さて、ここに櫻井流人という少年がいる。
性格は明朗快活でポジティブ。ヒトの何倍も行動力があり、面倒見も良い。
ある少女からは“昼の少年”と例えられたほど。
これといったスポーツに打ち込んでいるわけではないが運動神経は優秀で、成績はさほど良くないけれど頭は良い。
容姿端正で背も高く、また内面も大人びているため、高校一年生だというのにしょっちゅう大学生と間違われる。
人望も交友範囲も――主に女の子から――大きく広く、彼に依頼すればご町内のたいていの人間の情報は集められる。それ故に有事の際は頼りにされる。
――ただし、性癖は『マゾ』だ。それも重度の。
とは言っても、肉体的な被虐行為に快感を覚えるという意味ではない。
むしろ精神的な暴力、すなわち異性から憎まれ罵倒され、拘束され束縛され、
『あたしだけのものにならないなら殺してやる』と殺意を持って首を絞めてくれるような、独占欲と嫉妬に溢れる異性を好む。
憎しみは愛情の反転であり、嫉妬も、独占も、全て愛情の産物。
ならば、“殺したいほど憎い”とは“殺されるほど愛されている”ということに他ならない。
そんな彼の夢は、『心から愛する女性に、殺してもらうこと』。
もし彼を殺したいほど独占してくれる女性が現れたとしたら、その時は命を捧げても構わない。
あくまで、『愛し愛される両想いの相手』というのがポイントなのであって、別に自殺願望者というわけではない。
しかし、彼を殺してくれる女性はなかなか現れない。
それも当然だ。『恋人になってもいいけど、俺を殺してくれない?』と言われて、イエスと答える女性はなかなかいない。
というか、よほどの奇跡が起こらない限りは現れない。
だから、彼の心には虚無ばかりが溜まる。
“殺されるほど愛されたい”という手段が、いつの間にか、“誰でもいいから殺してほしい”にすり替わり、
そして“殺して欲しい”からこそ“死ぬことができない”という悪循環。
だから、櫻井流人は、己の人生に価値を見いだせない。
だからこそ、櫻井流人は死ぬことを少しも恐れていない。
これだけなら、櫻井流人の悲劇は、ただの自己完結に終始する。
しかし、彼の“歪み”はそれだけではない。
櫻井流人には、姉がいる。
姉の名を、天野遠子。
ドジでそそっかしい、けれど何かにつけて流人の女癖の悪さを説教する、流人にとってただ一人、頭の上がらない女性。
別の姓を持ち、別々の家で育ち、またある“事情”もあって、二人が姉弟なのだと知っている人間は少ない。
けれど、父を早くに亡くし、母からは育児放棄に近い環境におかれた流人にとっては、この世でただ一人の肉親といっていい存在。
彼にとって唯一の、マゾヒズムな“情欲”からではなく、“親愛”を込めて愛している女性だった。
そして、天野遠子もまた、実の母親から『殺され』かけ、育児放棄されて、幸薄い半生を送って来た女性だった。
にも関わらず、天野遠子は自己犠牲精神にあふれた高潔な女性だった。
己がどんな理不尽な目にあったとしても、少しも悲しい素振りを見せずに、自分の幸せより他人の幸せを優先する。
自分の人生の労力の大部分を、己の為でなく周囲の人間を幸せにすることに費やしている。
だから、櫻井流人は天野遠子の幸せを願う。
これまでの半生で、理不尽な不幸が多かっただけ、彼女が喪われることが、許せないと思う。
“天野遠子が喪われることだけは許せない”という強迫観念は、次第に櫻井流人の心を侵しつつある。
周囲の人間から犠牲を出してでも、天野遠子を守り抜かねばと思っている。
実際、彼は後に“天野遠子と彼女の想い人を結ばせる”為だけに、想い人に懸想していた少女に強姦未遂を働いているのだが、
それはこの『実験』に呼ばれた時点では知られていないこと。
さて、長々と彼の“歪み”について記述してきたが、要するにこれは簡単な、とてもありふれた問題だ。
そんな風に“己の命に重きを置いていない”少年が、“どんな非道を尽くしても守りたい”家族と共に、
“たった一人しか生き残れない椅子取りゲーム”に巻き込まれたら、どうなるかという問題だ。
※ ※
「よっ、少年。お互いとんでもないもんに巻き込まれちまったな」
流人は顔見知りにでも会ったように気軽に親しげに、その少年を呼びとめた。
「お前も、参加者の一人か」
やけに事務的な硬い声音で、赤毛の小柄な少年は対峙する。
「ああ、そうだよ。しかし
殺し合いに乗るつもりはない。
俺は櫻井流人っていうもんだ。少年の名前は?」
「シルバー……姓はない」
肩を越えるほど伸びたボサボサな赤毛の下から、眼光鋭い銀色の目が警戒を隠そうともせずに睨んで来る。人と距離を置くタイプの匂いがした。
どこかアウトローじみたその格好と態度が子どもらしくないけれど、実際の年齢はそれほど高くないだろう。せいぜい10歳前後か。
――もしこれがゲームに乗った人間ならば、楽な獲物を見つけたと喜び勇んで襲いかかることだろう。
無条件に生存率が下がるという点では気の毒だ。
――逆に天野遠子のようなお人好しなら、間違いなく保護対象として同行させることになり、そして足手まといとしてお人好したちの寿命を縮めることだろう。
無条件に仲間の生存率を下げてしまうという点ではなお気の毒だ。
「そうか、なら情報交換がしたいんだ。少年に知り合いはいないのか?
お互い知っている連中がいたら早めに合流したいだろ?」
「一応いるな……ゴールドという名前の、俺と同い年ぐらいの子どもに、“仮面の男”と名簿に書かれた参加者だ。
しかし、“仮面の男”に近づこうとは考えるな。アイツは己の為なら平気で人を殺すような人間だし、得体の知れないところがある。
俺もアイツの能力を正確には把握できていない……お前にはいるのか?」
「ああ。姉さんで二つ年上の天野遠子っていう女がいるんだ。腰まで届くような長い三つ編みしてるから、すぐに分かると思うぜ。
それから、その女性の未来の彼氏の井上心葉さんっていう人だ。学校は違うけど俺のいっこ先輩で、…………『俺と同じ』で、『作家』だな」
――つまり、
天野遠子を生かす為に、この子どもは殺すべきである。
「作家?」
シルバーはけげんな顔をする。
それはそうだ。作家が自由業とはいえ、流人は定職に就くには若すぎる年だし、そもそも流人が『作家』になるのは、今、この瞬間なのだから。
「そうだよ。ハッピーエンドを描くのが仕事さ」
そう、櫻井流人は、物語の傍観者ではなく、物語の『書き手』になる。
「俺は――姉さんを殺し合いから生還させるっていうハッピーエンドな物語を描かなきゃならないんだ!」
今だ、と思えば体は即座に動いた。
拳の中に握りこんでいたその“笛”を素早く口元にあてる。
――――ッ!!
細く長く笛を吹き鳴らすと、転瞬の後に咆哮。
――ガルルルルルルルル!!
二頭の“狂犬”が、赤毛の少年を噛み殺さんと高く跳躍した。
※ ※
シルバーは、“サクライリュウト”と名乗った男を、最初から警戒していた。
だからかもしれない。
彼に“知り合いはいないのか”と聞かれた時に、誰よりも親しい姉、ブルーのことを教えられなかった。
リュウト自身には、先刻のスーツの男のような危険性は見られない、しいて言えば妙に虚無的な瞳をしただけの、普通の青年にみえた。
しかし、2人が立つ林の空気の異常さは、ひしひしと感じていた。
男の出現と同時に放たれた、背筋の寒くなるような殺気。
それは、例えるなら森の中で凶暴な野生ポケモンの出現を予知した時と似ていた。
音も影もないけれど、確かに感じられる“獲物を見る視線”。
そして、男が突如として“笛”を取りだした瞬間、シルバーは『来る!』と確信した。
――ガルルルルルルルル!!
獣の鳴き声でありながら、金属同士をこすり合わせたようなキーキー音の咆哮。
耳触りな唸り声に威圧され、それでもシルバーは動いた。
奇襲として来る“それら”を回避すべく、逃げに徹した。
――眼の前の、サクライリュウトに向かって。
「な――!?」
襲った標的に逆に突進され、一瞬動転を声に出したが、リュウトは即座に目つきを鋭くしてシルバーを迎え撃つ。
思いのほか冷静だ。しかし、体格差を生かして拳の下をくぐり、これを回避。
シルバーが立っていた場所から鍵爪の空を切る風圧が届き、
がキン!と牙が撃ちあわされる音が背中のすぐ後ろで響く。
しかし、ほぼ同時にぎゃりぎゃりと地面がこすれる減速の音。
当然だ。シルバーを追撃しようとすれば、位置的に“命令主”である流人を傷つける危険性が大きい。
あまり小回りが利かない大型の獣ならば、当然に追撃を躊躇う。
それを見越しての前面突破。
リュウトの脇の下をくぐるようにして突破成功。減速せずに、姿勢を低くしたままくるりと前転。
前転の勢いを利用して数メートルの距離を空け、そしてシルバーは初めて、襲った獣の姿を認める。
鋼のデルビル――に似た、四つ足の機械だった。
機械、だろうと推測する。少なくともポケモンとしては見たことないし、同じ個体のポケモンを支給品として二個引き当てた偶然よりは、二体で一セットの機械と考えた方が妥当だ。
青紫色のメタリックボディに、バチバチを赤紫の火花が尾のように揺れている。
細長く鋭い鍵爪。ぞろりと並んだ牙。
そして、その体長はシルバーの身長よりも大きい。
奇襲に際して一瞬で距離を詰めたスピードといい、もしあの牙や爪で抉られれば、ぞっとしないことになるだろう。
このまま逃げ切るのは難しいと判断し、シルバーは舌打ちと共に己の支給品――モンスターボールをホルダーから取り出した。
※ ※
眼の前の少年、どうやら少なからず修羅場慣れしているようだ。
流人の支給品“キラーレイビーズ”の奇襲を紙一重でかわし、喧嘩では場数を踏んだ流人の拳をかわしてみせた。
“足手まとい”と断じたことに心の中で謝る。悪かった。
しかし、だからといって流人の為すことが変わるわけではない。
殺す。
天野遠子を殺させない為に、全て殺す。
ぽん、と少年の投げた紅白の球体が煙を発し、そこから小さな“影”が飛び出す。
「エイパム! “こうそくいどう”!」
出現したのは、紫色をした“影”だった。
“影”と表現するしかなかったのは、とにかく疾かったからだ。
気配を察して飛び出した赤紫のキラーレイビーと空中で交差し、キン、と金属音を鳴らす。
レイビーを引っかくように一撃見舞った“影”はそのまま空中を横切り、木の上の影へと姿を隠す。
しかしレイビーは、以前として無傷。
当然だ。レイビーの材質は核金という超常の合金。
いくら素早いからといって、小動物の軽い一撃でそうダメージを負ったりはしない。
しかし、殲滅に越したことはない。
――――ッ!!
説明書に書かれていた通りに犬笛に息を吹き込む。
一体――仮に“A”と呼称する――を少年へ。もう一体の“B”を、“紫”の影へ。
生身の子どもや小動物に、彼らの牙に対抗する手段はない。少年には為す術はない。
“A”は“紫”を追尾。“B”は少年の退路をふさがんとカーブを描く。
“紫”を追う“A”が流人たちの周囲で円を描き疾走し、木の葉を散らす。
少年は“B”の一撃を左右に跳ぶことで回避。しかしレイビーの俊足が上回り、爪が左腕を微かに削る。
ぱっと血しぶきが舞い、赤紫の炎が少年の苦悶の顔を照らす。
“B”はすれ違いざまの一撃を加えると、再びカーブを描いて少年に向かって突進。
レイビーを目で追えない少年を翻弄する。
二体のレイビーズが、一人と一匹を追い詰めるようにぐるぐると円を描く。
二頭が四肢を躍動させるたび火花が散り、林の中をテラテラとライトアップする。
流人はふと、思いつく。
狂犬たちはガゼルを追い詰めるハイエナのようにじわじわと優位を保って攻撃しているが、しかし流人に敵を嬲る趣味はない。彼はマゾではあったがサドではない。
一撃で仕留めるにはどうすればいいのだっけと笛の使い方を思案する。
そんな、勝者の余裕に浸っていた時だった。
周囲を旋回していた“紫”が、突如として“B”の射線上に飛び出した。
子猿のような小動物が、赤紫の炎の刹那、照らされる。
一秒後には“B”にぶつかって転倒し、“A”に仕留められる絶好の位置。
その一瞬、これで一体仕留めた、と流人は思った。
しかし
――ひゅん!
紫色の影が、瞬時に透けて消えた。
「な!?」
消失した“影”に、流人はその眼を疑う。
しかし、その“消失”は間違いなく現実で、そして致命的だった。
二頭のキラーレイビーズにとっては。
そう、狂犬の一頭は、影が倒れたところを飛びかかろうとしていた算段であり、“影”の消失は、大ぶりの攻撃が空振りしたことを意味し――
“A”の体躯が、“B”に横殴りに激突した。
通常の成犬の十倍の攻撃力を持つレイビーズ同士が衝突すれば、その衝撃は決して少なくはなく、
二頭の体はもつれ合うようにして、真横に何メートルも吹き飛ばされる。
「“かげぶんしん”――」
淡々とした少年の呟きが、耳に届き、流人は顔を挙げた。
そして、余裕が全て吹き飛ぶ。
いつのまに、取り出したのか、
銃口が、流人に向いていた。
そのコンマ数秒、流人の周りの時間がゆっくりになった。
土壇場になると、時間がスローモーションに感じられるという“アレ”だ。
“殺される”と、そう思った瞬間、それに反発する執念が流人の脳を埋め尽くす。
殺されない。
殺されて、たまるか。
『殺してやる』と言われたことなら、何度もあった。
七股をかけてそれがバレタ時とか。三人の女の子にトリプルデートを提案した時とか。
けれどどの女も口ばっかりで、結局本当に人を殺す度胸なんかないのだ。
スローモーションになった視界に、銃を持つ少年の腕が震えているのが見える。
ほら見ろ。
迷ってるってことは、結局覚悟がないんじゃないか。
覚悟のない人間に、櫻井流人は殺されたりしない。
(撃ってみろよ。撃てる覚悟があるならな)
少なくとも櫻井流人には、その覚悟があり、迷いがない。
ベルトに挟んでいた小型拳銃に手を伸ばす。
誉めてあげたくなるほど、我ながら上出来な早撃ちだった。
初めて撃ったにしては上出来なほどに、銃身の狙いは安定した。
ぱん、と軽くて警戒な音がなった。
少年が右腕を左手で抑えた。
弾丸が少年の右腕を抉った。
それでも拳銃を落とさないのはさすがだが、その傷で狙いをつけることはかなうまい。
――勝った。
流人は今度こそ勝利を確信し、
まさのその瞬間、流人の視界が、暗くなった。
※ ※
計算通り。
エイパムがシルバーの意思を理解してくれるかはぶっつけ本番だったが、
エイパムのトレーナーである少年と何度も交戦していたことが幸いした。
あいつはタイプ相性も知らない初心者の癖に、こういう不意打ちや奇襲はやけに上手いのだ。
リュウトの顔面にへばりついたエイパムに、シルバーは決め手とばかりに指示を出す。
「エイパム! 笛を狙え」
銃口を向けたのは、男の注意を逸らす囮。元よりシルバーに撃つつもりはなかった。
男から逃げる為には、あの狂犬たちを行動不能にするしかない。
しかし、現在のシルバーの装備でそれを達成することは困難。
エイパムの撹乱で同士撃ちを狙ったとしても、決定打になるかは疑わしい。
ならば簡単。狂犬たちに指示を与えているらしい、あの“笛”を何とかすればいいだけのこと。
シルバーは、あの合金の生き物に対処する方法など知らない。
しかし、これをポケモントレーナーのバトルに例えれば、その対処法は単純明快。
トレーナーの中にも、敵に技を悟られないよう、暗号化した指示を送る者はいる。
あの“笛”もその類のものに違いない。
ジムリーダーとの公式試合ならいざ知らず、敵を『倒す』ことに目的を置く野良バトルなら『無防備に孤立したトレーナーをポケモンで狙いにいく』など当たり前。
いくら手持ちのポケモンが強かろうと、指揮官がいなくなった時点で勝利は確定するのだから。
「いでいでいでいでええええっ!?」
エイパムの前足が男の顔面を縦横無尽にひっかき、その顔から笛が弾き飛ばされる。
「しまっ――!?」
男が混乱し、その手が笛を探すように空を切る。
ここが、潮時。
「よくやった。退くぞ」
簡潔にねぎらいの言葉をかけると、シルバーは高く跳躍。
負傷した腕をかばいつつ持ち前の俊敏さで木の枝へと飛び乗る。
エイパムがついて来るのを確認しながら、木から木へと軽く飛び移り障害物を上手く避けて逃げた。
※ ※
キラーレイビーズが回復して立ち上がるのは、思いのほか早かった。
ただし、流人が落とした笛を見つけられなかった為に、追尾の指示を与えられなかっただけで。
(やられた――)
確かに、殺すつもりだった。
この手で人を撃った時は、確かにそれができると確信を持った。
しかし、肝心なところで爪が甘かったせいで失敗した。
原因は二つだ。
相手が五つも六つも年下の子どもだと思って甘くみたこと。
そして、強力な支給品を手に入れたことで、負けるはずがないと慢心をもってしまったこと。
厳密に言えば、流人の敗因はそれだけではない。
単純に、持っている能力の相性が悪かったという問題もあった。
流人は、喧嘩の経験こそあれ、生物を戦闘指揮した経験などなかったが、
シルバーはその戦闘指揮に長けていたという経験の違い。
普通のポケモントレーナーならいざ知らず、ロケット団のような徒党を組んだ悪人と対峙する際には“乱戦”となることが少なくない。
相手はこちらを拘束するか殺害する気で大勢のポケモンに襲わせるのだし、それらに対抗する為にはこちらも持っているポケモン全てを展開する必要がある。
6匹の手持ちポケモンの動きを瞬時に把握して的確な指示を出し、その上で自分自身は敵ポケモンから攻撃を受けない位置に立つという、一見して地味だが難易度を要求される行為。
その状況把握の力が試される戦闘行為で、シルバーは何度も実戦を積んでいたことが、決定打となり、だからこそ“自らを囮にして相手の気を逸らす”という計算ができた。
しかし、それはシルバーの住む世界を知らない流人には分かりようのないことである。
(蛍の時のように、失ってから後悔するんじゃ遅いんだ……
今度こそ死なせない。遠子姉は死なせない。
それぐらいしなきゃ、俺は本当に、生きてる意味がないんだから……)
【C―2/エリア東部/一日目深夜】
【櫻井流人@“文学少女”シリーズ】
[状態]疲労(少)、顔にひっかき傷
[装備]核金NO92(破損、再生中)@武装錬金、『森の人』(残弾10/11)@キノの旅
[道具]基本支給品一式、予備弾倉×1、不明支給品0~1(確認済み)
[思考]基本・天野遠子を生還させる(一人蘇生が可能ならば、井上心葉と天野遠子の二人を生還させる)
1・天野遠子を優勝させる為に皆殺し(弱者とマーダー優先)
※参戦時期は2巻『餓え渇く幽霊』以降、3巻『繋がれた愚者』以前
「はぁ……はぁ……」
狂犬たちを撒いたことを確認し、シルバーは木の上で休息をとっていた。
右の二の腕と左腕の肩近くが、それぞれ血に染まっている。
止血するものは見当たらないが、失血死につながるほどではない。
だがしかし、早急な処置は必要だろう。
「そうだな……旅館を目指すか……」
病院は現在地から逆方向であるが故に、先ほどの男とまた出くわす可能性がある。
病院のすぐ南にあるコンビニもまた然り。
旅館なら最低限、宿泊客の緊急時に備えた救急セットぐらいは置いてあるだろう。
「姉さんから遠ざかるリスクはあるが、それはどこに行っても同じだな……」
最愛の姉、ブルーとの合流は依然として最優先事項だ。
問答無用で殺しに来る相手がいるとはっきりした以上、その危機感は否応にも高まる。
(殺しに来る相手、か……)
サクライリュウトの、ぎらぎらとした視線を思い出す。
電光石火の速さで銃を抜かれ、撃たれたその時、シルバーは確かに『殺される』と思った。
あの目には、確かに“覚悟”があった。
それは、決して正しくない覚悟だけれど、それでも成し遂げると言う強い意思があった。
シルバーも男に銃を向けた。
しかし、元より撃つつもりはなかった。
囮が目的だったのだから。
しかし、なら自分には“殺す為に撃つ”覚悟はあるのだろうか。
少なくとも、最後の一人になる為に殺そうと言う気にはなれない。
己が生きる為、そして復讐すると決めた相手の手がかりを得る為に、非合法に分類される行為を何度も繰り返してきた。
だからと言って、越えてはならない一線を越えるほど、落ちぶれたつもりはなかった。
しかし…………。
「姉さんを生き残らせる為に、人を殺す……?」
あの男は、そう言っていた。
姉を生かす為に人を殺すというのなら、つまり、そういうことになるのだから。
「参加者全員を殺して、自殺して、それで守りたい人を生かす……?」
それは、全く考えもしなかった発想だった。
“人を殺してはならない”と思いこんでいたばかりに、盲点になっていた発想。
シルバーにも、また、姉がいた。
血は繋がっていないけれど“姉さん”と呼び、また彼女も弟としてシルバーに接してくれた。
両親の顔も知らないシルバーにとって、たった一人の家族と言っていい存在。
シルバーに何があったとしても、彼女だけは守れらねばならない。
人を殺さなければ、彼女を守れないかもしれない。
――人を殺してでも?
「……できるのか? 俺に……」
少なくとも、赤の他人とブルーがいて、どちらかしか助けられない時、シルバーはブルーを優先する。
しかし、ならば果たして彼女を助ける為に68人もの人間を殺せるのだろうか。
人を殺せる弾丸の六発収められた、大きなリボルバー式拳銃。
人間の頭蓋などたやすく貫通する、その重み。
これを撃つ覚悟が、果たして――
――視線を感じた。
「あ……」
先ほどの戦闘を共にした、エイパムがそこにいた。
不機嫌そうな、非難するような眼で、シルバーを見ている。
――シルバーは弱くねえ! トレーナーとして大事なものを失わなかっただけだ!
そう、『皆殺し』を実行するということは、すなわち、このポケモンにとって“家族”にあたる少年をも殺すということで――。
「いや、そういうつもりはないんだ。すまない……」
想わず謝った。
――姉の命を誰より優先したいのは山々だったが、さりとてあの“馬鹿”を殺すという踏ん切りもつかないのだった。
【C-2/エリア西部/一日目深夜】
【シルバー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]右肩に銃創、左二の腕に裂傷、疲労(小)
[装備]カノン(残弾6/6)@キノの旅、
ゴールドのエイパム@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]基本支給品一式、予備弾薬と火薬6発分、不明支給品0~1
[思考]基本:ブルーを生かしたい。
1・救急用具の調達に旅館を目指す。
2・流人の言葉に困惑。
【核金No92@武装錬金】
軍用犬(ミリタリードッグ)の武装錬金、キラーレイビーズ。
感覚は犬の二倍、運動能力は十倍。
首輪の「安全装置」を外すと凶暴性が増し、犬笛を持っている人間以外の全てを噛み殺す。
【ゴールドのエイパム@ポケットモンスターSPECIAL】
ゴールドのレギュラーメンバーの一匹。ニックネームは“エーたろう”。
ゴールドとは生まれた時からひとつ屋根の下にいた『家族』であり、そのトレーナーに似てかイタズラ好きな性格。
戦闘では主に、俊敏な動きと手足より器用な尾で敵を撹乱、翻弄する役割が多い。
覚えている技は“ひっかく”“こうそくいどう”“かげぶんしん”“いばる”“バトンタッチ”“みだれひっかき”など。
【カノン@キノの旅】
キノが愛用する大口径のリボルバー式ハンド・パースエイダー(拳銃)。六連発。
元は若かりし頃の師匠が愛用していた銃でもあった。
精度はやや落ちるが威力は高く、キノ曰く『傷口がひどいことになるので、手足に当たってもそのまま失血死する』とのこと。
単手動作式であり、つまり一発撃つごとにハンマーを手で挙げる必要がある。
薬莢を使わずに火薬と弾丸を直接シリンダーに詰め込むタイプなので、弾込めのたびにいちいち液体火薬を雷管に詰め直す作業が必要。
(今回は予備の弾丸、液体火薬と共に支給)
モデルは『コルト M1851アーミー』
【森の人@キノの旅】
キノが愛用するもう一丁のパースエイダー。元は若かりし頃の師匠の弟子が愛用していた拳銃でもあった。相談数は10+1。
22LR光景で全長261mmの細身の銃。威力は低いがカノンよりも精度は高い。
今回は予備弾倉、付属のレーザーサイトと共に支給。
モデルは『コルト ウッズマン』
最終更新:2011年07月04日 01:36