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本物と偽物

「誰が乗るかってんだよ」
 彼女は呟いた。赤髪のポニーテールに呟いた際に見えた八重歯。可愛らしい顔だが、どこか荒々しくも見えた。
 性格もおとなしいとは言えないだろう。利己主義で好戦的。槍の使い手である魔法少女である。
 名前は佐倉杏子。本来、死者である身であった。

 それに関しては彼女自身も妙に思っていた。自分はさやかと共に、自爆魔法で死んだはずなのである。
 そしてもっとおかしいのは魔女化し死んだはずのさやかも生きていることだ。名簿に書かれている。
 もっと言えばマミも生きているのだが、もはや気にしてはならないのだろう。アドルフ・ヒトラーがいるくらいだ。
 しかしあの大男も少女もインキュベーターではなかった。まったくの別物。なのし死者を蘇らせているのである。
 キュゥべえは今頃どうしているのだろうか。この不測の事態、自分の食い物が危機状態にあるのだから何らかの動きはあるだろう。
 それを払いのけるのは日本政府どころか国連でもなんとかならない。できるのは神くらいか。
 あの大男は、神なのだろうか。
(そんなことあるわけねえ)
 神を信じた自分の父親は狂って死んだ。家族もろとも心中したのだ。ありえない。
 殺し合いを起こせるぐらいなら父の願いを聞けたであろう。だからその考えは除外した。
 そんな甘ったるい考えが身を滅ぼすのだ。
 彼女の推理は半分当たっていた。あの時空王は彼女のいた世界にはいないが、別世界にはいるのだ。
 もっともそんな推理はあまり意味がないと言えるのは、この殺し合いの舞台だが。

 山の中腹部だということは眺めを見てわかる。そんなに高くない山らしく、600メーターあるかないかくらいだろう。
 支給品のパフェを食べながら彼女は登山していた。山道も見えるのに下山しないのには理由がある。
 彼女の目的地は街だからだ。地図をみるとここには軽い都市があるらしく、それはちょうど山の向こうにあった。
 都市に行く理由は人が集まるから。ここに行けばまどか、ほむら、さやか、マミに会える可能性がある。
 中でもさやかには会いたかった。魔女化した後の彼女はその力を優勝のために使うだろう。自暴自棄になっているからだ。
 それを止めなければならない。できれば言葉で、できなければ実力行使で。
 とは言っても彼女の行動方針は脱出狙いである。魔法少女の力を合わせれば戦力は集まる。主催を倒すこともできるだろう。
 もっともこの首輪の存在が邪魔だ。これに関しては運頼みだ。この中にどうにかしてくれる者を探すしかない。
 皮肉にもキュゥべえの存在がここでは必要だった。力が無ければ、力には勝てないのだから。

 登山していると一つの明かりが見えた。それは止まっている。おそらく通常支給品にある懐中電灯であろう。
 こちらも使っているのだから相手も見えているはずだ。ということは
(ヤバい)
 すぐさま攻撃態勢に入る。ここでソウルジェムを使うのは危険性がある。第一警戒として支給品のナイフを取り出す。
 折り畳み式の黒縁ナイフ。刃渡りは五センチあるかないかだろう。頼りないと言えば頼りない。
 だが見えるのだろうか。こちらへ光は近づいてくる。
(さっそく戦闘かよ)
 こうなれば仕方ない。好戦的な彼女は戦いへと結びつく思考回路も速かった。この状況では幸か不幸かはその時次第である。
 光は近づく。すると声が聞こえてきた。
「どうやら戦闘態勢に入ってるみたいね。大丈夫です。私は殺し合いに乗ってません」
 女のようだ。こんなことは言っているがブラフかもしれない。杏子はまだ構えている。
「第一、私が乗るわけはありません。そんなことはありえません。なぜなら」
 善人だからか? と杏子は心の中で聞く。善人だろうがこの状況では死ぬ可能性があるのは変わりない。
「天界の選ばれし戦士である私が乗るはずがないからです」
 そうか。そうくるとは思わなかった。杏子はそう心の中で思う。
 思う。
 思うが、変だ。
(あれ?)
 天界の選ばれし戦士、らしい。なんだそれは。聞いたことがない。
「名簿には私の名前は与次郎次葉と書かれていますが、実は違います。主催も調べ不足ですね。
 ツギハギスタ・SS(ダブルエス)・ルビーサファイア5世。これが私の本名です。
 間近でマジカル☆ワンダーツギハといえばおわかりでしょう?
 まあそれはいいです。問題はこの殺し合いの主催。おそらく彼は魔界の大帝王・ワルゴールドの手下です。
 殺し合いをさせるなんて、こんな非道させるのはあの魔王の手先としか考えられない! そうに決まってます!
 だけど私の力だけじゃ無理……。でも力を合わせればきっとあの手先も倒せるはずです!
 さあ、一緒に手を取り合い、この殺し合いを打破しようじゃありませんか!」
 言った人間が見え始めた。電灯に照らされたのは髪が二つ結びで笑顔を絶やさない少女だった。
 目には曇りが一切ない。
(ヤバい)
 なんだこいつは。間違いなく頭がおかしい。そんな存在など聞いたこともないし、見たこともない。
 まず悪の手先ってほとんど根拠なく断言しているし、主催を倒せる理由もないに等しい。
 だが、だ。
(いい)
 逆にこの場合、たとえ気が狂っていたとしても対主催という立場には代わりないのだ。信用ができる。
 むしろ普通の者の方が信用ならない。異常なときには異常な者がもっとも適応しているのだろう。
「あー! それは伝説の短剣・ブラッククリス! それを持ってるなんて、あなた魔法少女ね!」
「……まあね」
 奇しくもそれは合っている。

「へー。私の知ってる魔法少女とは違うんだねー」
「そりゃそうだろうね」
 架空のことなんだから、と杏子は思う。呆れたような表情だった。
 ほぼ同じ年齢、ほぼ同じ境遇。違うのは通学しているかどうかという点であろう。
「でも箱庭学園ってのはかなり変わったところだね。そっから五人も参加しているんだろ?」
「うん。でも一人、都城王土はもう辞めているはずなんだけどね」
「そいつも超能力みたいなのが使えるんだな。異常性(アブノーマル)っていう」
「そうだよ。あ、私は魔法だけどね」
「まあ、な」
 そういう設定なのだろう。証拠がない今、箱庭学園というものも半信半疑なのだが。
 だというのにあちらはまるっきり自分の言うことを信じてくれる。
「ところで魔法少女なんでしょ? なんでそんな違いがあるんですか?」
(こっちが聞きてえよ)
 杏子はとりあえず話を合わせることにした。
「あれだよ。私はインキュベーターっていう地球外生命体が作った偽物の魔法少女ってわけだ。
 でお前は本物の魔法少女、天界の選ばれし戦士なんだよ。わかったか」
「あーなるほどね」
 すんなり理解してくれた。やけに素直である。
 にしてもこんなものなのだろうと、杏子は思った。
 一般的にみる魔法少女は明るいイメージなのだ。いわゆるヒロインで正義を倒す主人公だ。
 だが実際は食い物にされる無賃労働者のような毎日である。たった一つの願いのために。
 刹那的な、使い捨てのような人生を追うはめになるのだ。ろくなものじゃない。
 杏子は与次郎を見る。明るい純真な目と笑顔だ。
「なあ、次葉」
「何?」
「お前は偽物になるんじゃねえぞ」
「うん。ならないつもりだけど?」
 心配はいらないようだ。杏子はパフェを食べつくす。
 暗い山道に明かりは二つ寄り添っていた。

【一日目/深夜・晴れ/山(中腹部)】

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ
【状態】健康
【装備】臨也のナイフ@デュラララ!!
【道具】パフェ入れ容器@WORKING!! ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ 通常支給品
【思考】基本:脱出する。
    1:次葉と組む。
    2:街に行って仲間を集める。さやかを止めたい。
※与次郎次葉と情報交換をしました。

【与次郎次葉@めだかボックス】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】不明 通常支給品
【思考】基本:ワルゴールドの手先である主催を倒す。
    1:杏子ちゃんと組む。
    2:街に行って仲間を集める。
※佐倉杏子と情報交換をしました。

【臨也のナイフ@デュラララ!!】
黒縁の折り畳みナイフ。刃渡りはそんなにないけどこれで日本刀と渡り合える臨也さんはすごい。

【パフェ入れ容器@WORKING!!】
そのままの意味でパフェを入れる容器。パフェは店長がよく食べてる。

【ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ】
物質化された魔法少女の魂。魔女の存在を感知する機能や、変身アイテムとしての役割も担っている。
しかし魔法の使用に比例して穢れを溜め込むほか、憎悪や絶望などの暗い情念が蓄積することでも穢れが貯まり輝きが失われていく。
wikiからそのままですが容赦してください。あと100m離れると肉体が死んで、壊すと完全に死にます。

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最終更新:2011年12月28日 13:58
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