思索?妄想? ◆MwGEcqIDcI
序
E-5海上を進む揚陸艇、その操縦席でルルーシュは急な海流の変化に気をつけながら、
『バトルロワイアル観光ガイド』を開いていた。
(進行方向にあるのは『廃ビル』…それに『遺跡』『象の像』か)
それらはゲーム開始後ルルーシュが「施設群Xとそれに準ずる注目すべき施設」としたものだった。
そしてそれは偽ゼロを打倒し超人級を相手にできる戦力を整え、
本来の目的であるゲーム脱出/主催打倒に向けて動けるようになった今再び重要性を増していた。
(このゲームや主催に対する考察は政庁に移動して以来していないな…ここで一度整理しておくか)
ルルーシュは本を一度閉じ、手に持ったまま思索を始めた。
ルルーシュはオープニングを当初さほど真剣に聞いていたわけではない。
しかしそれでも最小限の内容は頭に入っている。
最初に思い浮かべたのは二人の司会。そこから考察を始める。
まずあの遠藤という男。
主催者の帝愛グループが用意した進行役。
見た目と言動からの判断ではただのチンピラ、リヴァルとよく行っていた賭博場によくいる類の男に見えた。
もちろんそれがただ仮面をかぶっているだけの可能性もないわけでもない。
どちらにせよ、帝愛が「遠藤」というキャラクターが司会をするのを望んだのは間違いないだろう。
そしてその言動は参加者へのルール説明に加えゲームの演出もなしていた。
参加者に殺し合いをさせるためなら見せしめだけで十分であり、あれほどおおげさな演出が必要には思われない。
しかし帝愛については船井から入手した情報がある。
金の力を傘に着て無理を押し通し、人の命をかけたギャンブルを厭わないさえ組織だという。
この二つを合わせればこのゲーム自体が一種のギャンブルゲームなのだろうと容易に見当がつく。
あの演出は参加者ではなくこれに賭博する側の人間に向けたものなのだろうと。
つまり帝愛の目的はギャンブルの開催、ということになる。
しかし、ただのギャンブルが目的ならわざわざ異世界の人間を集めて行う必要がない。
金の亡者の組織が大枚払って魔法を買いここまで大規模なギャンブルをする理由は何か?
しかもそのための費用は、天空要塞ダモクレス―詳しい考察は後にまわすが―の「新規建造」分もかかっている可能性がある。
あれはルルーシュの知るものとはサイズや構造に若干の違いがある別物だったためだ。
これだけ浪費をして裏世界相手にギャンブルを開いても、利益が出るとは思えない。
どうして帝愛がそんなことを許すのか?
素直に考えれば、それだけ浪費しても黒字になるほどの収益が上がる、となる。
例えば、賭博する側の人間も多世界にわたっており、帝愛は複数の裏世界相手にギャンブルを開いている可能性。
いくつの裏世界が相手かはわからないが、賭博の参加者が多ければ多いほど黒字に転じやすい。
また異世界の人間を集めてギャンブルを開く理由もつく。
この場合主催側に複数の異世界の人間がいるのも十分にありうる。
…が、ここでもう一つ情報を加えると、帝愛、すなわち金を絶対視する組織が主催だという想定そのものがひっくり返りかねない。
ルルーシュには知る由もないのだが、このゲームには帝愛の幹部や元会長までもが参加させられていた。
ルルーシュが船井から得た帝愛の理念にかかわる認識自体がずれているかもしれないのだ。
そしてルルーシュは別の発想―奇しくもグラハムと同じ理由―からその近くに行きついた。
(そもそも異世界などというものを信じ、さらに商売しようなどと常人が考えつくとは思えない。
「誰か」―ここでは魔法側とする―がなんらかの意図のもと帝愛にその話を持ちかけた可能性が高い。
なら金銭に関する違和感は、帝愛ではなく魔法側が主導権を握っている証拠ではないか?)
しかしこの発想にも問題がある。
なぜ魔法側は、帝愛の力を借りる必要があったのか?
仮に魔法側が異世界の人間を自由に拉致し時間移動までできる万能者なら、どうして必要が生じたのか?
可能性の一つ、魔法に何らかの限界がある場合。
この場合まるで全容がつかめない魔法への手がかりが手に入るかもしれない。
例えば魔法側=秘密結社=人員不足などという陳腐な方程式な成り立つ場合、
人間のような理性を持った使い魔なんてものは作れないのだろう。
時間移動や空間移動のような魔法を行えない場合、
そういった魔法は魔法側に多大な労力を必要とさせるのだろう。
可能性の一つ、ゲームの形で殺し合いをさせること自体に意味がある魔術儀式の場合、
魔法側が疎いゲームの運営を帝愛に依頼したのかもしれない。
ここでまた発想を切り替える。
今まで帝愛は「金を絶対視する」「魔法にまるで無知」という前提のもと考察していた。
ならこの前提が違うのではないか?
例えば帝愛は以前から、あるいは最近「魔法をよく知る」組織となっていたのではないか?
帝愛が「金を絶対視する」のは建前で実際には別の理念に動く組織なのではないか?
この場合だいぶ多くのことに筋が通るかもしれない。例えば
『我々は…金で魔法を買ったんだからな!』
今回の異世界ギャンブルを思いついた帝愛側から魔法側にこの話を持ちかけたのなら、
この前後の帝愛が魔法を思うがままにしているかのような言動も理解しやすい。
帝愛の金銭的な矛盾については魔術的な目的もあるからと説明できる。
なぜ帝愛が必要なのか、に関しては考えるまでもなくなる。
(もっとも、「魔術的な目的」が何かについて考えなければならなくなるが…)
ルルーシュは魔法について完全な門外漢であり殺し合いからどのような魔術的効果が得られるのかなど全く見当がつかない。
以降魔術に造詣の深い人間から情報を得てイメージを作っていくしかない。
しかし、この仮定下の帝愛のスタンスについては想像くらいはできる。
建前とはいえ「金を絶対視している」―「遠藤」の様子からしてもそうだろう―以上このゲームで賭博している。
「魔法をよく知る」、しかし十全な知識があるわけではない。
完全な魔法への知識があるのなら魔法を買う必要がない。
以上考えた対主催考察はまとめると
主目的 ギャンブル
- 魔法側がゲームの主導権を握っており帝愛は傀儡の場合
主目的 魔術的な何か?
- 帝愛も魔法に造詣がある上で主導権を握っており、魔法側は協力者にすぎない場合
主目的 魔術的な何か?
の三通りに大別できる。それぞれを重ね合わせた落とし所が真相なのだろうと推測する。
次に修道服を着た少女への考察を始める。
遠藤と一緒にいた
インデックスという少女。明らかな偽名。
彼女が最初に紹介されたときの名前のうちの一つを、
ルルーシュは意味がわかったが故に意味がわからず覚えていた。
(Index-Librorum-Prohibitorum たしかEUのイタリアの古語で意味は「禁書目録」。
どうしてただのシスターにそんな名前がついている?)
帝愛、龍門渕…グループや高校の名前として理解できる(聞き流せる)これらの言葉とはあまりに異質なものだった。
禁書…EUの宗教に反する政治や文化的意見を封殺するため異端とされた書物。
活版印刷、つまりコピー技術の発明以降、情報量は爆発的に増大し、反宗教的な、あるいは宗教改革を求める動きも連動し、
宗教が現実に極大な影響を及ぼしていた「中世」と呼ばれる時代区分は終わりを告げた。
禁書は宗教側がその流れに対抗するため打ち出した情報統制策の一環である。
しかし帝愛が魔法をほのめかすこの状況では禁書と同時になされた反近世化運動「魔女狩り」を連想せざるえない。
ルルーシュは禁書には当然魔術とされるものも載せられるのを知っており、かつ実際に「魔女」を知っているのだから。
(これがブリタニアのある世界で魔術に関する禁書となれば、十中八九コードかギアスに関するものが含まれるだろう。
だが、おそらく同一世界から連れてこられているのは互いに関係の深い人間が五、六人。
そしてあの女を俺が知らないということは
―――俺よりもギアスやコードに詳しい
C.C.が知っているかもしれないが―――
あの女がブリタニアのある世界から連れてこられている可能性は低い。
よってあの「禁書目録」という女はルルーシュの知らない別世界出身であり、禁書の意味を考慮すると魔術に関係している可能性が高い。
また遠藤はインデックスが人質であるかのように言っていた。
参加者に対する人質、という意味なら参加者に関係者がいるのだろう。
まだ生きていれば、そこから魔法に関する情報が手に入るか…?)
また同時に、遠藤がインデックスを「人質」と明言せず、「ゲスト」と呼んでいたことを思い出す。
禁書≒魔法とするなら「禁書目録」とは「魔法目録」に近い。
魔法を売った側の人間である可能性も考慮に入れる。
しかし
(「禁書目録」などという名前は他世界の伝統に従って付けられた、特に意味のない名前だとしたらどうなる?
麻雀の世界、異能者の世界…ここには俺の常識が及ばない世界が多すぎる。)
バーサーカーに完膚なきまでに策を破られた今、他世界に関する警戒は当然大きい。
禁書≠魔法の場合も想定する。
この場合純粋に人質である可能性が最も高いだろう。
(遠藤一人でも可能な司会にわざわざ彼女を連れてきたのは人質が他にもいることをアピールするためか。
おそらく人質をとっている目的は参加者の殺し合いを強制することが主なのだろう。
主催への反抗を封じる意味合いはあまりない。
異世界から気づかれないうちに人を拉致できる魔法を持っているのなら、
主催に反抗しようとした人間はその魔法でどうにかすればいいだけだ。
…もし本当に対主催封じが目的なら人質がいると言うなど、
自分の魔法に限界があるか、今は使えなくなっていることを自白しているようなものだからな。)
後者ならありがたいのだが、とルルーシュは軽く笑った。
次に人質の内わけについて考える。
今までの考察から、殺し合いに乗らなそうな者の人質を集めているだろう。
仮に対主催封じの意味もあるとすれば、
セイバーやバーサーカーといった強者の人質もいるかもしれない。
そして自分に人質がいるとすれば―――
(確実にナナリーだろうな。俺が仲間を殺さなければナナリーを殺すとでも脅迫するつもりか?)
だが、もしそうでも揺らいではならない。
最優先されるのはスザクの生還だ。
(もっとも、スザクがどの時間軸から呼ばれているかにもよるが―――)
ここでインデックスと人質についての考察を打ち切り、名簿に載っていない12名についての考察を始めた。
第一回放送の内容を鵜呑みにするなら、殺し合いを促すための触媒と判断するのが妥当だろう。
殺されやすい環境に送り、実態以上の死者を示し、殺し合いに乗るのを躊躇っている者の背中を押す。
名前を隠していた理由は、知り合いの名前が名簿にないことに安心し、
積極的に動かない参加者が生じるのを防ぐため。
しかし
(「殺されやすい環境」…本当にそうか?)
12人のうちユフィを除けば判断材料は千石と安藤、船井の三名。
千石はそうした環境下にいたのかもしれない。
しかしその環境には最低二人、名簿に載っている参加者もいた。
安藤を殺したのは憂、ただの一般人であり必ず殺し合いに乗るとゲーム前から断言できる人間ではない。
船井に至っては「殺されやすい環境」の中で三人の集団
―――もし「
加治木ゆみ」が死んでいなければ桃子が加わり四人になっていたかもしれない―――
を形成している。
この三人だけ見ると、名簿に載っている参加者と載っていない参加者にそれほど違いがあったとは思えない。
そうなると一回目放送までに名簿外の者が偶然多く死んだことを利用し、触媒の理屈を「こじつけた」と考えるほうが自然に思えてくる。
もしこれが正しければ、主催がそんな「こじつけ」を放送した意図は―――
(放送を理解できるほど冷静な参加者を油断させ殺し合いを促す、か?…だとしたらと
んだ「ご祝儀」だな)
どっちにせよこれ以上解釈しようにも情報がなく、手に入る見込みもない。
禁止エリアの考察に移る。
殺し合いエリアを狭め殺し合いを促す。
殺し合いを妨げる海上ルートを制限する。
こうした意図を推測した上で、政庁以降手に入れた情報を加味すると「結界保護」が目的の一つである可能性が推測できる。
(会話を盗聴しているなら俺たちが結界の破壊を行っていくのは主催もわかっているはずだ。
なら次回以降の禁止エリアには今まで以上に結界の設置場所を優先する可能性は高い。
施設群Xより禁止直前のエリアを探索するのも考えるべきか?
そこで結界が見つかれば、その重要性に確証が持てるかもしれない。)
逆にいえば、見つからなければ結界はたいして重要でないのかもしれない。
もっとも三つの禁止エリア全部に結界が隠されているかはわからない以上、
行うとしてもハイリスクローリターンな探索であろう。
しかし、ルルーシュは禁止エリアに関し少し心にひっかかるものがあった。
大分前に読んだ「
カギ爪の男」の推察。袋から取り出して改めて読む。
(禁止エリアは欠陥のカモフラージュか。欠陥を結界と考えれば興味深いな。)
他にも首輪についての考察もある。ルルーシュはひとまずそれを机の上に置き思考を再開した。
2 単独行動期
真っ先にルルーシュが思い至ったのは、自分はどうして生きているのか、だった。
大きく分けて可能性は二つ
一つ目は治療をされた可能性
開始直後の自分宛のメッセージから判断するに、今もっとも可能性が高い。
だがルルーシュが死んだのは大衆の面前。しかも刺されてから死ぬまでの時間はひどく短い。
(あの状況から救い出すとなると、俺の知っている魔法、ギアスでは、ロロの思考停止ギアスがなければ実行は不可能。
群衆の記憶までどうにかするなら、シャルルの記憶操作ギアスまで必要になる。)
魔法は一体どの程度まで可能なのか。
もしロロができる程度のことまでしかできないのなら、悪逆皇帝は群衆の前で当然かき消えたことになるだろう。
(最悪の場合、大衆に悪逆皇帝の死体を見せ納得させるために俺は生還後また死ななければならなくなるのか?
悪い冗談にもほどがあるな…)
二つ目は蘇生された可能性
治療された場合のややこしさはすべて消える。
一方で主催は死者蘇生が本当に可能だと確定する。
どちらにせよ、まだ判断材料が足りない。
ユフィや「カギ爪の男」、「
レイ・ラングレン」が生き返った可能性はあるらしいが、
自分と同様確証があるわけではないだろう。
次にランダム支給品について考える。
初期支給品を例をとって比較する。
ルルーシュに支給されたのは機関銃と剣、そしてドレス。
憂に支給されたのはナイフとモデルガン。
桃子に支給されたのはギター、拳銃、宝石。
ギアスやステルスを持つ者には銃器を与えられたにもかかわらず、一般人の憂やはろくなものを与えられていない。
さらに戦闘にはまるで役に立たない道具まである。
しかし、ランダム支給品は所詮そんなものなのだろう、と思う。
何せ今まで見た中で一般人が使ったところでセイバーやバーサーカーに対抗できそうな支給品は、澪の猫もどきくらいのものだ。
要するに強者と弱者の実力調整の意図など更々なく、あくまで演出の一環、といったところなのだろう。
そう考えれば戦闘には全く関係のない支給品があるのも納得がいく。
次は施設群X及び廃ビルと遺跡の考察に入る。
とはいえあれから手に入った情報は「敵のアジト」が両儀の世界にあった「小川マンション」であり、
荒耶宗蓮の本拠地であったらしい、ということくらいだ。
(結局、今はこれを読むしかないわけか)
ルルーシュは再び『バトルロワイアル観光ガイド』を開く。
そのガイドブックに載っているのは施設の名前、説明、写真、時には【マル秘情報!】
施設群X及び廃ビルと遺跡の項を読む。
【A-1/心霊スポット】
怨念たっぷりの暗~い場所で殺し合いを楽しめます。
【A-5/敵のアジト】
三階にはギャンブルルームが設置されており麻雀がプレイできます。
【マル秘情報!】
『臙条家の鍵』を持っている人へ。その部屋はここの四階にあります。
【C-3/憩いの館】
音楽を楽しみたい人、お風呂に入ってさっぱりしたい人はここへ。
軽音楽部の部室、温泉、それにゲームセンターまで完備してあります。
くつろぎすぎて殺されないように気を付けてください。
【C-5/神様に祈る場所】
人を殺して後悔している人、懺悔したい人はいらしてください。
心優しい神父様が出迎えてくれるかも?
【C-6/死者の眠る場所】
島の墓地であり、同時にこのゲームの死者の墓地でもあります。何を言いたいのか知りたければ第二回放送まで生き延びてください。
【マル秘情報!】
とある墓を暴くと、そこには…。
【E-3/象の像】
白象(はくぞう、ひゃくぞう)は、特に東南アジアで神聖視される白いゾウのことである。
必ずしもアルビノや白変種である必要はなく、体表に色の白い個所が複数あり、
定められた判定基準を満たしたものが白像として認められる。(wikipediaより引用)
【D-1/廃ビル】
- 使用されていなかった島のビルの一つを再利用したもの
周囲に多くの建物がありますが、標識をたどれば見つかるようになっています。
三階には麻雀など設備が用意されています。
【マル秘情報!】
ビルの一室には隠し扉があります。その向こうに何があるのか実際に見てからのお楽しみです。
【F-2/遺跡】
太古から伝わる遺跡に歴史のロマンを感じながら、凄惨な殺し合いを楽しむことが出来ます。
申し訳ありませんが、ゲームの進行に関係のない思考エレベータに関しましては、現在機能を停止させております。
【マル秘情報!】
- 遺跡には隠された地下道が存在します。どこに繋がっているかは入ってからのお楽しみです。
最後の項目で目が止まる。
(神根島の遺跡…!?
ダモクレスの思考エレベータといい、主催にコードやギアスに関わる者がいるのは確実か。)
ギアス饗団の存在は想定していたものの、
今まで確認してきた魔法がギアスとはあまりに異なるものだったため疑わしくなっていた。
しかし実際ギアスには制限があり、
関係物までこうも続けて見つかると流石に饗団かそれ以上の者がいるのは疑いようもない。
また主催がCの世界に接続できるのであれば、
第二回放送で流された「死者の眠る場所」の断末魔サービスは思考エレベータへの接続かもしれないと想像する。
次いでガイドブックの内容を整理する。
神根島の遺跡、思考エレベータ。小川マンション。
それぞれの世界出身でなければまるで理解できないであろう単語が平然と載っている。
冬木の教会、巫条ビルもどこかの世界のものだろう。後で他のメンバーに確認するべきか。
【マル秘情報!】
どの程度貴重な情報なのかはわからない。
廃ビル、遺跡、敵のアジト、死者の眠る場所のいずれかに行き確かめるしかない。
また麻雀やゲームが随所でできるのに気付く。
例えば麻雀なら四人の人間が必要だが、ギャンブル船一か所では参加者を集めきれないから各所でプレイヤーを募っているのか。
あるいは首輪交換機設置前で唯一のペリカ獲得手段として各地に配置されていたのか。
後者なら何かしら対戦相手が用意されているだろう。
(俺と桃子がいるこのチームならどこかでひと稼ぎできるかもしれないな)
そんなことを考え、【マル秘情報!】と賭博施設を兼ね備える「廃ビル」にチェックを入れた。
3 政庁まで
ルルーシュが単独行動をやめ危険人物を仲間に引き込むようになった要因は、
「偽ゼロの登場」これに尽きる。
しかしこれ以降他世界に関する考察は一気に広がった。
ルルーシュはひとまず、確認している世界について整理していく。
(以下( )つきは確証はなし、ひとまとまりになっているのはゲーム前から知り合いと確認済み)
注:(帝愛の世界、憂出身の世界、両儀出身の世界、阿良々木暦出身の世界)又は(阿良々木暦出身の世界、麻雀の世界)は同一世界の可能性あり
戦国時代の世界、宇宙の世界、惑星「エンドレスイリュージョン」の世界は他の世界の別時間軸にある可能性あり
(こうして見るとかなりの情報が集まってきているな…デュオや両儀から詳細な情報を聞き取り、
澪がギャンブル船で会った参加者の詳細な情報を合わせればほぼ完成するかもしれない)
次に「どのように5人を選んだのか?」を考える。
一応ルルーシュはまだ複数の異世界のどれかに同一世界同士のものがあり14人以上が連れてこられている可能性を否定してはいない。しかし明らかに他世界と異なる(と思われる)ブリタニアの世界、宇宙の世界、惑星「エンドレスイリュージョン」の世界、戦国武将の世界、称号名の世界の名前は5人程度しか確認できておらず、同一世界の疑いをかけている世界も各世界の判明人数が5人程度なら、全世界均一に5人程度連れてこられていると考えるほうがしっくりくる。
その上で各世界から連れてこられた面々の共通点を推測していく。
(ブリタニアの世界は俺かスザクに関わりがある人間…いや、俺に関わりがある人間だろう。ゲーム冒頭のメッセージといい、支給品セレクトの皮肉といい、主催は俺を意識している者がいる。ギアス関係者を共通項に連れてきた可能性もなくはないが、アーニャが例外になる。もっとも俺もアーニャとはそれほど関わり合いはないんだが…。
憂出身の世界は軽音楽部…いや、憂が例外になる。
平沢唯とその関係者、と言った方が適切か。今となっては確かめようもないが平沢唯には何か注目を浴びる要素があったのか?
桃子の世界は優れた高校生の優れた麻雀使い。共通項は分かるが、俺や憂の世界に比べ人の結びつきが弱い。てんでばらばらな高校から少しずつ計6人(あの見せしめの子を含めれば7人)をピックアップする方法は、憂出身の世界から連れてこられたメンバーを選ぶ方法とまるで異なる。)
戦国時代、帝愛の世界、阿良々木暦出身の世界はまだ情報が少なすぎ、考察を始められる目処も今はない。
両儀の世界、ガンダムの世界も今はあまり知らないが、両儀やデュオと情報交換がさらに進めば考察は一度に深まるだろう。
エンドレスイリュージョンの世界ではカギ爪の男はヴァン、ファサリナ、レイの三名を知っており、レイはカギ爪の男を憎んでいたことしかわからない。しかし三名と会った時の交渉手段として封をあけず置いてあった手紙(とは言ってもその内一通は桃子が破り捨てたが)がある。その内誰かの名前が放送で呼ばれたらその内容は確認すべきか。
次いでその選び方に法則性を探し、ひとまず分かっている三世界を比較するが
ブリタニアの世界
ルルーシュとその関連人物
憂出身の世界
平沢唯とその関連人物
桃子出身の世界
高校生麻雀
「学生が多い」「若年が多い」「女が多い」
共通点はいくつも思いつくが、魔法と同じであまりに漠然とした情報しかなく考察を進めにくい。ひとまず考察を保留する。
最悪、誰を選んだか、など主催の気まぐれにすぎないかもしれない。
まだ考え残したことはあるが、次にまとめよう。
3 政庁から今まで
この時期は《化け物のような》参加者との遭遇が相次ぎ、そしてダモクレスの可能性が生じた時期である。
まず明らかな問題に着目する。
(俺たちのような一般人と化け物のような参加者が同時に参加させられているのは何故だ?)
先も触れたが、初期支給品を使ってもなお常人では対抗出来ない参加者がいる。そして第二回放送後の今、ペリカで購入できるアイテムにそれほど役に立ちそうなものはない。施設で手に入れたアイテム、すなわち揚陸艇、ビームサイズ、歩く教会―澪の持っていた猫もどきもそうかもしれない―は荒耶宗蓮レベルの怪物には役に立った。しかしバーサーカーには全くの無力。サクラダイトミサイルもステルスビームサイズも通用せず、政庁丸ごと使用したサクラダイトブレイクでようやくダメージを与えられた程度だ。しかもデュオ達からの情報によれば「織田信長」というバーサーカーに匹敵する怪物がまだ存在する。
はっきり言って参加者の実力差がありすぎる上、弱者がそれを覆す手段もあまりに少ない。ビームサイズや歩く教会が有効とさっき言ったが、それもギアス持ちのルルーシュやステルス持ちの桃子だからなのだ。
しかも第二回放送で設置された首輪交換機は首輪を得やすい強者に有利に働きやすい。麻雀などゲームや軽音楽部室(?)があることから一般人がペリカを得やすい仕組みがあるのかもしれないが、その利点の相対価値も下がる。実力格差は広がる一方だろう。
(主催がこの状況を肯定していると仮定しよう。
その場合、主催は参加者の殺し合いより、むしろ一方的な殺戮を望んでいる可能性がある。
魔法的な目的があるなら、そうした殺戮の果てにそれが果たされるのか?)
御坂美琴が生きてここにいれば
一方通行と妹達の関係を連想しそうな想像だが―――ルルーシュは可能性は低いと踏んだ。「制限」が存在するためだ。
(制限…主催がはっきりと明言したわけではないが、俺のギアス使用時の頭痛、桃子のステルス機能弱体化を考えればおそらくある。なら主催には一応は参加者の実力差を縮めようという意志がある。もっともそれでもなおこれだけの実力差があり、かつ首輪交換機の存在も考慮すれば先の可能性も捨てきれないが…)
実力差。これはどうしようもない。
しかし首輪交換機。これにはまだ解釈の余地がある。
一つ目は殺し合い促進装置。
人を殺せば殺すほど優位に立てる。
怪物並みの参加者が優位性を増す理由でもある。
2つ目は首輪解体防止。
首輪の解体サンプルそのものを少なくしようという発想。
急に行われたことから、このゲームが一、二度目と推察する根拠にもなっている。
(主催に実力差を均一にしようという意志が強いと仮定するなら…実力者は使用できず、他の参加者はしようできる強力な武器を支給する可能性はある。その獲得を容易にするためにペリカの流通量自体を増やしたのではないか?)
強力な武器…例えばナイトメアのような巨大ロボット。
出身世界を整理した時に確認したことだが、出身世界には近代兵器を使用しかつその担い手が参加する世界が最低2つは存在する。
ブリタニアの世界
宇宙の世界
さらに展示場の情報から「エンドレスイリュージョン」の世界出身者も「ヨロイ」を使用出来るものがいる可能性がある
対して怪物並の参加者は戦国時代の世界、称号名の世界であり、戦国時代の世界は当然、称号名の世界もセイバー、ライダー、バーサーカーの奇抜な衣装から推測するに近代兵器を扱える者はいまい。………夢でみた武将がロボットだったのが気にかかるが、そう思いたい。
この推測が正しければ、近代兵器の世界出身者は終盤まで生き残れば生き残るほど優勝に近づくということになる。
(もっともこの通りだとしても憂出身の世界や麻雀世界は不利なままだが…もっと他の仕組みもあるのか?「相手を強制的に命懸けの麻雀/軽音楽部勝負に乗せる」道具が手に入る、とか。…考え出すとキリがないな。)
ともかく主催にそこまで参加者の実力を均一にする気があるとは限らない。そもそもそんな気があるならもっと制限を強くしているだろう。…いや、「その程度にしか制限をかけられない」のが主催の魔法の限界の可能性もあるのだが。
ともかくルルーシュは一度思考を打ち切りダモクレスについての考察に移った。
ダモクレス…天空要塞ダモクレス。
大気圏突破を可能としブレイズルミナス展開能力を持ちフレイヤを全世界に発射可能な長距離攻撃力を持つ存在。
初めてこの会場にある可能性を知った時には絶望しかけたが、それが故に思うことがある。
「あまりに強すぎる」のだ。
これが参加者への脅迫なら百歩譲って理解出来ないこともない。しかし参加者にその存在は公には隠されており、参加者へ使用するとすれば反逆者への処断用となるのだろう。そしてそれにはーというより脅迫目的でも同様なのだが―フレイヤだけで十分なのだ。ダモクレスはそれ一つだけで世界を脅迫し「平和」を為そうとした男の目的のために必要であったにすぎない。
しかしだからと言ってUSBが嘘とは思われない。内部情報などがあまりに詳細である上、ダモクレスを知らない人間が大半である以上そんなデマ情報は流す価値もない。
では本当である場合。初めの疑問はUSBが主催の正規支給品か、本当に内通者がいるのか。
おそらく、前から思っている通り後者だろう。内部情報などがあまりに詳細である上、ダモクレスを知らない人間が大半である以上そんな情報は流しても脅迫になりもしない。第一脅迫するのならゲーム開始時か、対主催が勢いづいた時だろう。
そしてもう二つ目の疑問は最初に考えた通り、何故こんな強すぎるものを作ったのか。
さらに加えてもう一つ違和感がある。この会場に来てから何人もの魔法らしきものを使う参加者と会ったが、それや自分の持つギアスから得られる「魔法」のイメージとダモクレスのイメージが一致しないのだ。
可能性の一つは、魔法側はフレイヤのような大量破壊手段を持っておらず、帝愛の世界と憂の世界がよく似るように、ルルーシュの世界によく似た世界からダモクレスをくすねてきた場合。ダモクレスのサイズや構造の違いも説明がつくし、力が強すぎるのも偶然そうなったですむかもしれない。またこの場合、魔法の戦闘能力はそんなものに頼らねば不安になるほど弱いと推察できる。
二つ目の可能性は魔法側には魔術師だけでなく科学者、それもブリタニア世界出身のものがいるという場合。
この場合ダモクレスは多大な負担のもとで建造されたのだろう。
なぜわざわざダモクレスを作ったのか説明がつかない。
考えられる一つ目は、外に敵がいる可能性。会場の外には主催に敵対する勢力があり、そのためにダモクレスが作られた。これが当たっていれば、会場の外にはダモクレス級の戦力を保持した勢力がいるということになる。連絡を取れれば脱出に大きく近づくことになるだろう。
二つ目は、内に敵がいる可能性。異世界の主催がいると前考えたが、それを力づくでまとめるため。あるいは、例えば魔法側と科学側といった対立軸が主催内にあり、ダモクレスがどちらかの武器になっている。
これなら内通者はダモクレスを持っていない側の主催の手のものとも考えられる。
(もっとも異世界間ギャンブルでダモクレス程度の出費をものともしないのが帝愛の力、アリエスの離宮のような権威を見せるだけためのダモクレス、という可能性もある。今はやはり情報が足りないな。ダモクレスを実際にこの目で確かめたわけでもなし。)
一度ここでダモクレスの考察を打ち切り主催打倒、脱出の考察へ移る。しかし―――
「少し疲れたな。」
そう呟いてルルーシュはデイバックから、箸と、以前スーパーで調達しておいたもやしいためを取りだした。
ひと眠りしたいところだが、船を運転する身、うかつに気を抜くこともできない。
だからせめて放送まで野菜でもとっておこうかと考えたのだ。
(思索の続きは放送が終わった後他の連中と話すまでの間に済ませればいい。憂が戻ってくるまでにはまだ少し時間はあるだろう。)
そうしてルルーシュは肩の力を抜くと、箸を片手にもやしをつまみながら、船の動きに気をつけつつ放送を待った。
おまけ
5 対主催/脱出
まず脱出を阻む最初の壁、首輪について考える。
(ゲーム開始時の話だが…あの首輪は爆発範囲があまりに特徴的だ。どうして「首から上だけ」がああも見事に吹き飛ぶ?)
オープニングであの女が爆殺された瞬間。憤りを抑えつつも、あの光景を思い出す。
可能性としては、一つ目に首輪に上側へ爆発を逃す仕組みがある(例えば首輪の上側がもろく作られている)場合。
2つ目に、爆発そのものに指向性がある場合。
加えてデュオから手に入った首輪の金属についての情報を合わせる。
上側の金属が下より弱い?爆発に指向性がある?そもそも頭部全体を吹き飛ばす必要は?首だけでは不足なのか?)
見えにくくする細工…つぎはぎもそれで隠されているのか。いや、待て。両儀はその魔術的細工に気づき、魔術師に関わっていたということは、魔法について知識があるのか?あとで聞いておくか。
そもそも禁止エリアで首輪は爆発するのか?
主催の居場所
放送、電力、水道、ガスはどこから?
海路脱出は可能?
空路脱出は可能?
スタート時のような魔法ワープ
そもそも会場を脱出したとしてどうやって元の世界に戻る?
最終更新:2010年03月30日 21:20