すれちがい

テレポーテーション。あまりにも非現実的な単語。
よく手品師が使う言葉でもあるが、それは確実にタネも仕掛けもあるものなのだ。
潜在能力と語るものも居るが、それが偽りだということは本人が一番よく知っている。
………だから、この本当にタネも仕掛けも無い異常事態に、俺は困惑していた。

「どういうことだよ、こりゃ」

虎金井家との激闘も終末を迎え、やっとこさ平和な日々が過ごせると思った途端これだ。
眠っていたわけではない、意識はしっかりあった、そのはずなのにいつの間にかあの黒い球の部屋に俺は立っていた。
武術家の仕業か?いや、武術というよりは魔法に近いか。
しかし、いくら何でも魔法なんかがこの世界に存在するはずがない。
だとすれば化学的な力?…今の日本の科学はそんなに発展してもいないはず。
ではどうして、何で、俺はここに居る?いくら考えたって答えは出てこなかった。

……思案を止めると、そこで俺にできることは何もなくなった。
なぜなら俺は一般人。ヘタに動くよりはここに隠れていたほうが良いと考えているからだ。
けれど何かしていないと恐怖に押しつぶされそうになる。
仕方なしに俺は、目覚めた時に傍にあったバックに手を伸ばし、中身を確認することにした。

「まずは武器」

バックを逆さまにすると、まず支給された武器に目がいった。
一つ目は如雨露。………ここらへん雑草ばかりだから、めちゃくちゃ馴染んでるのがちょっと悔しい。
二つ目は木刀。………洞爺湖って掘ってある。ちなみにちょっと黄ばんでて、カレーの臭いがする…。
三つ目、これは確か…!

「ウマ仮面のスーツだよな、これ?」

天誅戦士ウマ仮面。地元では有名で、ちょっとした事件を解決しているスーパーマンのような女戦士。
実は彼女もまた武闘家の人間らしく、虎金井家の件ではお世話になった。

「何にせよ、いまいちなものばかりだな。誰かに見つかったら逃げよう。次は地図だ」

半分折にされた地図を取って開く。

  1 2 3 4 5
A 丘森街街浜
B 丘森住住浜
C 丘森研湖浜
D 丘森城塔浜

「俺が今居るのはC-2か。アバウトすぎてよくわからんが、まぁ良いか」

お次は腕時計のような形をした機械。使い道がよくわからなかったので、適当にボタンを押してみた。
すると、ありきたりな電子音の後で小さな画面に自分の似顔絵のようなものが浮かんだ。

「ビビリ…、10点。ビビリって俺のことかな?そうだよな」

少し肩を下げたところで、地面に転がった荷物全体に目を通してみる。
武器、懐中電灯、パン、水の入ったペットボトル、ペン、情報機器……あ。

「名簿を確認するのを忘れてたな」
「キャッ!」

俺は緩慢とした動作で名簿を手に取ったが、開こうと角に親指を掛けたとき、
背後から激しい物音がして、咄嗟に振り返った。

     ◇     ◆     ◇

与えられた武器は時代を感じさせる十手に酢昆布1ダース、そして…変な形をした銃。
この銃にはトリガーが二つあって、モニターのようなものもついている。
……使い方を確認しておきたいところ。
周囲に人が居ないことを確かめてから、付近にあった岩に銃口を向ける。
恐る恐る指をトリガーにかけて、思わず目をつむってしまった、その時。

(誰か居る!)

風など吹いていないというのに、草木が音を立てた。
慌てて銃を降ろし、自身に備わった脚力を用いて木の枝へと跳躍し、音のしたほうに顔を覗かせた。

(……犬塚くんじゃない)

草陰で荷物を確認しているらしい彼は、密かに想いを寄せている相手だった。
彼を守るには傍に居るのが一番良いと、声をかけようかと息を吸い込んだが、
こんなところから話しかけるのも不自然だ。
それでは、と地面に降り立とうとすると、孝士が自分の本名が書かれている名簿を手に取ったので……。

「キャッ!」

動揺から足を滑らせ、体勢を整える間も無く地面とのキス。
恐らく聞き覚えがある声だからだろう、すぐに逃げ出さずに、孝士は振り返ってくれた。

「委員長!」
「いたた……」
「大丈夫か?」

孝士が名簿を放り投げて駆け寄ってきた。
自分が十二支の動物の名を持っていることがバレずに済んで一安心だ。

「ありがとう、私は平気。それよりも犬塚くんに会えて良かった」
「俺も委員長に会えて良かったよ。知らない奴だったらどうしようと思った」

本当は全身のあちこちに小さな痛みが走っているが何とか平然を装い、
笑いかけてくれた孝士が荷物を広げているところへと歩み寄った。

「へぇ。荷物の確認してたんだ」
「そうなんだ。って、別に武器を使って人をどうこうしようとか考えてたわけじゃないんだけどさ!
 いちおう、護身用にと思ったんだけど…でもやっぱり、俺みたいな一般人じゃ使えないかな、って」
「そっか」

孝士に背を向けた体勢でしゃがみこみ、支給品を眺めているふりをする。
そこでさり気なくペンと名簿を手元に引き寄せ、こっそりと自分の名前のところだけを黒く塗りつぶした。

「私も、まだ犬塚くんは修行中だし、無理はしなくて良いと思う」
「え?」
「修行、頑張ってるんでしょう?」
「修行って何の?」

………あれ?
だって、虎金井から戻ってしばらくして、自分も頑張ろうって言ってみんなに修行を頼んでたじゃない…。

「何のって…。武術のことだけど…」
「武術?ああ、たしかに俺も頑張ろうかなって思ってたところだけど…何で委員長が?」

え、どういうこと?
何でって…事情を聞いて、学業のほうが疎かにならないよう、修行の合間、一緒にお勉強会やったじゃない。

「あ、そういえば俺、名簿の確認をしようかと思ってたんだ」
「そ、そう…はいこれ」

怪訝そうに眉を寄せつつ、すでに工作済みの名簿を孝士に渡した。
当然、名簿を開いた孝士は、不自然に黒塗りされた名前の部分を不審に思う。

『秋山深一/アデル/犬塚孝士/アルフォンス・エルリック/エドワード・エルリック
エンヴィー/神楽/神楽坂明日菜/加藤勝/金糸雀/神威/吉良吉影/九頭竜もも子
高音・D・グッドマン/玄野計/虎金井天々/小島多恵/佐倉愛衣/桜咲刹那/椎名千咲
清水雷鳴/クリストファー・シャルドレード/ジン/真紅/水銀燈/翠星石/瀬川涼子
チェリー/月詠/アイザック・ディアン/ティーゲル/雲平・帷・デュランダル/■■■■■
西丈一郎/ミリア・ハーヴェント/パンター/東方仗助/フェイト/三井真琴/巳屋本いろは
チェスワフ・メイエル/雪広あやか/宵風/ライム/レイカ/六条壬晴/No.1/No.2/No.3/No.4』

「何でここだけ塗りつぶされてるんだ?」
「ほ、本当ね、おかしいわね」
「あれ?委員長の名前が見当たらないんだけどどうし「ああああー!見て!もも子ちゃんや巳屋本さんも居るらしいわよ!」
「…? 本当だ」

ふぅ、危なかった。

「だったらまずはこの二人を探さない?危ない目にあってたら大変だわ」
「どっちかというと危険なのは俺たちなんだろうけど、まぁ委員長が居たら何となく心強いし、行こうか」
「うん!」

自分が存在することによって彼に安心感を与えられたことに、場違いな笑顔が浮かぶ。
けれど、さきほどの違和感は拭えぬまま、二人は肩を並べて歩き出した。


【現在地C-2 東】

【犬塚孝士@すもももももも ~地上最強のヨメ~】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】基本支給品一式 ウマ仮面コシュチューム@すもももももも~地上最強のヨメ~ 木刀@銀魂 如雨露@ローゼンメイデン
【思考】基本:殺し合いには乗らない
1:もも子といろはとの合流

【中慈馬早苗@すもももももも ~地上最強のヨメ~】
【状態】健康
【装備】Xガン@GANTZ
【道具】基本支給品一式 酢昆布1ダース@銀魂 十手@セイバーマリオネット
【思考】基本:殺し合いには乗らない
3:孝士の言っていたことに違和感
2:もも子といろはとの合流
1:孝士を守る

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最終更新:2011年07月26日 20:22
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