「戻ったぞ。調子はどうだ」
「まあまあじゃねえかな……そのスコップは?」
「ああ、あっちの小屋の中にあったのを借りた」
あの後、遺体の傍にずっといる訳にもいかない、と言う訳で場所を移して、1人湖畔の東屋まで来ていた。
桐生さんは未だ心の傷の癒えない自分の代わりに、さっきまであの遺体を埋葬してくれていた。
勿論、桐生さん1人にそんなことを任せるなんて、申し訳無いと思っている。
現に、さっき自分が手伝おう、と申し出ても「1人で大丈夫だ」と断られてしまった。
(……)
これから、どうしよう。まだ、どこに行くかも決めていない。どこに行くべきかも、よく分からない。
行く当てもなくふらつくなんて時間の無駄になりかねないし、フラついていてマーダーに遭遇したらどうする?
まあ、マーダーに遭遇するのは、目的地を決めていても有り得ることだが……。
「桐生さんは、どこか行くべきだと思ってる場所はあるか?」
「もしも負傷した時に、手当ての出来る物が欲しい所だな。確か、この近くに街があったな」
「あー……確かに、街があるな。そこに、薬局みたいな物があるんだろうか?」
「あるといいんだが……」
言葉尻を濁す。やはり、桐生さんは街に本当に薬局みたいな物があるか、確信が持てていないようだ。
しかし、それは自分も同じだ。街に行って、薬局のような物が本当にあるかなんて、今は分からない。
それは、やっぱり自分で確かめてみなければ。他にも、もう1つ懸念していることがある。
仮に、薬局のような物があったとして、そこに道具が残されているか、と言うことだ。
もしも、「優しい人」が一番最初に辿り着いて、道具を1部だけ持って行った、と考えてみよう。
その後誰も来ずに、自分たちが辿り着けば、自分たちも道具を入手することができるだろう。
だが、その後来た人が、残りを全て持って行ったなら、自分たちの分が無くなってしまう。
それ以前に、一番最初に辿り着いた人が全て持って行く可能性も、否定できない。
「……やっぱ、行くしかねえか」
「ああ。少ししたら、出発するぞ」
「分かった」
◇
やっと森を抜け、広々とした湖の近くに出る。未だに暗くて、全体はあまりよく見えないが。
不意に、自分たちの間を冷たい風が吹き抜けて行く。
体の殆どを、アーマーが覆っているお陰で、せいぜい顔ぐらいにしか風が当たらないが、それでもいい。
冷たい風が、一瞬だけここが陰惨な
殺し合いの場だと言う事を、忘れさせてくれる。
「湖か……広いな」
「ですね、暗くてあまりよく見えないですけど」
しかし、湖に来たのはなんとなく歩いていたからで、別に何か目的がある訳ではなかった。
今いる場所から見える物は、貸しボート屋の古い小屋と、その近くに浮かぶボートくらい。
ボートはともかく、小屋の中に誰かが隠れているかもしれないが、わざわざ調べるのも何だか。
「とりあえず、見てみるか」
一応、佐伯を下がらせ、自分だ貸しボート屋に近づいて行く。
小屋の中を、小屋の前のカウンターから中を覗いてみる。……誰もいない。怪しい物も、置かれていない。
やっぱり、何も無かったか……そう思った時、ある物に気がつく。
――壁に設置されている、電話。
多分、警察なんかには繋がらないだろうが……地図上にある施設に、電話をかけられるかもしれない。
(電話か……。しかし、このままじゃ、小屋の中に入れねえ)
あまり生身を晒したくはないが、仕方がない。このまま無理矢理入って、小屋ごと電話を壊すよりいい。
「……解除!」
その掛け声と共に、今まで自分の身を包んでいたアーマーが外れ、自動でデイパックの中に入って行く。
完全に外れたのを確認した後、一息ついて小屋の裏に回り、ドアノブを回す。
……幸運にも、鍵はかかっていない。まあ、もしかかっていても、この程度の扉なら、余裕で壊せるが。
「失礼するぜ……って誰もいないんだがな」
さっき、中に誰もいないのは自分が確認したが、一応注意を払いながら中に侵入する。
小屋の中は、見た目通りボロかった。その中で、真新しい電話が、異彩を放っている。
(電話を新しくするんなら、小屋も新しくすりゃいいものを)
そう思いつつ、電話に手を伸ばす。その途中、電話のコードにラミネート加工の施された紙が、紐で繋がっているのに気づく。
その紙には、いろんな施設の名前と、電話番号が印刷されている。おそらく、施設の電話の番号リストだろう。
とりあえず、誰かいそうな場所……病院に、電話をかけてみる事にした。
番号を入力し、呼びだし状態のまま待機する。
(……誰か、出てくれるといいんだが)
しかし、いつまでも呼びだし中のまま、変わらない。誰もいないのか、それとも電話の無い場所にいるのか。
どちらかは分からないが、とにかく電話を誰も取ってくれないと言う事だけは分かった。
30コールはくり返しただろう。もう、これ以上かけていても時間と電気のムダだろう。
(一応、他の番号も見てみるか……ん?この『蓋』ってのは何だ?)
番号リストの中で、特に異彩を放っている『蓋』と言う施設名。
一体、これはなんだろうか。マンホールのような蓋がある場所の近くに、公衆電話でもあるのだろうか。
しかし、何のために?そもそも、蓋とは一体何なのだろうか。
「訳が分からねえよ」
受話器を戻し、小屋から出ようとすると……佐伯が、謎の2人組と会話しているのが見えた。
見る限り、敵対しているようには見えないが、ビームサーベルを握り佐伯の所へ走って向かう。
「おい、お前ら……あ」
「あっ、この人の仲間って、9Q氏だったの?」
「YR氏、か……無事だったんだな」
「無事も何も、放送で呼ばれなかったじゃねえか」
言われてみれば、当たり前だ。だが、実際にこの目で殺されていないことを確認するだけでも嬉しい。
「こうやって話してた……ってことは、大体の事は聞いたのか?」
「聞いたよ、今まで森を歩いてきたんだろ?そして、エリア外への境界線を調査したんだよな」
「ああ。だが、何も分からなかった。エリア外に出たら……まあ、大体想像は付くが」
やはりエリア外に出ると、首輪が爆発するのだろうか?それとも、何らかの方法で殺害されるのかもしれない。
一体、エリア外に出たら何が起こるのかは、今の時点では分からないが、実験することもできそうにない。
何しろ、人の命が掛かっているのだ。軽々しく、実験なんか出来る訳が無い。
「それで、YR氏の方は何を?」
「ああ、俺達は……」
◇
その後東屋まで戻り、俺達は9Q氏達に自分の今までの道のりと、起こったことを簡単に説明した。
自分達が新富製薬で出会ったこと、湖に着いた時変な男に合ったこと、そしてここで1回目の放送を聞いた事。
……この近くで、遺体を見つけた事と、その遺体をさっき埋葬した事は、一応黙っておいた。
この事は、あまり話さない方がいいと思ったからだ。まして、一般人を連れていると言うのならなおさらだった。
「……大体分かったよ。それで、これから何処かに行く予定でもあるのか?」
「近くの街に行って、薬局を探そうと思ってる。良かったら、一緒に行かないか?」
「どうしようか……あ、俺が病院に行ってこようか?」
「車やバイクのような物でも持っているのか?ここから病院まで、距離はかなり離れているが」
「いや、ちょっと違う……見ててくれ」
そう言うと、9Q氏はデイパックを持って、ちょっと離れた場所に立った。デイパックに、乗り物が入っているのだろうか。
しかし、デイパックから出て来た物は、自分の予想を完全に裏切るような、とんでもない物だった。
「装着!!」
「!?」
最初は、いきなり何を言い出すのかと思ったが、すぐにその言葉の意味が分かった。
デイパックの中から、機械の部品のような物が出て来て、9Q氏の体に瞬く間にくっついていく。
そして、気がつくと9Q氏の立っていた場所に、まるでロボットのような物が立っていた。
「……何だ、これ……」
その見た目の凄さと、おそらく強いであろうこのフォルムを見て、つい言葉を失ってしまった。
これを着ると、空でも飛べるのだろうか。いや、これほどカッコいい姿なんだ、飛べてもおかしくない。
「さて、病院はどっちの方角だ?」
「ああ……ここから見て、南東の方だ。ところで、それじゃ1人しか飛べないよな、この人はどうする?」
「悪いが、一時的にYR氏達と行動してくれないか?病院で道具を見つけたら、すぐ戻る」
「……無事に帰ってきてくれることを願ってます」
◇
9Q氏が、病院の方向に向かって飛び立つのを確認した後、自分たちも行動を開始した。東屋を離れ、森の方へ。
……やはり、9Q氏のことは心配だ。あんな、強そうな物を装備しているとはいえ、全く危険じゃない訳では無い。
(9Q氏とは後でC-5の街で落ちあうように打ち合わせしたが……無事で、帰って来てくれよ)
【一日目・黎明/B-3】
【◆YR7i2glCpA@非リレー書き手】
[状態]:体調不良、精神的ショック(中)
[装備]:M209グレネード×3、FT 200M(30/30、グレネード1/1)@S.T.A.L.K.E.R
[所持品]:支給品一式、200Mマガジン×3
[思考・行動]
基本:ゲームには乗らないでおく。
1:C-5の街へ行き、薬局らしき物を探す。
2:9Q氏……無事に帰って来てくれよ
【桐生一馬@龍が如く2】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、パーソナル・ボグ@クロノス・ジョウンターの伝説、スコップ
[思考・行動]
基本:ゲームに乗る気はない。
1:YRらと共に、C-5の街で薬局を探す。
【佐伯優子@絶体絶命都市2】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、手錠@絶体絶命都市2
[思考・行動]
基本:人殺しなんてしたくない。
1:一時的に、この2人と行動する。
2:9Qさん、無事で……
≪支給品紹介≫
【スコップ】
桐生一馬が湖近くの小屋(貸しボート屋)内部で見つけた、何の変哲も無い物。
湖の上空辺りを飛びながら、病院を目指す。
上空だけあって、風もかなり強い。だが、アキレウスはそんなことお構い無しにズンズン進んで行く。
この分なら、10分もあれば病院に到着できるだろう。そして、病院に着いたら、まず道具を探す。
道具をデイパックに仕舞ったら、病院を出て、C-5へ向かう。勿論、飛んで移動する。
空を飛ぶ、なんてかなり目立つ行為だが、今のような暗い内なら、敵の目も誤魔化せるだろう。
もちろん、完全に誤魔化すのは無理だ。飛行音も出るだろうし見つかった時に後を追われるかもしれない。
(……できるだけ、早く済まして戻りたいな。1時間以内で終わらせたいが……)
病院まで行くのに10分。到着して道具を探すのに、10分かかるとする。帰りも、また10分かかるだろう。
……これだけでも、ほぼ1時間だ。道具がなかなか見つからなければ、もっと時間は伸びるだろう。
そして、病院で誰かに遭遇したらどうしようか。その人物が、ゲームに乗っていたら?
――戦闘は避けられないだろう。そうなると、もう道具どころでは無くなってしまう。探す暇なんて、無くなる。
「……もうちょっと、スピード出すか」
そう思い、一旦空中に停止した、その時。何気なく振り向いた、湖の方向。そのずっと向こうに、何かがある。
方角で言うと、ずっと北の方に……何らかの建造物が、ライトアップされて、そびえ立っている。
前に、エリア外を観察した時は、何も無かったはずなのに……。
(……今は、気にしても仕方ねえ。とにかく、病院へ行くか)
【一日目・黎明/B-3付近・上空】
【◆9QScXZTVAc@非リレー書き手】
[状態]:健康、飛行中
[装備]:個人装着型アキレウス(エネルギー残り87%)@R-TYPE
[所持品]:支給品一式
[思考・行動]
基本:ゲームには乗らないが、攻撃されたなら迎撃する。
1:……あの建物も気になるが……今は、病院へ
2:病院へ向かい、道具を回収した後戻る。
最終更新:2011年09月14日 22:15