30:その選択は正しいのか
竜人少年、加藤淳五郎は別荘地を訪れる。
どの家屋も余り手入れされている様子が無い、使われていないのだろうか。
入ってみようとするが、どの家屋も施錠されていて入れない。
「……ふぅん」
中に誰かいて施錠されていると言う感じでは無い、元から施錠されていたのだろう。
「あれ」
とある一軒の別荘を尋ねた時だった。
窓の奥のカーテン越しに何か動いたような気がした。
気になった淳五郎はその別荘の玄関に向かい、扉のノブに手を掛ける。
すんなりと開いた。
警戒しつつ奥へと足を運ぶ。
そして先程影を見た辺りの部屋に入る、そこは居間のようだった。
見た所誰もいないように見える。
「……」
だが淳五郎は気配を感じていた。
部屋に飾られている少し大きめな壷のの上から少し髪の毛が出ていた。
「ねぇ、隠れてるつもりなのそれ」
「……」
「もうバレてるから、隠れてないから、何もしないから出てきてよ」
「……」
壷から少女が生えてくる。
もとい、少女が出てきた。
「隠れようと思ったけど、咄嗟に見付からなくて」
「もっとあったと思うけど……」
「……乗ってないの?
殺し合い」
「乗ってない。俺の彼女も呼ばれてるから、武田有紀って言う俺と同じ竜人。あいつを殺す訳にはいかない」
「そうなんだ……」
「……俺は、加藤淳五郎、君は」
「私は、塩崎夕海子……」
「……俺以外に誰かと、会った?」
「アリエルって言う女の人以外は、誰にも会ってない……ずっと、ここに隠れてたから」
「そのアリエルって言う人は?」
「……私と少し話して、どこかへ行った。一緒に行かないかって、誘われたけど断った」
「え? どうして?」
「……だって下手に動きまわるよりじっとしてた方が安全じゃない。
それに私、一人の方が落ち着くし、誰とも組みたくないの」
居間のソファーに座りながら暗い様子で語る夕海子。
大体の事情は分かったが遭遇してしまった以上、放っておく事は淳五郎には出来なかった。
確かに一ヶ所に留まっていれば危険に遭遇可能性はぐっと低くなるだろうが、
この別荘に殺し合いに乗っている危険人物が訪れないとは限らないし、
この別荘のあるエリアが禁止エリアにならないとは限らない。
危険は小さくなるだけで無くならないのだ。
「気持ちは分かるけど、あんまりじっとし過ぎるのも危険だよ。
やる気になっている奴がここに来ないとも限らないんだし……それに、
放送の後にこの辺りが禁止エリアになったりするかもしれないだろ?」
「……」
「一緒に行かないか? 女の子一人ぐらいなら守れるよ、俺」
「嫌」
「早っ」
「言ったでしょ、誰とも組まないって……気持ちだけ受け取っておく。でも、放っておいて……」
それっきり夕海子は黙りこんでしまった。
「……」
放っておく気にもなれないのだが夕海子の意思は固く、
恐らく無理矢理連れて行っても激しく抵抗されるだろう。
夕海子にいつまでも時間を割いてもいられない。
彼女である有紀を捜さなければいけなかったため。
「……ごめん、俺、行くよ」
「……気を付けて」
淳五郎は夕海子の事を気に掛けつつ、別荘の出口へ向かう。
こうして塩崎夕海子は再び孤独を選んだ。
【朝/C-2別荘地】
【加藤淳五郎】
[状態]:健康
[所持品]:基本支給品一式、クロスボウ(1/1、予備矢10)
[思考]:有紀を捜す。
【塩崎夕海子】
[状態]:健康
[所持品]:基本支給品一式、???
[思考]:誰とも遭いたくない。
最終更新:2012年08月15日 00:16