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罅割れ(日々割れ)

その場所を形容するなら、『無機質』という言葉で表す他なかっただろう。
淡白にさえ感じられる白色が一面に広がった大部屋、セットのないスタジオのようにも見えた。
集められているのは九十もの人間達。それぞれ個別の反応を見せているが、本質的には変わらない。
突然自らが陥ったこの状況への恐怖、怒り、好奇、歓喜。
これから何が始まるのかを大まかに察している者達もいたが、やはり気付いていない者も多いようだ。
自分達がこれから、悪質なゲームの『プレイヤー』として命を懸けることになることに。
何も知らない彼らの困惑を余所に、無情にもこの事態の黒幕が姿を表した。


それは神父だった。
いや、神父の服を着用してこそいるものの、その瞳は暗く濁り、とても聖職者のそれとは思えない。
口元にうっすらと浮かんだ笑顔は全く親しみを感じさせず、ただただ不安を煽っている。
彼は、概ね敵意の視線を向ける人々を見て満足したように笑い、口を開いた。


「私は言峰綺礼という。―――まぁ、この顔と名を見知る者もいるのではないかな」


言峰と名乗った男。
彼の言葉通り、何人かは彼の存在に反応を示していた。
もっとも、全てが敵意のみしか示さないそれではあったが。


「今宵は貴様達に、ひとつ殺し合いをして貰う。
昔発売された小説のオマージュなのだが、ここではそれを借りてバトルロワイアルと呼ぶことにする」


事もなさげに紡がれた言葉が吐かれた直後、喧騒に満ちていた部屋を戦慄が支配した。
この神父が何の誇張もなく、心の底から殺し合いを行わせようとしていることは、疑いようもない。
怒号、泣き声、笑い声―――様々な音が空間を揺らす。


「嘘ではないぞ。私は利害の一致した協力者達と共謀して、このゲームを運営している。
協力者と言うのは語弊があるかもしれないな、正確には私も協力者の一人なのだから」


一体どんな利害の一致があるのか、想像するだけで末恐ろしい。
しかしこの状況下で、誰一人言峰綺礼に殴りかかったりしないところからも、彼の放っている威圧感、そして逆らってはいけないという防衛本能が人々に働いていることが窺えるだろう。
続いて言峰は、更なる絶望を植え付ける。


「因みにルール違反のペナルティだが……君達の首に巻き付いているそれがあるだろう?」


九十の人々全員に、一人の例外もなく、金属製の首輪が装着されている。
誰もが困惑して、ある者はこの首輪の存在からこれから何が始まるのかを推測した。
そして彼らの予想に漏れず、最大の絶望となって――"ボンッ!"


「き、岸谷先生!」
『新羅! 新羅、おい!』
「言峰―――――!!」


怒号。バーテン服の青年の一際大きな怒号にも怯まず、言峰は朽ち果てたそれを見て言った。
視線の先には、喉を吹き飛ばされて無惨な屍を晒している闇医者の男。



「その首輪は爆弾だ。著しいルール違反を確認した時には、速やかにそれを起爆する」


くくく、と愉しそうに―――犯しそうに笑う言峰の姿は、誰もが『悪』と形容しただろう。


「そろそろ時間だな。『人類最悪』の指示通りの時間に間に合わせてやるとするか。
おっと、しかし何も見返りなしで殺し合いをしろとは言わない。報酬は払うさ、願いという報酬をな―――このゲームを制した者には、如何なる願いさえ叶える権利を与えよう」


ばちん、と鋭い電流が人々――参加者達の首筋に走り、一人また一人とその意識を落としていく。
抵抗を続ける者も中にはいたが、やがて耐えられずにその意識を手放していく。
倒れた人間達が今度はどこかに転送されていく様子は圧巻の一言だったが、言峰綺礼という人格破綻者にとってもっとも興味深いものは、このゲームの終末にあった。
ある物を手に入れる為に。
彼もまた、一つの終焉を目指して、バトルロワイアルの主催者として君臨した。




――――残り、九十人。




【岸谷新羅@デュラララ!! 死亡】

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最終更新:2012年05月25日 09:13
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