アットウィキロゴ

白い少女

白い少女が居た。
白雪のように純白の美しい頭髪に130cmにも満たないだろう小柄な体躯、あどけない顔つき。
しかしその瞳に宿る色は単なる幼女のそれとは明らかに異なり、何処か威厳じみたものさえ感じる。
服で隠れているがその片腕には《狂戦士》を使役する為の絶対命令権が刻まれている。
少女の名前をイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
《始まりの御三家》と呼ばれる魔術の名家アインツベルンのホムンクルスであり、厳密には人間ではない。《願望器》を宿す為の器として生み出された彼女は、思考していた。
何故自分がこのような場所に拉致され、バトルロワイアルなんてことをさせられているのか。
自らの使役する最強のサーヴァント、バーサーカーの目を盗んでそんなことが可能なのか。
大体―――自分を呼びつけて何にしようというのか?
自分で言うのも何だがイリヤスフィールは身体の発育が停止している。
ホムンクルスとして生まれた代償として背負ったハンデで、これでも彼女は18歳の女性だ。
幾ら膨大な魔力を保有するとはいえ、魔術の行使の面で見ればまだまだ発展途上であるイリヤスフィールの力では、全てを殺して勝ち抜くなどどう考えても不可能だ。
まるで、殺し合いに逆らってくれとでも言っているかのような不可解。

「何考えてるのかしら……士郎にアーチャーも居るみたいだけど。大体アーチャーなんか殺せる参加者なんて居るわけないじゃない、これじゃ出来レースってもんよ」

アーチャー。
赤い外套の騎士で真名は不明だが、最強であるバーサーカーを五度も殺害した強者だ。
まともな参加者では勝てる筈もないし、殺し合いに乗られでもしたら最悪だろう。
何の作為を持って選ばれたのか、分からない。

(カエデサカって男が何も知らないとは思えないけど……ひとまずは保留ね)

それにしても最初のスタート地点が墓場とは実に縁起が悪い。
気分的にもあまり良いものではないし、他の参加者を積極的に探していこうと判断したイリヤスフィールは、特に目的地がある訳でもなかったが、おもむろに歩き始めた。

歩き始めて直ぐに、イリヤスフィールは一人の人影を捉えた。
まだ学生と見える少年が、名簿を見ているようだった。
イリヤスフィールの存在にはまだ気付いていないようだったが、接触するべきか否か一瞬迷った。
幾ら何でも不用心すぎる気がしたのだ。
イリヤスフィールの持つ《魔眼》を使えば耐性のない人間程度なら簡単に拘束することが出来る。
しかしサーヴァントや魔術師が平然と呼びつめられている中、皆が皆無力な雑魚ではない筈だ。

(でもまあ、臆病になってちゃ始まらないわよね)

うん、と呟き、魔術師・イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの顔ではなく只のあどけない少女としての顔で少年に駆け寄っていく。
えいっ!と可愛らしい掛け声をあげてその腰に抱き着くイリヤスフィール。
うおっ!?なんて大袈裟な声をあげて仰け反る少年だが、どうも殺し合いに乗ってはいないようだ。


「えーと……とりあえず離れてくれるかい」
「私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン!殺し合いには乗ってないよ!」


いや乗っててもその体型じゃ……とぶつぶつ言う少年。
やはりというか当たり前に年下、それも小学生クラスに見られているようだったが気にしない。

「俺は◆9n1Os0Si9l。本名じゃないらしいんだけど思い出せないからこっちでいいよ」
「9nね。9nは誰かこのゲームで誰か知り合い呼ばれてるのかしら?」

やけに手慣れた口調だったかな、と思ったが面倒臭いので修正しなくてもいいだろう。
xzはほぼ言われるがままと言った風に、名簿をイリヤスフィールに差し出して幾つかの名を指した。
全て、イリヤスフィールが初めて名簿を眺めたときに少しばかり気になったアルファベットと記号で構成された名前。どうも《書き手》という、バトルロワイアルを知る者らしい。
イリヤスフィールが指した名前は三つ。
《衛宮士郎》《言峰綺礼》《アーチャー》の三つで、士郎以外は警戒に越したことはない。

「強さでだったらアーチャーね。多分勝てないわ、このコトミネって奴は多分ろくでもないことを仕掛けてくる……エミヤシロウ、シロウは間違いなく信用できるわね。私の自慢のお兄ちゃんなんだから!」

えっへん、と誇らしげにその薄い胸を張って言う。
正確には《兄》ではないのだが、そんなことを説明すると色々ややこしくなるだろう。

「そっか……じゃあ暫く一緒に知り合いを探そうか、イリヤスフィール」
「そうね。私結構強いんだから、9nを守ってあげるわ!」

ははは、と9nは笑い、イリヤスフィールも釣られたように笑う。
9nに先駆けてイリヤスフィールが歩き出し、当分の指針をどうするか決めようと振り返ったとき。


ダァン!と、大きな音が鳴った。
その直後に、イリヤスフィールの胸を何か熱い塊が貫いた。


「ぇ………?」


小さな口から真紅の液体を吐き出して、呆然と9nを見やるイリヤスフィール。
そこに立っていたのは、口を邪悪な笑顔の形に歪めて、白煙の立ち上る銃をイリヤスフィールに向けている◆9n1Os0Si9lの姿だった。
一歩遅れてようやく、イリヤスフィールは自分が撃たれたのだと気付く。
弾丸は体内に残留しているらしく、処置しても助かるかは分からないといったところだろう。

「ごめんね、イリヤスフィール。俺は殺し合いに乗ることにしたよ」

ははは、と軽い調子で笑う9nは、とてもさっきまで談笑していた人物と同一人物とは思えなかった。
即死してもおかしくなかったし、むしろ即死しなかったのは不幸とも言える。

「何で、って聞きたそうだね。まあ単純に、保身の為とでも言っておこう」

9nの声が届いているのかも分からないイリヤスフィールの様子。
既に致死量の血液は失われているだろうし、もう一分と保たないだろう。

「まあ安心しな。君の知り合いも直ぐに送ってやるさ、《エミヤシロウ》くんとやらも」

その言葉を聞いた瞬間、イリヤスフィールの肉体がぴくりと反応した。
今更抵抗するだけの気力など残ってはいなかったが、最期の力を振り絞って口を開く。






「……っ、お笑い、ね。シロウは、あんたなんかに殺されない」

勝ち誇ったような無理をした笑顔で、見下ろす9nの目を見据えた。

「シロウは、強いんだから……わたし、の、大事な弟……なんだから」

その言葉を紡ぎ終えると、イリヤスフィールの肉体は今度こそ完全に停止した。
聖杯の為だけに生み出されたホムンクルスの少女は、此処にその生涯を終える。

「弟、ねえ」

何か思うところがあるといった風に9nは呟き、静かにイリヤスフィールのデイパックを回収する。
人を殺した経験など彼にはなかったが、存外簡単なものだと思った。
幼い―――いや、案外見た目ほど幼くはないホムンクルスが相手だったこともあるのだろうが、これならば大した力を持たない一人間である自分にもやれそうだ。
イリヤスフィールを撃った銃、S&WM19を携えて彼はその場を立ち去る。
次は何処に行こうか。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night 死亡】
【残り40人】


【朝/B-5 墓地】

【◆9n1Os0Si9l@非リレー型バトルロワイアル・書き手】
[状態]健康
[装備]S&W M19(5/6)
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×1、S&W M19予備弾薬(18/18)、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンのデイパック
[思考・行動]
0:優勝して元の世界に帰る。
1:書き手さん達にも出会い次第容赦なく殺す
2:衛宮士郎に僅かな興味
※二次元の知識が一部制限されています
※イリヤスフィールから衛宮士郎、言峰綺礼、アーチャーについて大まかな情報を聞きました

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年03月19日 19:47
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。