瑠璃之坂つぐみという少女が居る。職業はアイドル、売れてこそいないが確かな歌唱力と物事をすぐに覚えてしまう吸収力は、俗に言う《期待の新星》というやつだった。
清楚さを感じさせる黒髪に華奢な体つき、男受けもかなりいいだろうスタイル。
弱冠15歳にして有名アイドル事務所にスカウトされるあたり、その才能が窺えるというものだ。
しかしその彼女の夢――アイドルとして大成すること――はもう、叶わないかもしれない。
突如始まった
殺し合いという悪趣味極まりないゲームに参加させられ、更にロクな武器も支給されず優勝を目指すことさえ出来ない。
まあどちらにしろ臆病な彼女では、人を殺めることなど出来なかったろうが。
だが、今の彼女はそれどころではなかった。
まさに生命を脅かす存在が、背後からつぐみを殺めんと迫ってきているのだから。
「……ぁ、何なの……なんで、私なの……!!」
銀に光る小さな刃――恐らくは手術などで用いるメスかーーを持った、ライダースーツの女性。
譫言のようにぶつぶつと何かを時折呟き、一向にペースを落とすことなく追いかけてくる。
思わず口から溢れる自らの不条理を嘆く言葉、幸いつぐみは体力にそれなりの自信があった。今にもへたり込んで泣き出したい心境だったが、そうすればつぐみの体は無惨に裂かれるだろう。
溢れる鮮血、裂ける肉。
神経に走る痛みと薄れる意識の霞みがどれほど恐ろしいものかなど、想像に難くない。
(や……だぁ……死にたくない、よぉ…)
涙が溢れてきて、視界が段々霞んでくる。
中学三年生の少女には、余りに過酷過ぎる
スタートだったと言えよう。
しかし、神は瑠璃之坂つぐみを見放さなかった。
ダァン!と、少し離れた――恐らくは隣のエリアからの銃声が響き渡ったのだ。
背後から響いていた足音が、その音に怯んだかのように停止する。
だが無我夢中のつぐみには止まるという選択など存在せず、変わらず走り続けた。
走って、走って、走って、走って。
もう追いかけてきてはいないと知っていながらも押し寄せる恐怖に打ち勝てず、走る。
実はこの殺し合いに、瑠璃之坂つぐみの知り合いは二人だけ参加している。
一人は自分をアイドルにスカウトしてくれた人物、何事にも自信を持てずに日々を謳歌していたつぐみに生きる目標を与えてくれた恩人、相沢キリオ。
もう一人は親友でありライバルでもあるアイドル仲間の柴野美保。
二人とも殺し合いに乗るような人物ではないし、絶対に死んでほしくない人間だ。
(相沢さん……美保ちゃん……何処に居るの……?)
少女の小さな嗚咽が、響いていた。
【朝/E-2住宅地】
【瑠璃之坂つぐみ@オリキャラ】
[状態]疲労(大)、精神疲労(大)、嗚咽
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考・行動]
0:死にたくない。皆で帰りたい。
1:相沢さんと美保ちゃんを探す。
2:今は逃げる。
□
「…………」
瑠璃之坂つぐみを見失ったライダースーツの女性は、何も考えていないような瞳をしていた。
彼女の名前は、桐生萌郁。
《未来ガジェット研究所・ラボラトリーメンバー》の一員であり、同時に陰で世界を牛耳る研究機関《SERN》の下っ端、ラウンダーという部隊に所属する。
本来ならば彼女は今頃、敬愛する上司《FB》の命令に従ってタイムリープマシンを開発した岡部倫太郎達を襲撃している筈なのだが、不覚にもこのような場所へと連れてこられてしまった。
最悪だ。
すぐにでも帰還し、FBの命令を遂行しなければならない。
だから彼女は殺すことにした。仲間だった者達も、見ず知らずの人間さえも。
銀に光る小さな刃を握り、彼女は静かに歩き出した。
【桐生萌郁@Steins;Gate】
[状態]疲労(小)、仲間を殺すことへの僅かな躊躇い
[装備]メス
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×2
[思考・行動]
0:優勝して《FB》の元へ帰還する。
1:岡部くん達には……会いたくない
※第5章《時空境界のドグマ》にてラボを襲撃する前からの参加です
最終更新:2012年02月29日 17:34