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せんりグローバル(後編)

それでも、参加させられている中には四字熟語の名前を持った者も居るようだった。
紆余曲折、先手必勝、青息吐息、勇気凛々、優柔不断。
どういう選抜条件で選ばれたのかは全く分からないものの、仲間がいるということは少しだけ、一望千里の不安を和らげた。


「あ、そうだ……忘れてた」


四字熟語を見ている内に思い出した、大切なこと。
一望千里の名前が意味する能力―――ルール能力の存在。
彼女の能力は《会場全体を透視できる》もの。
前回は一度しか使用出来なかったが、今回もあの力が使えるのだろうか。


「試してみる価値はある、かも」


前みたいなことになったら嫌だけど、と付け加えて、恐る恐る、一望千里は力を使う。
いきなり会場全体とはいかずに、まずはこのホームセンターだけでも透視してみようと思った。
次の瞬間、本来見えるレベルの視界を遥かに超えた、《一望》が彼女の視界に広がる。
ホームセンターの中を隈無く見渡すことの出来る、やはり便利なルール能力だ。
しかし、幸か不幸か、ホームセンター内に人影が見当たらない。
自分しかここに居ないと分かった途端心細くなってきて、意地でも誰か見つけてやる、と透視の中で人が居ないかどうかを探索する。
―――程なく、一人の男性を見つけることが出来た。
黒いコートに身を包んでいて、その表情はどこか影を落としたようなそれ。
瞳の暗さが何よりも特徴的で、一望千里はこの人物に少しだけ興味を懐いてしまった。
視線を集中させ、コートの男性の様子をじっと窺う。
皮肉にもそれは、前回のバトルロワイアルで彼女が犯した失敗と同じパターンだった。

暫く見つめていると―――視線を察知したのだろうか。
コートの男性と、目が合った。
唐突に押し寄せる既視感に、ほぼ反射的なそれで一望千里は視界を閉じる。


「ばれ、た……? そんなわけ、ないよね」


だが目が合った瞬間の男性の瞳は、まるで狩人が見せるそれだった。
直前までの虚脱感の塊のような色は一瞬にして失せ、明確な殺気を向けてきたのだ。
彼の瞳にはどこか悲しそうな様子もあった―――悪いひとではないと、思う。
まだばれた訳じゃないなら、もう少しここに居ても大丈夫だよね――と彼女は、支給品の確認に移った。


「何、これ? メロンパン……?」


てっきり物騒な品が出てくるとばかり思っていた一望千里は、不意を突かれたようにきょとんとする。
それは、どこからどう見ても言い逃れ出来ない、確実なメロンパンだった。
コンビニで簡単に買えそうなもの。
これと殺し合いに何の関係があるんだろう。考えて、くすっ、と彼女は笑う。
見た目は普通だし、まさか実は爆弾でした、なんて落ちも今時ないだろう。
ぴりり、と包装を破き、甘い匂いを漂わせているそれを静かに口にする。
体感時間たった数時間の内にこれだけ目まぐるしく価値観を変革されたのだ、疲れて腹も減る。
甘味が口腔を満たし、何ともいえない幸せな気分になる。
はむっ、はむっ―――殺し合いの只中とは思えない暢気な行動だったが、一望千里はこうして支給されたメロンパンを完食した。

そして――――丁度その瞬間だった。


ぱぁん――――なんて軽い音と同時に、放送室の窓に穴が開き、天井を僅かに抉ったのだ。
それが下階からの攻撃であることに気付かない程、一望千里は馬鹿ではなかった。
そして先程の一望で、下階に存在している人間は全て把握した。そう、あの黒いコートの男だけだ。


(嘘……! あの一瞬だけで、私がいるって、分かったの……?)


だとすれば只者ではない。
どうやってこの場所にいることまで突き止めたのかは分からないが、逃げなければ不味いだろう。
先程までの幸福だった時間は何処へやら、焦って彼女は一階へ続く階段をかけ降りる。
そこで気付いた。
このホームセンターは、放送室の作りなどが遊び心のある、珍しいそれになっているのだ。
そして――二階と一階の移動手段は、この階段たった一つ。エレベーターすらない。
つまり、頭の良い、たった視線一つから潜伏場所まで割り出した人間なら、ここで待ち構えていることなんて容易である。
一望千里がやっとの思いで一階へと辿り着いたその時には、そこに男の姿があった。
黒いコートを羽織り、どういう原理なのかは知らないが球体に変化した水銀。
息を切らす一望千里の姿を見て驚いたように一瞬目を見開き、男は右手を彼女に差し出した。


「僕は殺し合いに乗っていない。怖がらせてしまったなら謝ろう」


そこで一望千里はやっと、彼は自分を殺すつもりでなかったことに気付くのだった。
どうやら彼女は此度のバトルロワイアル、最初から幸運に愛されているようだ。



◇ ◇


「僕は衛宮切嗣という者だ。信じてもらえるかは分からないが、一介の魔術師でもある」


一望千里も十数年と、コートの男――衛宮切嗣に比べれば短いが人生を生きてきた中で、これほどまでに奇抜な自己紹介を聞いたのは初めての経験だった。
二十代後半と見える大人の口から『魔術師』なんて言葉を聞けただけでもしばらくは記憶に残りかねないほどだというのに、自らのことを魔術師と名乗るなんて。
だが只の冗談と断ずれば傍らで跳び跳ねるように波打つ水銀の球体の説明がつかず、つまるところ彼女は今困惑の極みにあった。
「ああ、これは月霊髄液といってね――自立防御と策敵、攻撃まで兼ねる優れものだ。
一望千里――千里ちゃんの居場所を特定した時に使ったのもこれだよ」

この水銀の滴が壁や床を伝い、生体を感知して知らせる、という説明だったが今一実感は湧かない。
しかし彼が一望千里を見つけ出したことも、この月霊髄液の恩恵で説明がつく。
大体、四字熟語のルール能力なんかよりは魔術師の方が信憑性があるのではないか、とも思った。
結論から言って、一望千里は衛宮切嗣を信用することに決めた。
相当な場数を踏んでいるようだったが嘘を吐いているようには見えなかったし、何より嘘を吐く意味がない。


「で、千里ちゃんに聞きたいことは一つ。君の知っている情報を、僕に開示してほしい」
「情報って、言っても。どういうことを話せばいいんですか?」
「君の名前――『一望千里』。名簿にもこう記載されている以上、偽名というわけではないだろう。
だが少しだけ不可解でもある。名簿にある他の――"四字熟語"の名前には、明らかに人名とは思えない名前もある訳だ―――何か知っていたら教えてくれ」


思えば衛宮切嗣は、最初に名簿を一瞥した時から妙だと思っていたのだ。
それこそ『一望千里』ならまだ珍しい名前くらいで片付くものの、『優柔不断』なんてどう考えても人間の名前ではない。何かの組織のコードネームだと納得することにしていたが、折角内の一人に出会うことが出来たのだ。四字熟語の名前を使う意味を知っておきたかった。
が、これには一望千里も少し困ってしまう。
自分がここに来る前に何をさせられていたかを話すこと自体には何の躊躇もないが、他の四字熟語について、彼女は殆ど情報を持ち合わせていないのだ。
まともに関与した参加者も二人だけで、内一人はルール能力しか把握しておらず、どんな人物かも分からない始末。しかもその二人は、このゲームに参加してすらいない。

だが頼られているという事実を見過ごすことは出来ず、分かる範囲のことだけでも話すことにした。
四字熟語を冠した十数名で行う殺し合いの実験のこと。
自分もその実験に参加させられ、そして死亡したこと。
参加者の四字熟語達は皆一様に、四字熟語に関連した《ルール能力》を与えられているということ。
そして自分《一望千里》のルール能力は、会場全体を透視できる、というものであること。
常人なら気が狂ったかと思ってもおかしくないような不可思議な現実を、なるだけ分かりやすいように噛み砕いて話してみる。上手く説明出来たかは分からないが、どうにか伝わったらしい。


「成程、な……これで合点がいったよ。君がどうやって僕を――『あの窓からは見えない位置にいた』僕に視線を送ることが出来たのか、ずっと不思議に思っていたんだ」
「あ、その……ごめんなさい」
「いやいや、謝ることはないさ―――しかし、良い力だ」


切嗣は素直に、一望千里のルール能力を良い力だ、と思った。
無論、彼の仕事柄喉から手が出るほど欲しい力だというのもある。
敵の位置を確認できる目があれば、仕事が大分楽になることは間違いないからだ。

しかし今はそれを抜きで考えて、だ。
バトルロワイアルというゲームの怖いところは、自分以外の参加者の動向が窺えないことにあると切嗣は考察していた。何も分からないことはいずれ恐怖に変わり、人を狂気に駆り立てる。
彼女の目があれば会場全体を把握し、探し人の位置、危険人物だってある程度は確認できるだろう。
一望千里のルール能力は、この殺し合いを打破するにあたりもってこいのそれだった。
これを利用しない手はないだろうな、と切嗣は冷静に分析する。
もっとも、使い潰す訳ではなく、彼女を守りつつ、その力を借りていく、という意味だ。

今、切嗣は一望千里から得た情報を元に、名簿の四字熟語達のルール能力について考察していた。
『紆余曲折』は、恐らくその名の通り何かを《曲げる》力だと推測出来る。
『優柔不断』は、その身が刃物を通さないとか、その辺りだろう。
『青息吐息』は、吐息を利用した能力である線が濃厚か。
『勇気凛々』は―――分からない。保留だ。
こうして当て嵌めていく内、一つの厄介な四字熟語に行き当たった。


「……千里ちゃん。君は、『先手必勝』という四字熟語には出会っているかい?」
「多分、見たことはあったと思います。でも、『見渡した』時だけ、ですけど」


切嗣が推測するに、この先手必勝―――恐らく、四字熟語の中で最も厄介なそれと見えた。
勿論憶測の域に過ぎない上、先手必勝が殺し合いに乗っているかどうかも分からない。
だがしかし、そうであっても様々な可能性を加味して行動するのが、衛宮切嗣だ。
先手必勝のルール能力は不明。ただし確実と思われるのは、《必ず勝利する》要素が含まれる能力であること。これは切嗣のような『狩人』からすると、最悪の部類と言っていい相手だった。

常に作戦を練って準備をし、確かな勝算を以て障害を突破するのが彼らのやり方だ。
しかし、その作戦を無視して《ルール能力》で覆されてしまうのだ――これ以上の最悪があるだろうか。
万一敵になりでもすれば、最悪クラスの難敵となることはもう間違いない。


「良し、大体のことは把握したよ。次は此方の番だが――僕には一つ、秘策がある」
「ひさく?」


首を傾げる一望千里。
わざわざ開示しなくともいい情報かもしれなかったが、一応これから行動するにあたり報せておくことにした。
令呪、サーヴァントで有る限り逃れることの出来ない呪縛。
だがマスターの側からすれば、強大な力を自由にコントロールすることが出来る便利なものである。


「詳しく話すと長くなるけどね。僕は今、最強クラスの実力者の手綱を握っているんだ。
僕が命令すれば、即座に僕の指示に従わざるを得なくなるだろう――これが、鍵だ」


バーサーカーやランサー、そしてかの英雄王までも参加している今回の殺し合い。
普通に立ち回っていては彼らを撃破することなどほぼ不可能だし、立ち向かう時点で無謀とも言える。
ランサーならば下らぬ騎士道などで同じ道を選ぶやもしれないが、バーサーカーに至っては論外だ。
―――その絶対的なまでの戦力差を覆し得る唯一の可能性が、この令呪である。
伝説の騎士王の在り方を切嗣は認めないし、彼女のやり方では何も救えないと断じることができた。
しかしその実力だけは本物―――聖剣エクスカリバーの解放を以てすれば、彼らにも届くだけの力を持っている。
二画の令呪は即ち、そんな可能性を切嗣の思い通りに動かせることを意味するのだ――それも二度も。


「えっと、その実力者さん、は。こう言っちゃ何ですけど、信頼できるんですか?」
「そこに関しては心配要らないよ。奴は名高き騎士王だからね、騎士道精神とやらに則って戦うだろう」


実際のところ、微妙でもあった。
悪戯に少女の不安を煽らないように口にはしなかったが、あの騎士王には『願い』がある。
祖国の救済という願いを掲げ、それに向かって戦い抜いたのだ。
しかも始末の悪いことに、あのセイバーは聖杯が呪いに侵されていることを知らない。
これは完全に衛宮切嗣の失敗だった。

自らのサーヴァントと交流を断絶して、ひたすら道具として扱ってきた彼は、聖杯を破壊する際に『何も知らない彼女を令呪で強制して』しまったのだ。
最悪、自分の願いを踏みにじった外道として敵視されていても不思議ではない。
しかし、今回の切嗣もまた、彼女の意思を尊重するつもりなどさらさらなかった。
もし殺し合いに乗っていたならば令呪でその意思をねじ曲げる。あくまでサーヴァントは駒でしかない。


(僕は何も変わらず、あれを利用していればいい。そこに余計な感情は必要ない)


あくまでも勝利を得るための道具。
衛宮切嗣のサーヴァントに対する認識は何一つ変わってなどいなかった。


「それで、だ。千里ちゃんには一つ、頼みたいことがある」
「何ですか」
「君の《ルール能力》はこの状況を打破するのに非常に有効だ。その力を、僕に貸してほしい」


一望千里という少女は殺し合いの経験者とはいえ、身体も精神も年相応だ。
血生臭い殺し合いにはまだまだ向かないだろう―――しかし、衛宮切嗣の目を引くほどに、その《目》は有能で、出来ることなら力を拝借したいところだった。
当然、断られる可能性だって十分に考慮している。
自分が言っているのは、一望千里という"四字熟語"ではなく"一人の少女"を利用するということだ。
断られても仕方のない話だし、万一断られても深追いはしないことにしよう、と彼は決めていた。
当然『正義の味方』として一望千里は守る。守りながらでも戦う。
慣れているやり方とは随分異なっているものの、これくらいの無茶は問題ではない。


「でも。私の力で、何か出来るんですか?」
「勿論だ。全てを透視する目があれば困っている人も、危険なヤツも、まとめて把握できる。
僕がそれに対処していく。仲間も徐々に増やしていって、最後にはこのバトルロワイアルを破壊する」


不安げに問う一望千里に、確かな言葉で切嗣は返す。
実際のところ、衛宮切嗣もまたこのバトルロワイアルを恐れている節があった。
あの日味わった、誰も救えない苦しみ。地上の煉獄で見た惨劇。
PTSDともまた違うものだが、とにかく今の彼は『誰も救えない』ことを極端に恐れているのだ。
だからこそ、一望千里が欲しい。その力で、正義の味方として多くを救い、このバトルロワイアルを正しい方向に導いて破壊すること。それが彼の願いだった。


「………僕はね。ひとつ、大きな失敗を犯したんだ」


答えを待たずに話始めるのはどう考えてもマナー違反だが、切嗣は口を開いた。
別に一望千里の同情を誘って、自らの主張を受け入れさせようとしているのではなく。ただ、自分がどうして殺し合いの破壊に、救済に執着するのかを誰かに知ってほしかった。
そうすることで自己を啓発しようと、していた。


「かつての僕は正義の味方を目指していた。………そして、破れた。
母親代わりの人を失った日から、僕は――多くを救い少数を切ることに執着してきた」


ナタリア・カミンスキーを撃ち落とした日。
空を飛ぶ死都と化した旅客機を撃墜することで大惨事を防いだ。ただし、母親に等しい存在を失った。
フリーランスの傭兵として、『魔術師殺し』の衛宮として、常に感情を殺してきた。
寂寥の涙には手を差し伸べずにはいられなかったし、歓喜の声には共に喜びを露にした。慟哭の声には心が震え、激情には同調してしまう。
つまるところ、衛宮切嗣はどこまでも人間らしすぎたのだ。


「結果として、僕はたくさんの人を殺したよ。妻と娘を見捨てて、それでも多数を選んだ。
―――最後に僕が助けられたのはたった一人さ。馬鹿みたいな話だろう? あれだけ全てを捨てて、全てを救うために臨んだ戦いで、救えたのはただ一人」


偶像とはいえ。自分の主義を曲げない為に、妻と娘を破壊した。
あの冬の城に閉じ込められたままの娘のことを、間接的にではあるが見捨てたことになるのだろう。
そんな切嗣に、もう一度与えられた願ってもいないチャンス。
今度こそ間違わず、あの宿敵を殺し―――二度と人々を惑わさぬよう、聖杯を破壊する。
それこそが、衛宮切嗣の願いだった。


「僕はこの世の全ての争いを終結させようとした。それが正しかったのかはもう分からないけどね。正義の味方っていうのは、大人になると名乗るのが難しくなるんだ」


誰もが正しいと認めてくれた願い。
たった一つのハッピーエンドを目指して必死で駆け抜けた。


「だから僕は――今度こそ。今度こそ、救ってみせる」


その言葉だけが、衛宮切嗣のすがることの出来る唯一のものだったのかもしれない。
黒いコートに身を包み、光のない瞳で、それでも正義であろうとする。
どれだけ外道と蔑まれても、正義の虚しさを知っても、心の中からその理想は結局、消えていない。
衛宮士郎に託すまでもなく、彼はまだ正義の味方だった。


「……ひとつ、だけ。衛宮さんは、どうして戦うんですか? あ、えと、こう言うのはあれですけど。一回失敗して、それなのに―――どうして、まだ?」
「ああ、そうだな。結局僕は、正義の味方になりたいんだ。ただ、それだけなんだよ」


苦笑して言う切嗣の姿を、かつての彼しか知らない者が見たなら、またもこう思うだろう。
『あの猟犬が、こんな表情をするわけがない』―――と。
彼の在り方は悲痛でさえあった。
だからこそ、だろうか。少女は一つの決断をする。


「……わかり、ました。私でよければ、衛宮さんに協力します」


それは、彼の理想に感銘を受けたからだったかもしれない。
かつての彼の妻のように。
彼と決別したサーヴァントのように、その理想を正しいと思ったからだったかもしれない。
しかしながら、一望千里にもまた、自らに思うところはあった。
『前回』――四字熟語達の殺し合い実験で、最後に出会った一つの四字熟語から聞いた言葉。
それを受けて、何かしらの実行に移す前に殺されてしまったけれど、まだやり直しは効く筈だ。
いわばこの殺し合いは、衛宮切嗣だけでなく一望千里にとっても、チャンスだった。


「でも、私は戦えませんから。そこには、期待しないでくださいね」
「有り難う。……正直、少し驚いているよ。断られるとばかり思っていたからね」


とはいえ、これで《一望千里》の力を手に入れたことになる。
この力が仇となって顔面を破かれた彼女にとってはトラウマを掘り返すようなものだとは思うが、しかしとりあえず付近の人間達の確認だけでもしておくべきだろう。
切嗣が一望千里にそう頼むと、既にトラウマを乗り越え、彼に協力すると決めた彼女は承諾した。

ルール能力の使用。
それと同時に開けていく視界。
見える。会場全体が手に取るように把握できる―――。


「見えるかい」
「はい。ルール能力は、やっぱり問題なく使えるみたい、です」
「そうか。じゃあ、とりあえずこのホームセンターの外を見てくれ」


勿論、見える。
遮蔽物など彼女の《目》の前には意味を為さず、ただ見透かされるのみだ。


「一番近くにいる人だと、……赤い髪の女のひと。なんか、格好いい感じの」
「殺し合いに乗っているような人間は居るか?」
「いや、いないみたい……です。あ、いや――ちょっと危なそうな人なら」
危なそうな人、というワードに切嗣の眉がぴくっ、と動いた。
人は見かけによらないと言うが、やはり危険そうな人物だとは分かる。
装備、表情、雰囲気。見かけだけで判別する手段など幾らでもあるのだ。


「手には、大きいナイフが2つ……あ、もう少ししたら、眼鏡の女の子とぶつかっちゃう、かも」
「………そうか。とりあえず接触してみよう。もしも話の通じそうな相手ならそのまま同行してもいいし、無理そうならここで叩いておいた方がいいかもしれない」


『魔術師殺し』としての装備は何一つない。
愛銃と魔弾は没収され、変わりに強力な霊装と未知の技術で製作された狙撃銃が与えられている。
切嗣自身が使用できる魔術『固有時制御』もあるにはあるが、あれは反動がなかなか痛い。
万全とは程遠い状態だが、まずは救えるものなら堅実に救っていくことにしよう。
衛宮切嗣は静かに狙撃銃を握り、一望千里の手を引いた。
『月霊髄液』を所持している以上、不意の奇襲には心配要らないだろうが、何しろ急がなければならない。
抱えて移動すれば一番手っ取り早いだろうが、一望千里は年頃の女の子である。
女性経験も皆無なわけではない(ただし少々甘やかしすぎてしまうきらいがあるのだが)彼はそこに最低限の配慮をして、妥協点として手を引くことにするのだった。
無理のない速度で、しかし急がなければ。
冷酷非情の猟犬と呼ばれた男は今、心の底からまだ見ぬ誰かの為に行動していた。

そのひた向きな姿に、黙って手を引かれる少女は静かに微笑むのだった。



【一日目/未明/E-4・ホームセンター】


【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]健康
[装備]MSR-001@とある魔術の禁書目録、月霊髄液@Fate/Zero
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・行動]
基本:一人でも多くを救い、バトルロワイアルを終結させる
1:千里ちゃんと協力する。彼女を守る。
2:『両手にナイフの男』と接触する
3:説得の困難な殺人者は殺すこともやむ無し。
※六巻『煉獄の炎』、聖杯破壊後からの参加です
※四字熟語バトルロワイアルに関しての大まかな情報を得て、ルール能力について考察しました

【一望千里@非リレーのオリキャラ】
[状態]健康
[装備]なし
[支給品]基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本:衛宮さんに協力して、元の世界に帰る
1:衛宮さんの理想を応援する。
※四字熟語バトルロワイアル、死亡後からの参加です

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最終更新:2012年05月28日 19:15
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