1-1 フタリ、ヒトリ
「男子七番、須藤凛!」
自分の名前が呼ばれた。
席を立つと、足がフラフラするのを感じた。
先程までに、いろいろありすぎだ。
匠が死んで、先生も死んでて、それを目の前で…。
思い出すだけで吐き気が戻ってくる。
「せいぜい頑張るんだな、問題児君」
島田から皮肉を浴びせられ、再び殴りたい気持ちが出てくる。
だが、ここで殴っても犬死するだけだ。
島田から差し出された荷物を奪うように受け取り、扉に向かう。
そして、出て行く前に一瞬だけ匠を見る。
もうこいつとは話せないんだな。
ごめん…助けれなくて。
絶対俺が、主催を潰してやるから。
今度こそ、教室を出る。
するとそこは、廊下だった。
と言うより廊下以外になにがあると言うのだろう。
まずは外に出ようと、昇降口まで降りる。
外に出れば始まるんだ。
殺し合いが、プログラムが。
一歩外に踏み出す。
冷たい秋風が頬に触る。
後ろから誰かがくるかもしれない、と思いながら動き始める。
ザッ
砂利を踏むような音が聞こえた。
それは自分の右斜め後ろ側からだ。
後ろを振り向くと、ナイフを振り上げた男が迫ってきていた。
浅倉翔、元サッカー部主将だ。
目をこれでもかと言うほど見開いて。
大好きであるサッカーで鍛えた足で、人を殺す為に駆けている。
普通に脚力で勝てるはずない、だかしかし…相手はいつもより動きが悪い。
逃げれないことはない、でも俺は逃げない。
もしこいつが、このあとも人を殺したら?
俺が止めなきゃ誰が止めるんだよ。
というか、宇田川はどうしたんだよ。
浅倉と一緒に出てった感じだったよな…。
と、そこで俺は気づいた。
あいつの服についている、赤黒い染み。
少しだけ良い俺の目が捉えた倒れている男。
腹付近からは赤い液体が流れ出て、地面に赤黒い湖を作っていた。
浅倉は、殺した。
犬猿の仲とまではいかないが、仲は悪かった。
いや、良くなかったと言う方が近い。
でも、あいつらは強敵と書いて「とも」と言うような関係だった。
それなのに、こいつは殺した。
言葉が出なかった。
少しの間に、強敵「とも」を殺すやつが出て来て。
僕は今、そいつに殺されそうになっている。
悪いのは、誰なんだ。
そんなのは、言わないでも分かる。
島田、そして、この国の腐った奴らだ。
そいつらのせいで、浅倉は壊れちまった。
人を殺すことになってしまった。
「ごめん…!浅倉」
俺は後ろを向いて走り出した。
今この場でできることが思いつかなかった。
俺は自分の非力さを地面に押し付ける様に、走った。
【残り 30人】
最終更新:2012年01月01日 23:50