オープニングプレリュード アンドウ-人生逆転ゲーム-  ◆7jHdbxmvfI



借金を返す生活。
それは決して楽なものではない。
特に返す額が高額であり、そして定職についていなければそれはもう悲惨なほどである。
それは彼、安藤守にも当てはまる。

そして幸か不幸か、彼には不思議な出来事が起こった。
それは表面上は安全が保障されているようで、その実危険にありふれた仕事の命令だった。


「………ん?なんだよここ。俺の部屋じゃない?一体何が……」

安藤が目を覚ました時、部屋は全くの別の物となっていた。
四畳半の薄汚れた部屋は綺麗なモデルルームのような八畳の部屋となっている。
手前には大きなテレビ画面。そして机にはある一通の手紙と封筒が置いてあった。

「これは…………何?指令書?」

安藤の目には自然と手紙の文面が飛び込む。
そこに書いてある文章。それは

『貴方は今回のゲームのディーラーに選ばれました。無事ゲームを完了させた場合貴方には報酬として十億円が送られます。
断る場合、この部屋の酸素を抜き、一時間後には窒息死します。今回の仕事をお受けする場合すぐにテレビをお付け下さい』

という、簡素な文章だった。
十億円、窒息死。
この二つを比べ、安藤の動きは素早かった。

「じょっ、冗談じゃない、誰が死ぬかよ!」

そう叫ぶとすぐにテレビをつける。
するとモニターからは、サングラスで素顔を隠したいかにも怪しい姿の人物が映し出された。

「やあ、ミスター安藤。想像以上に早い決断。素直にお褒めしよう。と、あまり長話も意味も無いだろう。ではすぐに本題に移る。
もし質問がある場合、テレビに向かって質問をしていただければ、私はすぐにお答えしよう。これは録画ではなく、中継なのでね。
私が一方的にメッセージを伝えるわけではない。これは理解が悪いであろう君に対する配慮でもある。感謝してくれたまえ」
「っ、お前誰だ!俺に何をやらせるんだ、ゲームってなんだよ!!」

安藤はその言葉に少しカチンと来たのか少々の怒気が篭った声で言い返す。
するとすぐにテレビの男は返答を返す。

「名前はいえない。正体は……そうだな。今回のゲームのスポンサー兼プロデューサーと考えてくれれば良い。
君はさしづめMCといったところだ。そしてゲームの内容だが、全てはその封筒の中に書いてある。君の最初の仕事はその封筒の中に
書いてある事をしていただければ良い」
「えっ……」

安藤はすぐに封筒を開け、中身を見る。
そこにはゲームのルール、そして仕事内容が書いてあった。

『仕事内容
ゲームのルールの説明。そして、適当に反抗的な人間を見つけ、一人か二人の首輪の爆破。爆破は封筒に内封されたスイッチを
押す事によって起爆する。
一度押せば三十秒のタイマーがなり、二度押せば30秒経たずして起爆させることが可能』

「……冗談ですよね。首輪を爆発って……ありえない。そうだ。どうせ酸素を抜くとかも嘘でしょ。もう止めてくださいよ。
それにこれ………カイジさんの名前もあるじゃないですか。俺……これでも友達大事なんですよ。だから勘弁してくださいよ」

安藤は薄ら笑いを浮かべながら流石に拒否をしようとする。
だが、スポンサーの男は特に意に返さずに続ける。

「無論、文面だけで信じてもらおうとは思っていないさ。それに実は君の前に一人、同じように依頼し、断った人間がいた。
そして断った場合の結果も既に出ている。お見せしよう」
「えっ!?」

スポンサーの男の顔に薄ら笑みが浮かぶと同時、部屋の天井が開き、一つの物体が落ちてくる。
それは安藤のすぐ真横に落下し、安藤はそれを視界に捕らえる。

「えっ………ふっ、ふふふふふふふっ、古畑!?」

古畑。
安藤の目に映ったのはかつてエスポワールで共に戦った古畑だった。
最も既に顔は赤黒く、目は充血し、口からは血泡が吹き出し、既に死後硬直も始まりつつある完全な死体となってはいたが。
そしてそれを見た安藤自身は顔面蒼白といった表情でその場に凍り付いている。

「さて、もう一度聞こう。『友達が大事な優しいミスター安藤』貴方は親友のカイジが参加するゲームのディーラーになるか
それともその古畑と同じように死ぬか。最も貴方に様子では……そうですね。では貴方の部屋の酸素を抜く事にしますね。
でも喜んでください。さすがに、二人続けてディーラー候補が辞退ではゲームを開始するのは困難ですから、貴方の命に免じて
ミスターカイジの命は多めに見ましょう、良かったですね」
「まっ、待ってくださいよ。俺……やらないなんていってないでしょう。やりますよ。俺。……そういえばカイジさんと俺って
最近あんま会って無いんですよ。だから友達って言ってもそんな深い中じゃ……だからやりますって、本当にもう、全力で」
「そうですか。では、十五分後に奥の扉が開くのでそこから真っ直ぐに歩いて会場に行ってください。それまでにルールを読み込み
精々貴方なりにゲームを盛り上げてくれる事を期待してますよ」
「はっ、はい!」

安藤が力強く答えると、テレビの画面は消え、その後プロデューサーからの言葉は無かった。



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最終更新:2009年10月21日 21:58