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1-2・変哲オリ

1-2 決意/決別


「よし、ではいいな…では名簿番号1番浅倉翔から荷物を受け取って出ていけ!」

どうやら俺かららしい。
異常なほどの吐き気を抑えながら立ち上がる。
俺、浅倉翔は正直言って、人を殺すなんてしたくない。
それも、クラスメイト同士でと来た。
荷物を受け取り、廊下に出ようとする。

「………」

ああ、駄目だ……怖い。
このまま外に出たらどうなるんだ?
すぐに殺されるかもしれない。
出たくない、死にたくない。
でも……行かなければ、俺も津村のようになる。
行かなくてはいけない…。
だから動けよ、俺の足……。
行かなきゃ殺されるんだぞ?
頼むよ、なんで震えて動けないんだよ。

「……何を呆けている、行くぞ」

後ろから救世主の声が聞こえた。
それはいつも聞きなれている声―――宇田川龍磨のものだ。
背中を押されて、俺はそのまま外に出る。
廊下に出る、龍磨は相も変わらず俺を押す。
こいつは俺を殺す気なのか。
わからない、でも―――これは殺し合いなんだ。
一人しか生き残ることはできないんだよ。
それが例え……「生き別れた双子」であってもだ。





昔の話をしたいと思う。
俺は5月9日に生まれた。
しかし、珍しいようなことがあった。
二卵性双生児、この世にともに生まれてきた人間が一人だけいた。
それが――――宇田川龍磨だ。
俺たちは生まれて、2年間で別れてしまった。
理由は簡単、親の離婚だ。
何かいざこざがあって、俺達は離れ離れになった。
だが、俺が龍磨と再開した。
中学に入って、すぐにあった入学式。
そこで俺は、再び出会った。
しかし、長らくは離れていた俺達は性格などもすべて変わってしまった。
双子であろうとも、違う。
俺―――浅倉翔は優柔不断な奴に。
あいつ―――宇田川龍磨は日本男児が似合う硬派な人間に。
変わってしまったのだ、いつの間にか。
それからは、毎日喧嘩のようなものばかりしていた。
喧嘩するほど仲が良い、というのが本当なら、俺はどれだけ嬉しかったか。
でも―――あいつは俺を恨んでいる。

次はあいつ―――宇田川龍磨がどんな人生を歩んできたか教えてやろう。
俺の人生は、母さんに優しく育てられた幸せな人生だった。
不自由はあった、それでも楽しく過ごしていた。
だけど、あいつは俺とはまるで正反対だった。
いや、金が無いという点が一緒ではある。
あいつは父親に虐待を受けていた。
人には見せたがらないが、体中に傷があるのだ。
それほどにまで傷が残る虐待をあいつは、12年間も受けていた。
3歳から15歳―――普通ではありえないようなことだ。
でもあいつは、虐待に耐えた。
そしてこの前、父親が死んだ。
闇金の奴らに追われたあげく臓器を売られ死んだとは聞いた。
ざまぁない終わり方だとは思ったが―――その代わり残った借金はあいつが背負っている。
つまりあいつの人生は最悪そのものだった。

でも―――このゲームでそれは逆転できるかもしれない。
俺と龍磨は知っていた。
このバトルロワイアルと呼ばれるプログラムについて。
正確には、教えられていた――の方が正しいかな。
龍磨の父親―――俺達の父親に教えられたのだ。
バトルロワイアルが復活すると。
そしてそれに優勝すれば、その後の人生が保障されると。
あのクソ父親は俺らを見てニヤニヤしていたが、まさか俺らが参加者と知っていたのかもしれない。
だが、それとなっては今はわからない。
あいつは殺されたんだから。






「……俺を殺してくれ、翔」

外に出て俺が最初に言われた言葉は、衝撃そのものだった。
あいつが今言ったのは、自分を殺せだった。
普通なら、お前を殺す―――とでも言うのであろう。

「………待てよ龍磨、なんでだ?」

俺は、できる限り冷静を装って返した。
当然であろう―――弟に殺せと言われたら誰でも驚く。
驚かない方がおかしいというものだ。
だが、龍磨は何も言わずに日本刀を取り出した。

「りゅ、龍磨…まさかお前……」
「大丈夫―――兄上が僕を殺さないなら、僕が殺すだけだから」
「そういう問題じゃねぇんだよ!」

思ったよりもこれは重症だ。
どう話したところで聞いてはくれないだろう。
俺はバックを開いた。
そこに入っていたのは、でかでかとしたサバイバルナイフ。
これで、人を殺さなくてはいけないのかもしれない。
そう思うと、怖くなってきた。

「頼む兄上、それで俺を殺してくれ」
「―――――いやだよ」

「なんで死ななきゃいけないんだよ!殺さなきゃいけないんだよ!
 俺達は何も悪くない!悪いのはあいつらなんだ!
 戦争をもう一度したいからなんて理由のために俺達を戦わせるあいつらが悪いんだよ!
 俺達が殺し合いをする義理なんてないんだよ!
 なのに―――なんで殺せなんていうんだよっ!龍磨ぁ!」

俺の思いをぶちまける。
主催が聞いてたら、殺されるかもしれない。
そうは思うが、それとこれとは話が別だ。
弟が道を間違えたら正すのが兄だ。
だから俺は叫んだ、はずだった。

「運が、悪かったんだよ」

弟の考えを改めさせることなんてできなかった。
俺の思いを、たったの一言で消された。
叩き斬られたようだ。

「だったら、俺が優勝する―――さようなら、兄上」

龍磨が刀を振り上げる。
ああ―――――俺は死ぬのか。
弟はこのまま、俺を殺して他の奴も殺すのだろうか。
そんなことはわからない。
でも―――たったの一つだけわかることがあった。








俺は、死にたくない









気付いた時には、俺の体に赤い染みがついていた。
その染みは鉄の匂いを放ち、鼻に触る。
そして、だんだんと現実に戻される。
現実に戻った時

「――――――――あ」

少年は壊れる。

「ああ、あああ…」

ただ呻き声を上げる。
自分が殺してしまった。
殺し合いなんてしないと言いながら。
弟を正すと言いながら。
しかし――――自分が間違えた。
自分が偉そうに言いながら、自分も命が惜しかった。
だから彼は――――弟を―――――宇田川龍磨殺した。

「あああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああ
 あああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

浅倉翔は、その重圧に耐えられなかった。
幸せに生きすぎていた彼に、この事実は酷すぎた。
そして彼はサバイバルナイフ片手に駆けた。
舞台は、分校前へと移る――――。

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最終更新:2012年04月28日 19:16
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