アットウィキロゴ

EX-ST.1

人を「人」とする物は何か。
意識があることか。
思考が出来る事か。
意思があることか。
どれも正解であり、どれも外れである。
人と言う物は一言では語り尽くせず、また尽くそうとしてもできぬものだ。
だからこそ、太古から人は「人」の仕組みを解き明かそうとしてきた。
例えば医学で。例えば哲学で……。あらゆる方面から、人を解き明かそうとした。
しかし、今に至るまで、決定的なモノは見つけられていない。
――――しかし、その「決定的なモノ」は人の踏みこんで良い領域だろうか?
神の存在を信じるかはその人次第だが、どちらかと言えば私は信じない部類に入るだろう。







所変わって、ここは極秘の研究所。当然、地図には載っていない。
国にすら、ここの正確な位置を掴ませてはいない。
……と、こうやって説明すると、一見人が来ないような山奥や孤島にあるような気がしているかもしれない。
しかし、実際はそうでもないのだ。場所は明かせないが、都内に存在するのは確かだ。
そんな極秘研究所の奥、通称「狂気量産工場」と呼ばれる部屋で、それは起こった。

「……どうだった?この間の実験は」
「ダメだね。全員死んだよ。10人中8人はすぐ死んだ。2人はいい線行ってたけどな」
「なあに、想定内だ」
「しかし、もう1回被験体を集める必要があるぜ。次の補充はいつだ?」
「心配すんな、もう用意してある」

白衣を着た、数人の人間が話している。
これら全て、「異端」として医学の世界から追放された人間たちだ。
ある者は「新しい人類の創造」として、死体の解体を行った。
またある者は、「人類の次のステップへ」と語って、何人もの人間で人体実験を行った。
……全員、その行為の所為で一時警察に追われる身であったが、とある人物に救われた。
その名は「X」。
男か女かも分からない。
若いのか、年老いているのかすら。
「X」の正体を知っているのは、ここにいる研究員のみだ。

「ようし、そんじゃさっそく実験に移るぞ」
「待ってました!」
「次は何を試そうか……」

全員の顔が、喜びに満ちる。
その喜びは、まるで小さな子どもが蟻を潰して遊ぶ時のような、純粋すぎる喜びだ。
しかし、ここにいる人間で考えるとちょっと違う意味になる。
自身が狂人と気づかない狂人ほど、厄介なものは無いだろう。

「……ん?おい皆、『X』様からの通信だ」
『……全員、揃っているな?』
「確かに5人、揃っています」
『宜しい。……重ねて言うが、君たちの役目を忘れてはならない』
「重々承知しております」
『分かっているならいい。ところで、例のモノはまだか』
「もう少し時間を頂ければ、完成させられるかと」
『そうか。急げよ』
「仰せの通りに」






それから月日は流れて、1年くらい経ったころ。

「……できたぞ!」
「うおおおおおおおお!」
「よっしゃあああああああ!」

5人の内の1人が、手に小さな注射器を持ち叫ぶ。
注射器の中には……緑のような、青のような液体が入っている。
これが、どのような効果をもたらす薬なのかは分からない。
だが……どう考えても、まともな薬であるとは思えない。

『……完成したようだな。よくやった。すぐに、使いの者に取りに行かせよう』
「ところで、『X』様……あの約束を、本当に守っていただけるのでしょうか?」
『勿論だ。薬を貰った後は、私の口添えで全員を医学の世界に戻してやる』
「ありがたき幸せ」

この5人は、果たして本当に返り咲けるのか?……いいや、現実は甘くない。
あれほどの問題を起こした者が、易々と戻れる訳が無い。
現に、「狂気量産工場」には、何人もの武装した人間が駆けつけているではないか。
しかし、この事実を5人は知るよしもない。
部屋の扉が開け放たれた瞬間、5人の表情が歓喜から絶望に変わる。

「……な、何を――」

銃の連射音が、部屋に響いた。






「……指令通り、5人を始末しました。例の薬も、確保致しました」
『良くやった。直ちにルートBを通り帰投しろ』
「了解しました」

表情を変えず、黙々と5人を始末していく男達。

「……1名、生存しています。どうしましょうか」
『そうだな……連れて帰れ。改造してやろう』
「了解しました」


……全ては、これから始まった、かも。


――――続く

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年03月03日 23:06
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。