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時は金

「戻ったぞ。調子はどうだ」
「まあまあじゃねえかな……そのスコップは?」
「ああ、あっちの小屋の中にあったのを借りた」

あの後、遺体の傍にずっといる訳にもいかない、と言う訳で場所を移して、1人湖畔の東屋まで来ていた。
桐生さんは未だ心の傷の癒えない自分の代わりに、さっきまであの遺体を埋葬してくれていた。
勿論、桐生さん1人にそんなことを任せるなんて、申し訳無いと思っている。
現に、さっき自分が手伝おう、と申し出ても「1人で大丈夫だ」と断られてしまった。

(……)

これから、どうしよう。まだ、どこに行くかも決めていない。どこに行くべきかも、よく分からない。
行く当てもなくふらつくなんて時間の無駄になりかねないし、フラついていてマーダーに遭遇したらどうする?
まあ、マーダーに遭遇するのは、目的地を決めていても有り得ることだが……。

「桐生さんは、どこか行くべきだと思ってる場所はあるか?」
「もしも負傷した時に、手当ての出来る物が欲しい所だな。確か、この近くに街があったな」
「あー……確かに、街があるな。そこに、薬局みたいな物があるんだろうか?」
「あるといいんだが……」

言葉尻を濁す。やはり、桐生さんは街に本当に薬局みたいな物があるか、確信が持てていないようだ。
しかし、それは自分も同じだ。街に行って、薬局のような物が本当にあるかなんて、今は分からない。
それは、やっぱり自分で確かめてみなければ。他にも、もう1つ懸念していることがある。
仮に、薬局のような物があったとして、そこに道具が残されているか、と言うことだ。
もしも、「優しい人」が一番最初に辿り着いて、道具を1部だけ持って行った、と考えてみよう。
その後誰も来ずに、自分たちが辿り着けば、自分たちも道具を入手することができるだろう。
だが、その後来た人が、残りを全て持って行ったなら、自分たちの分が無くなってしまう。
それ以前に、一番最初に辿り着いた人が全て持って行く可能性も、否定できない。

「……やっぱ、行くしかねえか」
「ああ。少ししたら、出発するぞ」
「分かった」






やっと森を抜け、広々とした湖の近くに出る。未だに暗くて、全体はあまりよく見えないが。
不意に、自分たちの間を冷たい風が吹き抜けて行く。
体の殆どを、アーマーが覆っているお陰で、せいぜい顔ぐらいにしか風が当たらないが、それでもいい。
冷たい風が、一瞬だけここが陰惨な殺し合いの場だと言う事を、忘れさせてくれる。

「湖か……広いな」
「ですね、暗くてあまりよく見えないですけど」

しかし、湖に来たのはなんとなく歩いていたからで、別に何か目的がある訳ではなかった。
今いる場所から見える物は、貸しボート屋の古い小屋と、その近くに浮かぶボートくらい。
ボートはともかく、小屋の中に誰かが隠れているかもしれないが、わざわざ調べるのも何だか。

「とりあえず、見てみるか」

一応、佐伯を下がらせ、自分だ貸しボート屋に近づいて行く。
小屋の中を、小屋の前のカウンターから中を覗いてみる。……誰もいない。怪しい物も、置かれていない。
やっぱり、何も無かったか……そう思った時、ある物に気がつく。
――壁に設置されている、電話。
多分、警察なんかには繋がらないだろうが……地図上にある施設に、電話をかけられるかもしれない。

(電話か……。しかし、このままじゃ、小屋の中に入れねえ)

あまり生身を晒したくはないが、仕方がない。このまま無理矢理入って、小屋ごと電話を壊すよりいい。

「……解除!」

その掛け声と共に、今まで自分の身を包んでいたアーマーが外れ、自動でデイパックの中に入って行く。
完全に外れたのを確認した後、一息ついて小屋の裏に回り、ドアノブを回す。
……幸運にも、鍵はかかっていない。まあ、もしかかっていても、この程度の扉なら、余裕で壊せるが。

「失礼するぜ……って誰もいないんだがな」

さっき、中に誰もいないのは自分が確認したが、一応注意を払いながら中に侵入する。
小屋の中は、見た目通りボロかった。その中で、真新しい電話が、異彩を放っている。

(電話を新しくするんなら、小屋も新しくすりゃいいものを)

そう思いつつ、電話に手を伸ばす。その途中、電話のコードにラミネート加工の施された紙が、紐で繋がっているのに気づく。
その紙には、いろんな施設の名前と、電話番号が印刷されている。おそらく、施設の電話の番号リストだろう。
とりあえず、誰かいそうな場所……病院に、電話をかけてみる事にした。
番号を入力し、呼びだし状態のまま待機する。

(……誰か、出てくれるといいんだが)

しかし、いつまでも呼びだし中のまま、変わらない。誰もいないのか、それとも電話の無い場所にいるのか。
どちらかは分からないが、とにかく電話を誰も取ってくれないと言う事だけは分かった。
30コールはくり返しただろう。もう、これ以上かけていても時間と電気のムダだろう。

(一応、他の番号も見てみるか……ん?この『蓋』ってのは何だ?)

番号リストの中で、特に異彩を放っている『蓋』と言う施設名。
一体、これはなんだろうか。マンホールのような蓋がある場所の近くに、公衆電話でもあるのだろうか。
しかし、何のために?そもそも、蓋とは一体何なのだろうか。

「訳が分からねえよ」

受話器を戻し、小屋から出ようとすると……佐伯が、謎の2人組と会話しているのが見えた。
見る限り、敵対しているようには見えないが、ビームサーベルを握り佐伯の所へ走って向かう。

「おい、お前ら……あ」
「あっ、この人の仲間って、9Q氏だったの?」
「YR氏、か……無事だったんだな」
「無事も何も、放送で呼ばれなかったじゃねえか」

言われてみれば、当たり前だ。だが、実際にこの目で殺されていないことを確認するだけでも嬉しい。

「こうやって話してた……ってことは、大体の事は聞いたのか?」
「聞いたよ、今まで森を歩いてきたんだろ?そして、エリア外への境界線を調査したんだよな」
「ああ。だが、何も分からなかった。エリア外に出たら……まあ、大体想像は付くが」

やはりエリア外に出ると、首輪が爆発するのだろうか?それとも、何らかの方法で殺害されるのかもしれない。
一体、エリア外に出たら何が起こるのかは、今の時点では分からないが、実験することもできそうにない。
何しろ、人の命が掛かっているのだ。軽々しく、実験なんか出来る訳が無い。

「それで、YR氏の方は何を?」
「ああ、俺達は……」






その後東屋まで戻り、俺達は9Q氏達に自分の今までの道のりと、起こったことを簡単に説明した。
自分達が新富製薬で出会ったこと、湖に着いた時変な男に合ったこと、そしてここで1回目の放送を聞いた事。
……この近くで、遺体を見つけた事と、その遺体をさっき埋葬した事は、一応黙っておいた。
この事は、あまり話さない方がいいと思ったからだ。まして、一般人を連れていると言うのならなおさらだった。

「……大体分かったよ。それで、これから何処かに行く予定でもあるのか?」
「近くの街に行って、薬局を探そうと思ってる。良かったら、一緒に行かないか?」
「どうしようか……あ、俺が病院に行ってこようか?」
「車やバイクのような物でも持っているのか?ここから病院まで、距離はかなり離れているが」
「いや、ちょっと違う……見ててくれ」

そう言うと、9Q氏はデイパックを持って、ちょっと離れた場所に立った。デイパックに、乗り物が入っているのだろうか。
しかし、デイパックから出て来た物は、自分の予想を完全に裏切るような、とんでもない物だった。

「装着!!」
「!?」

最初は、いきなり何を言い出すのかと思ったが、すぐにその言葉の意味が分かった。
デイパックの中から、機械の部品のような物が出て来て、9Q氏の体に瞬く間にくっついていく。
そして、気がつくと9Q氏の立っていた場所に、まるでロボットのような物が立っていた。

「……何だ、これ……」

その見た目の凄さと、おそらく強いであろうこのフォルムを見て、つい言葉を失ってしまった。
これを着ると、空でも飛べるのだろうか。いや、これほどカッコいい姿なんだ、飛べてもおかしくない。

「さて、病院はどっちの方角だ?」
「ああ……ここから見て、南東の方だ。ところで、それじゃ1人しか飛べないよな、この人はどうする?」
「悪いが、一時的にYR氏達と行動してくれないか?病院で道具を見つけたら、すぐ戻る」
「……無事に帰ってきてくれることを願ってます」






9Q氏が、病院の方向に向かって飛び立つのを確認した後、自分たちも行動を開始した。東屋を離れ、森の方へ。
……やはり、9Q氏のことは心配だ。あんな、強そうな物を装備しているとはいえ、全く危険じゃない訳では無い。

(9Q氏とは後でC-5の街で落ちあうように打ち合わせしたが……無事で、帰って来てくれよ)

【一日目・黎明/B-3】
【◆YR7i2glCpA@非リレー書き手】
[状態]:体調不良、精神的ショック(中)
[装備]:M209グレネード×3、FT 200M(30/30、グレネード1/1)@S.T.A.L.K.E.R
[所持品]:支給品一式、200Mマガジン×3
[思考・行動]
基本:ゲームには乗らないでおく。
1:C-5の街へ行き、薬局らしき物を探す。
2:9Q氏……無事に帰って来てくれよ

【桐生一馬@龍が如く2】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、パーソナル・ボグ@クロノス・ジョウンターの伝説、スコップ
[思考・行動]
基本:ゲームに乗る気はない。
1:YRらと共に、C-5の街で薬局を探す。

【佐伯優子@絶体絶命都市2】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、手錠@絶体絶命都市2
[思考・行動]
基本:人殺しなんてしたくない。
1:一時的に、この2人と行動する。
2:9Qさん、無事で……

≪支給品紹介≫
【スコップ】
桐生一馬が湖近くの小屋(貸しボート屋)内部で見つけた、何の変哲も無い物。




湖の上空辺りを飛びながら、病院を目指す。
上空だけあって、風もかなり強い。だが、アキレウスはそんなことお構い無しにズンズン進んで行く。
この分なら、10分もあれば病院に到着できるだろう。そして、病院に着いたら、まず道具を探す。
道具をデイパックに仕舞ったら、病院を出て、C-5へ向かう。勿論、飛んで移動する。
空を飛ぶ、なんてかなり目立つ行為だが、今のような暗い内なら、敵の目も誤魔化せるだろう。
もちろん、完全に誤魔化すのは無理だ。飛行音も出るだろうし見つかった時に後を追われるかもしれない。

(……できるだけ、早く済まして戻りたいな。1時間以内で終わらせたいが……)

病院まで行くのに10分。到着して道具を探すのに、10分かかるとする。帰りも、また10分かかるだろう。
……これだけでも、ほぼ1時間だ。道具がなかなか見つからなければ、もっと時間は伸びるだろう。
そして、病院で誰かに遭遇したらどうしようか。その人物が、ゲームに乗っていたら?
――戦闘は避けられないだろう。そうなると、もう道具どころでは無くなってしまう。探す暇なんて、無くなる。

「……もうちょっと、スピード出すか」

そう思い、一旦空中に停止した、その時。何気なく振り向いた、湖の方向。そのずっと向こうに、何かがある。
方角で言うと、ずっと北の方に……何らかの建造物が、ライトアップされて、そびえ立っている。
前に、エリア外を観察した時は、何も無かったはずなのに……。

(……今は、気にしても仕方ねえ。とにかく、病院へ行くか)

【一日目・黎明/B-3付近・上空】
【◆9QScXZTVAc@非リレー書き手】
[状態]:健康、飛行中
[装備]:個人装着型アキレウス(エネルギー残り87%)@R-TYPE
[所持品]:支給品一式
[思考・行動]
基本:ゲームには乗らないが、攻撃されたなら迎撃する。
1:……あの建物も気になるが……今は、病院へ
2:病院へ向かい、道具を回収した後戻る。

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最終更新:2011年09月14日 22:15
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