「クソッ……クソッ……!何で……何でこんな目に……!」
行くあてもなくさまよいながら、男――伊藤開司は零す。
職もなく、ギャンブルに関してのみ異常に勘が冴えわたる以外は特に脳のない、言ってしまえばダメ人間の彼に目の前で起きた惨劇は衝撃過ぎた。
だが、その惨劇は現実……!
非情なる、圧倒的現実……!!
打ちひしがれている間も、腕に巻かれた時計は無情にも時を刻む。
「……畜生っ…!」
カイジは言ってしまえば、普通の男だった。
なんら異能の力も持たない、ただの男。
そんな彼が生き残るにはどうすれば良いのか?
カイジの頭に黒いものがもやもやと浮かんでいく。
「やるしか……ないのか……?!」
今まで命を削った事は幾度となくあったが、こういう形での命の削り合いは経験した事が無い。
それでも、やるか、やられるかではない、やるのだ。
だが……この男は、まだ迷い続けていた。
(殺せる……のか?この俺が?)
殺人、という絶対的な悪。
それを犯せる自信と覚悟は、今のカイジにはない。
迷い続けながら、カイジは自分のデイパックの中身を確認しようとした。
その瞬間だった。
「動くな。」
背後で声がした。
それと同時に首筋に、冷たいものがあてられていた。
「今から二、三質問をさせてもらう。拒否は許さん。」
若い女性の声だった。
カイジの身体にどっと汗が滑り落ちた。
「…お前の名前を聞かせてもらおう。」
「……伊藤、開司だ。」
「そうか、確かに名簿にある名前と一致する……では次の質問だ。お前はあの大部屋にいたメガネの男を知っているか?」
「いや…」
「……そうか、では最後の質問だ。お前はこの
殺し合いに乗っているのか?」
「……!!」
それを今まさに考えていたところだ、と言おうものなら首につきたてられたナイフをざくり、と差し込まれる。
勘の鋭いカイジはそれが一瞬で分かってしまった。
いや、カイジでなくとも分かるだろう。
それが分かるぐらい、後ろに立つ女は強烈な殺気を発していた。
恐らく彼女は、荒事に慣れている。
それも、命のやり取りなど日常茶飯事の事なのだろう。
そんな女を前にして、自分は生きていられるのか?
答えは――ノー、だ。
カイジは…何の力も持たないただの男なのだから。
「どうした?答えられないと言う事は、肯定と捕らえても問題ないのか?」
「……いや。」
重い口を開く。
その時だけは、時間が止まったかのようになっていた。
「……俺は、乗らないっ……!!こんなクソみたいな……殺し合いなんかには……!!」
「…本当か?」
「こんなところで……嘘をついてどうなる?」
「…それもそうだな、その言葉、偽りではないようだな、信じよう。」
首筋にあてがわれていた冷たい感覚が無くなった。
それと同時にカイジの身体から汗がまたどっと噴き出した。
「怖い思いをさせてすまなかったな。こっちを向いても良いぞ、このままだと話しにくい。」
「ああ…」
言われるがままに振り向くと、そこに立っていたのはやや小柄な少女だった。
その顔には横一文字に走る大きな傷跡があり、カイジはその様に一瞬言葉を失った。
「…傷が気になるのか?」
カイジの表情から察したのか、目の前の少女は淡々と話す。
「いや……すまない。」
「昔の傷だ。」
「…そうか。」
「自己紹介が遅れてしまったな、私は津村斗貴子、錬金の戦士だ。」
【A-3森/1日目朝】
【伊藤開司@カイジ】
[状態]:健康、汗びっしょり
[装備]:なし
[道具]:荷物基本支給品一式(アイテム未確認)
[思考]1:斗貴子と情報交換
2:殺し合いには乗らない
【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:荷物基本支給品一式(アイテム確認済み)
[思考]1:カイジと情報交換
2:殺し合いには乗らない
3:カズキと合流したい
最終更新:2012年01月15日 21:48