色褪せた生活の始まり。もしくは終わり

 ○


あなたの色は、何色ですか


 ○


今日この日。
四月一日。エイプリルフール。
学校に通う日でもなく、ただ何でもない春休みの一日の日のこと。
平凡にして、平和。
無事に三月を終えて、明日からはいい加減受験に向けて矛先を定めようかと意気込んでいた日。
全寮制のこの学校に置いて、ぼくは呼び出しをくらった。
当然だが逃げ場がある訳もなく仕方なしに、心当たりがある訳でもないがぼくは先生の元に向かう羽目となる。
呼び出し先は我らの高校の体育館ホール。
呼び出し時刻は十一時。
今の時刻は一〇時とのこと。
まだまだ間に合う時間帯だ。
ぼくは携帯をパタンと閉じ、静かにベットに腰かける。
ギシィと軋む音をたてながらベット―――まあ布団だな、はぼくの腰の形に変形してゆく。
不思議と眠気を誘う音だったわけだが、生憎なところ補習か何か知らないけれど呼び出し中のぼくの身ではやはり寝ることは難しいだろう。
てゆーかやった途端、進級早々減点にプラスして先生どもからの目もきつくなるのはさすがに勘弁してもらいところだ。

………。

暇なので再度携帯を開いてみる。
画面にはなんか洒落た幾つもの飾りのアナログ時計がスタイリッシュに並んでいて、
中央に本当の時間を示すデジタル時計がよく分かんないけど格好いい。結構気に入っているのだ。
余談だがまだ先ほどから五分として経っていない。
さて、新着メールの一つもないし(当然と言えば当然だ)、本格的にすることがなくなった。
こういうときの時間の流れは遅すぎてたまらないよな。(悪い意味の「たまらないだ」。決して快感的な意味ではない)
仕方ない、読み途中の本でも読んでみるか。
時間はこうして流れていった。

ぼくは結局あのまま読みかけていた本を読んで少し早めに寮を出た。
あまりに暇だったから。
その道中。
ぼくは知り合いに出会った。
そいつは二年時のクラスメイトで、聞けば同じく呼び出しをくらったらしい。
たしかにぼくとしてもその事実はさすがに疑問に抱いたところではあったものの、ぼくは考えるのをやめた。
考えたところで呼び出しをくらった事実には変わりないし、そもそもそれを疑うことに必要性を感じない。
だって先生がそんな嘘を言いつけたところで意味が無い。
嫌な予感と言うものをぼくは全くしてなかった。
おそらく隣で一緒に歩いてきたこいつもまた、そうなのだろう。
にこやかにぼくと談笑をしているのを覚えている。



誠に唐突で脈絡は愚か文脈すらも考えてもない様な事情が起こった。
誰の目にも憚らず大胆不敵、そして大胆無敵のほうが案外合ってるのではないか、と思わせるほど鮮やかに不明瞭なこの出来事。
突拍子も突拍子。
おかしすぎて苦笑いをするほかない。
もしくは笑みをする猶予は一ミクロンですらぼくには残されていなかったのもしれなかった。
明らかに馬鹿げたこの異様な事態に少なからずぼくの様な人間は動転している。
動転、そして動揺。
ぼくの心情はあらん限り動き回る。
十人十色とは言った物だがぼくが考えゆる限り今、この場に置いてみんなの気持ちは嫌な意味で一つに固まったと思いたい。
いや、固まったところで何だと言うのだろうか。
ぼく達にとって何の意味があるのか。
分からない。
知りえない。
正確に言ったら、知ったところで意味が無い。
なにせ、何もかもが破綻して破滅を果たし、破壊衝動が平和を蹂躙していたのだから。


舞台は狼煙ヶ丘高等学校、体育館ホール。
時刻は十一時三十分。
ここには、約十三名の生徒。
どれも顔見知り。
―――と言うよりかは、元、クラスメイトがほぼ全員集まっていた。

目の前の壇上。
校長がそびえ立つ。
毎週木曜日に行われる全校集会のように。
平和そうに長々と、そして聞くに堪えない話を公開する。
スーツでガシッときっちり決めているのにあまりにも変質的。

「―――――で、あるからして」

えっらそうな口髭に手を添えながら、校長はただ坦々と話を進めてゆく。
この異様な惨劇を目の当たりにして。
それでもなお、喋り続ける。

「つまるところ、人の生命とは――――」

年老いているはずなのに、声からは活力が漲っている。
まあそれはいつものことなのだが、今はそれが鬱陶しくて堪らない。

「―――いわゆる『進化論』で―――」

校長の足元には、一つの生首。
ぼくもよく知る元クラスメイトの一人のものである。
顔は恐怖で彩られており、真っ青。いや、正確には真っ赤で染められている。
目はこちらを向いておらず、明後日の方向を眺めていた。
正しく言うと眺めてすらいないんだけれども。

つい先刻、彼の首は飛んだ。胴体から切り離された。
校長の傍らに置いてある処刑台をもって。いわゆるギロチンってやつ。
無論、血は舞う。
どころか首も舞う、それはそれは綺麗な放物線を描いて。
ニュートンの法則を体現しているかのようである。
余談だが、今すぐにでもあいつの元に駆けつけたいものだが、校長によって制止させられた。
それを無視して特攻して言っても勿論いいのだが、この目の前の光景を見たら大人しくしていた方がいいのは明らか。
故にぼく―――ぼくらはこうしてただ突っ立っている。
ただ気持ちとしては、息を飲むのも忘れるぐらい焦って、目まいがするぐらい気持ちが悪くなり。
結果、しゃがみこんで口を押さえている人間が約数名。
ちなみに彼が殺されたのはなにやらよくわからないが、この呼び出しをサボって昼寝をしたという罰則、ペナルティとのこと。
意味が分からない。

「―――それを貴方がたに――――」

さて遅れたが、今こんちくしょー(校長)が喋っている内容を理解しようと思う。
要約するとこうだ。

殺し合え。

とのご通達。
やらなきゃあいつみたいにさせるぞ。だって。
最後まで生き残った方には賞品をなんでも好きなものをさしあげます(死者蘇生も可)。とやら。
いやいや。
訳が分からない。
そんなのに乗る奴なんて誰もいないだろうが。
第一いつからこの学校の校長は神龍になった。ドラゴンボールでも見つけたんか。

なんて考えていると。
タイミング良く、校長はこう切り出した。

「――――ではわたくしからの講話は以上で終わりですが、なにやら納得していない方々は幾らかいるようですね」

当たり前だ。
そんなツッコミしすら出来ないこの状況が物凄く哀しい。

「では、そうですね。例えば優勝賞品の一つの可能性、死者蘇生。
 それをいまここで見せてあげましょう。―――では」

と、わざとらしい咳払いを一つした後、
目の前に転がっている生首を持ち上げて、一つの呪詛を唱える。

「……≪蘇生≫」

ただ一言だけそう呟いた。
瞬間。
ぼくの視界が真っ白に染まる。
強烈なる閃光が、この体育館ホールを走りだしていったらしい。

そんな中。
光が収まり、目を見開いてみるとそこには。

「こんな感じでしょうか」

そこには、校長に加え一人の人間が立っていた。
―――――さっき死んだはずの、あいつである。
今でこそぼくは平坦な語りで述べてこそいるが、これはなにもぼくが感情の無い人間だからというわけではない。
そんな現実に、ぼくは追いついていないのだ。

そしてようやく心が追いついてきて、声を上げようとしたその時。
校長は悪魔のように言葉を紡いだ。

「では、貴方は用済みです」

と、懐に仕舞いこんでいたのか。
サバイバルナイフをあいつの胸に押し当てる。
グチュ、なんて不可解に不愉快な音を立てて、再度死んでいった。
………へ?

「さて、そんなわたくしの蘇生もなにせまだ完璧ではございません。
 複数の人間の蘇生は不可能なのですよ。ですので、死者蘇生を願いとする者は一人まででお願いします」

……いやいや、待てよ。
何で今さりげなくあいつをもう一回殺したんだよ。

「殺したのは、ペナルティの重さを軽くみられると困るからですよ」

意味が分からない。
意味が分からない。
第一なんでこっちをみてそんな事言ったんだよ。読心術でも使えるのかあんちくしょーは。

「では、そろそろ始めたいと思います」

まてよ。
言いたいことはまだあるぞ。
何が。
何が起こっている?
どうしてこうなった。
思い返せ思い返せ。
駄目だ駄目だ駄目だ。
分からないぞ。
訳が分からない。

一旦落ち着くんだ、ぼく。
これは駄目だ。
このままの状態では駄目だ。

ぼくは携帯を開く。
時刻は約十二時十五分前。
あれから既に四十五分が経過したということだ。
なんか奇妙なまでに短く感じる。
まるで夢を見ているかのようであった。
いやもしかしたらこれは夢なのかもしれない。
そうであってほしい。

「………いや、んなわけないよな」

ぼくの呟きは遠くの方に消えていき。
遥かかなたへと、その呟きの足跡は続いてゆく。


「では、名簿番号順にこちらに来てください。―――ではまず青影信博くんから」


さて、ぼくの名前が呼ばれたようだ。
ならば行かなければ。
歩みを止めてはいけない。
まあ大層なことは考えておらず、ただ単純に殺されたくないからに違いはないんだけれども。
………はあ。

なんて思っている間にぼくの足は壇上に上がりきっていたらしい。
近くに転がっているあいつの死体を踏まない様に気をつけながら、
ぼくは台を挟んで校長と対面する。卒業証書を貰うかの如く。

「さあ、これを」

青色のリュックを渡される。
これが先ほど零していた身体能力差を補う不規則なアイテム支給と言う奴らしい。
ふと見ると、後ろの方に赤なり、緑なり、黄色なりと色とりどりのかばんが置いてあった。
………本当にランダムなのかが些か疑問だな。

「………」
「それでは青影くん。あなたはこの体育館からでて、あと約十五分後に行われるイベントに備え逃げるなりなんなりとしてください」
「………」
「ではごきげんよう」

………。
さあ、行こうか。
生きるか死ぬかのデスゲームを。


ぼくは歩みだした。


太陽の光がまぶしかった。




【見せしめ:茶畑 貴則】

【主催:? ? ?】

【EDLロワ:スタート】



START 投下順 白の花火、金の鈍ら
START 青影信博 [[]]
START 茶畑貴則 END

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最終更新:2011年11月24日 18:54
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