第二回定時放送、または66番目の登場人物 ◆LJ21nQDqcs氏
そこはモニターの山だった。
わたしはぬいぐるみを抱いたまま、無数のマウスとキーボードを操り続ける。
開始と終了を繰り返し続けて、もう幾千となるだろうか。
コレほどまでにモニターに長い間集中して向かったのは、果たして何時くらいぶりか。
大仰なこのヘルメットから下されるヴィジョンを基に、
処理速度を上げたわたしの感覚が、最早わたしの感情よりも遥かに速い速度で、迸る。
トップ率.756。今一勝負終えて、.757に上がったか。R4807。まだまだ上げられる。
鳳凰位などと言ってもこの程度であっただろうか。なんの歯ごたえも無い。
ガンダムなどというふざけた名前のあの機体も、まるで駄目だ。話にならない。
嗚呼、先程のあの凄まじい支配を見せた、あの打ち手とまた打ちたい。
あの対局には、今まで無数のモニターを同時に操っていたわたしも、意識を収束させねばならないほどだった。
全ての意識を収束させれば、あの支配も全て断ち切ることは出来る。
そんなオカルトはありえないからだ。
いくつかのモニターの先で爆発が起きる。最早なんの感慨も無い。
丁度タイミングが良かったのであろう。モニターの殆どで終局が訪れた。
「投了です」「お母さん…!お母さん…!」「タンヤオドラ2」「リーチのみ、1300」「嫌だ!死にたくない!」
「光が…」「流局、ノーテン」「待ってくれ!」「俺の、俺の右腕はどこだ?!」「6000オール」「化物めぇ!」
「やめて!殺さないでえええええええええええええええええええ!!」
対局にアクセントが加わり、点棒と生命の支払いが終わる。
どうやら、命のやりとりをしている、ということを意識させるための措置のようだが、
最初の一時間ほどで集中状態に入った為、なんら揺らぐことはない。
硝煙と土煙と別世界の空がモニターに映され、わたしの分身達も銃を下ろして次の指令を待つ。
ふと表示を見れば、もう4桁、か。試験としてなら十分な数は揃ったはずだ。
不意にモニターの一部が入れ替わる。
これは予想してなかった。
そして、まだあどけない少女の、だが機械的にも程がある声がモニターから響き渡った。
■
『こんにちは、みなさん。
これより第二回定時放送を始めさせていただきます。
戦闘中の方も、休憩中の方も、一時手を休めて傾聴していただくことをお勧めします。
・・・・
・・・
・・
・
よろしいでしょうか。
まず最初にお詫びび致さねばならない案件があります。
正午に運転再開を予定しておりました列車ですが、作業が滞っている為
今しばらくのお時間がかかります。
午後三時からの運行を目指して現在鋭意作業中でございますので、
参加者の皆様におかれましては、どうぞそれまでお待ち頂けますようお願い申し上げます。
なお、列車内は禁止エリア外とさせてただきます。
列車から一歩でも外に出られた場合は、その限りではございませんので、ご注意下さい。
次に午後三時からの立ち入り禁止エリアについて、発表させていただきます。
【C-6】 【D-6】 【E-5】
この3エリアに関しましては、午後三時から立ち入りを禁止させていただきますので、
参加者の皆様ご注意下さい。
次にこちらで確認された、午前六時からの死亡者を発表させていただきます。
再度の読み上げはございませんので、ご注意下さい。
以上14名です。
現時点でお残り頂いております参加者は、36名となります。
また、現在全エリアを通して快晴ですが、
午後三時前後から、D-6エリアを中心に濃霧が予想されております。
視界が悪くなりますのでご注意下さい。
私からは以上です。
第三回定時放送で、またお会いしましょう。
最後に遠藤からの挨拶で、第二回定時放送を締めさせていただきます』
■
『諸君、この六時間でも諸君はよく頑張ってくれた。
その尊い犠牲と奉仕精神には、私を始め主催帝愛グループは感嘆の意を評さざるを得ない。
諸君の戦いはまさに芸術である。その魂の輝きは、必ずや明日の糧となるだろう。
そして、そんな健気な諸君のために、私からせめてもののプレゼントとして、諸君に新しい仲間を紹介したい……!
そう…!《66番目の仲間》だ……!
彼女は殊勝にもこのゲームに自らを捧げると、そう宣言してくれた……!
なんとも…!なんとも美しい奉仕精神ではないか…!そして、彼女は既に、そう…!
12時間前からこの島に居る……!
名を紹介しよう……!
彼女は諸君と同じ条件だ……!基本支給品を与えられ、それとは別にランダム支給品を3種与えられている……!
同じ…飽くまで、同じ条件…!
果たしてその生命をすぐに散らしてしまうのか、はたまた最後の独りとなるのか……?
諸君……!新しい新入生を歓迎してくれたまえ……!
では六時間後、第三回定時放送でまた会えることを楽しみにしている……!以上だ……!』
■
「そうか、もう、なのですね」
わたしは放送を聴き終えて、そう呟いた。
この部屋で12時間、ひたすらに『別世界での戦闘行為』を繰り返させていたのは、
やはり、ここで実戦投入させるためであったのか。
それにしても、予想していたよりもやや、早い。
参加者の減りも予想よりも遥かに、速い。
なにかトラブルがあったのか、それとも彼らの中で何か焦らざるを得ない事情が起きたのか。
【ゼロシステム】は、それに対してなにも応えてはくれない。
オンライン購入し、数を増やし続け、32人を数える【妹たち】はなにを思うのか。
しかし彼女たちは話し相手にはなってくれない。
ただ命令に従い、【MDシステム】によって、わたしの手足のように動くだけだ。
あらゆる可能性を模索し、三桁に届くかという予測を立てたその頃、モニターの一つが一人の男を映し出す。
『よく今まで働いてくれた。そして、これからが本番だ
今まで見つからなかったのは、まさに幸運だったな。
この部屋ごと潰される可能性もあったというのに。
まぁいい。無論【
宮永咲】は無事だ。君が優勝したら身柄を無条件で引き渡す点も、守ろう。
さぁ、殺せ。阿鼻叫喚の魑魅魍魎が跋扈する、この島で
生き残ってみせろ。
君の働きにはわたしも期待している。次の定時放送後にまた連絡を入れる。
その時まで生き残っていたら、今度は【宮永咲】と話もさせてやろう。
頑張りたまえ。健闘を祈る』
金髪の男はそう言い終わると、一方的に通信を閉じた。
ディレクター、ディートハルトと言ったか。
どうせ、予め仕込んでいた映像を流しただけに過ぎないだろう。
逆探知も無駄だと分かる。
それにしても
咲 さ ん
嗚呼生きていてくれたのですね。良かった。早くあなたの声が聞きたい。
咲さんの為に、千人もの命を散らさざるを得なかった。
その犠牲がようやく実を結ぶ、その一歩手前まできた。
しばらくはあいつらの信頼を得るために、殺し合いに乗るしか無いだろう。
だが、あいつらが本当に、咲さんを無事なままで済ますとも思えない。
早く咲さんの居場所を探し当てて、この島から逃げ出す方法を探さねば。
チャンスは…そして他の参加者とコンタクトを取る方法は…
とにかく生き残らなければ。とにかく命の危険をもたらすであろう可能性を、刈り取らなければ。
そして、他人を殺し合いに参加させて、自分たちは絶対に無事であろうと慢心する、あいつらに教えなければ。
Such an Occult is Absolutely impossible!
そんなオカルトありえません、と。
【E-6/小川マンション410(405号室/一日目/日中】
【原村和@咲-Saki-】
[状態]:健康。電脳(イントロン)状態。
[服装]:清澄高校夏服
[装備]:
[道具]:基本支給品、パソコン33台、妹たち@とある魔術の禁書目録*32、ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW
モビルドールシステム@新機動戦記ガンダムW、オンラインショッピング権
50億ペリカ(デバイス内にデータとして保存)
※他にもペリカを利用して武装を強化しています。他の書き手さんにおまかせ。
[思考]
基本:咲さんを救出し、島から脱出する
1:三時までは静観。邪魔をする存在は、モビルドールシステムを駆使して、妹たちを手足のごとく動かし殲滅する。
2:武装を強化するためにオンライン麻雀でペリカを稼ぐ
3:魔法とか超能力とかSOA(そんなオカルトありえません)!
[備考]
TV版最終回合宿直後の状態からの参戦です。
すでに『別世界』にて千人以上の人間を殺害しています。
【モビルドールシステム@新機動戦記ガンダムW】
パイロットなしにモビルスーツを操縦出来るシステム。
原村和はその無線を利用して妹たちを操作している。
【妹たち@とある魔術の禁書目録】
御坂美琴の体細胞クローン。
能力はレベル3の欠陥電気(レディオノイズ)に調整されている。
オプションで軍用ゴーグル、おもちゃの兵隊が付いてくる。
実験で死亡しなかった10032~20001号まで存在する
検体番号00000号、9982号、10032号、20001号は欠番
ギャンブル船の裏カタログに記載されている。
購入には1体に付き5000万ペリカ(+3000万ペリカ)必要。
【オンラインショッピング権@オリジナル】
島内のパソコンからギャンブル船にアクセスし、
オンライン麻雀でペリカを稼いだり、ギャンブル船の交換リストから景品を購入したり出来る権利書。
ペリカはデバイス内に転送され、景品は所有者の元に転送される。
※
原村和は参加者ではない。
故に首輪もダミーである上、優勝特典も与えられていない。
ただ優勝した場合、宮永咲は解放され、2人ともに元の世界に帰ることを約束されている。
現在、宮永咲は五体満足、精神的にも無事ではあるが、現在地は不明である。
最終更新:2010年01月06日 23:07