「はじまりの『放送』」 ◆nwT3IBYDkM
(……横たわっていた人物は、ようやく目を覚ましたのか軽いうめき声と共に身を起こす。
人の気配はない。
そして、目に飛び込んでくるのは見覚えのない光景。
自分の身に何が起こったのか。
彼/彼女が状況を把握しようと辺りを見回すと、そこに、『まるで自分のために用意されていたたような』物体を見つける。
きちんと置かれた、見慣れぬ『デイパック』――。
そして、そのデイパックの上にちょこんと置かれた、『小さな機械』。
携帯ゲーム機のようなサイズと形状の、液晶画面を備えた板状の機械だが、見える範囲にはスイッチもボタンもない。
はてこれは何だろう? と首を傾げたその途端、何の前触れもなく画面が点灯する。
彼/彼女は一瞬その身をビクリと震わせる。
彼/彼女はまだ『その機械』に触れてさえいない。なのに勝手に電源が入った。いったいこれは?
驚きつつも視線を外せない彼/彼女の目の前で、液晶画面になにやら人影が映し出される。
――椅子に座った老人だ。
仕立てのいい服に身を包み、両手を杖に預けている。頭は禿げ上がっているが、髭は濃い。
老人はゆっくりと顔を上げると、片眼鏡越しに鋭い視線をこちらへと向けてくる。
老人は落ち着いた様子で口を開く。同時に、画面を備えた『その機械』から、渋みのある深い声が流れ出す)
『この場に集められた、全ての人々に報告させて頂きます。
私は、イオリア・シュヘンベルグ。
その名を知る者も知らぬ者も、どうか聞いて頂きたい。
私たちの目的は―― 『 バ ト ル ロ ワ イ ア ル 』 、です』
(『イオリア』と名乗った老人はそこで一息つく。
自分の発した言葉が、映像を見ている彼/彼女に十分理解されるのを待つかのように。
老人は再び口を開く。決して焦らずゆっくりと、言葉を紡ぐ)
『ただいまを以って、全ての参加者に向けて宣言します。
君たちには、年齢・性別・人間であるか否か、どのような差異があろうとも、参加者全てによる殺し合いを開始して頂きます。
定められた期限内に、定められた方法で殺し合いを行い、残された者が最後の1人になるまで相争って貰います。
おそらく君たちは、事情も分からぬままにこの場に集められたものと思います。
それぞれにそれぞれの事情があるものとも思います。
が、それも全て意味はない。この場では皆が等しく、たった1人の生き残りの座を賭けて戦って頂きます。
繰り返します。
この場に全ての人々に報告させて頂きます。
私は、イオリア・シュヘンベルグ。その名を知るものも知らぬものも、どうか聞いて頂きたい。
私たちの目的は『バトルロワイアル』、です―― ただいまを以って、全ての参加者に――』
(殺し合い――?
その単語を聞いて彼/彼女の顔に浮かんだ表情は果たして、怒りか、怖れか、嫌悪か、それとも歓喜か。
画面の中のイオリアは一字一句同じ文句をもう一度繰り返していたが、それを聞く余裕がどれほどあったろうか。
やがて画面の中のイオリアが、2回目の宣言を終えようとしたその時、画面にノイズが混じる。
数秒ほどの砂嵐、歪んだ映像、甲高い『ピー』という音、そして……別の場面への転換。
映し出されたのは、安っぽいTV番組のセットのような舞台だった。
画面の右隅に、黒いスーツに黒いサングラスの男が2、3名、しゃがんでいる姿が見える。画面の方を気に留めてもいない。
と、そこへ「入ってる! 画面に入ってるよ! 出て!」 と、少し遠い声がかかる。黒服たちは慌てて画面の外に逃げ出す。
ドタバタした気配。カメラが今更ながらにピントを調整し、画面がややぼやけては元に戻る。
何が起こってるんだ? と首を傾げる彼/彼女の見つめる中、1人の男が画面の中に悠然と入ってくる。
手足の長い、長身の男だ。
彼は画面の中央まで歩を進めると、芝居がかかった様子で一礼をする)
『……参加者の皆様方におかれましては、ただいま少々お見苦しい点があったことについて、心よりお詫び申し上げます。
これより先の説明は、我らが首魁、イオリア・シュヘンベルグに代わりまして、
このわたくし、
ディートハルト・リートが勤めさせて頂きます』
(ディートハルト、と名乗った若い男は、ややオーバーリアクション気味に手足を振り回しながら話を進めていく。
口調こそ敬語ではあるものの、その表情や態度には慇懃無礼な雰囲気が見え隠れする。
『まずはお手元をご覧下さい。
おそらくは『デイパック』が1つ、お傍にあるものと思います。
こちらには『殺し合い』を円滑に進めて頂くための『武器』あるいは『道具』が入っております。
中身については各人バラバラ、少なくとも1つ、多ければ3つ、ランダムに配布させて頂いております。
それぞれの使い勝手や威力については差もありますので、まずここで皆様方の運が試されることになりますね。
なお、デイパックの中には『武器』類の他にも、『殺し合い』や『サバイバル』に必要な最低限の物資も入っています。
こちらは全員共通。
この催しにおいて皆様方が守るべき『ルール』をまとめた『ルールブック』も入っておりますので、後ほどご確認下さい。
中には『禁止エリア』のように、守らなければ戦わずして死を迎えるほどの規則も御座います。
『知らなかった』では済まされません。くれぐれも、ご注意ください』
(映像を見てる彼/彼女の視線が、デイパックの方に向けられる。
何をするにしても鍵になるであろう、『支給品』。
果たして彼/彼女は『運のある』方なのだろうか? それは、デイパックを開けてみないと分からない)
『さて『支給品』に続きましては……こちらは、『専門家』に説明して致くこととしましょう。
我らのこのイベントに快く協力を申し出て下さった、5名の博士たちです。是非拍手でお迎えください!』
(画面の中で、パラパラとやる気のない拍手が上がる。
ディートハルトは1歩下がって、白衣の人物たちを招き入れる。
現われた5人の老人は――異形。そうとしか言いようのない異様な雰囲気と外見の持ち主ばかりだった。
共通するものは、その年齢と、白衣と、瞳の奥に垣間見える高い知性の光ばかり。
いや……それに加えて、皆おそろいの『チョーカー』……いや、『首輪』、だろうか?
ともあれ、両目に丸眼鏡のような機械をはめ込んだ老人が、機械の左手でマイクを受け取る。軽く咳払いする)
『まったく、よく喋るテレビ屋じゃな。
そうじゃな……ワシは、ドクターJ、とでも名乗っておこうかの。
諸君らが見ているこの映像、それを映しておるはずの『携帯テレビ』を開発したのが、ここにおるワシらじゃよ。
ま、機能自体はつまらんものだがな。
建物の中や地下や、水中でさえも画像の受信に問題ないはずじゃ。防水も完璧じゃし、充電なども考えずとも宜しい。
とはいえ、例えば銃弾などの攻撃に耐えられるようには作っておらんからの。
今後も『こちら』からの連絡は全てそれを通じて行われる。
重要な情報の聞き逃しをしたくなければ、それなりに大事に扱うことじゃな。ひっひっひっひ……』
(老科学者は笑う。彼/彼女は考える。
この『携帯テレビ』とやらも『デイパック』に入れて持っていくべきなのだろう。生き残りたければ、だが。
小さく頷く彼/彼女のことを知ってか知らずか、老科学者は説明を続ける)
『ワシらが作ったものは、もう1つある。
聡いものは既に気付いておるじゃろう……そう、この『首輪』じゃ。
鏡でも使わんと諸君ら自身は視認できんじゃろうが、ワシらがつけておるコレと同じものが、諸君らの首にもついておる。
なにぶん、『脱落者』が出たら『放送』で教えてやる必要があるらしいからの。そのための方便じゃ』
(彼/彼女の手が自分の首元に伸びる。そこに冷たい手触りを感じる。
確かにそこには『首輪』がある。画面の中の老人5名がしているのと、同じような『首輪』が。
老人たちよりも前に画面に出た、イオリアやディートハルトもしていただろうか?
……だめだ、2人とも標準的なタートルネック、まではいかないまでも、かなり首元まで隠れる服だった。
首輪があったとしても、見落としていたかもしれない)
『中には監視はイヤじゃ、首輪なんぞふざけるな、と言う奴もおるじゃろうが……
ガンダニュウム合金製の特製の代物じゃ。壊せるもんなら壊してみぃ。
ま、装着者の首がイカれる方が先じゃろうがな』
(老人の声の端に自信が滲む。後ろに控える4人の老博士たちの中にも、頷いている者がいる。
よほどの自信作なのだろう。不敵そうな笑みの中に、それが伺える)
『そうそう、あとはこいつを伝えておかねばならんのじゃった。
そいつはただ硬いだけじゃない。自爆装置つきじゃ。いや、自爆というより、この場合は『他爆』かの。
お前さんたちがルールを破った場合、容赦なく爆死させることができるというわけじゃ。
これだけ手間と金をかけたんじゃ、『よっぽどのこと』でもない限りそんな真似はせんじゃろうがの』
(トントン、と老人は首元を叩く。その仕草に、彼/彼女の背筋は震える。
爆弾入りの、監視装置を兼ねた、首輪。文字通り命を握られていることを自覚する)
『首輪に仕込める程度の爆薬で死ぬわけがない、と思っておる者もおるだろうが……
ま、これも試したければ勝手に試すがいい。警告はしたぞ。ワシはもう知らんからな。
なお、爆破させられる条件については、ルールブックとやらを読むがいい。そこに書いてあるそうじゃ。
正直ワシらも知らん。聞かされておらん。
おおかた、『逃げ出したら爆発』とか、『禁止エリアに踏み込んだら爆発』、といったとこだろうがの。
頑丈な造りにしておいたから、まず誤作動だけはないじゃろう。そこは安心するがいい』
(後ろの老人たちも、ドクターJの言葉に頷いている。「ワシらの設計に間違いはない!」などといった声も聞こえる。
一旦マイクを下ろしかけた老博士は、そして最後に思い出したように付け加える)
『この悪趣味な椅子取りゲーム、『バトルロワイアル』は、もはや誰にも止められん。死にたくなければ、頑張ることじゃ』
(老人はそう言い切ると、傍らに歩み寄ってきていたディートハルトにマイクを返す。
出てきた時と同じように、ゾロゾロと画面の外に出て行く博士たち。ディートハルトが仕切り直すように画面に手を振る)
『以上、技術担当の博士たちでしたー。皆様、盛大な拍手でお送りください』
(再びやる気のない拍手の音。TVのバラエティ番組などではおなじみの演出だが、はて、誰かスタジオに観客でもいるのか。
画面の中央に戻ってきたディートハルトは、見るからに張り切った様子で声を張り上げる)
『では、これで最初の『放送』はおしまいです!
次に皆様方に会えるのは、おそらく6時間後の『第一回定期放送』。皆様方が生きておられましたら、ですが。
それまで皆様、頑張って『バトルロワイアル』を――』
(――と、傍目にも「一番盛り上げよう」としているその時に、画面の中に入ってきた影があった。
腰をかがめて小走りにディートハルトに近づいてきたのは、1人の黒服。
さきほど「間違えて画面内に残ってしまっていた」男たちと同じ服装の、別の男だ。
興を削がれて露骨に顔を歪めるディートハルトに、黒服は1枚のメモらしき紙切れを渡す。
一瞥したディートハルトは、驚いた表情。
「……これホントに?」「ホントです」 小声で囁き交わす声までマイクに拾われている。
やがて数度首を振った彼は、気を取り直したようにマイクを握り直す。
メモを持ってきた黒服は来た時と同じように小走りに立ち去る)
『……えー、ここで大事な『お知らせ』があります。
皆様方に配られましたデイパックの中に、『
参加者名簿』というものがあるのですが……。
こちら、ご確認頂ければ分かりますが、52名分の名前が書かれているはずです。
実はこれ、こちら側の『手違い』でして。
いや、そこに書かれた名前は確かに間違いないのですが――あと他に12名。
『名簿から名前が漏れてしまっている参加者』がいるようです』
(申し訳なさそうな表情を浮かべ、ディートハルトは頭を下げる。
「手違い」……? そんな、重要なことを……? 本当に……??)
『えー、ただいま再確認の最中でありますが、おそらく間違いのないことだと思われます。
つきましては、それらの方々のお名前は、後ほどの『放送』で改めてご報告させて頂こうと思います。
では、改めて――
『 バ ト ル ロ ワ イ ア ル 』 、スッタァ~~ト、です!!!』
(ディートハルトが仰け反りながら叫びながら拳を突き上げる。そこで唐突に、『携帯テレビ』の映像が途切れる。
始まった時と同じように、勝手に電源が切れたらしい。
騒々しかったその機械は、もはやウンともスンとも言わない。
彼/彼女は夢から覚めたような気分で、周囲を見回す。
知らない光景。知らない土地。
この場所で52名、いや、64名と、戦って、殺しあって、生き残らなければならない…………??)
【主催者:イオリア・シュヘンベルグ@機動戦士ガンダム00】 (?)
【主催側勢力】
【進行役:ディートハルト・リート@コードギアスR2】
【補佐役:黒服たち@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
【技術担当:ドクターJ@新機動戦記ガンダムW】
【同:プロフェッサーG@新機動戦記ガンダムW】
【同:ドクトルS@新機動戦記ガンダムW】
【同:H教授@新機動戦記ガンダムW】
【同:老師O@新機動戦記ガンダムW】
【OP登場参加者:参加者の誰か、あるいは全て(?)】
【
基本ルール】
参加者全員が、最後の1人になるまで殺しあう。
【開始時の状況】
参加者は、気がついた時点で会場内にいる。
各人のすぐ傍にはデイパックがあり、デイパックの上に携帯テレビが置かれている。
【支給品】
基本的な共通支給品の他に、
参加者名簿(後述)、ルールブック、携帯テレビ(後述)、ランダム支給品。(1~3個)
【放送について】
開始より6時間ごとに、共通支給品『携帯テレビ』で『映像つきの放送』が流される。
死亡者の報告のほか、何らかの連絡事項が伝えられる可能性もある。
【携帯テレビ】
ポケットに収まる程度、携帯ゲーム機程度のサイズと形状をした端末。
液晶画面とスピーカーらしき部位が片方の面にある他は、スイッチや音量調節、カバーの類は見当たらない。
『放送』の時間になると勝手に電源がついて映像と音声が流れ、終わると勝手に切れる。
完全防水で会場内のどこに居ても『放送』の受信可能。
ただし「銃弾などに耐えるようには作ってない」。一定以上の力が加わった場合、壊れる可能性がある。
主催者側からの『放送』を参加者が聞くための唯一の手段。
【名簿】
最初の時点では(書き手枠を除く)52名の名だけが書かれている。名前の下には何かを書き足すのに足る余白がある。
ただ12名分足りないのは「手違い」であり、実際の参加者は64名であるとOPで告げられている。
後の放送で改めて告げる、との予告はされたが、いつどのような形で発表されるのかはまだ不明。
最終更新:2009年10月23日 22:24