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僅かでも救いになる

5:僅かでも救いになる

大木弓那は廃墟のホテルの中を歩いていた。
廃業してかなりの年月が経っているのかホテルの中は酷く荒れていた。
恐らく人為的な破壊もあるだろうが、海が割と近いため潮風の影響もかなり大きいだろう。
四階で一匹の狼と出会う。

「あなたは殺し合いに乗っている?」
「……いや」
「本当?」
「本当だ」
「分かった、私は大木弓那」
「俺はセルゲイ・ルシコフ。セルゲイで良い。平沢まりなと言う少女を捜している。知ってるか?」
「いや……ごめん。私も、黒牙って言う黒と赤の人狼を捜してるんだけど」
「すまない、あんたがこの殺し合いで初めて会った参加者だ」
「そう……」

互いに捜し人がいると分かった所で二人は支給品を見せ合う。
弓那は千切れた電気コード、セルゲイは小型のリボルバー拳銃、チアッパ ライノ。
「俺は銃は扱えない」と、セルゲイは弓那にライノと予備弾を手渡した。

「ありがとう、セルゲイ」
「礼には及ばん」
「この廃墟、私達の他にも誰かいるかな? 一緒に見てみない?」
「そうだな……やる気になってる奴がいなければ良いが」

二人は一緒に廃ホテル内部を探索してみる事にした。
そして割とあっさり、他の参加者は発見出来た。
三階の客室の一つに、銀と白の狼がいたのだ。
接触を試みる二人だったが、その狼はどうも様子がおかしい。

「来ないでくれ、俺は、俺は誰とも組みたくない」
「せめて話だけでも……」
「うるさい! うるさい! 放っておいてくれッ!」
「なあ……」
「ガルルルルルルルッ!!」

全く話を聞こうとせず、遂には威嚇を始める始末。
何かに怯えているようにも見える。その両目には涙が浮かんでいた。
その様子を見て二人はますますこの狼を放っておけなくなる。
弓那は持っていた銃を床に放り、デイパックも同じく床に置いた。
セルゲイも然り。

「何もしないよ。本当に何もしない。ただあなたと話をしたいだけだから……お願い」
「……」

穏やかに、しかし真摯に語り掛ける弓那を見て、狼の表情が僅かに変わる。
そして、嗚咽混じりに語り始めた。

「……俺……俺……誰ともいちゃいけないんだよ……」
「……?」
「……どう言う、事だ?」

狼は震えながら、「以前の殺し合い」での出来事を弓那とセルゲイに話した。

――自殺しようとしていた所をとある少女に救われたがその少女をレイプし、何故か惚れられ、
その後その少女と行動し、二人の参加者と出会うが、それらの人々を、気付いた時には皆殺しにし、
そのショックで自分は自害した、と言う事を。

「……そんな事が」
「……」
「……何であんな事したのか全く分からない、本当なんだ。
まるで、自分の意識を誰かが、遠くから操っていた、そんな……そんな感じなんだ。
言い訳じゃない! 言い訳なんかじゃない!! 本当なんだ!!」
「お、落ち着いて……」

興奮して喚き散らす狼を宥める弓那。
弓那もセルゲイも狼の話に多少ショックを受けてきたが、
一応、二人もそれなり、いや、かなりの修羅場を経験してきている身であり、ショックは受けれど動揺はせず。

「俺が殺した二人も、呼ばれてる……安藤正年と、太田かずみ……俺を憎んでるに決まってる……。
怖い、怖いんだよ……二人に会うのもそうだけど、誰かと一緒にいたら、また俺、前みたいになるんじゃないかって……。
だから、俺の事は放っておいてくれよ……うっ……うっ……」

涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら、弓那とセルゲイに向かって狼は言う。

「……そうか……事情は、何となく分かったよ……でも、放ってはおけない」
「……!」
「そう言えば名前を聞いていなかったな、名前は何て言うんだ」
「……カスパル」
「そうか、カスパル……お前の気持ちも察する事は出来る。
でもな……だからってこのまま、怯えて閉じ籠ってたって、どうしようも無いだろう」
「……」
「このままで良い筈が無い。余計なお世話かもしれないが、出会ってしまった以上お前を放っておく事は出来ない。
なあ、弓那? そうだろ?」
「そうだよ……カスパルさん、その……今まで無意識の内に誰かを殺した事ってあるの?」
「……無い」
「そっか……なら、もしかしたらその時の殺し合いの主催者が何かしたのかもしれないし……。
また、前みたいになるとは、限らない、じゃん? ね?」
「……ッ……」
「……殺し合いは私も経験してるし、襲われて一人殺してるし最期は使い魔と一緒に心中したよ!」
「俺もな、同行者の少女を、まりなをレイプした。それでその同行者と一緒に襲われて、襲った奴と同士討ちだ」
「……な……」

ここで弓那とセルゲイはそれぞれの「前の殺し合い」での自身の顛末をカスパルに対して打ち明ける。
弓那とセルゲイの二人にとっても互いの「前の殺し合い」の事を聞くのは初めてだったが。

「どう? 潜った修羅場はカスパルさんにも負けて無いと思うんだけど。
って言うかセルゲイ、レイプって、や、やめてね私は黒牙一筋なんだから!」
「裸でも見ない限りは大丈夫だ! そんなに何回も過ちは犯さんしそれに今は俺もまりな一筋だ!
……とまあ、話が逸れてしまったが、どうだカスパル、俺達も大変な目に遭ってるんだ。
辛いのはお前だけじゃないぞ。不幸なのはお前だけじゃないんだ。レイプは俺もしたんだ……これは、余計か」

セルゲイがカスパルの目を見据えながら言った。
カスパルはしばらく唖然としていたが、やがて溜息をつくと、力無い声で言い始める。

「……あのさ、あんたら、俺を元気付けようとしてるの?」
「……一応」
「上手く、出来ないが……」
「……あはは。あんたら、変わってるぜ。見ず知らずの奴に……さ」

乾いた笑いを浮かべるカスパル。
一応、一応ではあるが初めてカスパルの笑顔を見れた弓那とセルゲイは少し嬉しくなる。
そしてカスパルは前足で涙と鼻水を拭い、僅かに期待が籠った声色で二人に訊く。

「……俺、一緒に行って、良いの?」
「勿論だよ! 一緒にこの殺し合いから抜け出す方法探そうよ!」
「……構わんよ。全然」
「……俺……おれっ……いいの? いい、の? あっ、アーー……ウアアアー……!」

カスパルは堰を切ったように泣き出した。
恐怖から来るものでは無い。
嬉しかった。純粋に心の底から嬉しかった。
自分の事を気遣ってくれる存在と言うものが、とても嬉しくて。

(……殺し合いって、バトルロワイアルって、本当に悲惨だわ……カスパルさんだって、
殺し合いを経験しなければ、こんな風にはならなかっただろうに)
(ここまで、精神的に衰弱し切った奴を見た事が無い……このゲームは酷過ぎる……本当に)

泣きじゃくるカスパルを見詰めながら弓那とセルゲイは殆ど同じ事を思っていた。

カスパルは気付いていない。
いや、もう殆ど覚えていないと言った方が良いだろうか。

自分を拾ってくれた二人の内の一人、大木弓那が、
自分が以前させられていた殺し合いの主催者の助手を務めていた内の一人と全く同じ容姿だと言う事に。


~≪心に傷持ち狼二匹と女の子組≫~
【早朝/D-3廃ホテル三階】
【大木弓那@俺のオリキャラでバトルロワイアル
[状態]健康
[持物]基本支給品一式、回転式拳銃:チアッパ ライノ(残弾6/6 予備.357マグナム弾12発)、千切れた電気コード
[行動]黒牙を捜し出しこの殺し合いから脱出する。セルゲイ、カスパルさんと行動。
[備考]原作死亡後からの参戦。

【セルゲイ・ルシコフ@新訳俺のオリキャラでバトルロワイアル
[状態]健康
[持物]基本支給品一式
[行動]殺し合いから脱出する。弓那、カスパルと行動。まりなを見付けたい。
[備考]原作死亡後からの参戦。

【カスパル@もっとエクストリーム俺オリロワ
[状態]重度の神経衰弱
[持物]基本支給品一式、???
[行動]安藤正年と太田かずみに会ったらどうしよう。
[備考]原作死亡後からの参戦。
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最終更新:2012年09月08日 01:27
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