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救世主の隣に居た者

『スーパーハカー』こと橋田至は今、図書館に居た。
正確には、インターネットブースなるコーナーの個室の中に居る。
警告の画面が表示されているディスプレイを気怠そうに見つめながら、木造りの椅子に座って一人黙々とキーボードを打ち続けていた。
その画面は何かの文字列が現れては消え、を繰り返している。
使っているのは自作の簡易パスワード解除プログラム。
気怠そうにカタカタとキーを打ちながら、橋田は思い出していた。
待っていた筈の、希望の未来は閉ざされた。
運命石の扉(シュタインズゲート)―――彼の仲間風に言うならそうなるだろうか。とにかく、その場所には辿り着けなかった。だがいつか、『彼』はそこに至るだろう。
全てが収束した世界線に。
神様を冒涜し、最初の自分さえ欺いて。
主人公。
物語を良くも悪くも終わらせる人物。
橋田至はその引き立て役でしかない。
ああ、確かに、言い逃れもできないほどそれは正しい。
彼とヒロイン以外は――――結局、物語を動かすには至らないのだ。
しかし、橋田は自分にしか出来る最大援護というものを知っている。
殺し合いの穴。逆転の可能性を突く。
主人公が行うような仕事ではない。
その仕事が似合う彼は、やはりどこまでも脇役なのだろう。
仲間である『彼』には心の底から同情する。
何せ、希望だった『タイムリープマシン』は、とんだ絶望を引き寄せて。次のフェイズに移る間もなく、より大きな絶望が立ち塞がったのだ。いつもの軽口を@ちゃんねる用語混じりに一言くれてやることさえはばかられる。届かないとはいえ、だ。


「オカリン、………頑張れよ………」


柄でもないことを呟いた後、橋田は頭をガリガリと掻いた。
自分に出来ることをする。それに今は全力を注ぐ。
パスワードによって制限されていた機能。恐らくは公共施設として不適切な利用をされることを避けるためなのだろうが、『スーパーハカー』の前には紙同然だ。
必要最低限のソフトがあったことも幸いした。
パスワード解除。
余りにも退屈な仕掛け。SERNを相手取るのに比べれば造作もない。
思い出す。ラボの仲間たちと巨大組織相手に四苦八苦した頃を。
何度も実験と考察、改良を重ねて答えに近づいていった頃を。

あの時は――――楽しかったな。

行えなかったアプリケーションの実行に成功。セキュリティは突破した。
さあ問題はここからだ。
まずは把握。



この舞台に存在するPC全てとリンクさせ、起動できるようにする。
最高の作戦がある。
主催の作った台本のページを破り取るくらいの作戦が。
主催は不可思議な何かを持っている。魔法や超能力―――そんなものはどうでもいい。だが、確実なのは、どこかにコンピュータの力で制御している箇所―――『穴』があることだ。
針の穴でもいい。穴に通す針をまずは作る。
そして針の穴を広げ―――無数の針で一気に布地を貫いてやる。
陥落した『穴』により混乱した主催を、主人公たちに叩かせる。
それで終わりだ。
無謀な箇所は多いし、作戦は所詮二番煎じのものだ。
それでも、諦めない。
何度地に堕ちても這い上がり、天目掛けて跳ぶ。
そして、勝ち取る。
難易度は最悪だ。だからこそ面白い。まさに絶望が塗り潰している世界。
橋田はUSBメモリを端子に挿し込む。
支給されたもので、天才ハッカー『ファルコン』の使っていた物。
世界線が違うため『ファルコン』が何かは分からない。
しかし、この中身は理解できた。かなり凶悪なハッキングプログラム。
ロックを解いた今なら、これを使える。
これで、まずは繋げる。
バトルロワイアル舞台内全てのPCをリンクさせる。

アプリケーション、開始。
アプリケーション、進行中。
アプリケーション、処理中。

速い。橋田の予想を遥かに超えて速い。
まさに凄腕のハッカーにしか扱えない代物。
いける。これなら、第一段階はすぐにでも―――――!!

―――――――――――――――
受信
―――――――――――――――
面白そうなことしてるね。僕様ちゃんも混ぜてほしいな。
―――――――――――――――

「ッ!?ーーーーー何だ、これ!?」


割り込まれた。

凄腕にしか扱えない最強の鷹の空路に、割り込まれた。
空路を飛ぶのは蒼い怪物。
橋田至の背筋に冷たい物が走る。
何だこいつは。まさか、主催!?

焦らない。努めて冷静に、橋田も相手にメッセージを返す。

『お前は誰だおwwつか主催じゃないよなww』

つい@ちゃん語になるが気にしない。
とにかくこの得体の知れない蒼のことを知らなければならない。

『僕様ちゃんはただの敬虔な参加者ちゃんだよ、そうだな――――』

心臓が止まるかと思った。
その四文字を見て、橋田はモニタの向こう側の怪物の正体を理解する。
口元が何故か笑みを作っていく。当たり前だ。橋田は幸運だった。


ことコンピュータにおいて、橋田は最強の味方を得たのだから。


『死線の蒼って言ったら、分かってくれるよね?』


死線の蒼(デッドブルー)。
世界を蹂躙した最強のサイバーテロリスト集団《仲間》の頂点。
怪物。そんな次元ではもはやなかった。
魔王、と言っても何らおかしいところはない。

これは希望だ。
これから始める戦いにおける、最大の希望。
最高の展開。

『あ、そういや君の名前は?名無しさんじゃやりにくいよ』

頭の中に思い浮かべた適当なイメージ。
ニックネーム『ダル』。『樽』―――『バレル』。
ジョン・タイター。未来からやってきたと自称する輩。


『バレル・タイターとでも呼ぶがいい、フゥーハハハ!!』


そして、橋田至は戦いの渦に身を投じる。
もう引き返すことは考えない。
希望も絶望も紙一重の、まさに一寸先は闇の戦い。
さあ始めよう。
そして至ろう。到達できなかった収束(ゲート)に。

――――――――エル・プサイ・コングルゥ。


【深夜/E-6】
【橋田至@STEINS;GATE】
[状態]健康、興奮
[所持品]ファルコンのUSBメモリ@BLOODY MONDAY
[思考・行動]
0:バトルロワイアルを潰し、運命石の扉とやらに辿り着く。
1:《死線の蒼》と共闘する。
2:ひとまずは外に出ず作業に集中する。
※萌郁襲撃後、岡部がタイムリープした直後からの参加です

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最終更新:2011年12月05日 14:02
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