夢を見た。
どこかの線路の上に寝転がり、文庫本を片手に空を見ながら本を読む夢。
ただ文庫本を読む。文字は読めないのに、何故か心は晴れやかな気持ちだった。
僕が生まれて味わったことのないくらい満足な気持ちに心は満たされている。
不思議と心地のよい夢だった。
――――だったのに、目覚めは最悪。
ガシャンと何かが倒れるような音が耳につくと同時に、目が衝動的に開いた。
心拍数は跳ね上がり、心臓は潰れてしまうのではないか?と言うくらいに鼓動している。
泥棒か…でも、老夫婦と高校生が住む家なんかに金があると思う泥棒はいるのか?
「…まさか…。」
「おーすまない。貴公の部屋はごちゃごちゃしているからな。」
出来たら、こいつのくだりが夢であって欲しかった。そして夢が現実になって欲しかった。
この赤毛の女が言うことが本当ならば、
殺し合いに参加しないとならない。
殺し合い。
言葉で言えば簡単だ。
ゲームや本でよく目にする。
そんな簡単な四文字の言葉。
死ぬ。
殺す。
両方の意味が、互いに交差する。
「君はいったい何者なんだよ!?」
「ボニー・パーカーだ。」
「ボニー・パーカーってあの?」
「貴公は何を言っている。あのもクソも、私はボニー・パーカーだ。」
ボニー・パーカー。クライド・バロウと共謀して殺人や強盗などを起こした犯罪者カップルの女。
1934年5月23日、警官隊に射殺された。と、テレビにやっていた事を思い出す。
映画や劇としてもよく出ている。暇人の僕に取っちゃ有名人。
恐らく偽名だろう。本物なら死んでいるし、この赤毛の女はボニー・パーカーよりも年齢もかなり若い。
「本名は?」
「バカにしているのか。」
「ぶっちゃけ、その設定とかきつくない?」
「設定?戯言もたいがいにしろ。」
「そんなこと言って。」
「くどいぞ。」
◇
「あー分かった分かった。ボニー・パーカーって認める。」
「なんだその投げやりな態度は?」
「…仕方ないだろ、こういう奴にどう対応すれば良いか…。」
「なんか言ったか?」
面倒くさいな。コイツ、自分で中二設定とか貫いて、本当に大丈夫なのか?
とりあえず、嘉雄じぃちゃんと麻恵ばぁちゃんにはこいつがばれないようにはしないとならない。
ゆっくりと階段を下りると、外で夏なのに寒風摩擦をするじいちゃんを確認した。
問題は、麻恵ばあちゃん。台所で漬物を漬けているが、鉢合わせすれば大変なことになる。
…そう言えば、今日学校だった!!!
「やばぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
「どうしたんだい?マサちゃん。」
僕がいないうちにあの女が、もしも下に下りてきて鉢合わせでもすれば。
大変だ!!!!!!!!!!!!!!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「どうしたんだろうねェ?」
「そういう年頃なのじゃよ。」
◇
あぁ~。本当に、この女をどうしようか?
このまま学校に連れて行ったら、絶対に先生になんか言われるだろうし。
あのままほっていったら、じいちゃんとばあちゃんに何か言われるだろうし。
「貴公の両親はやけに老いているな。」
「両親じゃない。僕の祖父と祖母だ。」
「では、両親はどうした。」
「黙ってくれないか?ここで待っていろよ。」
「了解したぞ。」
消えてもいい世界。だが、祖父と祖母は、その世界の中で存在価値はある。
僕が、世界の存在意義を否定しだしたのは、あの日からだった。
思い出したくはない。あの日。
誰もいない昇降口の下駄箱に、靴をしまいスリッパを取り出す。
その時だ。
「君の名前は、関勝宏?」
ショートカットの落ち着いた雰囲気を持つ女子生徒が、僕の目の前に立っていた。
告白と言う奴か?
別に、興味などない。と言ったら嘘になってしまうだろう。
告白と言うものには縁がない。生まれてこの方、告白をしたことも受けたこともない。
「…何?」
「死んでよ。」
彼女の片手に握られていたのはラブレターではなく、黒い工具のようなモノ。
先端には穴が開いている。すぐにそれが拳銃だと言うことは分かった。
だが、普通の高校生が拳銃を持ってられるとは考えられない。
パァァァン
油断を打ち砕くかのように、爆竹が破裂したような音が構内に鳴り響いた。
遅れて、頬にかすり傷が出来て血が垂れるのが確認できた。
恐る恐る、振り返ると綺麗に舗装されたばかりの壁の一部に見事に穴が開いている。
つまり拳銃は本物。
「さようなら。」
死ぬのは不思議と怖くない。
無くてもいい世界にいるくらいなら死んだほうがいい。どちらかと言えば、生きるほうが怖い。
ここで死ぬ。同級生に射殺されて死ぬ。そして、ニュースになり一時話題になる。
死ねば、祖父と祖母が悲しむだろう。それが僕にとっては一番心が折れることだ。
だが、二人以外に悲しむ人はいるのだろうか?
目の前は、銃口を向ける少女。
音を聞きつけて、先生や生徒が近づいてくる足音が鳴り響いている。
少女は決着をつけるべく、銃口に指をかけた。
もう…殺されてしまうのか…。
そう覚悟をした。
撃たれるか?
だが、まだ撃たれていない。
地響きと共に、下駄箱が吹き飛ぶ。
まだ理解できていない。
目の前の世界はスローモーションの如くゆっくりと動いて見えた。
破片が飛散し、窓ガラスが崩れ落ちて、少女が倒れ、天井の一部が崩れ落ちる。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
誰かの悲鳴と共に、僕の目の前の世界はスピードを取り戻した。
火災警報を指し示すサイレンが校内に鳴り響き、生徒達が逃げ惑っている。
幸い、五体満足。大怪我も負ってはいない。
襲撃した少女は拳銃を落として気絶している。チャンスだと頭の中に誰かが叫ぶ。
僕はその場から逃げた。
走って逃げることしか出来なかった。立ち向かうことは出来なかった。戦うことは出来なかった。
しかし、その考えはあるものが目に入り変わった。
目の前から、現れたのはフルフェイスヘルメットを被った、襲撃者らしき人。
片手には、金属バットと手製の爆弾らしき物。
「…嘘だろ…僕はそこまで人気者なのか?」
危険な奴だと言うことはすぐに判断できた。
善良な市民が金属バットを持ってフルフェイスヘルメットを被り学校に訪問するわけが無い。
「動くないで。」
少女は、こめかみから血を流しながらも、拳銃を後頭部に向け殺そうとしている。
つまり、この二人は仲間と言うことになるのだろうか?
だが、仲間ならこんな手荒い真似はしない。つまり、仲間ではないと言うことがすぐに分かった。
「ここで僕を撃っても無意味だ。恐らく彼に殺される。」
「二人とも射殺すればいい。」
「伏せろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
判断できたものは、男が持った手製の爆弾。
炸裂すると共に、昇降口の屋根が吹き飛ぶ。
◇
死んだ…のか…?
目が開けれない。
赤毛の女が言う殺し合いは本当だったのか…。
もっと前から信じればよかった。
ゆっくりと目を開けれた。
腹部からは出血しているが激しい痛みを伴うことは無い。致命傷にならずに済んだらしい。
目の前からはゆっくりと歩み寄ってくるフルフェイスヘルメットの襲撃者。
「クソッまだ死なせてもらいないようだな。」
震える足は押さえながら、立ち上がる。
僕は、逃げる。本格的に気絶している少女を担ぎ上げて、教室に向かってただ逃げた。
【2012 6/2 Saturday am8:45 関勝宏 続行中】
【2012 6/2 Saturday am8:45 ??? 続行中】
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最終更新:2011年11月30日 17:10