オープニング -開演-  ◆MAKO.0z9p.



”――勝ちもせず生きようとすることがそもそも論外なのだ”


 ■


重く沈みこむ意識の中に波のような音が少し、少しずつと届いてくる。
まどろみの身を揺り起こす為にか、それは少しずつ大きく確かな音へと変化し意識を叩く。
簡単な言葉にすれば”ざわ……ざわ……”。少し難しく言えばとらえどころのない猥雑な音の波というそれ。
頭の中を虫が這うようなその感触に、こらえきれないといった感じにか少女は覚醒し愛らしい目を静かに開いた。



どことも知れぬ暗闇の中で少女――原村和(はらむらのどか)は眠りの中から目を覚ました。
セーラー服の中を少女らしからぬ魅惑で満たす彼女はぼうっとした顔で周りを見渡し、少ししてそこが寝所でないと気付く。

「(これは……、いったい……?)」

彼女は実に少女らしく暗闇が得意でない。
故にその心中を侵してゆくのは恐怖であるが、さりとて微睡に逃げるには床は固く、半ば諦め気味に彼女は周囲を推し量る。
しかし、手を伸ばせばもうその先は確かでないという暗さの中に得られるものは無く、あるのは耳に届くざわざわという音だけ。

だれか――と、声を出す勇気は彼女にはなかった。
自分の他にも多数の人がいるのだろうということは気配で分かる。
声をかけてみればなにか分かるかもしれないということも理解しているのだが、しかし暗闇に呼びかけることはできなかった。
聞こえてくる音の中には少年少女の声といったものだけではなく、
狂気を孕んだ笑い声や獣の唸り声のような得体の知れないものまで混ざっていたのだから。

ざわ……ざわ……と、寄せては返す猥雑な音の波。
しばらくの間、深い狂気の海底で和は膝を抱えて黙することしかできなかった。



それからどれほどの時間が経っただろうか。
長く感じたのは恐怖のせいで、おそらくは僅かの後、唐突に、刺すような真っ白い照明の光が暗闇の中に灯った。

「んっ……!」

強い刺激に和の口から小さい悲鳴が漏れる。
目を強く瞑り涙を拭いそしてまた開いた時、その視線の先にあったのは彼女の見知らぬひとりの壮年の男性の姿だった。
自分達が座している床の上よりかはひとつ壇の上、スポットライトの下に立つスーツ姿の男性はぐるりとこちらを睥睨する。
それはまるでこちら側を値踏みしているような、そんな薄ら寒いものが心に浮かぶそんな眼差しだった。

「――原村さんっ!」

かけられた声にハッと振り返る。
すぐ後ろに同じ麻雀部の部員であり親しくしている少女――宮永咲(みやながさき)の姿があった。

「宮永さん。いったいどうしてここに?」
「わかんない。でも原村さんだって――きゃっ!?」

気付けば、原村和は同じセーラー服に身を包んだ彼女の身体をぎゅうと抱きしめていた。
背中に回した腕から感じる細い身体の感触も、顔をうずめた髪からの香りも、耳朶をくすぐる吐息もよく知るもので、
そのあたたかさに心の中の不安が解けてゆくのが感じられる。
意味不明な状況だというのは変わらないのに、彼女がすぐ傍にいるという事実が自分に力を与えると、それが再確認できた。

「――皆さん。私の話をお聞きください」

丁寧な声に和は彼女と一緒に壇上へと振り返る。
そうしていればまるでどこかの校長先生の風だといった男性は、その通りになにかを話し、おそらくは説明してくれるらしい。
いつもどおりの理性を取り戻し、この状況を理解しようと和はその声へと耳を傾けた。


 ■


「はじめまして皆さん。今回の催しのオープニングの進行役を務めさせてもらいます利根川幸雄です」

そんなありがちな挨拶から男――利根川幸雄(とねがわゆきお)は話を始め、丁寧に一礼した。
壇上からの明かりで真っ暗から薄暗がり程度には見渡せるようになった一室の中は、先ほどとは逆にしんと静まり返っている。
和も、その手を強く握る咲も、周りの誰もが彼の一言一句を聞き逃すまいと舞台へと集中していた。

「まずは皆様方をここへと無理に招待したこと……言葉を濁さすに言えば拉致したということに対し謝罪いたします」

言って、利根川は再び頭を下げる。
しんとしていた人の波がにわかにざわついた。
無論、現状を少しでも認識していればそういう発想が出てくるのは当然だったが、いざ言葉にされると動揺してしまう。
拉致――そこから続く言葉やイメージによい印象を持っている者などいないからだ。

「どうか落ち着いて私の話を聞いてください。
 今回お集まりになっていただいたのはとある”ゲーム”をしていただく為であり、
 それをクリアしていただければ、……クリアしただけに限りではありますが、無事にお帰しいたします」

ゲームと聞いて何人かが、そして和がピクリと反応した。
穏やかな状況ではないが興味をそそる単語だ。
もしそのゲームとやらが麻雀やそれに類するものだというなら自分や咲がここにいるのも理解できると、そう彼女は思った。

「その”種目(ゲーム)”の名前は――バトルロワイアル」

聞き覚えのない言葉に和はきょとんとする。
どうやら近くにいる者達の中でもそれを知っているという者はいなかったようだ。
だがしかし、その人物達はなにかを覚ったのか舌打ちや唸る声が離れた場所より耳に届いた。

「皆さんがご理解いただけるよう簡単に言いますと、それは敵も味方もない”殺し合い”。
 これは比喩でも言葉のあやでもなく文字通りにそのまま。ここにいる皆さんで殺し合いをしてもらうと、そういうことです」

それが、”バトルロワイアル”。
投げつけられた言葉に人の波がよりざわつく。
だがしかしそれは穏やかなものであった。何もかもが急すぎて、誰の中でも理解と実感はまだ遠いところにあった。

「……実感できないのはもっともでしょう。
 それはおいおいとして、では冷静なうちにルールの説明をさせていただきたいと思います。
 後で繰り返すことはいたしませんので、どうかお聞き逃しのないようご注意ください」

そう言って、利根川はまだ落ち着かない人の波をよそに粛々とゲームの説明を開始した。


 ■


「まず第一に、殺し合いそのもにルールはございません。
 どのような手段や、卑怯と言われるような手を使っても、
 主催側がそれを咎める――ルール違反と見なす場合はありませんのでご安心ください。

 ゲームの会場へとはこの後、またこちら側の手はずで移動していただくことになります。
 どのような場所かというのは現地についてからお確かめください。
 そこそこの広さがある場所に、バラバラに配置されて始まると……今はそれだけを告げておきます。

 開始は現地の時刻にて0時。
 到着し向こうで気付いた時にはちょうどその時間となっていますので、そのまま即ゲームがはじまることになります。

 また気付かれた時には傍に黒いデイパックが置かれているはずですので、それをお手に取りご確認ください。
 中には会場の地図や腕時計。筆記具や方位磁石などに、最低限の食料と水。懐中電灯などなど、皆様を助けるものが入っています。

 加えて、ゲームに参加するメンバーの名簿が入っていますが、これには記載されている人物とそうでない人物とがおります。
 これは一種の駆け引きの材料とお考えください。

 それと、これらの共通した支給品とは別に皆様方がゲームの中で使用する武器や道具なども併せて入っております。
 これは各人に一つから三つ。それぞれ別のものが用意されていますので、各自ご確認の上ご使用下さい。

 さてこれでゲームが開始されるというわけですが、開始されましたら6時間ごとに主催側から放送を会場に流します。
 つまり最初の放送が6時。次に12時。その次に18時と、そういう風に。
 そしてその中で、それまでの間に死亡した参加者の名前を呼び上げます。
 また、ゲームの中に新しいルールを加える場合もあるかもしれません。先に述べました支給品でメモを取るとよいでしょう。

 では最後に、ゲームの決着方法を説明します。
 これはただ単純にひとりの人間が生き延びればよろしい。
 最後のひとりとそうなった時点でゲームは終了し、優勝者としてその人物には賞品が与えられゲームより解放されます。

 逆に、24時間連続で死者が出なかったり、3日経っても優勝者が出なかった場合はゲームオーバー。
 その場合は、……もうお気づきの方もおられると思いますが、皆様の首に嵌った首輪が爆発し全員死亡とさせていただきます。

 つまり、誰かがゲームに対して消極的になるとゲームオーバー……全員の命が等しく危機に晒されるとお考え下さい。
 なので皆が積極的に殺し合いに参加することを私から強くお願い申し上げます」


 ■


説明を終えて利根川は再び壇上で頭を深く下げた。
それを見終え、和は手を握ったままの咲へと向きかえり、互いに顔を見合わせる。

「どうしよう……原村さん……」
「大丈夫です宮永さん。こんな……殺し合いなんてあっていいはずがありません」

和は咲の震える瞳を見て強く思う。
彼女が誰かを殺したり、殺されてしまったり、ましてや自分が彼女を殺すなどということはありえないと。
小さな顎を持ち上げ首輪を確認し、そして自分の首元に指先を触れ首輪があるのだと確かめる。
だがしかし、そうだとしても”バトルロワイアル”だなんてものは決して許容できるものではないと彼女は強く思った。

「――できません!」

なのでそれを宣言した。
和は冷たい床の上から立ち上がり、壇上の利根川へと向かって毅然とした態度と口調でそれを力強く告げる。
殺し合いなどという非常識なこと、道徳から外れるようなこと、何より彼女を脅かすことを自分は許容することができないのだと。

「ふむ」

壇上の利根川は一人立ち上がった和を見てつまらなそうな表情をした。心底つまらないと、哀れみの混じった目で彼女を見下ろす。
実際、このような輩が出てくると彼は想定していた。そして今にも立ち上がりそうな連中も人の波の中にちらほら見える。

「先程、”実感”がないだろうという話をしたが……これでどうかな?」

慇懃な口調を捨て、利根川は胸元からなにやらリモコンのようなものを取り出し和へと向けて、ボタンを押した。

ピッ――と、小さいが確かに聞こえる音が全員の耳へと等しく届く。

「な……なに、これ……?」

戸惑いを含む声は和……ではなく、その足元にいた咲から発せられたものだった。
和は驚き、彼女の方へと振り返る。
わななく愛らしい口――よりも下。小さな顎に隠された首元。そこにある銀色の首輪の喉元の部分が赤く明滅を繰り返している。
それが何を意味するのか。聞くまでもなかった。

「やめなさいっ! こんな……こんなこと!」
「……言い忘れていたが、首輪が爆発するのはゲームオーバーが決まった場合のみではない」

壇上の利根川はもう和も咲も見てはいなかった。届いているはずの抗議の声にも反応しない。
まるで、彼女達がもうその意見を汲みいれるに値しない、つまりもうゲームの参加者でも人間でもないと、そう断定するように。

「どうしよう原村さん!? これ、どうなっちゃうの……?」
「大丈夫。こんな、こんなこと……こんなことあっていいはずがありません」

和はしゃがんで咲の首元を覗き込む。
ピ……ピ……という小さな音と明滅はおそらくカウントダウンだろう。その時まで時間はそうあるとは思えない。
首輪は金属でできているようだが細く、咲の細い首よりかは一回りほど大きい。迷うことなく、和はその間に指を挿し込んだ。

「ひぅ……!」
「少しだけ我慢してください。これぐらいなら爆発する前に……んっ」

和は首輪を指でつかみぐっと力をこめる。それだけで首輪は少し広がった。
どうやら見た目どおりにそれほど頑丈ではない。ならばと更に首輪に力をこめたその時、利根川が次の言葉を発した。

「――首輪を参加者が勝手に外そうとした場合でも、爆発することになっている」

言葉どおりのことが起きた。
そして、その言葉どおりのことを和はその言葉が耳に届くよりも先に知り、強く実感することとなった。

「…………あっ。…………あぁ……!?」

周りを囲む人々から発せられる悲鳴や怒号が耳の中に飛び込んでくる。しかし、その意味が和には全くわからない。
それよりも目の前の、目の前にあることが大きすぎて、咲の顔がどこかに消えてしまったということが大きすぎて他のことが理解できない。
パァンという音がして、視界が赤く染まり、次の瞬間にはあの怯えていてもずっとこちらを見つめていた咲の顔がなくなっていた。

「いいか。この首輪はそれだけでなく、ゲームの会場から逃げ出そうとしても爆発する。
 殺し合いにルールはないが、ゲームの放棄だけは許されない……っ!」

呆然とする和をほうって、利根川は首輪の説明を続けている。
ざわつく人の波を押さえつけるように語気を強くし、壇上から言葉を浴びせかけている。
そして今更に、思い出したかのように和を見下ろし、また再びリモコンを向け、無慈悲にそのボタンを押した。

「どうせその怪我じゃあゲームに参加しても同じだろう」

言われて、ようやくながらに和は気付いた。己の指が、両手にあった5本の指がなくなっていることに。
べっとりと掌を染めるそれは首を飛ばされた咲のものだけでなく、己自身の血も混ざっているのだと麻痺した頭で理解する。
もうこれじゃあ麻雀ができない――何よりも先に思ったのはそんなことだった。

「このように、主催側は容易に首輪を爆発させ参加者の命を奪うことができる。それを忘れてはいけない!」

ピ……ピ……ピ……と、冷徹に進むカウントダウンの中。
和はただ利根川の声を聞き、何がいけなかったのかそれだけを考えていた。

 ■


「正義。道徳。友情。愛。信念。お前ら個人が何を掲げ、何をどう信じようがそれは勝手だ。
 だがそれは平時においてのこと。この、緊急事態においては、それは全てまやかし……っ! 逃避にすぎないっ!

 よく考えろ。この現状を……己が置かれた状態を!
 知らぬ何者かにより拉致され、わけもわからぬままにゲーム……殺し合いを強要されているという現実……っ!
 それが何を意味するのか。生殺与奪の権利は実際にはどこにあるのか。そこから目を逸らすことは許されない!」

利根川は語気を粗くして、まるで怒鳴るように人々へと語りかける。
確かに彼の言うとおりなのかもしれない。
だがしかし、そんな言い方は聞かされるほうの反抗心を煽るだけで、実際、何人かが立ち上がり刃向かおうとしていた。

「黙って”俺”の話を聞け…………っ!!」

室内が凍りついた。立ち上がっていた何人かも息をするのも忘れて固まっている。
利根川の言葉に気圧されたか? いや、そうではない。事実ももっとシンプル。単純すぎて、誰もが簡単にそれを理解した。
ネクタイを緩めシャツの襟を開いた利根川の首にも皆と同じ”首輪”が嵌っていのだ。

「声高らかに正義を謳い自己陶酔に浸っている間にも!
 痛みを推し量り、傷ついた者を相手に理解者ぶっていい気になっている間にも!!
 悲しみを共有したなどという都合のいい幻想を抱き、陳腐な涙を流している間にも……っ!!

 時間は過ぎる……っ!

 文字通り……命と等しい時間っ! それを”我々”ゲームの参加者は”共有”している……っ!

 故に! 我々は同じゲームの参加者同士として”協力”して殺しあわないといけないのだ!

 自分を救う為に! 誰かを救う為に! そうしなくてはならない……っ!

 誰か一人がそれを諦め、殺し合いを放棄することは、すなわち全ての人間を巻き添えにする悪逆非道の行為……っ!

 そんなことをするぐらいなら……殺せないのなら死ね……っ! 他人が無理ならせめて自分の始末は自分でつけろ!

 幸いなことに会場の外に飛び出せば首輪は爆発する。自殺するのは難しくない。

 己の正義を信ずる者。弱者必滅の現実から目を逸らす愚者……そんな輩は自殺すべきっ! 他人を……巻き込むなっ!」

息を飲む者。顔を蒼くする者。ここに至って逆に笑みを浮かべる者。今までもこれからも表情を変えぬ者。
様々な人間がそこにはいたが、彼らに共通していたのはただ黙していたということ。
内心に何を抱えるかは不明であるが、皆、利根川を前にしてただ言葉を失い、彼の”協力要請”に耳を傾けていた。

「いいか、もう一度言う! 我々は……協力しあって殺しあわなくてはいけない……っ!

 それが唯一の生を得る方法なのだ。なす術もなくやってくる無念の死を避ける為に、ここに己が一生を賭す。

 それが唯一の正義! この場における法……っ!

 我々は……殺しあわなくてはいけない……っ!

 生き残る為……お互いを救い合う為に……ゲームオーバーを回避し……唯一の生者を残す為に…………」



遠く聞こえる演説の中、死に瀕する和はただ思う。
勝利しなければ自分の居場所を確保することもできない。そんなことは解っていたはずなのにと。
そして今更ながらに気付く。
勝利するということはつまりその逆側に敗者を生むということ。その度に誰かを排し、誰かの権利を奪っていたことに。

なのに、どうしてそれを今は忘れていたのか、どうして今までそれに気付かなかったのか。
麻雀の勝負は命を奪わないからなのだろうか?

勝ちも負けも選ばない生き方をしていたプラスマイナスゼロの彼女ならば何か答えを持っているだろうか?

聞こうとして、首のない彼女を見て――、その時――



――原村和の首輪が爆発した。





 ■


「――ご苦労様です。利根川様」

殺し合いの為に集められた有象無象。それらがすでに姿を消したがらんとした空間。
ただひとり、壇上に残っていた利根川は肩を落としただ床だけを見つめていた。

「ふん。自分のためだあれぐらいの演説。頼まれなくとも打ってみせる」

ひとつ息を吐き利根川は顔をあげる。
そして、手にしていたリモコンを黒服の男に向かって投げると踵を返し自らも会場に向かおうと足を向けた。

「しかし、いいのですか? あのような、皆の戦意を煽るような真似を?」

が、黒服がその足を止める。

「……おかしいか?」
「えぇ。あれでは利根川様も大変に危険な目に……それこそ、どこで恨みを買うかもしれません」

振り返り、利根川は黒服に頷いてみせた。
確かにこの名もない男が言うように、あれでは全ての元凶が自分にあるようで、それを恨むものが出てきてもおかしくない。

織田信長
「……はっ?」
「知ってるか?」
「は、はぁ……戦国時代を生きた武将であり、そして……今回のゲームの参加者のひとり」
「そうだ。我々がイメージするそれとは全く異なる人にして人ならざる化物。
 奴だけではない。普通の人間じゃあ敵いっこもなさそうなの……例えば、英雄や悪鬼……そんなのが参加者にはゴロゴロいる。
 だったら煽るしかあるまい……そいつらが殺し合うように。
 殺し合いこそがここの常識であると、刷り込むしかない」
「しかし、それではやはり危険が……」

ふぅ。と、利根川は溜息をつく。確かにその通り。いくら百戦錬磨と言えども利根川は普通の人間。その範疇を逸脱しない男。
失脚によりこのゲームに参加することとなったが、これは挽回の機会ではなく制裁と……そう受け取っていた。
しかし、それでもなお、だからこそに彼は足掻く。己が生に執着する。

「勝てる可能性が元々ゼロなのならば、それを1%でも2%でもひとつずつ上げてゆくだけ……。
 確かに俺は敵を作ったが、全員が全員敵同士となれば、それもいくらかはチャラ……勝つ目……光明も微かに見えてくる」
「……なるほど」

黒服が納得したのを見て利根川は再び暗闇の中へと進もうと歩き出し――と、なにかに気付いてまた振り返る。

「おい、お前。煙草はもっているか?」
「はぁ……持っていますが、しかし規則により参加者には何も」
「固いこと言うな。ここで吸えば問題はあるまい。まだゲームが始まる前だ」
「ですが……」
「俺が勝って帰ってきたらお前を取り立ててやる。それでどうだ? ん?」

更に2、3言押し合い、結局黒服は利根川に押しやられ渋々ながらに煙草を1本差し出した。
咥えた煙草の先に火を点け、帝愛グループにこの男ありと言われた利根川幸雄――その出立の前の最後を見届ける。

「……では、行って来る」
「御武運を」

紫煙を吐きそれが暗闇に溶けるのを見送ると、利根川は暗闇に向けて一歩ずつ足音を鳴らし進んでゆく。
この暗闇に飛び込むことは絞首台の縄に首を通すこととさほど違いはない。生還は万に一つで、他は死に溢れているからだ。
しかし、だとしても彼はおびえたりひるんだりはしない。威風堂々。ただ真っ直ぐに死地へと飛び込む。


「……勝ちもせず生きようとすることがそもそも論外なのだ」


利根川幸雄。彼の人生は逃走を自分に許すほど安いものではない。




【原村和@咲-Saki- 死亡】
【宮永咲@咲-Saki- 死亡】


【アニメキャラ・バトルロワイアル3rd 開始】


【「主催」および「黒幕」】
不明

【オープニング進行】
利根川幸雄(参加者)

【放送及び以降の進行役】
不明

【ルール】
原則参加者同士の間にはルールはなく、殺しあって最後の一人になった者が優勝。
優勝者には賞品(内容は不明)が与えられ、元の世界へと帰還させてもらえる。
ゲーム期間は開始より3日(72時間)。それまでに決着がついてなければゲームオーバー。
また、24時間連続で死者がでなかった場合もゲームオーバーで、全員の首輪が爆発する。

【首輪】
参加者全員の首に爆薬の詰まった首輪が嵌められている。
ゲーム会場から出ようとする。または無理矢理外そうとすると爆発してその者の命を奪う。
また、主催者側は自由に爆発させることができ、爆発するまでの猶予も操作可能。

【放送】
開始より6時間ごとに主催より会場に放送が流される。(方法は未定)
そこで前回の放送より今回までの間で死亡した者の名前が呼び上げられる。
また、新しいルールが付け加えらる場合もあり。(※禁止エリアがこれに該当。詳細は放送案におまかせ)

【支給品】
参加者にはひとつのデイパックとその中に入った支給品が配られる。内容は以下の通り。

 1.デイパック。
 無限の容量を持った不思議なデイパック。原理は不明。

 2.基本支給品。
 全員のデイパックに共通して入っている物。
 「参加者名簿」「会場の地図」「腕時計」「筆記用具とメモ用紙」「方位磁石」「懐中電灯」「最低限の食料と水」「タオル数枚」
 ※参加者名簿には一部の参加者(書き手枠のキャラ)の名前が記されていない。

 3.ランダム支給品。
 武器や道具など、個別のアイテムが1つから3つの範囲で入っている。



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最終更新:2009年10月23日 00:53