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善か、偽善か

「む……」

闇の中で、目を覚ます。一体、今は何時くらいだろうか。自分は、眠っていたのか……。
いつ、どこで命を狙われてもおかしくない状況で眠りに付くとは。自分の愚かさに、思わず溜息が出る。

しかし、こうやって無事に目覚めることが出来たと言う事は、少なくとも寝首は掻かれなかった訳だ。
そこは、自分の強運に感謝しておくべきだろう。

(確か、ここは……そうだ、神社だ……)

時間は1時間ほど遡り、記憶もその時間帯の物まで、遡って行く。






傍に立っている樹に手をかけ、乱れた呼吸を、ゆっくり整える。それと同時に、上がっていた心拍数も降下する。
森の中を吹き抜けて行く風が、自分の額に浮かぶ汗と、体に籠る熱を取ってくれる。
そうして全体的に元の状態になっていく内に、自分の思考も、論理的な物に戻っていく。

(こんなに暗いなら、行動してても簡単には見つからないな。だが、今は休める場所が欲しい)

とりあえず、呼吸等は元に戻ったが、いきなり走り出したお陰で、全身に疲れが溜まっている。
このままでは、行動に支障が出てしまう。そう思った。だが、こんな森の中にそんな場所があるかどうか?

歩けない程疲れていると言うのなら、この場で休んでもいい。だが、今の疲労はそれほどでもない。
一応、歩くくらいならまだ出来る。それなら、ここより安全な場所の方がいい、と思うのは当然だろう。

(地図を見る限り、この近くに神社があるみたいなんだが……)

周りを見渡してみると、前方の方に鳥居のような物が見える。あの辺りに、神社があるのだろうか。
あまり速さは出せないが、小走りで鳥居に近づいて、手で触って確かめてみる。
……表面は苔だらけで、鳥居本体も、石がゴツゴツしていて手入れなんかされていないように見える。

そして、近くには、お目当ての神社が建っていた。……こっちも、鳥居に負けず劣らずのボロさ。
だが、こんな状況ではとても贅沢なんか言ってられない。隠れられるだけでも、儲け物だ。

(霊はいないようだな)

こんなに年季のあるような神社なら、霊の1体いてもおかしくはないのだが……。
しかし、今はそれについて調べるような時では無い。とりあえず、壊れそうな扉を開けて、中に入る。

予想通り、中も埃と蜘蛛の巣だらけで、見るに堪えないような酷い場所だった。だが、わがままは言えない。
仕方無く、埃だらけの床に寝っ転がり、デイパックを枕の代わりにして休憩することにした。

(ああ、休んだらどうしようか?神社を出て、北上してみるか?それとも……)

思考を邪魔するように、睡魔が、自分に襲い掛かってくる。瞼も、次第に重くなっていく。
眠るのは、リスクが高い。それは分かっている。だが、今は、ただ眠たくて仕方が無い。
この、心地よい眠りに、身を任せてしまいたい。それが、どんなに危険な行為だとしても。
もう、既に「眠り」と言う沼に、全身飲み込まれている。もう、抜け出せない。

(俺に危害が……及ばないのを……願うしかないか)






「……すると、大体1時間くらい寝てたのか」

デイパックからPDAを引きずり出し、時間を呼びだす。……2時、10分。まだまだ、夜明けには遠い。
……確か、2時間おきに、放送が行われるはずだ。その放送の時間は、既に過ぎている。
つまり、自分はその放送を……無様にも、眠っていて聞き逃してしまった、と言うことになる。

(聞き逃した物は仕方が無い。支給品の確認をするか……)

最初に確認しようとした時は、襲撃者に邪魔されて確認する暇も無く、今まで確認出来ずじまいだった。
しかし、今ならゆっくり支給品のチェックを行える。あの時の様に横槍を入れられる事も、多分ない。

……できれば、危険度の低い武器の方がいい。強い物を支給されて、扱えないのでは意味が無い。

第一、自分は殺し合いをする気なんてないのだ。もし、強すぎて相手を殺傷してしまったら……。
想像するだけでも、恐ろしい。やはり、自分の身の丈にあった物が欲しい。

「一体何が入っているんだろうな……」

しかし、取り出した物は自分の期待に半分応えて半分外れたような物だった。
出て来た物は……一振りのナイフに、一丁の拳銃だった。驚きの入り混じった目で、出て来た物を眺める。
ナイフも拳銃も、普通に生きてれば、現物を見ることなんて、まずないだろう。
だが、今まさに本物が自分の前に存在している。これは、やはり殺し合いの為に……?

(こんな物使いたくは無いが、携行しておくか。もしも、ってことがあるし)

銃をポケットに仕舞い、予備のマガジンをもう片方のポケットの方につっこむ。
1時間程度睡眠を取り、体力は少々回復したが……もう少し、休憩を取っていたい所だ。

(もう少し、休んでいくか)






(……やっぱ、こんなところに人はいねえか)

闇の中を懐中電灯も点けずに歩く。懐中電灯を点けていると、遠くから発見されてしまうかもしれないからだ。
森の中で、遠くにいる人物を見つけるのは容易な事では無いが、明かりがあると見つけやすくなる。
そんな時に、遠くから銃撃されてはたまったもんじゃない。反撃できずに、むざむざやられる事にもなりかねない。
そのリスクを回避するためなら、少々の暗さは我慢できる。……暗さで視界が十分に確保出来ないのが不満だが。

(ふぅ……いい加減、次の標的を見つけないと、話にならないな)

しかし、そう都合よく相手が現れるなんて、思っていない。特に、こんな人気の無い場所では。
だが、絶対誰にも会わない、とも言い切れない。樹の影から、誰かがいきなり飛び出してくるかもしれない。
その可能性がある以上、呑気に歩くなんてことは、絶対出来ないし、出来る訳が無い。

(地図だと、ここは……F-1だよな。近くの神社に、誰かいるかもな)

神社内部なら、今の状況に怯えて震えているような人も、もしかしたら隠れているかもしれない。
そうでないとしても、誰かがいる可能性がある。もちろん、誰もいない可能性もあるが……。
それでも、森の中をあてもなくフラフラうろつくより、よほど有意義だろう。

思案を巡らせている内に、神社付近まで到着してしまった。辺りには、人の気配はない。
この分だと、ここに人はいないか……。そう思い神社を離れようとした時。

「変な刀だったな、鞘から抜けないし……まあ、他の場所でゆっくり調べるとするか」

誰かが、神社から出てくる。相手の懐中電灯のお陰で、相手の顔だけがくっきり闇の中に映る。
それを利用し、相手の頭を撃ち抜くこともできる、はずだった。
弾丸を正確に当てるには、構えた方が確実だ。だが、今自分がいる位置で構えれば、相手に気づかれてしまう。
単純に撃つだけなら、構えなくてもいい。だが、自分の射撃能力なんて、たかが知れている。

(チッ、どうする……?)

こんなことでグズグズしてたら、せっかく見つけた標的にまんまと逃げられてしまうではないか。
それだけは、何としてでも避けたい。だが、相手を動けなくする良い方法があるだろうか?

(……背に腹は変えられないか)

気持ちに踏ん切りを付けて、一気に相手のいる方向に走り、すぐさま背中に銃をつきつける。

「なな、何だ!?」
「喋る必要は無いな、どのみち、ここで死ぬんだから」

グッ、と引き金にかかる指を引こうとした、その瞬間。
パン、と乾いた音と共に、自分の持つ銃に何かが当たって銃を勢いよく吹き飛ばされてしまう。

回収しようと地面に落ちた銃を拾おうとする瞬間、さらにもう1発銃弾が撃ち込まれさらに遠くに飛んで行ってしまう。


「こっちだ!早く!」


第三者の声。声から推測するに、男だろうか。いや、そんな事を考えている暇は無い。
銃を拾って、さっきの男を始末しなければ……。早く、始末しなければ、銃弾を放ってきた男の元に行かれては困る。
しかし、時既に遅し。標的は、既に何処かへ逃走してしまったようだった。銃も、銃撃のせいで壊れてしまった。
何もかもが最悪だ。

「……クソッ……」


【一日目・黎明/F-1】
【◆VxAX.uhVsM@非リレー書き手】
[状態]:健康、落胆
[装備]:サバイバルナイフ
[所持品]:支給品一式、強力のり@その他、7.62mm弾×12
[思考・行動]
基本:ゲームに乗って最後まで生き残る。
1:せっかくの銃が……あいつも逃がしてしまったし、散々だ
2:相手が書き手さんでも…。
※風祝波祝神社付近に、壊れたレミントンM700が放置されています








「ありがとう……助かったよ」
「いいや、例には及ばない」

森の入り口まで、助けてくれた男の誘導に従って全力で走って逃げて来た。多分、もう大丈夫だと思う。
それにしても、この男は一体何者だろうか。ああも正確に襲撃者の銃を弾き飛ばし、初対面の自分を助けるとは。
もしかして、いわゆる「救世主」のような物ではないだろうか?そこまで大げさでなくとも、この人は、命の恩人だ。
この人が現れなければ、自分は今頃、射殺されてあの世行きだっただろう。

「……名前は?」
「俺は……あれ、名前が思い出せない」
「記憶喪失か……精神的ショックによるものだろうか……」
「すまないな、思い出せなくて」
「いや、謝る必要はない。俺は、アンドレー・アヴェルチェフだ」
「そうか、よろしく」

ここで、ふと神社から持ち出した古い刀のことを思い出す。この人なら、あの刀を抜けるのではないか?
見る限り、結構体格も良く、筋肉もかなりありそうだ。ちょっと、試して貰うように聞いてみようか?

「会って早々不躾だが……頼みたい事があるんだ」
「何だ、俺にできることなら何でもいいぞ」
「この刀の事なんだか……」

デイパックから刀を取り出し、とりあえず地面に置く。こうやって改めて見てみると、かなり長い。
普通の日本刀より、確実に長いだろう。まあ、いままで本物の日本刀を生で見た事は一度も無いのだが。

「かなり錆びているようだな……この分だと、刀身まで錆びているだろう」
「多分そうと思うんだけど、一応、ちょっと抜いてみてくれないか?」
「……分かった、やってみよう」

そう言うと、アンドレーは刀の柄と鞘を持ち、思いきり引っ張った。ゆっくりと、軋むような音を立てて、刀が抜けて行く。
途中で、刀が長過ぎて腕が届かなくなってしまったので、急遽自分も鞘を引っ張って手伝い、なんとか刀身が露わになった。

……予想通りと言おうか、当然と言おうか。やはり、刀身が全て錆びていて、刃も刃毀ればかりだ。
武器としては到底役に立ちそうに無いが、まかりなりにも神社に祀ってあったのだ。何かあってもおかしくは……。

「こんな錆びた刀、どこで手に入れたんだ」
「さっきの神社だ。見つけた時俺も抜こうとしたんだが、歯が立たなくてね」
「だが、こんなに錆びていては使い物にならないんじゃないのか」
「いや、何らかの力があるかもしれない……俺には、重くて扱えないが」
「……なら、デイパックに仕舞っておくんだな」

確かに、扱えないような物を持っていても、邪魔になってしまうだけだろう。
言われるがまま、錆びた刀を自分のデイパックに仕舞っておくことにした。

「俺が武器になる物を持っていないのなら、それを使っても良かったんだが。錆びていても、鈍器くらいにはなるだろうからな」
「これより、銃の方が強いから仕方ないさ」
「まあな……ところで、1つ聞きたい事があるんだが。ここに来るまでに、アメリカ人らしき男を見なかったか」
「いいや、見ていないな。そいつ、アンタの仲間か何かか」
「……奴は人殺しだ。次に誰かを殺す前に捕まえたかったんだが、生憎見失ってな」

……その言葉を聞いて、思わず背筋が凍る。やっぱり、既に殺人を犯した人間はいる……。
そいつが、今何処にいるかは分からない。だが、確実にどこかに存在している。それに、さっきの男。
あいつが今頃何しているかなんて興味もないが、追って来てはいないだろう。追って来ているなら、既に襲われているはずだ。

「探すのか?その男を……」
「そいつだけじゃない。乗っている奴ら全員を……殺してでも止めなければならない」
「殺してでもって……物騒な事言うもんじゃないぜ。なにも殺さずとも、捕まえる方法はあるだろう」
「いいや、そうは行かない……命は、命でしか償えないんでね」
「……そうか」

しかし、殺人犯を殺害して止めるのでは、結局自身も殺人犯になってしまうのではないだろうか。
その事を問おうとしたが、アンドレーの表情から、ある種の決意のような物を感じ取ったので、やめた。
……まるで、自分を犠牲にしても殺人者を皆殺しにしてやる、と言うような、決意を。

(……大丈夫なのか、この人)




【一日目・黎明/F-2】
【アンドレー・アヴェルチェフ@途中参加者】
[状態]:健康
[装備]:H&K G36(28/30)・ナイトビジョンサイト
[所持品]:支給品一式、不明支給品(確認済み)、"bread"@S.T.A.L.K.E.R.、G36マガジン×2
[思考・行動]
基本:ゲームに乗るつもりはない。だが、ゲームに乗っている奴は殺害する。
1:この男と行動しようか……
2:……自身も、殺人者になる覚悟はある

【師匠@オカルト(師匠シリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:Black kite(8/8)@S.T.A.L.K.E.R.
[所持品]:支給品一式、果物ナイフ、マガジン×2、蜘蛛切丸@かまいたちの夜2
[思考・行動]
基本:殺し合いをする気はない。
1:この人と行ってみるか。
2:……大丈夫か、この人は

≪支給品紹介≫
【Black kite@S.T.A.L.K.E.R.】
師匠に支給。
なぜか.50AE弾ではなく.45ACP弾を使用する。実銃にはこのラインナップは存在しない。
人に使うにはオーバーキル気味だが、ミュータント相手には割と有効なのかも。
ちなみに、この銃が落ちているのはカナテコ好きの物理学者の遺体の傍だったり。

【蜘蛛切丸@かまいたちの夜2】
師匠が風祝波祝神社で発見、回収したもの。
本文中にもあるが、全体的に錆だらけで刀身も錆びついている。
だが、その名の通り蜘蛛に対しての切れ味は信じられない程高い。

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最終更新:2011年09月19日 22:32
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