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終わりの始まり/始まりの終わり

 それは、戦いに勝利した者の物語であった。
 彼はあるべき未来とは少し違った道を行き、戦いに勝利し、そして知ってしまった。
 絶対的な力を更なる高みへと到達させ、彼は知る。
 次元を超えた先にある数多の世界。
 天に散らばる星々よりも多数の、人間が織り成し支配する世界。
 彼は戦った。彼は殺した。彼は救った。
 悪である存在と戦い、殺しつくし、世界を救ってきた。
 世界は、次元の先にある世界は意識が遠くなるほどに大量で、それでも彼は戦い続けた。
 そんな彼を待っていたのは更なる深淵。
 次元世界という終焉のない迷宮の果ての悲劇。
 彼は知ってしまった。
 世界の隣にある、極めて近く限り無く遠い世界の存在を。
 彼は知ってしまった。
 もしかしたら自分にも在ったかもしれない、敗北の世界を。
 敗北の先にあったのは信じられない光景であった。
 ただ敗北しただけなら彼にだって受け止められた。
 だが敗北の先にあった光景に、彼は愕然とした。
 数年、数十年、数百年、数千年……決して揺らぐことのなかった心が揺らいだ。
 思えば感情らしき感情を覚えたのも、一世紀や二世紀の時の中ではありえなかった事だ。
 極めて近く限り無く遠い世界を知った彼は、救済の中で思考を繰り返した。
 湧き上がる数多の感情を、何処か客観的な中で見詰める。
 彼は、自分が何を求めているのか分からなかった。
 分からぬままに、また数千年の時を刻む。
 悩みを抱えた数千年は、彼自身にも知らずの内に変化をもたらす。
 気付けば彼は耳を傾けるようになっていた。
 今までは何とも思っていなかった悪の言葉に、耳を立てる。
 様々な言葉があった。
 怒りに満ちた声、悲しみに満ちた声、中には同情の声すらもあった。
 様々な言葉を聞き、それでも彼は答えを見出すことができなかった。
 そして、また膨大な時間が流れる。
 彼は決意した。
 何も考えず、己の思うが儘に選択し、行動をしてみようと。

 そうして、この物語は始まった。
 次元を越えて集められた人々による殺し合い―――バトルロワイアルが、始まった。







 ―――これから貴様達には殺し合いをしてもらう―――


 気付けば其処に人々は集まっていた。
 暗闇の中でぽつりと浮かんだ光点。
 見渡す限りは全て黒。
 人々が集まるそこだけが、ライトに照らされているかのように丸く光っていた。


 ―――生き延びたくば、殺し合い、最後の一人となるまで生き残ることだ。ルールはない。ただ殺しあえ―――


 人々の表情には一様に戸惑いがあった。
 当然だろう。
 気付けば訳も分からぬ場所にいて、何処から聞こえるかも分からぬ声から殺し合いを強要される。
 理解不能を甚だしい。


 ―――殺しあわぬというのも、また選択の一つだ。だが―――


 疑問に、困惑に、憤怒に、人々が声を上げようとした瞬間であった。
 言葉が途切れ、一瞬の輪廻が始まる。
 集められた人々の首が切断された。
 何の前兆もなく、さもそれがあるべくしてあった結果のように、首が飛ぶ。
 避けられた者はいなかった。
 人間の域を遥かに超越した猛者も、何の力も持たぬ一般人もただ平等に、死亡する。


 ―――貴様達の命は俺の掌の上にある。そのことを忘れるな―――


 そして、切断された46の生首は、何の前兆もなく、さもそれがあるべくしてあった結果のように、治った。
 誰もが誰も、一度確かに千切れ飛んだ筈の首が、何事もなかったかのように元に戻ったのだ。
 死者はいない。だが、死の記憶だけは人々の中に刻まれた。
 必死の楔が、全員の心に穿たれた。


 ―――死にたくなければ、殺しあえ。人類が毎日繰り返している事を、ただ行えばいい。それだけだ―――


 淡々とした言葉に、何か言うものはいなかった。
 人々は無言で、声を聞いていた。


 ―――最後にもう一つ。この殺し合いで生き延びた者には、何でも一つだけ願いを叶える権利を与える―――


 最後の言葉に、ほんの少しだけ場がざわめく。
 ほんの少し息を吸い込むような、声にもならぬざわめきだ。


 ―――殺しあえ。死にたくなければ、願いを叶えたくば、殺しあえ―――


 そうして言葉が途切れ、闇にあった唯一の光が消えていき、世界が完全な闇に染まる。
 闇が晴れた時、人々は殺し合いの場へと移行しているだろう。
 一人の男のエゴから開催されたバトルロワイアル。
 このバトルロワイアルを通して、人々は、そして主催者たる彼自身も、それぞれの信念を追及する事となる。
 そう、信念を追及する物語が始まる。





【―――信念追及バトルロワイアル・開催】

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最終更新:2012年02月21日 23:03
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