3-2 殺人者誕生
昔、超巨大な会社を運営する名家がおりました。
代々第一子が引き継ぐ―――その第一子が私でした。
瀬戸家、その第一子が私、瀬戸麗華。
生まれてから人生のレールは決まっていた私はとにかく英才教育を受けました。
赤子のころから様々な語学を植え付けられました。
幼少のころには護身用の格闘技を何種類も受けました。
そんな完璧な人生を歩んでいた私にはないものがありました。
それは――――友人と言うもの。
父上は私には必要ないとおっしゃりました。
帝王とは孤独なものである――――だそうで。
でも、ある時私は一人の少女に声をかけられました。
「すごいむずかしほんよんでるね、なんていうほんなの?」
見た目はすごく可愛らしい少女という感じでした。
その時最初に感じたものはその印象―――。
その次に感じたものは、嬉しさでした。
始めて声をかけてくれた、それが嬉しくてたまりませんでした。
人前ではじめて泣いた瞬間でもありました。
私は今でも彼女に感謝しています。
「―――――雪子」
私は外に出て、はじめて気づいた。
雪子が、そばにいなかった事に。
「雪子――――どこなの――――?」
私が唯一信頼している人。
その人が今――――いない。
焦りが生まれてくる。
もしかしたら殺されそうになっているのかもしれない。
もしかしたら悪漢共に犯されそうになっているのかもしれない。
もしかしたら自分も考えすぎで無事なのかもしれない。
もしかしたら――――――死んでいるのかもしれない。
「ッ―――――!」
自分が冷や汗をかいていることに私は気がつきました。
だが―――私は帝王になるべき人間なのです。
こんなことくらいで焦ってはならないのです。
ここで私がすべきことは―――――。
「どうしよう――――分からない」
殺し合いに対抗するべきか―――?
いや、それは駄目―――会社に迷惑がかかるわ。
私だけの問題ではない、働いてくれている皆のためにも駄目だ。
じゃあ―――殺し合いに乗る?
駄目だ―――雪子を殺すことになってしまう。
それだけは駄目だ。
じゃあ―――どうすればいい?
「――――――――」
答えは、一つだけだった。
成功するかは分からない。
それでも――――この可能性に賭けたかった自分がいたのです。
「――――瀬戸さんじゃないか」
「ええ、轟君―――久しぶりというべきでしょうか」
「いや、そうでもないと思うよ」
初めて会ったのは、クラスでも浮いている轟車―――。
自分もあまり話したことはなかった。
相手が先ほど持っていたのは銃―――こちらの武器はスタンガンだったので、不利である。
だが、唯一の救いは轟君が乗っていないように見えること。
現に武器をしまいお菓子を食べている。
「―――さっそくで悪いんだけどさ、轟君」
「何?瀬戸さん?」
「――――――死んでもらえません?」
いきなり言い放った。
スタンガンを起動させて轟君に近づく。
しかし、轟君は動くことはなかった。
スタンガンによる一撃で轟君はうつぶせに倒れる。
「――――――ああ、こんなものですか」
クロッグ17を取り出して轟の額に押し付ける。
引き金を引く指が、震えた。
少し引くたびに増える重み。
少し引くたびに増える幻聴。
人殺し、鬼、悪魔、屑、瀬戸家の恥、消えてしまえ。
どんどん増えていく幻聴。
それは少しづつ、少しづつ、瀬戸麗華を崩していく。
瀬戸麗華という人間を崩していく。
「あ、あああああああああああああああ!!!!!」
思い切って、引き金を引いた。
そしてその瞬間、私は殺人者の名前を背負うことになった。
【残り 29人】
最終更新:2012年01月01日 23:50