27:不退転修羅
「ちぃ、男いないなぁ」
愚痴を零すほぼ全裸の黒狼獣人の女戦士、チェルシー・フォースター=チャンドラー。
彼女が捜しているのは自分の欲求を満たせそうな男性参加者。
市街地の路上をあえて艶めかしく歩く。
しかし彼女の思惑通りにはいかなかった。
「お、誰かい……あー、女の子か、残念……」
チェルシーが遭遇したのは人間の少女。
「あら」
その少女は手に持っていた大型のリボルバーをチェルシー向けて構えた。
ドォン!!
耳を劈くような銃声が市街地に響く。
チェルシーは素早く銃弾を躱す。
「ヤる気って言うかやる気アリ、ね!」
ドォン!!
続けて放たれた一発もチェルシーは躱すが、顔のすぐ真横を銃弾が通り抜けた。
常人ならそれだけで精神的に大きくダメージを受けるが、
戦士としてそれなりに修羅場を潜り抜けて来たチェルシーにとってはまだ耐えられる範囲のもの。
「調子乗んな!」
そして一声吼えると、チェルシーは持っていたハルバードを槍投げの要領で、
少女に向け思い切り投擲した。
「!!」
かなりの速さで鋭い穂先が少女に向かって行ったが、
少女は紙一重でそれを避けた。
少女の数メートル背後でアスファルトにハルバードが突き刺さった。
「はい動かないで」
「……ッ」
チェルシーは先刻自分を襲撃し返り討ちにした少年から回収した旧式の軍用ライフル、
ルベルM1886を構えながら少女にゆっくりと接近する。
「その持ってる銃を捨てて」
「……」
少女は持っていた大型リボルバーを素直に路面に放り投げた。
「はい、良い子。私はチェルシー、貴方の名前教えてくれる?」
「……浅井、萌奈」
「そう、萌奈。貴方いきなり私を襲ってきたって事は乗ってるのよね? このゲームに」
「……」
「『怖くて何が何だか~』とかそう言う誤魔化しはナシで。
明らかに殺しに来てたって事、分かってるから」
「……乗ってるよ」
「……殺し合い、やめる気は無い?」
チェルシーは問い掛けた。
もし萌奈に殺し合いをやめる気が少しでもあるのであればこれ以上彼女を攻撃するような真似はやめるつもりだった。
とは言ってもほとんど期待はしていなかったのだが。
そして萌奈の答えは。
「……もう一人殺してる。戻る気なんか、無い!」
「!!」
ほんの一瞬の隙を突いて、萌奈がチェルシーの懐に飛び込み、突き飛ばす。
反射的にチェルシーはルベルの引き金を引いた。
ダァン!!
空に向かって一発発射された。
路上に倒され、チェルシーは背中を強か打ち付け一瞬呼吸が出来なくなる。
「がぁ…! げほっ、げほっ」
涙を浮かべ咳き込むチェルシー。
萌奈は剃刀を取り出すと、黒狼女性の首筋に押し当て乱暴に前後に引いた。
「あ゛っ!?」
チェルシーが首筋に熱を感じた時にはもう、彼女の頸動脈は断裂し鮮血が溢れ出して、
アスファルトの上に黒っぽい水溜りが出来始めていた。
剃刀を持った手を血塗れにした萌奈がチェルシーから離れる。
チェルシーは起き上がり両膝を突いた状態で、呆然としながら首筋を左手で押さえる。
だが血液が止まる様子は全く無い。
意識がどんどん遠退いていく。
「あー……これは駄目ね……私もう死ぬみたい」
自嘲気味に笑いながらチェルシーが呟く。
「ちぇっ……油断してたわ……」
それだけ言うと、アスファルトの上にチェルシーは崩れ落ち、目を開いたまま動かなくなった。
「……はぁ、はぁ……今更、殺し合いやめる事なんて、出来ないよ……」
屍と化した黒狼獣人女戦士を見下ろしながら萌奈は言った。
【チェルシー・フォースター=チャンドラー 死亡】
【朝/E-5市街地】
【浅井萌奈】
[状態]:健康、右手が血塗れ
[所持品]:基本支給品一式、マグナムリサーチBFR45-70(3/5、予備弾10)、剃刀
[思考]:優勝を目指す。
最終更新:2012年08月02日 16:57