白。真っ白な空間に、人々はいた。
気付けば、そこにいた。
剣の神様と呼ばれる剣豪も、人外の化け物も、何の力を持つわけでもない女子高生も、誰もが誰も気付かぬままに。
何時の間にか、そこにいたのだ。
前後左右、全てが白色に塗り潰された世界に、五十五人の人々がいた。
強い者と弱い者。考える者と考えぬ者。
闘う者と闘わぬ者。争う者と争わぬ者。
多種多様な人々がそこにいて、多種多様な様相で時間を過ごしていた。
あるものは思考を回転させ、あるものは楽しげに笑い、あるものは怯え竦む。
知人を見つけ話しかける者もいる。
異常事態の中での友人との再会に涙を流す者、そんな知人に励ましの声を掛けながら肩を抱く者。
因縁の相手との再会に不穏な空気を流す者、在るはずのない存在に声を無くし呆然と立ち尽くす者。
人々は自由だった。
真っ白な空間に縛られながらも、確かに狭い狭い自由を過ごしていた。
―――ザ、ザザ―――
そして、それは唐突に始まった。
―――お前たちにはこれから
殺し合いをしてもらう―――
言葉は短く、具体性に欠けるものであった。
ただ、言葉の後に、ボンという軽い音が響いた。
そのボンという音が、人々から自由を奪い去った。
少なくともこの音がなければ、人々は狭い自由を享受できていたのかもしれない。
この音が、この音がもたらした惨劇がなければ。
―――理解したな―――
白色の世界に、真紅が舞っていた。
何百もの真紅が暴力的な勢いで周囲を穢す。
―――死にたくなければ、戦え―――
人々の半分は、何が起きたのか理解できなかった。
だが、もう半分は理解する。
理解し、沈黙を通す。
―――生還できるのは、最後まで生き延びた一人のみ―――
集められた五十五の人々は、五十四となった。
声は多くを語らず、ただ命じる。
命を握り、凄惨な争いを行えと、迫る。
―――生き残った者には、望みの全てを叶えてやる―――
声は多くを語らず、ただ命じる。
我欲に付け込み、凄惨な争いを行えと、迫る。
―――だから、生き残れ―――
声は、ただ命じる。
争いを、戦いを、殺し合いを。
―――運命を、因果を、打ち破れ―――
そして、開催される。
争いが、戦いが、バトルロワイアルが、始まる。
因果を打ち破る闘いが、始まる。
人々は、音も無く、争いの場へと移されていった。
最終更新:2011年11月16日 22:00