003
世界の合い言葉は森◆fuYuujilTw
「なんなのよ一体……、意味わかんない……」
先ほどの惨劇にも関わらず、
西木野真姫は妙に落ち着いていた。
それは日常とあまりにもかけ離れていたからかもしれない。
殺し合い。冗談でもなければ、いや、冗談でも一生口にすることはないであろうその言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
あの男、広川と名乗った男は言った。
最後の1人になった者を元の世界に帰し、いかなる望みでも一つだけ叶えると。
あの男の言葉に従うことを一瞬でも頭に浮かべてしまった、つい先ほどの自分をひどく嫌悪してしまう。
私は医師を志している。人の命を奪うなどと考えてよいはずがない。
支給されたデイバックの中を確認する。
小型の機械に説明書、食料、それとお菓子にジッポライター。
どうやら外れらしい。
気を取り直し、機械の説明書を確認する。一通りの機能は備わっているようだ。
名簿を確認したところ、同じμ'sのメンバーである同級生と2年生の名前が記載されている。
ひとまずは彼女たちと合流するべきであろう。
幸いなことに、3年生はこの狂った催しに参加させられてはいないようだ。
ふと暗闇に気配を感じた。
「誰だ」
背筋が凍る。気付かれた? 殺される。逃げなくては。足が動かない。
今まで心の奥で張りつめていたものがぷつんと切れる。
感じたことのない恐怖が堰を切ったように襲いかかった。その場にへたれこむ。
目をぎゅっとつぶる。足音がゆっくりと近づいて来て、止まった。
ああ、殺されるんだ。
「安心しなさい。危害を加えるつもりはない」
次の瞬間襲い来ると思った痛みがやってこないのを確かめると、恐る恐る目を開けた。
若い女性。デイパックの他には何も持っていない。
「疑っている?」
そう言って女性はデイパックを投げ捨てた。
いや、まだ何か持っているのかもしれない。
依然恐怖の混じった目で女性を見上げる。
女性はかがみ込んで、真姫と目線を同じくした。
「…………」
「一ついいことを教えてあげる。
私はあの広川剛志という男のことを知っているわ」
必死に頭を働かす。
この人が殺し合いに乗っているのであれば、こんなことを言うだろうか?
いや、そもそも自分はこんなことを考えていることも出来ないはずだ。
なんとか声を絞り出す。
「わ、私は、乗ってません……」
「そうでしょうね。攻撃するのであれば、いくらでも出来たはず」
気のこもらない調子で女性は言った。
「私の名前は
田村玲子」
「に、に、西木野……真姫……」
「西木野真姫さんね。よろしく」
田村玲子と名乗った女性は手を差し出した。真姫は手をじっと見つめる。
数秒ほどであったが、途方もなく長い時間のように思われた。
恐る恐る手をとり、ゆっくりと立ち上がる。
「私も安心したわ。初めて出会う人間があの男の言うことに素直な人間だったら面倒だから」
無機質な声。冷えた金属を当てられたような感覚が走る。
「……あの男のことを知っているんですか」
「ええ」
「じゃあ、なんでこんなひどいことを!」
田村玲子はゆっくりと口を開いた。
「私にも分からないわね。そもそも、広川は一都市の市長に過ぎない。こんなたいそれたことを実行に移すだけの力はないわ」
「知り合いの方とかは? もしその人が……」
「その”人”か。答えはYesでありNoね」
かすかに田村玲子が笑ったように思われた。
真姫にはよく分からなかった。
そんな危険な人をなぜ知っているのか、と口から出かけた。
しかし、今頼れるのはこの人しかいないのも事実だった。
自分は弱い。運動も苦手だ。実際の殺し合いに巻き込まれたとしたら、真っ先に死ぬであろう。
死ぬ。日常生活では考えもしなかったその二文字が頭の中を駆ける。
一筋の涙が頬を伝った。
「…………お願い。助けて……」
「……分かった。あなたの知り合いは?」
「覚えておくわ。会えるといいわね」
どこか冷たさも感じるその言葉が真姫を強めるのだった。
思わず田村にしがみつく。
「ごめんなさい……怖い……」
真姫をぎこちなく撫でてやる。
(やはり不思議だ……。人間にとっての我々、我々にとっての人間。
私の考えた通り、1つの家族のようなものなのだろうか)
田村には赤ん坊を銃撃から守った記憶が思い返された。
「私の支給品はこれだけど、何かあったときのためにあなたが持っておいた方がいいわ」
真姫に金属バットを渡す。
丸腰でこの人は大丈夫なのだろうかと真姫は思った。
しかし扱い慣れていないものだとはいえ、武器があるのは心強い。
……使うことがなければ良いのだが。
「西木野さん。どんなつまらないことでもいいから、気付いたことを教えてくれるかしら」
真姫は少し考え、言葉を紡ぐ。
「えっと……広川はよく分からないことを言っていた……。超能力、魔法、スタンド、錬金術……それと……」
あの男性の首が飛ぶ瞬間のことが思い出され、思わず吐き気がこみ上げる。
「ええっと……あの死んだ男の人は、『イマジンブレイカー』と呼ばれていた……それと学園都市とか」
「私もそれらの言葉に覚えはないわ」
「まるで映画や小説みたい。ところでさっき、田村さんは広川が市長だと言いましたけど、いくら市長とはいえ警察が黙っているでしょうか?」
「警察ねぇ……」
確かに警察という組織は我々が考える以上に盤石で優秀だ。人間はパラサイトよりもずっと個々の性質が異なっているにも関わらず。
事実、あの刑事は私がパラサイトであることを見抜き、他の警察官と協力して私を射殺することに成功した。
広川。パラサイトを生物全体の害たる人間の天敵と考えた人間。
私には理解に苦しむものであるが、利害が一致したことからその考えを利用させてもらった。
仮に広川のような人間が力を持ったとしたら、この厄介な組織の手の届かない場所で「食堂」を運営するはずだ。
だが一都市の市長にすぎない広川が、警察の目をかいくぐってここまで多くの人間を集め、強制することができるとは考えにくい。
強大な権力をもった協力者がいると考えるのが自然だろう。広川は「われわれ」と言っていた。二人以上であるのは確かだ。
分からないのは、なぜ「殺し合い」なのかという点だ。私が知りうる中で、食事のためでもなく殺し合うのは確かに人間だけだ。
しかし人間とて意味もない殺し合いをするはずもない。そこには必ず何らかの目的がある。
考えられることの一つは協力者との利害の一致。さながらパラサイトと広川のように。
例えば協力者は娯楽のため。広川は人間の殲滅のため。二者の目的は異なるといえども、殺し合いならば手段を同じくできる。
他にも不可解な点はある。首輪が接触している部分の肉体を変形させることができないのだ。
また一番最初、あの部屋に連れてこられたときも、私は少しも動くことが出来なかった。
何らかの高度な技術を持っていると考えるのが妥当だろう。
それ以上に不可解なのは、確かに一度死んだはずの私がなぜこうして生きているのかということ。
まさか死者を蘇らせるなどということが出来るはずがない。
いや、広川はなんと言ったか。
最後の一名となった者は、いかなる望みでも、死んだ者を蘇らせることでも叶えると言った。
本当に広川は死者の蘇生などという、自然の条理に反したことを行えるのだろうか?
それは私自身が一番よく分かっていることだ。
死んだことが夢でなければ、広川、もしくは協力者はそのようなことを行えると考えざるを得ない。
無論、彼女には自分の正体も含め、詳しく話すつもりはまだない。
「どうしたんです?考え込んで」
「いや、なんでも。しかしあの広川の態度を見ると、待っていれば警察が助けに来るとは考えにくいんじゃないかしら」
「…………」
西木野真姫もそのことは薄々と分かっていたのだろう。
「μ'sは……知らないですか」
「初耳ね」
「私は東京の音ノ木坂学院に通っているんですが、学校の仲間とμ'sというスクールアイドルのユニットを組んでいるんです。
私たち、全国大会の『ラブライブ!』で優勝したんですよ!」
真姫の顔が幾分かやわらいだ。都会の学校は随分と華やかなものだと田村は思った。
”田宮良子”であったころは、学校でそのような話題を聞くことはなかった。
「ところで西木野さん。私たちはこれからどうするのがいいと思う?」
西木野真姫は少し考え、口を開いた。
「まずは殺し合いに乗っていない人を探しましょう」
「そうね……」
そうはいったものの、田村玲子には不安もあった。
人間同士で殺し合いはしなくとも、パラサイト相手になら容赦をしない人間も多いのではないか。
西木野真姫も、自分の正体を知ったらどのような反応を示すかは未知数だ。
しかし、表立って反対するわけにもいかない。彼女に怪しまれるだけだ。
首輪を外せる人間でも見つかればいいのだが、おそらく望みは薄いだろう。
(広川、お前が何を考えているのか知らないが、私とてむざむざ殺されるつもりはない)
田村の表情が変わったのが真姫には分かった。
肉食獣のような目だと思った。
なぜだか分からないが僅かな震えがこみ上げてくるのを感じた。
【G-4/(東)/1日目/深夜】
【西木野真姫@ラブライブ!】
[状態]:健康
[装備]:金属バット@とある科学の超電磁砲
[道具]:デイパック、基本支給品、マカロン@アイドルマスター シンデレラガールズ、ジッポライター@現実
[思考]
基本:誰も殺したくない。ゲームからの脱出。
1:脱出の道を探る。
2:田村玲子と協力する。
3:μ'sのメンバーを探す。
4:ゲームに乗っていない人を探す。
[備考]
- アニメ第二期終了後から参戦。
- 泉新一と後藤が田村玲子の知り合いであり、後藤が危険であると認識しました。
【田村玲子@寄生獣 セイの格率】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品
[思考]
基本:基本的に人は殺さない。ただし攻撃を受けたときはこの限りではない。
1:脱出の道を探る。
2:西木野真姫を観察する。
3:人間とパラサイトとの関係をより深く探る。
4:ゲームに乗っていない人間を探す。
[備考]
- アニメ第18話終了以降から参戦。
- μ'sについての知識を得ました。
- 首輪と接触している部分は肉体を変形させることが出来ません。
- 広川に協力者がいると考えています。
- 広川または協力者は死者を生き返らせる力を持っているのではないかと疑っています。
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最終更新:2015年06月06日 21:56