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de doden komen

「……ここまで来てみたのはいいが、誰もいやしない」

平地をとぼとぼ歩き回る。
どこか目的地がある訳でもないし、行くべき場所もない。だが、できるだけ早急に8nを見つけたい。

誰かが傷付く前に。
誰かが悲しむ前に。

後悔はしたくない。だが、今の所居場所に付いての情報が1つもない。これでは、探しようがない。
闇雲に探し回った所で、見つける可能性は0に近いし、自分の命だって危うい。
今、自分はほぼ丸腰なのだ。戦闘になれば、まず勝ち目はないだろうし、勝てるとも思えない。
第一、自分は人殺しなんかではない。無駄に、人の命を奪う必要など全くない。

(始まってから結構時間が経っているはずだ……多分、1時間くらいだろうか?)

常に緊張を強いられるこの状況では、なんだか時間の感じ方が狂って来てしまう。
こんな言葉で片づけたくはないが、仕方の無いことなのかもしれない。やっぱり自分は、ただの一般人なのだ。
いくら書き手と言えど、不思議な力が使えたりするのは創作の中だけ。現実では、そんな力はない。
だが、この状況を指をくわえて見ている、と言うことだけはしたくないし、する気もない。

(……しかし、焦ってもどうしようもない。何かで、奴の居場所を調べられないだろうか?)

何か、奴の居場所を調べられる物。そんな都合のいい物が都合よく手に入るはずがない。
それに、もし入手できたところでそれが本当に信用に足る物かもわからない。

(ああ、何もないじゃねえか。これじゃ、どうしようもない)

せめて、誰かが通りかかってくれれば……そんな淡い期待を抱いた時だった。
誰か、顔までは分からないが、誰かが歩いてくる。人影は、2つ。つまり、2人組だ。
この2人がゲームに乗っていないと言う保障は無い。だが、乗っていると言う保障も、また無い。
声をかけてみるべきか、スルーすべきか。

(どうする……?)

今なら、気づかれる前にこの場を離れることもできるだろう。
しかし、もし2人が乗っていなかったらどうしようか?仲間になるチャンスを、自ら絶つことになってしまう。
だが、もし2人が乗っていたなら、自分は何も出来ずに殺されてしまうだろう。

(一か八か……接触してみるか。ここに立ってれば、気づくだろ)

予想通り、相手はこちらに気づいて小走りで自分の所へ向かってくる。
……銃を持っている。一瞬乗っていたのか、と思ったが、銃ならこちらに気づいた時点で攻撃しているだろう。
それに、顔を見る限り、人殺しをするような人ではない……と思う。人は、見た目では判断しきれないが。
第一、かなりの童顔だ。高校生くらいに見えるが、実際の所はどうかよく分からない。

「……どうかしましたか?道の真ん中でボーっとしてたから、気になって」
「あ、ああ。別に、大したことじゃない」

この反応から見るに、やっぱり乗ってはいないだろう。殺す相手の事を、わざわざ気づかうだろうか?
――サイコパスみたいなタイプだったら、分からないが。しかし、いちいち疑ってかかってはキリが無い。

「あ、僕は矢島透です。それでこっちの方が、鈴谷樹里さんです」
「ああ……俺は、◆YR7i2glCpAだ」

2人とも自分の名前に困惑しているようだ。まあ、無理もないだろう。
アルファベットと数字の入り混じった名前なんて、そうそうない……いや、多分存在しないだろう。
しかし、自分の本名は記憶の中から抜け落ちているのだ。分からない物を適当に言うのは良くない。
そこから、自分の事を疑われでもしたら、面倒なことになってしまう。

「あんた達は、こっちに何か探しに来たのか?」
「いえ、川に沿って道なりにここまで歩いてきたんです。ですが、何も見つからなくて」
「そうか……俺もあんた達に付いて行ってもいいかな?仲間は多い方がいいだろう?」
「僕はいいですけど……鈴谷さんにも聞いてみないと。鈴谷さんはどうですか?」
「構わないわ」

特にトラブルもなく、仲間になることができた。こちらとしても、そう言ったトラブルは起こしたくはない。
些細ないざこざが、自分の命を脅かす可能性だってある。下手な行動は取れない。
そのことを考えると、やはりすんなり仲間に慣れたのは大きい。

(……仲間になれたのはいいが、奴の事はどうする?)

2人に注意を促すのは当然として、8nを探しに行くとなったらどうする?2人を巻き込む訳にもいかない。
しかし、わざわざ別れて自分だけで行動するのも。それでは、何のために仲間になったのか分からない。

「悪い、2人に言いたい事があるんだ」
「何ですか?」
「俺の知ってる奴に、◆8nn53GQqtYって奴がいるんだが、そいつは、一見普通だが本当はゲームに乗ってる」










YRさんの話を聞き終わった後、自分たちは一言も発せないでいた。まさか、そんな人がいたなんて。
一見、善人のように見えるが、本性は違う人間……。そんな、恐ろしい人間が、こんな所にいるなんて。
まるで、「かまいたちの夜」の美樹本さんみたいだ。もちろん、現実にいる美樹本さんはそんな人間ではないが。
一応、YRさんからその人物の顔と見た目は教えて貰った。でも、実際に会ったらどうしようか?
YRさんは『そうそう本性は出してこないだろう』とは言っていたが……不安は残る。

「……YRさんは、どこか行く予定が?」
「いいや、今の所は。ああ、でも近くの街を見に行くのもいいかもしれないな」
「近くの街ですか」
「ああ。その街の中に、何か役に立つ物が無いか探したい。ついでに、その傍にあるホームセンターでも」

ホームセンターで手に入りそうな物と言うと、工具等が思い浮かぶ。
金槌などの殺傷力の高い物から、釘や螺子のような比較的低い物まで手に入るだろう。

「街じゃ何が手に入るか分からないけれど、ホームセンターで手に入る物と言えば工具くらいじゃないのかしら」
「おいおい必要になるだろう。ドライバーとか」
「ドライバー……ですか?」

ドライバーで、一体何をするんだろう。……もしかして、この首輪を外すんだろうか?
でも、そんな簡単に外せる物なのだろうか?外そうとしたら、あのマネキンのように爆発するかもしれない。
そうなってしまったら、全てが終わりだ。死んでしまったら、全てが終わってしまう。

「いつか、この首輪を外すに足る人物を見つけた時、道具がないと困るからな。早めに入手したいんだ」
「あ、そうなんですか」

……自分の思い違いだった。
別に、YRさんが外すなんて最初から言っていなかった。ただ、見に行くと言っただけだったのだ。
自分の早とちりを、心の中で小さく恥じる。
でも、「首輪を外せる人」って誰だろうか?目星でも、付いているのだろうか。

「その、首輪を外せる人の目星は付いているのかしら?」

鈴谷さんが、自分の思っていた事を代弁するかのように聞いた。

「今の所は、無い」
「……そう」





「今の所は、無い」
「……そう」

2人の顔から、「何だ、無いのか」と言った感情が見て取れる。
しかし、本当に今の所首輪を解除できる人間の目星なんか付いていないのだ。嘘を付いてもどうしようもない。
自分に、首輪を解除できる知識と腕があれば、こんなに悩む必要もないのだが……。

「じゃあ、そろそろ街の方に行きませんか?立ち話ばかりしてるのも何ですから」
「ああ、そうするか……ん?」

そう思って、街の方を向き直した時。
……何やら異様な気配を発しながら、何かがこちらに向かってくる……犬のように、4本足で歩きながら。
こんな歩き方している時点で、人間ではない事だけは分かる。

(何だあいつ……)
「何だか、様子が変ですよ」

そうこうしている内にも、「何か」はこちらに向かってくる。近づいてくる内に、それの醜さが、嫌でも目に入って来てしまう。
歯を剥き出しにし、荒く呼吸を付きながら、それはやってくる。

「それを貸してくれ!」
「あっ……」

答える前に、矢島の持っていた銃を奪い取り、向かってくる化け物に向かって銃撃を加える。
その銃撃に怯んだのか、化け物はその場に立ち止まって動かなくなってしまった。
その隙に向こうへ逃げるように、手で2人に合図を送る。
2人が走っていくのを横目に、今度はきちんと化け物自身に狙いを付けて、銃弾を撃ち込んで行く。

「これくらいやりゃ、流石に動けないだろ……」

数えていた訳では無いが、7、8発は銃弾が当たったと思う。これだけ当たれば、行動不能になるだろう。
そう思って、地面に落としてしまったデイパックを背負い、2人の後を追おうと思ったその時。
……倒れていたはずの化け物が、再び起き上がって来ている。このままでは、襲われる。
そう思い、再度銃弾で眠らせようかと思ったが、もう弾が無い。予備の弾も、持っていない。
あの時、予備の弾まで貰う余裕は無かったのだ。これも、不注意故のことだ。

(とてもじゃねーが勝てそうにない!走って逃げるしかない!)

銃片手に、街の方向に全力でダッシュ、それと同時に、化け物も自分の後を追って来る。
今、どれくらいの距離まで近づかれているのだろうか。だが、後ろを振り向く余裕はない……。

そう思った瞬間、背中に衝撃と鋭い痛みを感じ、走った勢いそのままで地面を転がってしまった。
転んだことによる全身の痛みと、それを上回る背中の痛み。そして……うつ伏せの自分に乗っかっている何か。
考えるまでも無い……さっきの化け物だろう。もしかして、飛びかかってきたのか?

(信じられない……5、6メートルはあったんだぞ!?)

しかし、今あの化け物が自分の上に乗って、なおかつ何らかの方法で俺の背中に傷を負わせた。
それは、揺るが無い事実だ。

「くそっ、放……ああああああっ!!」

背中の傷を、さらに深く抉られる。その痛みは、おそらく今まで人生で味わったことの無い痛み。
あまりにも痛くて、思わず涙が溢れ、脂汗が滝の様に流れる。一瞬でも気を抜けば、失神しそうだ。
自分の上に乗っている化け物を引きずりおろして逃げようにも、痛みで力が入らない。

「――――――っ!!!!」

何度も何度も、背中の傷を抉られる。乱暴に。
その度に出血し、その度に激痛が襲って、意識が消失しそうになってしまう。
もう、ダメだ。
もう、無理だ。
自分には、まだやることが残っているのに。
自分は、こんなところで死ぬわけにはいかないのに。
でも、その思いに反して意識は遠のいて行く。

(…………こんなところで俺は死ぬのか…………?)

漫画やアニメなら、ここらで猛反撃してもおかしくはない。だが、これは現実だ。そんな事をする力は、残っていない。
ああ、せっかく仲間ができたと言うのに。それに、8nも捕まえてはいない。
何もかもが中途半端に終わっている。このままでは死んでも死に切れない。でも、自分は今にも死んでしまいそうだ。

(………2人に、8nへの注意を促せただけ、まだいいか………もう、俺には堕ちて行くしかない)

もう、何も見えない。あるのは、無限に広がる闇。これが、もしかしたら死ぬと言う事なのだろうか。
だとしたら、かなりあっけない物だな、と思った。苦しみも、悲しみも存在しない。ただただ、空虚なだけだ。
自分の体が、まるで自分の物ではないように感じる。

(……………俺って……………何て…………)



―――自分が最期に感じた事は、不甲斐ない自分への憤りだった。



【◆YR7i2glCpA@途中参加者 死亡】
死因:出血多量
※◆YR7i2glCpAの遺体の傍に、デイパックとAK-47(0/30)が落ちています






「はぁ……はぁ……ここなら……」

無我夢中で、ひたすら走って、気がついたら街の中にいた。気が緩んだせいだろう、その場に力無く座り込んでしまった。
いきなり全力で走ったせいか、めまいが酷く頭痛もする。息も、極限まで上がりきっている。
しかし、それも時間と共に回復していく。上がった息が回復すると同時に、不安が心の中に浮かび上がってくる。

「……YRさんは……大丈夫なんでしょうか」
「分からないわ……私には……」

ここにいる以上、YRさんの安否を確かめる術はない。
だが、今からあの場に戻ったら、何のために逃げて来たのか分からなくなってしまう。
今、自分に出来ることは、ただただ生きて戻ってきてくれる事を祈るくらいしかない。

(無事に、帰って来て下さい)

この祈りが届くかどうかは、神のみぞ知る。

【一日目・深夜/F-6】
【矢島透@かまいたちの夜2】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、不明支給品、AKマガジン×2
[思考・行動]
基本:人殺しはしたくない。
1:無事で帰ってきて下さい、YRさん
2:鈴谷さん、YRさんと行動する。

【鈴谷樹里@クロノス・ジョウンターの伝説】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:防弾チョッキ
[所持品]:支給品一式、ウオッカ4本@S.T.A.L.K.E.R.、5万円入り封筒@オカルト(この謎解けるかな?一日限定)
[思考・行動]
基本:殺し合いなんてしたくない。出来れば黒幕も調べたい
1:……YRが心配
2:この子(透)、YRと行動する







◆YR7i2glCpAを殺害し、ゆうゆうと道を歩くsnork。
その手は血で濡れ、道に血の跡を残す。果たして、この不快な獣は何を思うのだろうか。
そして何をして、次は誰を襲うのだろうか。

【一日目・黎明/F-5】
【snork@ミュータント(S.T.A.L.K.E.R.)】
[損傷率]:15%
[状態]:体に弾痕(行動に支障なし)

≪ミュータント情報≫
【snork@ミュータント(S.T.A.L.K.E.R.)】
F-5付近に出現。攻撃方法は切り付け、飛びかかり。
異様な程の反射神経と強靭な筋肉を持ち、正確な長距離飛躍で獲物を捕らえる。
時折、軍服を着ている個体を見かけるので、元は人間であったことが伺える。

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最終更新:2011年10月06日 22:20
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