(僕はなにをしているんだろう……)
これは真田美緒の言葉である。
「だからね、美緒くん。わかってる?」
「……はい」
「いくら顔がいいからってね、この業界じゃ「ただしイケメンに限る」は適用されないから」
「……どの業界ですか」
「決まってるじゃない」
「「「腐ったお姉さまの世界よ」」」
お察しいただけただろうか。
時間を少し戻そう。
安藤裕一を殺害した真田美緒は、その後7-Cに移動した。
正確には、移動させられた。
彼がナイフの血を拭った直後のことである。
「そこのあなたは、何をしているの?」
背後から声がかかった。
(……ッ!?)
気配などなかった。だからこそ美緒は安藤裕一を殺害したのだ。
振り向けば、黒髪を胸元までたらした少女。肌の色が極端に白く、殆ど生気が感じられない。声も小さいというわけでは無いのに、淡々としていて感情が無いのだ。
この女はまずい、美緒の本能が告げる。
しかも。
(見られた……!)
再度言うが、美緒は人を殺した直後である。
躊躇なく殺人を犯したように見えても、所詮は素人の十六歳。犯行現場などを人に見られて、動揺しないわけが無い。
だからここで美緒がとった手段は単純。
逃走、である。
「なに、何あの人……!!」
不気味、と表現するのが正しいだろうか。いいわけも通じそうに無い、隙の無い瞳。
よりにもよって、あんな女に見られるなんて!
とにかく逃げなくては。
最悪、美緒はまともな抵抗も出来ずに殺されることだろう。
地図も気配も確認せずに全力疾走していた美緒のその上に。
どさりと。
女がふってきた。
「うわああっ!?」
美緒の心中を察してほしい。
思い切りすっ転んだ上に背中には決して軽くは無い重み。受身も取れていない。
大してこの状況では。
大パニックである。
ただし。
「なあに逃げてんのよ?」
上から降ってきた声は、先ほどの生気の無い少女のものではなかった。
「……え?」
視線だけそちらに向ければ、背中の少女もこちらをみていたようで、ばちんと目が合った。少女は茶髪で、生気のこもる瞳は緑色だった。
「白神さーん、希遠(りおん)ちゃーん、エモノつかまえたよー」
さらりと恐ろしいことを言う背中の女。微々たる物ではあるが平生を取り戻しつつある美緒は彼女に抵抗を試みるものの、なんとびくともしない。普段の美緒が「能力」に頼りきりで貧弱であるのも一因ではあるが、背中の女の筋力が最大の原因であろう。さほど筋肉質には見えないのに。見かけによらないものである。
「ちょ、まって待ってまって! 何この流れわかんない!」
四肢に力をこめ、無駄な抵抗を試みる美緒の後ろにから、ふたつの足音が迫る。流石にその位置まで見ることは出来ず、足音の主は声からしか探ることが出来ない。
「おお、エミリア! よくやったな」
一つ目の声は、低めの女性声。口調から溢れるのは男らしさだが、雰囲気から察するに女性であろう。美緒が言うと説得力が微妙なのだが。
そして二つ目の声は。
「……その子は、足、速かったけど、筋力としては、微妙、なのね」
「ひ!?」
先ほどの、生気の無い声。
全員女性とはいえ、三人に囲まれ、自分は身動きがとれず。しかも気味の悪い女がいる。恐怖しないほうがおかしい。
「で、少年? 殺人の理由、なんかある?」
背中の女が問いかける。
「我々は全員軍人でな。まあ、私と希遠の所属する軍と、君の背中にいるエミリアの所属する軍は違うんだがな」
声の低い女が恐怖に拍車をかけ。
「だから、看過は、しない」
不気味な女が止めを刺した。
さて。涙目になるほどの恐怖を抱いた美緒が、誰に助けを求めるかはわかりきっているであろう。
「兄さん……ッ」
ぴたりと、三人の女の動きが止まった。
そして数秒後にはざわざわとしゃべりだす。
「ちょ、ちょいちょい今の聞いたかいお二人さん! 「兄さん」だってよ「兄さん」!」
「ジーザス! なんてこと!!」
「ブラザーコンプレックス……?」
「何これデキてるフラグ? うはww ktkrwwww」
「ジーザス! なんてこと!!」
「……?」
ただでさえ美緒にはついていけない三人が、更によくわからない話題で盛り上がる。
頭に無数のはてなを浮かべつつも、未だに顔が青い美緒に、声の低い女が問いかける。
「なあ少年よ! 貴様にとって兄とはどんなものだ!?」
「……え?」
「さあkwsk! どこまでいった! どこまでやったのだ!」
なんということでせう。
眼帯で片目を隠したその女は、いや、この場にいる三人の女性は、どうやら「そういう趣味」であるらしい。
けれど美緒はそんな趣味に対しての理解が致命的に足りなかった。だから彼は、自分が思う「兄について」を、正直に答えてしまう。
「……に、兄さんは! 誰よりも賢いし、誰よりも強いよ! ここから脱出できるのも、あの女倒せるのも、絶対に兄さんだk」
「ジーザス!」
背中の女が喚いた。
「ジーザス! 神よ神よ神よ! 私は無心論者だけど今なら神様信じてもいいよ、ジーザァァァス! 神ブラコンきた! なあ少年! 君は右なのか左なのか!」
「み、右、左?」
背中の少女がぐるりと体を捻り、美緒の身体をぐいと持ち上げ、向かい合うように座らせる。そして美緒の両脇に残りの女が座った。
「おうともよ! 少年、名前は?」
声の低い女が美緒の方をがっしと掴み、顔をぐいっと近づける。そして爛々と輝く瞳が美緒を射抜く。
「み、美緒」
そんな瞳に見つめられてしまえば、逃れられる気がしない。思わず名乗ってしまった美緒に、女のテンションがあがる。
「そうかそうかそうか! こちらもなのってやろう! 私が白神、美緒の上に乗っていた茶髪がエミリアで、そこの根暗が希遠だ! 私の友人がエミリア、私の部下が希遠と覚えるが良い!」
なんということだろう! 美緒が一番恐れていた希遠が、なんと「部下」であるらしい!
そんな美緒の驚きをよそに、女たちのテンションは天井を知らずに昇り続ける。
「なるほど! では美緒よ、貴様、兄とは「兄弟」以上の関係なのであろう? して、「兄美緒」か? 「美緒兄」か?」
「は?」
「おお、まさかリバなのか? では美緒よ、「兄美緒兄」か? 「美緒兄美緒」なのか!?」
「やだなあ白神さん! もっとおいしいのは「兄→←美緒」だよ! 両片思いhshs!」
「…………いっそのこと、「美緒→兄→別の人→美緒」……」
美緒からすれば全く把握できない話題が続く。
しばらくそんな議論が続きそうだったので、そろりそろりと美緒が逃げようとしたところで、エミリアから声がかかった。
「ああ、待って、いくらイケメンでもいくらホモォでもいくらブラコンでも、今日の君はオールナイトで説教だから」
さて。
このあと、美緒は安藤裕一殺害時の思考を洗いざらい吐かされ、女三人の萌え語り……いや説教を正座できかされることになる。オールナイトではなかったが。
結果デイパックの中身を全てひっくり返され、武器どころか何故かデイパックごと没収されることになった。
遅くなったが、やっとここで冒頭に戻ることになる。
とりあえず、今回の接触で美緒に身についたものといえば、「ブラコンは自重すべし」という教訓と、「ぼーいずらぶ」という未知の領域の知識だった。
ちなみにエミリアと白神と希遠を「腐女子同盟」と定義した場合、このバトルロワイアル参加者中もう一人の腐女子たる瀬戸綾乃を忘れることになるわけだが、その瀬戸綾乃は美緒の兄と行動しているのだから、そこは誤魔化し、誤魔化し。
美緒の身柄といえば、「いくらブラコンでイケメンで萌えポイントでも殺人は許されない」という前半削除を切に願う理由で三人に預けられることとなり、まあ暫く美緒への逆セクハラはとまりそうにない。
美緒からすればたまったものではないこの状況で、まあ、普段はものすごく運のいい彼のこと。話題にはうってつけのイベントが勃発した。
『はーい皆さーん、柚希ちゃんですよーぅ』
キーン、という耳障りな音とともにスピーカーから溢れる女の声。
【7-C/茂み/一日目-昼】
【真田美緒@亡國ノ村】
[状態]:精神的疲労(中)
[装備]:なし
[持物]:なし
[方針/目的]
基本方針:何をしてでも生き残る
1:いまのぼくにはりかいできない
2:Help me……
[備考]
※ 前回は両性具有と偽りましたが、当たり前のようにばれました
【7-C/茂み/一日目-昼】
【エミリア・ヘールトロイダ@UNKNOWN】
[状態]:漲ってきた
[装備]:なし
[持物]:基本支給品
[方針/目的]
基本方針:殺人者の拘束、場合によってはその場で除去
1:みwwなwwぎwwってwwきwwたww
2:けど殺しはいけないことだからね
[備考]
※ 原作では魔術で「エミリオ」と名乗る男性の身体を保有していますが、今回は脳内に「エミリオ」がいるだけのようです。
【7-C/茂み/一日目-昼】
【白神@ヒカリノコエ】
[状態]:漲ってきた
[装備]:なし
[持物]:基本支給品+真田美緒の支給品
[方針/目的]
基本方針:仲間を探しつつ脱出
1:みwwなwwぎwwってwwきwwたww
2:希遠とは合流しているわけだが、あと接触すべき仲間は山ほどだな……
[備考]
※ 本名は「半月 弥夜(なかつき やよ)
【7-C/茂み/一日目-昼】
【希遠@ヒカリノコエ】
[状態]:漲ってきた
[装備]:なし
[持物]:基本支給品
[方針/目的]
基本方針:対主催
1:みwwなwwぎwwってwwきwwたww
2:なーんとなく白神様についてきゃいけるかなあ
[備考]
※ 白神の部下。
※ 苗字は「荒井」。
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最終更新:2012年12月20日 21:51