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翼をください

 全てが、許せなかった。
 彼女を苦しめる世界。彼女を救わない世界。彼女を殺す世界。
 世界は、邪悪だ。
 思っていたよりも遥かに、想像を遥かに超えた域で、世界は邪悪だ。
 『クローン』を使って殺そうとしてきた。
 『クローン』を使って追いつめてきた。
 『クローン』は『彼女』を殺さねば、死ぬ運命であった。
 『クローン』も『彼女』も、そのどちらもを救いたかった。
 でも、無理だった。
 『クローン』は『彼女』を殺せなかった代償としてクソみたいな装置で殺されかけた。
 それでも、反抗してやろうと思った。
 壊すことしか、コロスことしかできねえと思ったいるクソ野郎どもに、反抗してやろうと思った。
 でも、無理だった。
 折れてしまった。
 自らを構築する何かが、クソみたいな世界でどうにか積み上げてきた何かが、崩れ落ちてしまった。
 ただ救いたいだけなのに、それだけなのに、地球の果てまで追いかけてきて執拗に攻め立てる世界。
 もう、無理だった。
 もう、耐えられなかった。
 何もかもを壊したくて仕方がない。
 あの『計画』を発案した奴らを、クソみたいな装置で『クローン』を殺そうとした奴らを、
 彼女を追いつめる奴らを、彼女を苦しめる奴らを、彼女を助けない奴らを、彼女を救わない奴らを、



 全てが全て。
 何もが何も。











 コロしたい。







 全てを、コワシタイ。










 心が噴出する。
 全てを破壊するツバサとなって、噴出する。
 学園都市が誇る最強の超能力。
 世界の軍隊すらも相手にできる第一位の力。
 それすらも越えた、己でも把握しきれぬ圧倒的な力。
 力は、余波だけで周囲を震撼させた。
 そこにいたのは、ただの少女だったのだろう。
 おそらく、超能力者ですらない。
 学園都市の外に住む、本当の無能力者なのだろう。
 不運にも自分の近くにいたらしい少女は、力の余波に巻き込まれて、宙を飛んだ。
 数メートルほどの宙を浮き、受け身もとれずに地面と激突した。
 少女は、何が起きたのかすら理解できていないようであった。
 混乱と恐怖と痛みに顔を歪めて、涙を流しながら、見てくる。
 理解はできなかったであろうが、脅威は感じたのだろう。
 わたわたと四肢を動かして、その姿はまるで物陰へと逃げようとする昆虫のようだ。 
 触れる必要すらない。
 少女がいる方向へとツバサを振るうだけで、それだけで今度は踏みつぶされた昆虫のようになる。
 原型すら残さず地面の染みとすることができる。

 だから、振るおうとした。
 全てをコロす為に、ツバサを動かす。 



「―――いや……死にたく、ないよぉ……」



 直前で、聞いてしまった。
 その声を。
 恐怖で震える声を。鼻水と涙を啜る音とが混じったその声を。
 聞いてしまった。
 聞いてしまったのだ。




「―――――――――!!!」




 口から溢れたのは、獣のような声だ。
 殺したい。殺さなくちゃいけない。彼女を救う為には殺さなくちゃいけないのに、それなのに―――、
 ツバサは霧散した。






「あああああああぁぁぁぁぁぁぁァァァァァぁァぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」







 心が、引き裂かれる。
 理性と本能とがせめぎ合い、心を壊す。
 発動したのは、殺意の奔流ではなかった。
 『自分だけの現実』。
 つまりは、第一位の超能力であった。
 振るった腕は少女を捉えて、まるでピンボールのように吹き飛ばした。
 闇の中へと消えた少女。
 あれだけの勢いで吹き飛ばされたのだ。おそらくは死んだだろう。
 だが、運が良ければ生存しているかもしれない。
 僅かではあるが、可能性はある。
 ツバサを振るえば確実に死亡した命。
 いや、例え第一位の超能力であろうと触れるだけで、あの命を確実に散らす事はできた。
 少し触れて、ベクトルを変換させ、全身の血液を逆流させれば、それさけで終わった筈だ。
 何故、吹き飛ばすだけに終わったのか―――分かっている。
 分かっているからこそ……分からなくなる。
 自分がしたい事。
 自分が成したい事。
 世界を壊したいと叫ぶ一方で、たった一人の少女も殺せない自分。



 自分は、何なのだ。




 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
 分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。







【E-5・森林・深夜】


【一方通行@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]チョーカー@とある魔術の禁書目録、現代風の杖@とある魔術の禁書目録
[道具]支給品一式
[『色』]赤色
[思考]
1:――――――――――











 地面に転がる少女がいた。
 少女の身体はボロボロであった。
 木々をへし折り、地面を削って、ようやく停止した少女。
 腕はあらぬ方向へと曲がり、身体のいたるところが擦り切れている。
 頭からは鮮血が溢れ、その顔の半分を真っ赤に染めていた。
 一目見ただけでは、まるで死んでしまっているかのような姿。
 だが、少女は生きていた。
 胸は小さく上下し、表情にも苦悶がある。
 勿論、少女の生存には理由があった。
 木々に激突する寸前、地面へと転がる寸前、少女の吹き飛ぶ勢いは不自然に減速した。
 それは、まるで見えないクッションに包まれているかのように、少女は僅かに衝撃を緩和させて地面へと落ちたのだ。
 満身創痍のなかで何とか生き延びた少女。
 だが、それでも、その心に負った傷は甚大であろう。
 争いを知らぬ平穏の日々から殺し合いの場へと召喚され、そうして神にも等しい力の片鱗を味わったのだ。
 心に走った衝撃は如何ばかりか。
 ただ今は、昏々と眠り続ける。
 身体と心の痛みから逃げるように、少女は意識を閉ざし続けていた。




【E-5・森林・深夜】

【中野梓@けいおん!】
[状態]左腕骨折、肋骨骨折、全身にダメージ(中)、頭部裂傷
[装備]ムスタング@けいおん! 梓の携帯@けいおん!
[道具]支給品一式、拳銃@現実(15/15)、拳銃の弾丸@現実(50/50)、サバイバルナイフ@現実
[『色』]赤色
[思考]
1:―――――――

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最終更新:2013年02月04日 22:14
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