第三回定時放送。そして、それすらも《スペア》 ◆5iKodMGu52
「あぁ、妹たちを手に入れるのはなかなかに苦労したよ。旧ダモクレスは学園都市との、あの戦いで沈んだからね」
男は落とした女の自慢話をするかのような気楽さで、世界ひとつの崩壊を口ずさんだ。
「安土の時も大変だったけどね。まぁこの二つの戦いで、私は自分の手駒を殆ど失ってしまったわけだけど」
そこでひとつ息をつく。
やれやれといった表情で目の前の神父と盤上の駒を見る。
「そのタイミングを見計らっていたのかな?だとしたらとてもいい商機を得た訳だね」
一手が投じられ、戦況は逆転した。神父は優位から一気に劣勢に追い込まれた盤上をにらみ、一手を投じて答える。
「偶々だよ、皇帝陛下。タイミングが良すぎたとしても、それはそういう縁なのだろう」
深々と腰掛けていた皇帝は立ち上がり、目の前の男を見下ろす。
彼に掛かればどのような人間だろうと、蟻でしかない。
男は必殺の一手を撃つ。チェックメイト。最早神父に打つ手はない。
「おや、今の私の肩書きは《会長》だと思ったが、違ったのかな?」
そのまま部屋を出る。と、そのついでに、と言う風に振り返り、神父に語る。
「遠藤が死んだようだね?《スペア》はそれなりに用意しているけど、あまり無駄に殺さないでもらえないかな?
あの龍門渕の子に使った首輪のように、取り返しがつかないことになるかもしれないのだからね」
ドアが閉まる。神父が皮肉めいた笑みを浮かべる。そしてテープが流れる。
第三回放送が始まった。
□
『ごきげんよう、
インデックスです。
では
第三回定時放送を開始いたします。
まずはじめにお知らせが御座います。
当会場内に設置されておりました鉄道ですが、D-6駅の修復が滞っております関係で、一部区間でのみ運行を再開させております。
午後九時には全線開通の予定で御座いますので、参加者の皆様に置かれましては、不便をお掛けいたしますがご了承のほどお願い申し上げます。
続きまして、禁止エリアの発表です。
午後九時より禁止エリアに追加されますのは【G-2】【G-6】【D-3】 となります。
禁止エリアに入りますと首輪が自動的に爆発いたします。くれぐれも間違って立ち入らないようお気をつけ下さい。
最後に第二回定時放送より現在までに死亡が確認されました参加者を発表させて頂きます。
以上十一名です。これにより残り参加者数は二十六名となります。
これにて放送を終了させていただきます。
第四回定時放送で皆様をお待ちしております。』
□
「なるほど、《スペア》か」
部屋に残った
言峰綺礼は皮肉な笑みを崩さず、そう呟いた。
彼と学園都市に残された技術を使い、さまざまな世界の技術と魔術を結集して作り上げた首輪。
《儀式》に必要な数は52。そして万が一の為に用意された《スペア》は12。
合わせて64。
この数に合わせてバトルロワイアル参加者数は定められた。
ただ、そこで大会実行委員長の遠藤が見せしめに一つを使いたいと言い出した。
首輪の強制力を最大限にアッピールしたい、と。
主催者たちは顔を突き合わせて協議し、その案にゴーサインを出した。
しかしここで一つ問題が生じる。
ならば参加者は63名にすべきなのか。
否。
64と言う完全数に変更は認められない。
ジョーカー。魔術師・
荒耶宗蓮はその上での妥協の産物だった。
遠藤の申し出も、荒耶宗蓮の狙いも、52の首輪と12の《スペア》しか首輪が製作出来なかった事も、全ては偶然である。
誰も作為を持って歪めた事実ではない。
そして、《会長》、または皇帝は遠藤に《スペア》があるといった。
「
遠藤勇次もまた、《儀式》の為の道具に過ぎなかったというわけか。いや、首輪と同じくらい重要と見ていたともいえるか」
ほぉう、と言峰は遠藤の意外な存在価値にやや驚いた。そして人間を物のように扱う《会長》の異質さに共感を覚えた。
さて、言峰にとって重要な案件はサーヴァントの魂、そして肉体の回収である。
ではあるが、それにもタイムリミットは仕掛けられていた。
つまりは52の命が潰えた時。
それがこのゲームの終了時間であり、彼の仕事のタイムリミットである。
《会長》にゲームを完遂させるつもりなどない。
ただ、首輪をつけた者同士で52の命を奪い合ってもらいたいだけだ。
バトルロワイアルというゲーム方式はただ単に効率がいいから使っているだけの話だ。優勝商品などは戦い合わせる為の方便。
しかし、強制力によって爆発させた場合はこの数には含まれない。
そのように、この《儀式》は定義付けられた。限定された条件は、《儀式》を容易にする。
龍門渕透華の首輪は強制力によって爆発された。神原駿河のものも、である。
さらに
織田信長の首輪は、このままでは《儀式》に使うことは出来ないであろう。
本多忠勝と
刹那・F・セイエイの首輪はかろうじて消滅前に《儀式》に用いることが出来たが、アーニャの首輪はその前に消滅してしまった。
都合4つの首輪が《儀式》にはもう使えないのである。
しかし裏を返せば、あと8つスペアがあるということだ。
あと何事もなく死者が18名出れば、その場で首輪は全て爆発される。
《スペア》に価値がなくなるからである。
当然スポンサーたちは不平を漏らすであろう。その場合の処理を尋ねた黒服が居た。
答えはこうだった。
「《儀式》が完遂されれば、そのような人間に一片の価値もないね。全員殺しておいていいよ」
《会長》は、完全に割り切っている。躊躇など欠片もないだろう。
《会長》にとってこの場の全ては《儀式》の為の《スペア》なのだ。
ひょっとしたらこの《儀式》すら、何かの《スペア》なのかもしれない。
だとしたら、失敗と知るや否や、ここの全てを破壊して立ち去るだろう。
確かに《会長》にはそれを可能にする「ダモクレス2号」、旧き名を「バースディ」がある。
搭載された無数の限定解除フレイアで全てを破壊しつくせるだろう。
「尤も、私の方も、そんなことはどうでもいいがね」
神父には神父の、《会長》には《会長》の企みがある。
自分の目的を達成したら、それでオシマイだ。どちらが速いか。それだけの事。
「さて、第100代ブリタニア皇帝、新生帝愛初代《会長》シュナイゼル・エル・ブリタニアよ。チェスの続きをはじめようか」
言峰はクツクツと笑いながら、バーサーカーの魂を回収するべく、《門》へとむかった。
【???/ダモクレス2号・会長室/1日目/第三回定時放送終了後】
【シュナイゼル・エル・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康
[服装]:豪奢な私服
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:《儀式》の遂行?
[備考]
※参戦時期は不明です。
※ブリタニア第100代皇帝であり、帝愛を母体とした全く新しい多次元企業、新生帝愛の初代会長です。
※シスターズ@とある魔術の禁書目録を多数従わせています。戦闘要員か、他の用途に使っているかは不明です。
※ダモクレス2号はバースディ@ガンソードを母体としています。他はおそらくダモクレスと同じ。
※限定解除されたフレイアを使用することが出来ます。フレイアの所有総数は不明。
【???/???/1日目/第三回定時放送終了後】
【言峰綺礼@Fate stay/night】
[状態]:健康
[服装]:神父服、外套
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:???
1:サーヴァントの死体(魂)を回収する。
2:荒耶宗蓮に陰ながら協力する。
3:この立場でバトルロワイアルを楽しむ。
最終更新:2010年04月01日 20:25