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二人の悪、そして一人の善

世界的名探偵『L』。
一部からは熱狂的な支持を受けた『キラ事件』と戦い続けて死んだ。
結果的に彼の後継者が彼の悲願を果たすのだが、とにかくLは死んだのだ。
敗北、という形になる。
『キラ』夜神月を、『L』はあと一歩まで追い詰めながらも敗北した。

だが、しかし。
今ここにいる猫背の男は、紛れもなく『L』本人である。

原理もロジックも最初から成立していない、推理不能の事項。
死者の生き返り―――そんなものは存在しないのが一般常識だ。
生命活動を停止した死体を再生させる、と言えばまだどうにかトンデモ理論の範疇としては理解できる話だが、彼の場合は少しばかり話が異なってくる。
探偵『L』の死は、俗に言う『死』とは異なる死に方だったのだ。


死神のノート『デスノート』。
そのノートに名前を書かれた人間は―――――――死ぬ。


科学的原理など文字通り存在しない、『不可避の死』。
死亡状況、死に至る課程、死因まで設定できる最悪の殺人兵器だ。
ただし、偽名では殺害できない。
逆に言えば、幾つかの条件を満たせば確実に殺害出来るのだ。
Lはデスノートによって殺害された。
だから回避できない。


デスノートによる死は不可避だ。
当然、蘇生などするはずがない。

――――なら、何故自分は生きている?

死神という非科学が存在するなら魔法というモノがあってもおかしくない。
ここでは科学の範疇で考えること自体が愚策だろう。
最初から非科学の領域で考えた方が的を射ているかもしれない。

Lは参加者名簿を取り出し、幾つかの名前を確認した。
夜神月、弥海砂、松田桃太―――――この三人の名前は重要だ。
夜神月は確定で『キラ』。
目的の障害となるものは全て排除する危険思想家。
だとすれば弥海砂も『キラ』であった可能性が高い。
弥海砂はどちらにしろ夜神月を生還させる為に殺し合いに乗ると思われるため、ある種夜神月以上の危険因子ともいえる。二名共に用心しておくに越したことはない。
松田桃太。彼が殺し合いに乗ることはまず無いだろう。
同じチームに所属していたのだから、彼が善良であることは知っている。
ただ、騙されやすい辺りは心配だが………。

しかしながら、夜神月の頭脳があれば殺し合いの打倒も夢ではない。
彼の力を取り付けられれば、それだけで大きな助けになる筈。
皮肉な話ではあったが。

「…………綺麗な星空ですね」



猫背の男は、寝そべって星空を眺めてぽつりとそんなことを漏らした。
寝そべらざるを得ない状況ではあったのだが。
彼の腹からは、真っ赤な鮮血が溢れ出していた。
助かる量ではない。もう視界も白く霞み始め、様々な思い出が去来する。

「(………月君、君になら………この、ゲーム…を……)」

探偵人生最大にして最強の敵に、叶わぬ望みを託して。
既にその『敵』は、殺し合いを制覇するスタンスを確立したとも知らずに。



――――――――――探偵『L』は、再び生命を終えた。



【L@DEATH NOTE】  死亡
【残り137/148人】



倒れ伏していた男が完全に息を引き取ったことを確認して一息吐く。
片手に握られているM9ミリタリーをポケットにしまう。
腰まで伸びた金髪に抜群のプロポーション、俗に言う『美女』。
彼女の名を、折原マヤという。

幾つもの犯罪組織を金で雇われて渡り歩くフリーの工作員、それが彼女。
つい最近までは『神島一派』の手駒として暗躍していた。
結局儲けようとして失敗し、再びフリーに戻るのだが、今は違う。
今のマヤは、殺し合いを陰で傍観する『潜入員』の役割を得ているのだ。
主催側。

彼女のかつての雇い主を参加者とした主催側に彼女は雇われている。
条件は『ゲームにおいて不穏因子を殺害し、尚かつ役目がバレないこと』。
尚、参加者数が30人以下になった時点で彼女は元の世界に送還される。
報酬は最大級に、二世代は遊び尽くせるだけの額。

折原マヤが探偵Lを殺害した理由は、保身の為であった。

最初はただの情報交換の筈だったのに、彼はマヤの素性に迫ってきた。
素性がテロリストということまで暴かれた時には、引き金を引いていた。
仕方なかったと思う。
それにあの男を生かしておくのは少々危険とも思えた。
彼の推理の能力と、それを可能にする頭脳は非常に厄介な代物だ。
今は『潜入者』の彼女は、とにかく厄介な奴の殺害を始めることにした。

参加者名簿を見てみる。
既に死亡している『L』の名前に赤線を引き、その続きに目をやる。

高木藤丸。天才ハッカー『ファルコン』。かつての敵。
だが今回ばかりは彼を警戒する必要はない。機械仕掛けのシステムは何一つないのだから、かの『ファルコン』などただの小鳥に過ぎないというものだ。これには少し安堵する。
神崎潤。言うまでもない危険人物。かつての上司。
神島一派。


一癖も二癖もあるような連中を異常なカリスマ性で束ねていた『J』。
多くの組織を渡ってきたマヤでさえ、素直に狂っていると思った。
彼がどう動くのかは予想できない。
殺し合いに乗るかもしれないし、案外殺し合いに反抗してもきそうだ。
会いたくはない。会ったならマヤは、きっと彼を殺してしまう。
主催の指示に反抗してでも、神崎潤を殺す。

「…………ま、考えても仕方ないわね」

マヤは一言呟くと、Lの死体に背を向けて歩き出した。


【深夜/A-3】
【折原マヤ@BLOODY MONDAY】
[状態]健康
[所持品]M9ミリタリー@現実、『逃亡日記・レプリカ』@オリジナル
[思考・行動]
0:『潜入者』として行動する。
1:殺し合いの運営としての立場から見た危険人物を抹殺する。
2:神崎潤とは会いたくない。
※Season1終了後からの参加です
※逃亡日記はレプリカで、破壊されてもペナルティがありません



「…………銃声、か?」

テロリスト・『9th』雨流みねねはその音を聞き眉を顰めた。
『逃亡日記』に異常はなく、幸い彼女の身に迫る危機はなさそうだ。
右手に持った携帯電話。
これが彼女の未来日記、本物の『逃亡日記』。
彼女の逃走ルートを予知する未来日記で、殺し合いでも健在だ。

雨流みねねは、すぐに中断していた名簿の確認を再開する。
赤く囲んである名前は四つ。
『天野雪輝』『我妻由乃』『夜神月』『弥海砂』以上四名だ。

天野雪輝と我妻由乃に関しては、ほぼ間違いなく殺し合いに乗る。
雪輝は全てを“0(チャラ)”にするなんて戯言のために。
由乃は雪輝を何としてでも生かすために。
我妻由乃は最悪だ。みねねが彼女と戦ったとして勝率は五分だろう。
この二人に―――特に我妻由乃に会ったなら、覚悟を決める。
殺される覚悟ではなく、殺す方の覚悟だ。

「で、後はあの『名探偵』さんが言ってた『キラ』とやらか」

夜神月と弥海砂。
彼女が何故二人のことを知っているかといえば、数分前に遡る。



みねねが殺し合いの場をうろつき始めた頃、猫背の男と出会った。
いかにも怪しげな男だったが、男は探偵『L』と名乗った。




根暗で陰気そうな見た目に反して、彼の語り口は饒舌だった。
みねねがテロリストであることはその『思想』により看破された。
逮捕だの何だの言い出したなら虫の居所次第では殺していたかもしれないが、この状況下でそんな些事を気にするほどみねねは追い詰められてはいなかった。
結論から言うと、『L』と交わした情報は非常に有益な事柄だったと言える。
にわかには信じ難いが『デスノート』なる物の存在。
そしてそれを用いて大量殺人を行った二人の『キラ』。
片方の夜神月は敵なら厄介―――しかし味方なら百人力の頭脳。
弥海砂はほぼ間違いなく殺し合いに乗ってくると思われる危険人物。
みねねからの情報提供では『未来日記』に軽く触れておいただけだったが。

その後すぐに彼とは別れた。
特に理由があった訳ではないが、本当に何となく別れた。

みねねとしては、『キラ』二人は出来るだけ早く殺害したい。
夜神月の頭脳がどれほどであれ、最後に寝首を掻かれる危険も少なくない。
それほどのリスクを払うくらいなら何かされる前に殺すのが得策と考えた。


「………にしても殺し合いねえ。チッ、面倒臭ぇな」


気だるそうに、しかし反逆の笑みを浮かべて。

『9th』雨流みねねの善行(はんぎゃく)は幕を開けた。


【雨流みねね@未来日記】
[状態]健康、左眼に眼帯
[所持品]逃亡日記@未来日記、不明支給品
[思考・行動]
0:バトルロワイアルとやらをブッ壊す。
1:雪輝はひとまず警戒しておく。2ndは出会った場合殺害もやむなし
2:『夜神月』『弥海砂』の二名をなるべく早く始末する。
※9巻、西島にプロポーズされた直後からの参加です
※Lから『DEATH NOTE』の世界の情報を得ました

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最終更新:2011年12月02日 19:53
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