陳腐な発想だよな、バトルロワイアルなんてもんは。
少なくとも俺に採点させたらオリジナリティ・センス・クオリティ全部赤点になっちまうぜ。そんくらいに、俺はこのバトルロワイアルとやらを過小評価している。
悪趣味だとは思うけどよ、やっぱり俺の目からすればつまらない。
堂々と殺しが出来るっつってもよ、別に俺は快楽殺人鬼の気があるわけじゃねえんだから、それは俺にとってさほど嬉しいことじゃねえんだな、これが。
これなら女の一人でもとっ捕まえて×××した方がよっぽどマシってもんだ。
っといけね。ついついケダモノの本性を現しちまうとこだったぜ。
幾ら気乗りのしねえ
殺し合いだからって、みすみす殺されてやるような奇特な人間そうはいねえだろうよ。勿論俺だって死にたくはない、遠慮なく殺させて貰うさ。
たまーに今でも通り魔やるしよ、殺しに関してなら俺はそこそこ自信がある。
何でか知らねえけど俺の行く先行く先ついてくる傍迷惑な殺人鬼がいるから最近は控えてたけどな、腕が鈍ってるってことはないだろうよ。
仮に腕が鈍ってたところで、俺の力を使えば大抵の相手は地獄の苦しみを与えた上で殺せちまう。あの殺人鬼にだって苦労なく勝てるだろうさ。
だけど奴さん相当な怪物らしいから相手にはしたくないんだよな。
とと、話が脱線しちまう。
集められている参加者の数は15人、全員が俺のような《異常能力者》ときた。
何だそりゃ、怖すぎるだろ。
化け物狩りなんて趣味はねえぞ、生憎俺の家には《この世ならざるモノ》に敬意を払えという家訓がある、だから取り巻き共と肝試しに行ったことはねえし、多分今後もない。
祟り神とか自縛霊とか怒らせちまったら大変だろ、マジで!!
心霊スポットなんかに行って悪霊の同居人作る気はねえんだよ。
まあ俺には化け物なんて大袈裟は呼ばれ方は似合わねえだろうし、他の能力者とやらもそこまでぶっ壊れた連中じゃあないのかもしれねえけど、やっぱ妙な力持ってる奴等とはお近付きになりたかない。
面倒臭えなあ。
相手が人間ならぶっ殺せるからいいけど、吸血鬼とかそういうのはマジやめろよ?
少なくとも俺の力で落とせる範囲の敵にしてくれ、イージーモードで頼むぜ。
ちなみに俺を殺そうとした奴は老若男女問わず確実に許さねえ。
俺はさ、人が嫌がることは大好きだけど自分が嫌なことされるのは大嫌いなんだよ。
つい殺したくなるんだ、そういうことされるとさ。
男なら滅茶苦茶に臓物ぶち撒けてやりたくなるし、女なら滅茶苦茶に犯した後で同じく滅茶苦茶にぶち撒けて惨殺してやりたくなる、実際にやったこともある。
あ、よく考えたら俺って天性の殺人鬼じゃね?
強姦魔って言われたら褒め言葉に聞こえるけど殺人鬼ってのも悪くねえな。
このバトルロワイアルで優勝したら、殺人鬼を名乗ってもバチは当たらないだろ。
うーん、俄然殺る気が出てきたぞ。
星空の下、暴虐の限りを尽くす殺人鬼兼強姦魔、なかなかいいじゃねえか。
ただしかしな。名簿を見る限り、一人だけ殺したくない奴が居るんだよな。
『鏡御音』――――俺の本性を知っていながら、対等に接してくれる幼馴染。
あいつくらいなら見逃してやってもいい。
不細工じゃない女で壊したいと思えないのはあいつくらいしかいないな。
んー、どうするか。
御音は可愛いし守ってやりたくはなるけど、俺も死にたくないし。
俺が優勝すれば平行世界の『神』として、御音にもう一度会うことは出来るけどよ、結局それは俺の知る『鏡御音』じゃないわけだろ?それだとどうもなあ。
いや―――だが、命には代えられないか。
「まあいいか。苦しまねえように《痛み》を消して殺すか」
《痛み》を感じさせずに殺す、その意味はちょっと特別なんだよな。
痛みを感じる間もなく即死させる訳じゃなくて、痛みを完全に消してからってこと。
痛覚を遮断する。
世の中には無痛症って病気があるらしいが、俺の能力を使えば相手を強制的にその状態にしちまえる。しかもその逆もまた然り。痛覚を異常に過敏にすることもできるし発狂しそうな痛みを常に流し続けることも出来る。
そう、もう分かったろう。
俺の能力は《触れた人間のありとあらゆる感覚を操る》能力だ。
視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚を自由自在に操り、書き換えられる。ちなみに痛覚は触覚のオプションに入っていて、痒みを操作することだって出来るぜ。
自分にも使えるから、不味い料理だって極上の旨味に感じられる、なかなか便利だ。
人に使うとかなり笑える、痛みをぎりぎりショック死しない程度に与え続けたり、痒みを全開にして地獄を味合わせたりするのは良い酒の肴になるね。
だから、御音は痛覚を零にして殺してやる。
「ひゅー、今の俺慈悲深すぎて泣けてくるな」
楽しくなってきた。
アドレナリンが全開で分泌されて久しく味合っていなかった《狩り》の楽しさが蘇る。
狩るか狩られるか。
そんな命がけのスリルと、おびえる獲物の絶望こそが最高の名酒だと思うね。
おっと、まだ自己紹介もしていなかったな。
俺は沖崎翔。何処にでもいる血気さかんな高校三年生だ。
趣味は人を精神的肉体的問わずに壊すこと、好物は悲鳴を聞きながら飲むビール。
買ってる恨みは多いけど、生憎それで危ない目にあったことは一度もない。
「支給品ってのをまずは………っと、こりゃあ何ともめんどくせえ武器を。鈎爪なんてもん使って人殺したことはさすがにねえぞ俺は………」
鈎爪を両手に填めてそれをぶんぶんと振ってみる。
文句を言ってはみたが、これがなかなかしっくりくるので驚いた。
いつもはナイフとか、ありふれた物で殺すんだが、たまには悪くない。
これで懐に入って腹をかっ捌き、直後に痛覚を全開にして腸を引きずり出す。
いやあ、そそるねえ。まあ一回触れちまったらそれだけで俺は絶大なアドバンテージを得ることになるんだから、防御を確実に行って一瞬の隙を突くのが堅実だな。
女だったらもう一行程愉しみが追加されるけどな、はははっ。
悪いけど、俺は殺されてはやらないぜ。
強くてもその強さに誇りを持ってる奴はそこが隙になる。
そういう奴は自分のプライドに酔ってるから、プライドに反す行動を取れない。
でも俺はそんなつまらねえもんは微塵も持ち合わせていないんだ。
もしヤクザの若頭とかにすごまれたら土下座してお引き取り願う。
神様とやらが俺を裁くというなら、今までの行いを無様に懺悔するだろう。
俺は美学のない悪役なんだ。外道っていうのかね。
だからこそ俺は強い。手段を選ばないから、こと生き抜くことに物凄く秀でている。
死亡フラグも滅茶苦茶乱立するよ、でも俺は死なない。
「それが俺だ」
少しばかり格好つけて言ってみたところで、色々考えてみよう。
まだ殺し合いは開始したばかりだが、もう既に殺る気になってる奴はいると見ていい。
異常能力者なんて胡散臭え連中が正常である訳がねえだろ。
俺たちは異常者なんだよ。社会不適合者って言っても間違いじゃないな。
俺の見立てなら、この殺し合い、15人中最低でも8人は乗ってくるはずだ。
あの美術館でもちょいと他の奴等を観察したけど、みんな普通じゃなさそうだった。
そこで俺は確信したね。
この殺し合いという小さな物語は、筋書き通りの優勝エンドで終わると。
所詮、異常者なんざに救われた結末はない。
それも、異常者の癖に正義だの何だの説く奴には絶対にこの戦いは勝ち残れない。
救われるのは異常者らしく狂って汚れた俺みてえな奴だけなのさ。
いや、トゥルーエンドくらいなら辿り着けるかもな。
《真実》の《結末》。救われるかどうかは別として、それも一つの終わりだよ。
ハッピーエンドってのはたった一人にしか微笑まねえ。誰かって?俺しかいねえだろ。
俺は異常者であることを受け入れてそれを誇っている人間だ。そんな素晴らしい俺に微笑まないほど神は残酷じゃあないんだよ、残念ながら神様は悪人にこそ優しいんだ。
いや、てかどうせなら幸せになりてえしな、俺だってさ。
折角この世に生まれたんだから、やりたい事やりまくって楽しみたいだろう?
―――ってかさ、長々一人称やってみたけど俺が気付いてないとでも思ってるのかな?
気配は見事なまでに殺せてるし、殺気も俺には真似できねえレベルまで抑えてやがるけど、気配と殺気の消え方にどうも波がある。これじゃあ俺は騙せねえな、残念ながら。
鈎爪のフィット感を確かめて、俺は勢い良く振り返って腕を振るった。
「がぁッ!?」
頬の肉を僅かに掠め取った。やはり使い勝手がいいなこれ。
で、襲撃の主に向かって俺は悪役の笑みを浮かべて言うのさ。
「ハァーイ、気付いていないとでも思ってたのかいお兄さん?」
黒ずくめの格好に、手には鉄の籠手を填めた青年。
手に持つ得物は一本のナイフ、飾り気のないお粗末なナイフだ。
殺し慣れしていないようだったが、こいつの気配と殺気消しはなかなか見事だった。いやはや、あれをただの鍛錬で身につけられるなんざすげえと思うよ割とマジで。
やっぱり実戦経験がなかったんだろうな。
もしこれで場数を踏んだ相手だったら、無傷じゃ済まなかったかもしれない。
「ひ、ひ。ひぃぃいいいいいいいい、たす、たすたすたす……」
うわーお。顔を切りつけれて完全に心が折れちまったみてえだな、情けねえ。
これなら能力なしで殺せそうだ、というかこいつも異常者なんだよな?
早くも自分の考えに自信が持てなくなってきた。
さあ殺すか、と思った時、俺の頭の中にとあるイメージが浮かび上がってきた。
そうだな。こいつは男みてえだし、かなりの小心者だと見える。
あれを使ってみるか。
お手軽に、狂ったマーダーを生み出せるとある方法を、な。
さあ、楽しいおしおきの時間といこうか?
□
痒い、痒い、痒い、痒い。
何だあいつは、僕に何をしたんだ。
あいつが僕の体に触ってから、得体の知れない痒みが止まらなくなった。
僕を殺さなかったのは、この痒みで僕を苦しめるつもりだからか。
ふざけるな、と思う。あれがあいつの能力なら、あいつは最悪だ。
痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い、僕は海老アレルギー持ちで、昔間違って食べて蕁麻疹を出してしまった時でさえ地獄と感じたが、これはその比じゃない!
皮膚を爪が裂き、血が出てきても、痛みよりそれを遙かに越えた痒みが僕を襲う。
何で僕ばっかり。
いつだって虐められて、親以外に味方が居なかった不幸な僕がまだ不幸になるんだ。
ふざけるな、ふざけるな。何で僕ばっかり何で僕ばっかり!!
みんな不幸にしてやる、誰も彼も臓物引きずり出してぶち殺してやる!!
ああ――――痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒いッ!!
【未明/A-3住宅地】
【沖崎翔《触れた人間のありとあらゆる感覚を操る》】
《状態》健康
《所持品》鈎爪
《思考・行動》
0:生き残る為に戦う、手段は選ばない。
1:女はしっかり愉んでから殺してやる。
2:鏡御音は出来るだけ苦しまないように殺してやる。
【野神麗音《???》】
《状態》精神不安定(極大)、全身に激しい痒み
《所持品》果物ナイフ
《思考・行動》
0:誰も彼も不幸にしてやる。
※≪痒み≫を引き上げられました。
【沖崎翔】
18歳、高校三年生。銀髪で身長は180cmと長身。
常日頃から殺人と強姦を繰り返す外道で、自らを異常者と自覚している。
柄部霊歌の兄を殺害した犯人だが、証拠が不十分で逮捕はされなかった。
《触れた人間のありとあらゆる感覚を操る》能力を持っている。
この能力を使用されれば、沖崎がもう一度触れなければ解除されることはない。
精神の《罪悪感》《恐怖心》も操作することが出来る。
身体能力が先天性で高く、まさに《獣》と評するのがふさわしいような男。
【野神麗音】
19歳、大学一年生で身長は190cmと大柄だが性格はとにかく臆病。
小中高一貫して虐めを受けており、極度の人間嫌い。
しかし小心者のため自殺する勇気もない。
最終更新:2012年01月11日 09:15