ふよふよ
ふよふよ
ふよふよ……
◇
「やっと着いた~。ぷーちゃんありがとう~」
「ぷーちゃん……?」
「プリンのぷーちゃん」
「…………」
「あー。今、『安直だ』って思ったでしょ」
「別に…………で、降りないの?」
「……その、高いところは苦手で」
「そんなに地面から離れてないよ。せいぜい2メートル弱」
ふよふよ……
「……あたし、運動神経もダメダメで」
「ハァ……じゃあまず、荷物を下に降ろして」
「う、うん」
どさどさっ
「で、お先に」
どん!
「ああっ、リョーマくん、ずるい!」
「別にずるくない……ほら」
「ほへ……?」
「だから……手」
「手を出してどうしたの?」
「…………つかまって」
「あ、そう言うこと。ごめんなさい」
「謝らなくていいから」
「う、うん、ありがとう」
ぎゅっ
…………とん
◇
「広そうな森だねぇ……迷いそう」
「南の方に川があるから、それを目印にすればいいんじゃない?」
「あ、そうか。リョーマくんは頭がいいんだねぇ」
「誰でも思いつくと思うけど。
……じゃあ、崖だと目につきやすいし、森の中で話すよ」
「うん」
ガサガサ
◇
ガサガサ
ザク ザク
「……暗いよう」
「そんなしがみつかないで」
ザク ザク
「きゃあきゃあきゃあきゃあ!」
「うるさい……」
「だって、今、足元がぬるってした! 蛇! 蛇!」
「こっちが何かしなきゃ何もしないって……たぶん」
ザク ザク
「……こわいよう」
「怖くない。暗いだけじゃん」
ザク ザク
「リョーマくんは、幽霊とか、信じない人?」
「さっき実際に化け物に襲われたのに、幽霊の話をされても……」
「正体が分かってれば平気だよ。でも、正体が分からないのは、恐いじゃない」
「じゃあ森下は、さっきのアレの正体が分かるワケ?」
「アレはね……元がキツネで、コードを使って人間やワシに変身したんだと思うよ」
ザクッ
「だからコードって――」
「もうこのあたりでいいんじゃないかな? 座って話そう」
「……それもそっか」
ぺたん
◇
かくかく しかじか
かくかく しかじか
しかじか かくかく
「……つまり、森下は魔法使い見習い?」
「そういうものだと思うよ」
「思う?」
「いっこしか魔法を使えないから。さっきのたらいのことね」
「たらいを出す魔法……」
「始めは銅のたらいしか出せなかったんだけどね。
だんだん鉄のたらいとか、水の入ったたらいとか、最近では銀のたらいも出せるようになったんだよ」
「…………ふーん」
「あー! たらいを馬鹿にしちゃいけないんだよ」
「してないよ…………ハァ」
「むぅ……たらいはたらいで役に立つのになぁ」
「森下、人の好みにケチつけるるもりはないんだけど」
「なぁに?」
「いっこしか魔法使えなくても、魔法習ってて楽しい?」
「んー……楽しいかって聞かれたら、『難しい』っていうのが本当のところなんだけど」
「そう……」
「あのね、あたし、今まで何をやっても上手くいかなかったの。
スポーツとか、手芸部とか、色々と部活にチャレンジしたんだけど、運動音痴だし不器用だし、どれも全然上手くいかなくて」
「…………」
「そんな時に、魔法なら自分を劇的に変えられるよ~ってチラシを見て、これならあたしにもできるかもって思って」
「森下って、自分に自信がある人?」
「ううん、ぜえったいにその逆! どうして?」
「普通、他のことをできなかった人間が、『魔法』ならできるとは考えないと思うけど……」
「うう……聡史郎さんからも、サギの常套句に引っかかるなって言われた……」
「それで魔法を習い始めたんだ」
「そう。それでもやっぱり上手く出来なくてへこんだけど、色々あって、『たらいしか出せない』なりに『やり方』があるって分かって。
『劇的に変わる』ことはできなかったけど、『これがあたしのやり方なんだ』って思ったの。
それが分かったから、魔法を続けたい、やめたくないって気持ちになって。
他の習い事や部活をしてた時は、そんな気持ちにならなかったの」
「…………」
「……でも、本当は自分でもよく分からないかも。分かりにくくてごめんね」
「ううん」
「分かる?」
「……『やめようと思ってもやめられない』っていう気持ちなら分かるかも」
「えへへ……嬉しいかも」
「どうして」
「『共感』っていうのかな。『分かる』って言ってもらった経験がないから。
弓子ちゃんはベテランだし、嘉穂ちゃんはアドバイザーって感じだし、
聡史郎さんは魔法を信じてもらえないし、クラスの皆にはお話ししない方がいいって言われてるし」
「そりゃ信じてもらえないでしょ」
「……んー。やっぱり信じられにくいのかな。
よく、人に言っちゃいけないって言われてるんだけど」
「俺も普通なら信じないんだけど……でもさっきのアレを見たから」
「アレ?」
「変身する女子とか、落ちて来たたらいとか。それに、突然崖の下にワープさせられたり」
「そっかー。そうなると、魔法の力を持った人たちもたくさん呼ばれてるかもしれないんだね。ちょっと嬉しいかも」
「……森下、余裕ありすぎ」
「ぜんぜん余裕なんてないよ。どうして?」
「……じゃあ、あの白スーツも、森下の言う『魔法使い』?」
「魔法を使ったって言ってたからそうだと思うけど……正直、信じられないと思う」
「どうして?」
「何でも願いを叶えてくれるって言ってたでしょ。
死んだ人も生き返るとか、どんな願いでも聞いてくれるとか」
「言ってたね。確かに怪しい」
「でしょ。いくら『魔法』でも、死んだ人を生き返らせるのは無理。
あたしだって、全部の魔法を知ってるわけじゃないけど、それでもきっと無理。
ゴーストスクリプトっていう魔法があってね、昔に死んだ人とお話することはできるんだけど、でも生き返らせるのはないと思う」
「ん。……やっぱりそんな都合のいい話はないか」
「うん。世の中『魔法』はあっても、そう『奇跡』なんてないって、魔法の先生が言ってた。
『魔法』を使って少しだけ増えた選択肢の中から、ベストな選択を選べるのが『魔法』なんだって」
「ふぅん。……いいこと言ってるんじゃない?」
「でしょう!」
「例えばどんなことができるの?」
「千円札を一万円で売れるんだって」
「……便利じゃん」
「でも、実際にやったら犯罪だよ。
魔法だから証拠は残らないけど、きっとサギになるよ」
「ちぇっ」
「プー……」
「あ、ぷーちゃんが寝ちゃった……」
「けっこう話しこんでたから……モンスターボールにしまう?」
「ううん、ボールに入れた拍子に起こすかもしれないから、このままで」
すやすや
◇
「ねぇ、コードってやつで魔法は動いてるんでしょ?」
「そうだよ。見える人と見えない人がいて、見える人が魔法使い体質なの」
「じゃあ、森下の力でこの首の『呪い』もたらいにできるんじゃないの?」
「あたしも、最初にそれをやろうとしたんだけどね……」
「無理だった?」
「首に、何となく『コード』があるんだなっていうのは分かるのね。
でも、見えてるんだけど、感じることができないっていうか
……霧をつかもうとしてるような、そんな感じなの」
「……つまり、森下の魔法じゃ外せないように対策されてるってこと?」
「あ、そうか! 主催者の男の人から対策されてるんだ」
「いや、そんな今分かったみたいに言われても……じゃあ森下は、これからどうするつもりだったの」
「そうだねぇ……“コードだまり”を探してみようかと思うの」
「コードだまり?」
「大規模魔法を使うと、コード異常が発生するのね。
『あ、ここおかしいなー』っていう風にザワザワしてて。
そのザワザワが、いちばん大きくなってる場所を探せば、魔法の発信源が分かったりするの。
だから、その大元の魔法を何とかできれば、“呪い”を打ち消せるかもしれない」
「たらいに変えるコードで?」
「そう。たらいに変えるコードで……いつもはそうやってるの」
「その“コードだまり”でも、首の『呪い』みたいに組みかえられなかったらどうするの?」
「その時は……嘉穂ちゃんや弓子ちゃんに、組みかえる方法を考えてもらうから」
「つまり、その時は分からないんだ」
「何でも自分の力だけでやろうと思っちゃいけないんだよ。
魔法の無効化能力で何でも解決できるのは『そげぶ』の人だけだって、嘉穂ちゃんも言ってたし」
「そげぶって誰?」
「あたしにも分かんない」
「……つまり、コードだまりと仲間を探すってこと?」
「そう!」
「“コードだまり”の場所は分かるの?」
「ん、まず街の方に行ってみようかなって」
「街?」
「古典魔法で大規模魔法を組むと、たくさんの魔法使いが必要なの。
でも、現代魔法で大規模魔法を組むとなると、人は要らないけどたくさんのコンピュータを使うんだよ。
だから、機械が置いてありそうな場所から探したいなって」
「……でも、街って言っても広いよ」
「うん……だから、リョーマくんにお願いがあるんだけど」
「お願い?」
がばっ
「うわっ!」
「どうか、あたしの探しものを手伝ってください! お願いします!」
「えーと……なんで土下座?」
「あたし、暗いところはダメだし、痛いのもダメだし、逃げるのも遅いし、一緒にいたら迷惑かけると思う。
それに、リョーマくんだってきっと用事があるだろうし、だからこれはあたしのわがままなの。
それでも、どうしても友達を探したいし、助けたい。それは一人だけじゃ難しい。
だから、わがままだって知ってるけど、それでもリョーマくんに手伝ってほしい。
『わがまま言ってごめんなさい』って思うけど、友達から『こういう時に謝るのはいけない』って教わったの。
でも、いけないことでも、わがままでも、アタシは一緒に来てほしい!
……だから、ごめんなさい。お願い、します」
「…………顔、あげて」
「はいっ」
「ファンタ一週間分」
「はい?」
「だから、ここから帰ったらファンタ一週間分おごり。それでチャラ」
「…………ふえ?」
「嫌なら一カ月分でもいいよ?」
「ううん! ファンタ、一週間、ごちそうね! 約束!」
ゆーびきーり、げんまん♪
◇
「そう言えば、リョーマくんの支給品は? 聞きそびれちゃったけど」
「ん……さっきの水鉄砲と、他にはこの棒。『ビリヤードのキュー』って説明書に書いてあった」
「ビリヤードの……? それにしてはずいぶんと短いね」
「いや、ここのボタンを押すと……」
ジャキン
「うわわ、のびた」
「でも、使い道がよく分からない」
「武器には……ならないのかな」
ぶんぶん
「ん。長い割に軽いのは助かるけど、当たりハズレで言えばハズレかな」
「でもでも、けっこう丈夫そうだよ。ないよりはマシじゃないかな」
「森下って、何でもプラスに考えるタイプ?」
「プラス思考はいいことだもん」
「あっそ。…………それで、最後の支給品がこれ」
「あ、これ、どっかで見たことあるかも――」
「あ、触らないで。『コード』ってやつが関係してるなら、たらいになるかもしれない」
「えー。触ってもコードを体に入れなかったら大丈夫だよー」
「これはすぐ出せるように首にかけておくとして……森下は何か持ってないの?」
「えと……ぷーちゃんの他にも、あと二つあるみたい」
がさ ごそ
「あった」
しゃらん
「“リフレクターペンダント”だって。……えっと、説明書はついてないのかな……」
ごそ ごそ
「英語で“reflecter”なら『跳ね返すもの』って意味だけど」
「すごい! 物知りなんだね」
「別にすごくない。これぐらい学校でも習う」
「あう…………あ、説明書あった。
『装備した人間が前面に受ける物理攻撃のダメージを半分にします。』だって」
「物理攻撃って何……?」
「理科の物理とかの物理じゃないかな……えーと、それってつまり、物の運動とかの攻撃?」
「じゃあ『物理攻撃じゃない攻撃』ってどんな攻撃?」
「む~…………何だろうね」
「この説明書、アバウトすぎ……」
「でも、効果はあると思うよ。触るとびりびりしてるもん」
「それも“コード”?」
「そう、コードだよ」
「なら、かけておいた方がいいんじゃない」
「そうだね。かけた方がいいね」
しゃらん
「にしても……俺の水鉄砲とかキューとか森下のペンダントとか、
イマイチ『
殺し合いの道具』って実感がしないんだけど」
「ぶっそうなものが出て来るよりはいいんじゃないのかな。
あ、三つ目の支給品は……これ、だね。んしょっ。重い」
どん!
「大きいね」
「何か……『めん・いん・ぶらっく』のひとが持ち歩いてそうな感じのスーツケースだよね。
……勝手に開けちゃっていいのかな」
「『いいのかな』も何も、森下の支給品じゃん」
「ああっ、そうだった」
「ハァ……」
ガチャガチャ……キィ
「うわぁ……」
「本物、だね……」
「だよね……テレビで見たことあるもん。クマを狩る猟師さんが、こういう細長いケースに銃を入れてるの」
「ケースの中に、『取り扱い説明書』が入ってる」
「ほんとうだ……わざわざ親切だね」
「親切って。……あのさ、これで人を殺せってことなんだけど」
「あ、そうだよね……」
「…………」
「ねぇ、リョーマくん?」
「何?」
「……これって、『殺し合い』なんだよね。本当に」
「少なくとも、さっき襲って来たのは『殺し合いに乗ってた』んじゃない?」
「だね。あの子、自分のことを『ツル』って名乗ってた」
「『ツル』……名簿に載ってる。ってことは、あんなのでも『参加者』なんだ」
「そっか……じゃあ、本当に殺し合いが起こってるんだね」
「だね……」
ガチャガチャ ……パタン
「しまっておくことにしたんだ」
「うん、あたしじゃ絶対に使わないと思うから」
「……撃ちたくない?」
「それもあるかも。撃つのが怖いっていう気持ちもあるのね。
でもね、それだけじゃなくて、……あたしの『やり方』じゃないなって、思うの」
「やり方……プレイスタイルってこと?」
「うん、それ!
『殺し合い』なのに武器を持たないのは、『甘い』んだなってぐらいは分かるよ。あたしでも。
でもね、危ないことだったとしても自分の『スタイル』は変えたくないんだ」
「…………」
「リョーマくん、どうしたの?」
「……いや、意外としっかりしたところもあるんだなと思って」
「い、意外なの!? あたしの方がずっとお姉さんなんだよ~」
「森下、いくつ?」
「高校二年生」
「マジ…………?」
「本当だもん!」
「だって高校二年って言ったら、ウチの部長より二つも上じゃん。
……いや、あの部長は参考にならないかもしれないけど」
「……えっと、ほら、ポケットに学生証あった!」
「えぇ? ……だって俺より小さいし。高校生なのに中学生から英語教わってたし」
「……………………」
「ごめん、悪かった。悪かったから、泣きそうな顔しないで」
【F-1/崖の近くの森/一日目 黎明】
【越前リョーマ@テニスの王子様】
[状態]健康、疲労(小)
[装備]ハバネロ水入りウォーターガン(水量80%)@よくわかる現代魔法
ビリヤードのキュー@ポケットモンスターSPECIAL
不明支給品1(『よくわかる現代魔法』世界のものらしい)
[道具]基本支給品一式
[思考]基本・どうにかして元の世界に帰る
1・ 街の方へ行ってコード探しをする。
2・部長、不二先輩、菊丸先輩と合流したい。
3・『ツル』には警戒
※参戦時期は少なくとも秋以降です。
※こよみが年上だと知りました。
【森下こよみ@よくわかる現代魔法】
[状態]健康、白華女子高校の制服、疲労(小)、涙目
[装備]プリン@ポケットモンスターSPECIAL
リフレクターペンダント@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]基本支給品一式、沙夜の猟銃@〝文学少女〟シリーズ
プリンのモンスターボール
[思考]基本・殺し合いには乗らない
1・ 街の方へ行ってコード探しをする
2・嘉穂ちゃん、弓子ちゃん、聡史郎さんと合流
3・『ツル』には警戒
※高校二年生時点からの参戦です。
【ビリヤードのキュー@ポケットモンスターSPECIAL】
ゴールドが愛用している伸縮式のキュー。
主にビリヤードの要領でモンスターボール射出装置に使われることが多いが、
つっかい棒になったり武器としてレイピアのような使い方をしたなど、頻繁に活用されている
キューとしては異常に頑丈で、あの“瞬”の剣と斬り結べるほど。
【リフレクターペンダント@ポケットモンスターSPECIAL】
グリーンがお守りとして身につけているペンダント。
ポケモンの使う技“リフレクター”と同じ効果を持つバリアアイテム。
【沙夜の猟銃@〝文学少女〟シリーズ】
魚谷沙夜が、祖父母の実家から持ち出した猟銃。
普通の狩猟用。
最終更新:2011年08月20日 20:48