。44.マグナムの通称を持つ世界一強力な銃の一つだ。
 その銃声は非常に強く、迫力だけでも相手を威圧するには十分すぎる。
 そしてその弾丸は凛を足元へと撃たれた。

「きゃっ!」

 凛は可愛い悲鳴を上げて倒れる。
 思わず銃を放し、デイバックも床に落とし、腰が抜けたような姿勢になる。
 しかしアンジュは構わず二発目三発目……と連続で銃弾を放つ。
 そして全ての銃弾は凛の顔や手や足スレスレを通過していった。

「落ち着いた?」
「いっ、いや……」

 凛は焦って、落とした銃を拾おうとする。
 けれどアンジュはそれより早く凛に詰め寄り、顔へと銃口を向けた。

「もし銃を拾おうとしたら私があなたを撃つわよ」
「いっいや……」
「……あっ、でも……ヤバイわね。実はさっき何度撃ったか覚えてないのよ」
「えっ……」
「確かこれ……6発入りだったわよね。だけどさっき調子乗っちゃったから6発撃ったかまだ5発か……」
「……ひっ……」
「もし弾切れならさすがにあたしの方がヤバイわね。でもまだ入ってたら、……説明書だと世界一強力な銃ってあったから、
 この距離なら顔無くなるんじゃないの? さっきの男の子より酷いことになりそう。……でっ、試す?」
「いっ、いやああぁぁぁぁっっっ!!!」

 凛は泣き出してしまう。
 顔を両手で覆い、赤ん坊のように泣き続ける。
 下半身からは別の液体があふれ出て、スカートや下着を濡らすがそれに構う様子も無かった。
 そしてその様子にはアンジュは再度溜息をつく。

「意気地ないわね。じゃ、これは貰ってくわね。それと、これも……」

 そしてアンジュは凛のトカレフを拾うと自分のバッグに入れる。
 更にバッグの予備マガジンも自身のバッグに移すと、自分の銃のシリンダーから空薬莢を『6個』取り出す。
 そして予備弾を新たに込める。
 その様子に少し落ち着きを取り戻し始めた凛は思わず声を掛けた。

「あの、私の銃……」
「あんたが持っても無駄でしょ。どうせまともに撃てないんだし」
「でも……」
「ところであんた、他に仲間居ないの? 知り合いとか一人も?」
「えっ?」
「私は居るわよ、何人かね。だからあんなのの言いなりにならないわ。絶対にね」
「っ!」

 アンジュの言葉に凛は名簿を確認する。
 するとそこには、


 自分の見知った名前が四つもあったのだ。

「……わたし……ここに一人じゃなかったんだ。みんないる。みんな……」
「そっ、じゃあ私は行くわよ」

 凛が安堵の涙を流すが、それを無視してアンジュは歩きだす。
 そしてそれに凛が思わず声を挙げた。

「まっ、待ってよ。わたし武器無い。それにまだ……」
「何よ、一緒に行きたいの?」
「だって、一人じゃ…………そい」
「なんて?」
「心細いのっ!、それにちょっと……」
「……まだ歩けないの? ちょっと銃で脅しただけじゃない」
「そうじゃない! 歩けるけど……」

 凛は立てない理由があった。
 それは先ほどのトラブルでスカートを濡らしてしまったからだ。
 今立てば、非常に恥ずかしい事になる。
 いつまでもこの体勢ではいられない事は分かっていたが、それでも年頃のクールな少女がこの痴態を
 白日の下に晒すのは躊躇われた。
 しかし、アンジュはその繊細な心の機微を無視して一歩踏み込む。

「まさか濡らしたから立てないとか? くっだらないわね。さっさと行くわよ」
「でもっ」
「うっさいわね。ほらっ、温泉で色々流しなさい。私もゆっくりしたいし」
「……はい」
「早く来なさい。置いてくわよ!」

 アンジュは早足で歩き出し、それに着いていくように凛も後ろをついていく。
 美少女二人の珍道中はまだ始まったばかり!


【G-5 路上 /1日目/深夜】


【アンジュ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:健康
[装備]:S&W M29(6/6)@現実
[道具]:デイパック×2、基本支給品×2、S&W M29の予備弾54@現実 トカレフTT-33(6/8)@現実 
 トカレフTT-33の予備マガジン×4 不明支給品0~1
[思考]
基本:主催の広川をぶっ飛ばす
1:とりあえず温泉に行く
2:モモカやタスク達を探す。

[備考]
登場時期は最終回エンブリヲを倒した直後辺り。



【渋谷凛@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:精神的疲労大
[装備]:スカートのショーツが激しく濡れている。
[道具]:なし
[思考]
基本:生きて帰りたい。
1:温泉で身体を洗いたい
2:卯月やプロデューサー達を探す。

[備考]
登場時期は最終回のコンサート終了後

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GAME START 渋谷凛 033:神の発情
アンジュ
最終更新:2015年05月31日 21:53