E-3遊園地エリア。
既に一人の男が命を落とし、大規模な戦闘が起きた痕さえある。
無惨に破壊された観覧車や付近の遊具がその激しさを物語っていた。
その破壊の痕を呆然と眺めている一人の少年。
しかしその驚きの少なさは一般人からすれば不可解だったろう。
彼は一般人だ。少しばかり常識外の世界に通じているだけの。
『魔術』を行使するにも技量が足りない、実質普通の人間と何一つ違うところはないだろう。人よりプライドが高いことくらいしか特徴のない、無力な少年だ。
だがつい最近まで彼は一般人ではなく、一人の魔術師だった。
とある戦争に彼は身を投じ、命懸けの日々を僅かながら送った。
勝利は得られなかったが、それに匹敵するだけの何かを得て、彼は成長した。
話を戻そう。
彼はこの惨状を見て、素直にこう思った。『こんなものか』と。
不謹慎な考えだとは分かっていたが、そう思わざるを得なかった。
何せあれほどの戦いを見たのだ、これでは小競り合いにしか見えない。
しかしこの成長は彼にとっては間違いなく有益な成長だったといえる。以前の彼ならだらしなくへたり込み、
殺し合いの恐怖にその身を震わせて涙を浮かべたろう。
強くなった。
彼は自らをまだ未熟だと言うだろうが、確かに彼は強くなった。
が。一つの『モノ』を見てその表情が曇る。
死体。
胸から看板が突き出て、もう死後硬直してしまっている。
銀髪の男の死体を見て、少年は目を思わず背けた。
もっと凄惨な死体を見たこともあるが、やはり慣れるものではない。
むしろ、慣れない方が良いだろう、と彼は思う。
こんな血みどろの惨劇に慣れるくらいなら、恥も外聞もなくへたり込んで号泣し、嘔吐していた方がよっぽどマシだ。
だが、込み上げる吐き気を抑えて少年は転がる死体を観察する。
看板の柄で背後から刺されたのだろう。
完全に肉体を貫通している。これだけならちょっと力のある人物であれば不可能な芸当ではない。少年には無理だが、これ自体は特筆すべきでない。
しかし、破壊された周囲の状況を見るに普通の人間の仕業ではないだろう。英霊―――――とまではいかずとも、かなりの魔術師か。
少なくとも彼で勝てる相手でないのは確かだ。
「…………くそっ」
自分の力の無さが嫌になる。
どれだけ成長しても、これだけが彼のコンプレックスだった。
まずはこのエリアを離れよう、と立ち上がる。
殺し合いの意志を持つ魔術師など相手にしていられない。
非力な自分が最低限戦えるようにするには、軍事施設あたりに行って重火器の類を手に入れておいた方がいいのだろうが、生憎かなり遠い。
辿り着く前に襲撃されてしまえば本末転倒だ。
まずは誰か――――誰でもいい、バトルロワイアルへの反逆意思を持つ同志を集め、とにかく集団で行動することが必要だろう。
参加者名簿には知る名前―――というか、呼称がある。
『
セイバー』『アーチャー』のような英霊としてのクラス。知らない顔の英霊も居たが、信用できる連中も居るのは確かだった。
特に――――――――――『イスカンダル』。
古代マケドニアの征服王。どんな状況においても自らの信じた覇道を突き進む、少年にとっての理想の王。彼に、もう一度会えるかもしれない。
欲しかった機会。あの王に、臣としてもう一度会う。
一目見るだけでも良かった。あの筋骨隆々とした巨躯を一目見るだけでも彼は構わない。それだけで、もっと強くなれる気がした。
少年―――――ウェイバー・ベルベット。
第四次聖杯戦争にてライダーを従えた『時計塔』の劣等生。
彼もまた、このバトルロワイアルに反逆の意思を示した。
求めるのはただ一つ。『征服王の臣下』としてこのバトルロワイアルを蹂躙し、制覇する。より多くを救い、主催の鼻をへし折ってやる。
丸腰で、あまりにも不用心にウェイバーは立ち上がった。
行き先はなく、この場を離れるために。
しかし、それは叶わない。背後から、男の声がした。
「動くな。動けば撃つ」
まだ若い声。恐らくは学生だろう。
その声には年齢にそぐわない冷たい殺意が込められ、ウェイバー・ベルベットの脳に明確な『恐怖』の感情を再起させた。彼が接近に気付けなかったのも無理はない。彼の背後に立つ者は『背中刺す刃』。
暗殺、背徳、潜入。
こと『闇の世界』のプロ、『暗部』の人間だ。
だからその言葉はハッタリではない。ウェイバー・ベルベットの力量には関係なく、動けばウェイバーに向けて冷たい殺意の塊が放たれる。
「ボクは、殺し合う気はない。だからオマエに殺されたり脅されたりする謂れもないぞ」
務めて冷静に、胸の内の恐怖を悟られないように言った。
背後の人間に殺し合いの意思がないことは分かっている。
もし殺す気なら、わざわざ『動くな』なんて声を掛ける必要はない。背後の人間ほどの実力者ならば、組み伏せてから尋問したっていいはず。
つまり、男はウェイバーが殺し合いに乗る気はないと内心では踏みながら、念には念を入れてこんな脅迫じみたことをしているのだ。
まどろっしい話ではあったが、もし誤解されるような行動、言動を取れば間違いなく殺される。ここは最新の注意を払うことが理想とされた。
「………ほう。奇遇だにゃー、俺もそう思ってたんだ―――」
もう動いていいぜい、という声が掛かる。
先ほどまでの冷たい声色ではなく、幾らか明るい声だ。
ウェイバーはまず一言文句を言ってやろうと思い、勢いよくその身を翻した。瞬間、すべてが硬直した。殺意が、向けられていた。
黒い銃身。
重火器に疎い彼でも、一目で拳銃だと分かる。
背後の男―――アロハシャツにサングラス、金髪に筋肉質な体型。
そんな目立つ風貌の男が、ウェイバーに銃を向けている。
「悪いな。俺も、死ぬわけにはいかないんだ」
くぐもった音。
次に、一歩遅れた衝撃が腹に襲い掛かる。
何故だ、という一言さえ出せずに、視界が暗くなっていく。
――――そして、ウェイバー・ベルベットの意識は暗転した。
■
「さて、と。これで良いのかにゃー?」
「ああ。上出来だよ。さすがだな、土御門元春」
邪悪な笑みを浮かべて微笑む、埃塗れの男。
彼こそ、ウェイバーの見た死体を作った張本人。『DOL』の黒幕。書き手、イレギュラー。◆VxAX.uhVsMという、一人の邪悪。
彼らは繋がっていた。
◆xzYb/YHTdIに撃退されて、その後に『背中刺す刃』土御門元春と出会い、互いに殺し合いに乗る意志を持つことを確認した。土御門は協力を打診し、◆VxAX.uhVsMが土御門にウェイバーの殺害を頼んだのだ。
あの脅迫も、素人を無駄に警戒させる猿芝居。
しかし何ら不思議はない。彼は『天邪鬼(ウソツキ)』なのだから。
悪の道を往く。
血みどろの宴を幾つも後に作り上げる邪悪と。
闇に生きる多重スパイの魔術師。
目指すのは、たった一つの優勝の座椅子。
思惑渦巻く二人の行く末は、まだ誰にも分からない。
【深夜/E-3】
【土御門元春@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[所持品]銘柄不明の銃@???
[思考・行動]
0:殺し合いに乗り、優勝を目指す。
1:Vxと共闘する。
2:上条当麻、一方通行らには特に警戒する。
※19巻終了後からの参加です
※魔術に規制はありませんが、使うとダメージを受けます
【深夜/D-7】
【◆VxAX.uhVsM@非リレー書き手】
[状態]全身にダメージ(小)
[所持品]不明
[思考・行動]
0:優勝して自らが主催者となりバトル・ロワイアルをリスタートする。
1:とりあえず、手当たり次第に参加者を減らしていく
2:土御門と共闘する
□
ウェイバー・ベルベット。
彼はまだ死んではいなかった。―――――否、死ぬはずもなかった。
彼の撃たれた腹には傷一つ残っていない。
意識はまだ戻らない――――しかし、彼はいずれ目を覚ます。
彼に、非力な凡才に、どんな幸運が味方したのか。
それは、まだ解らない。
【ウェイバー・ベルベット@Fate/Zero】
[状態]気絶、腹部にダメージ(中)
[所持品]不明支給品2
[思考・行動]
0:征服王の臣下としてバトルロワイアルを蹂躙制覇する。
1:………。
※本編終了後からの参加です
この物語は、嘘で満ちている。
最終更新:2011年12月03日 14:28