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普通の生活

(やってらんないわよ、殺し合いなんて)

 端正な顔、豊満な体、堂々とした出で立ち。
 女性の中では上の上、それを超えたような容姿を持つ女は森林の中にいた。
 峰不二子。その赤いコートを着た出で立ちはアウトドアには不釣り合いである。
 彼女は裏社会に生きる人間だった。とはいってもマフィアや泥棒など、明確な立ち位置にいるわけではない。
 言うとしたらアウトロー。自分の目的のためには手段を選ばない女である。
 だが彼女は殺人鬼ではない。手段の1つとしてあるわけであり、趣味ではないのだ。
 彼女がこの殺し合いで望むのは「生存」である。
 生きて物種、というし、彼女は殺し合いに参加するのも「手段」の1つである。

(ただ、メンツがとんでもないのよね)

 不二子は参加者名簿を眺める。彼女も知っているメンツが、なんと7人もいる。
 ルパン、次元、五ェ門、銭形、レベッカ、ニクス、レオナルド・ダヴィンチ……タダでは殺せないような者達だ。
 そんな相手を敵にするのは厄介だ。
 レベッカは分からないが、単純な戦闘で五ェ門・銭形と張り合うなどは自殺行為に等しい。
 もちろん彼女もそれなりな手練れであるが、あんな人間離れした者達には及ばないのである。
 もっと言えばそんな連中を殺せるような者がいたら、それこそ勘弁である。相手にしたくない。
 そうすると今のところ一番の定石は「ルパンと行動する」であろう。
 強敵を相手にしない一番の方法は仲間になることである。
 そしておそらくルパンは殺し合いに乗らないだろう。
 不二子はわかる。理由は「今までの経験上」だ。
 長年付き合ってきた相手である。そのくらいは容易にわかる。
「殺し合いに乗らない」ということの最善の手は「殺し合いから脱出する」ことである。

(ルパン一味をさらってこんな殺し合いに参加できるような力を相手に、脱出、ねえ……)

 これもまた嫌になる話だ。とても勝算の高い話とはいえない。
 とはいえルパンらを相手にするのは、いわば死ぬ可能性は100%のようなものだ。
 主催の具体的な戦闘力はわからないが、もしかするとルパンを相手にするよりは楽かもしれない。
 つまりは単なる憶測である。
 死ぬのが確実なのと、もしかしたら死なないかもしれない方では、まだ後者の方がマシというだけのことだ。

(分の悪い賭けは趣味じゃないんだけどね)

 この賭けにおけるいわば金、そう支給品を彼女は漁る。
 食糧とか地図を除けば、あるのはたった一つだけだった。
 ベルトのバックルのような……よくわからない何かだった。
 機械っぽい見た目ではあるが、メカニックに精通している彼女でもこれはわからない。
 説明書を見ると名前は「次元方陣シャンバラ」というようだ。
「帝具」というオーパーツであり、超科学的な能力があるというのだ。
 なにせ「マーキングした場所に人間を転送する」というものである。
 例えばある木にマーキングすると、不二子が遠くに離れていても、そこにワープできるということだ。
 というか、それは峰不二子が試したものだが。

(一体、どういう構造なのかしら……)

 不二子は顔をしかめる。こんな機能、どんな技術があれば可能なのか。
 しかも身体の疲労も感じる。説明書には「エネルギーを消費する」とあり、一回の転送でどれほどのものかはわかった。
 不可解な話である。
 普通、機械を使って消費するのはガソリンなどの燃料であり、身体ではない。
 まるで身体のエネルギーを転換しているような感じだ。
 マーキングも「マークした」と思えばなんとかなるようだ。
 思念や身体によって動く機械ということだ。
 構造はさっぱりわからないが、効果はあることは間違いない。
 不二子は体の疲労を感じながらそれを持つ。便利だが多用すると身体疲労でかえって危ないだろう。

「おい、女」

 そう彼女が思っていると、後ろから男の声が聞こえる。友好的な声には思えなかった。
 彼女が振り返ると、そこには銃を構える男がいた。
 体つきはよく、青い服に赤いズボン、刈り上げた髪に鋭い眼光。
 格好は少し古いというか、まるで中世ヨーロッパの市民という感じである。

(というかあれ、次元の獲物じゃないの?)

 その拳銃がS&W M19ということはわかる。マグナムも撃てる、威力の高い回転式拳銃だ。
 ついでに鎧のような、おそらく義手であろう左手には剣。武器だらけである。

「お前の持っている支給品を全て俺に渡せ。そうすれば命だけは助けてやる」
「ずいぶん簡潔なご要望ね。それで、私が確実に助かる保障なんてあるのかしら」
「ねえよ。とにかく持ってるものをよこせ」

 絶対、殺す気だ。不二子は確信する。
 ここでおめおめと渡せば自分が死ぬことは間違いない。
 となれば逃げるしかない。自分も「弾」を避けることには自信がある。
 ついでに相手の銃の持ち方も何か変である。
 一般人は見てもわからない領域だが、銃器の扱いにそれなりに長けている不二子から見ると、それはわかる。
 だが欠点もある。
 まず第一に銃を突きつけられていること。
 第二に自分の身体が先ほどシャンバラを使ったことにより疲労していること。
 第三に男は山の下りにいて、不二子は登りにいる。
 逃げるとすれば疲れた体で、山を登り、なおかつ銃弾を避けなければならないということだ。

(さっそく部の悪い賭けだわね!)

 彼女は心の中で舌打ちした。



 ガルファは殺し合いに乗る気であった。
 彼はフランスの、正確にいうなら「中世」フランスの傭兵である。
 百年戦争の中、生きている彼は別に国に報おうとかそういうことではなく、単に金のため、自分のために戦っている。
 この殺し合いは別段やりたいわけではないが、しなければならないとすれば仕方ないことだ。
 それに優勝すれば「何でも願いを叶える」というではないか。
 例えば「一国を持つ」なんてことも不可能じゃないかもしれない。
 本当かどうかはさだかじゃないが、どちらにしろ殺し合いには乗らないといけないのだ。何か目標があった方がいいと彼は判断する。

 支給品も足りている。
 自分がかつてよく使っていた小型の手持ち盾・バックラー。
 殺すには十分な切れ味があると思われる両刃の剣。
 そしてかつて自分の世界にあった銃を高性能、かつ小型にした、拳銃だ。
 唯一の外れは、彼からしてみると「何か絵が描かれている封筒」だが、それよりも驚くべきものは、その「拳銃」だった。
 この技術には驚いた。自分の知らない間にこんな技術があるとは思ってもみなかった。
 こんなものがあればもっと功績もあげられただろう。
 いや、そもそも、自分につけられている首輪も知らない技術だ。
 そもそも主催は魔術を使えるのかもしれない。
 自分が最初のよくわからない建物内から森林に送られたことや、異様なほど物が入るのに軽いままのバッグなども、そのおかげかもしれないのだ。

 となると、相手は魔術も使えるし、異常な技術力も持っているということだ。
 なおさら逆らえる気がしない。主催に刃向うなど不可能だろう。
 彼は主催から用意された支給品から己の行動を決定した。

 ガルファ自身が戦争の中に生き抜いてきただけあって、拳銃の扱いや、彼の時代にはまだなかった機器なども、「一応の」使用はできるようになった。
 防御・近距離武器・遠距離武器と合わせて彼はかなり優位な立場にいる。

 ただ、彼にとってはそれだけでは足りなかった。
 なぜなら彼にとって宿敵となる相手、魔女がこの殺し合いの参加者にいるからである。
 その名前はマリア。戦争を止めたがる、自分の職業上、とても迷惑な存在である。
 彼女のおかげで自分は左手を失い、とてつもない痛みを伴う羽目になった。
 彼の義手はそれを伝えている。中にあるギミックはまだ残っているようだ。
 彼女を殺したい。ガルファはその怨念を抱いていた。

 彼は一回だけ彼女を殺したことがある。
 それは物理的なものではない。彼女の魔法を使えなくしたのだ。
 元々は彼女の純潔、処女を奪うことで魔法が使えなくなると聞いたため、襲ったことがあるのだ。
 実際はマリアは処女のままなのだが、何故か知らないが彼女は一切魔術が使えなくなった。
 それは「魔女」という存在上、死んだも同然であった。だから彼はかつて「殺した」ことがあるのだ。
 さらにマリアは異端として逮捕され、処刑させる予定だった。肉体的にも殺せるのだ。

 だが協会で彼がジョセフと戦っている時に、その魔女は壁を突き破り、飛び込んできた。
 鉄格子に囚われていた彼女がなぜそんなことができたのか。
 もしかしたら魔法をまた使えるようになったのかもしれない。
 もちろん、他にも可能性はあるが、用心するに越したことはない。
 消えないのは、その場でも魔女に邪魔され、馬乗りになったジョセフに幾度も、意識が消失するまで殴られた記憶。
 その後に彼は目覚めた。彼女に対する怒りもまた保っていた。

 魔女を殺すのに武器は足りない。もっと強いものがほしい。
 人もそうだ。仲間がいなければあの魔法に対処できない。
 自分は殺し合いに乗っているが、同時に「他の人間を殺す」ということで同盟を組むことも考えている。
 参加者だけで100人近くいるのだ。これを独力でやるのはとても骨が折れる。
 そこで「殺し合いに乗る者」同士で同盟を組み、一定の人数まで減らすということを望む者がいると踏んだのである。
 殺し合いに乗らなくても自分に怖気づいて協力してくれる人間でもいい。
 そう思いながらガルファは峰不二子に銃口を向けたのである。

 だが、それも「不二子」を殺そうとしたのである。
 彼からしてみれば「異様な格好」で「変わった容姿」をしている女、ということで異民族なのかもしれないと考えた。
 だから辺地で銃の存在も知らない。そこで左手に剣を持つ。
 剣ならば武器としてわかりやすいし、威嚇の対象になるだろう。
 それでも、その女は一切「恐怖」を見せなかった。
 警戒していることはわかる。だが全く畏怖はしていない。
 思い出すのは自分の知り合いの娼婦・ロロット。それに戦場でも平然と「争いを止めろ」というマリア。
 そのような肝の据わった女だ。そして彼女には何か異様な、底知れない何かがある。
 少なくとも恐怖で押さえつけてどういうできると思える人間ではない。
 それならば殺すしかない。自分の脅威となるかもしれない存在は消す。
 女だが、ここは殺し合いの場だ。遠慮は自分に跳ね返ってくる。

 そんな女だが、なかなか殺せない。

(弾が全く当たらねえ!)

 彼が引き金を引いても女にはかすりもしなかった。
 そもそも拳銃という形状で銃を扱ったはないし、反動や重さやらで全く命中しない。クロスボウの要領ではうまくいかないのだ。
 おまけに今は深夜。月明かりがわずかに森を照らすが、標準が合うわけがない。
 加えて女の身のこなしが弾丸の軌道を上手く避けるような形で逃げている。
 男のガルファでも追いつくのがやっとだ。

(やっぱりただの女じゃねえ。ここで殺さねえとな)

 殺意をガルファは再確認する。生かしてはおけない。
 そんな女は山を駆けあがると、目の前に見えてきた建物の窓に向かって、そのまま突き破るように入り込んだ。

(あれは……ガラスか?)

 現在の我々から見れば不二子が突き破ったものは窓ガラスとわかる。
 だが百年戦争の時にいたガルファの時代には窓ガラスは、少なくとも今のようにあちこちの建物にあるわけではない。
 一応は教会にあるステンドグラスを思い出し、おそらく「ガラス」であることはわかった。
 だがそれがなぜ、窓にあるのかはわかってない。

(こんな建物をどうやって作り上げたっていうんだ?)

 奇妙だ。ガルファからしてみればこの世界は異様である。
 その疑問は一旦、頭の外に置いておくことにした。
 今、肝心なのは目の前の女を殺せるかどうか。
 そして建物内に入れば逃げ場は少なくなるということだ。

 壊れた窓からガルファが建物内に入ると、おそらく何らかの「飲食店」であることはわかった。
 自分の時代の頃とは少々異なるが、そういう場所ではあると想像できる。
 店内を見ても、どこも窓やドアは空いていない。
 そして入る時に少し見えた、女が奥の調理場らしきところへ隠れる様子。

「おい、女。そこにいるのはわかってんだ。早く持ってるもんを全部差し出せ」

 調理場、現代に住む我々にとってわかりやすく言えばカウンター越しに、隠れて見えない彼女にガルファは言う。
 一旦、間が空いたが、声はすぐに返ってきた。

「……それを差し出して私に何のメリットがあるのかしら?」
「殺されないってわけだ。武器をおいて殺されないのと、武器も命も全部奪われるの、どっちがマシかわかるだろ」
「そうね。だけど私の支給品はラジオよ。携帯ラジオ。何かに使えると思う?」
「ラジオ……? 何、言ってんだお前」

 当然、ガルファのいた時代には存在しえないものである。

「何よ。私の持ってるものがダメすぎて信じられないの? そんな無駄なものを集めたって、仮に私を殺したとしても武器を無駄に浪費するだけよ」
「信じるもクソも、お前の言ってるラ……なんとかってのがわかんねえだけだ。ド田舎の異民族のものかもしれねえが、武器なのかどうか説明しろ」
「ド田舎の異民族とは失礼ね。なんならあなたが持ってる武器を答えてやっていいわよ。それ、拳銃でしょ?」
「……てめえ、知っていやがったのか」
「当然よ。回転式拳銃のS&W M19。まあざっくりいえば、でかい弾を撃てる、携帯しやすくて強い銃ってとこかしら」
「御託は知らねえが、お前を殺すのにはちょうどいいってことは知ってるぜ」
「そんなに強い武器ならわざわざ私なんか殺さなくてもいいじゃない。もし私が強い武器を持ってたらすぐに反撃するし、対して強いものはないってわかるでしょ?」
「いや、お前の身のこなしだけはさっき見てわかったように一流だ。俺の仲間にしてやってもいい」
「仲よし子よし他の参加者を殺しまくって協力するってこと? 残念だけど私は避けとくわ。ルパン一味がいるもの」
「ルパン……ってのは初めて聞いたがヤバいんだな。なら俺と一緒に組めば奴らも殺せるかもしれねえぜ」
「あんたじゃいても足手まといにしかならないわよ。無理だわ。少なくとも動いている私を撃ち殺せないようじゃ話にならない」
「へえ……じゃあてめえを今からぶっ殺してやれば仲間になってるってことか?」

 ガルファは女の舐めきった挑発に怒りがこみ上げる。
 これ以上、話をしても無駄と決めた。
 殺すため、カウンターに足を進める。
 その足音を聞くと、不二子は言葉を続けた。

「私を殺すのね。じゃあ殺したがり屋のあなたに忠告。その拳銃の装弾数は六発」

 ガルファは足を止める。

「さっき私を追って何発も撃ったでしょ? 今、まだ弾は残っているのかしら」

 彼は拳銃を見る。確かめる方法など、実際、弾丸が残っているか抜くしかない。
 先ほど弾を装填した時もスピードローダーという便利な道具はあったが、それを考えても面倒である。
 ましてや初めて拳銃を使うのだ。そんな暇があるだろうか。
 ガルファからしてみれば、不二子が本当に武器を持ってないかなど根拠がない。確かなものではないのだ。

「なら」

 簡単なことだ。
 彼は拳銃を素早くディバックに戻し、そして手慣れた様子で義手を扱い、すぐさま右手に剣を持ちかえた。
 ガルファも正直なところ、銃を何発撃ったかなど覚えてない。
 だから確実に殺せるのは使い慣れた剣になる。
 彼はカウンターを乗り越える。そして剣を女がいるであろう方向に構えた。
 どうせ相手は逃げられないし、先に殺せるのは自分だ。

 だが、女はいなかった。

「なっ」

 ガルファはカウンター奥の床に着地する。
 間違いない。声の方向ではそこに女がいたのだ。
 戸棚をあけても、隠れているわけではないのがわかる。
 完全に消えたのだ。

「ありえねえ」

 ありえない。
 そんなことはガルファにとってみればありえないことだった。
 女は確実にそこにいるはずだったのだ。
 戦場にいた経験は鈍っていない。
 自分が間違えたとは思えない。
 そのような思念が錯綜する中、ガルファにある一つの結論が出る。

「そうか」

 彼は呟く。そしてこう思ったのだ。
 奴の正体は魔女だ。
 魔女ならば俺に幻影を見せたり、あるいはどこかへ瞬間移動したりできるのではないのか。
 だから自分の目の前にはいないのではないのか。
 あの女の余裕はそれからきていたのだ。
 自分が絶対的に、武器を持っている者より強いと思っているからこそのものなのだ。
 あの意味不明な用語もおそらく魔女の使う何かなのだろう。
 ガルファがそう洞察するたび、憎しみがこみ上げる。

(魔女は……ここでも……どこでも俺を邪魔しやがる)

 怒りは戸棚にある瓶詰めされた何かに向かう。
 その鍛えられた剣筋は、それでいて大雑把に、戸棚のものを切り裂いた。
 色々に割れる瓶もまた、ガルファの頃には見かけないものだった。
 それが苛立たせる。よくわからないものが自分を追い詰める。

「許せねえ……。ぶっ殺してやる」

 殺意は継続する。


 ガルファは場所を確認する。看板を見る限り、自分がさっきまでいた店は「ラビットハウス」というらしい。
 方位磁石を使う限り、どうも自分はB-4の右上あたりにいるらしい。
 ここはどうも「サンタマリノ風の都市」らしい。
 そのような土地名はどこかで聞いたことがあるようなないような、風の噂レベルだ。
 少なくともこんな都市ということはわからない。

(気味が悪い)

 ガルファにとっては初めてのわけのわからないものがあるだけだ。
 まるで魔女のようだ。気味が悪い。
 そのように、彼は土地にさえ、強い嫌悪感をおぼえた。

(なんであの魔女が俺を殺さないかわからないが、おそらくロクな女じゃない事は確かだ。そしてあいつも魔女ならマリアを知ってるはずだ。何せ、あいつは変わり種だからな)

 地図を見る。ちょうど真上には忌々しい魔女の自宅がある。

(あいつもマリアに俺がどういう行動しているかを伝えるはずだ。俺が危険人物扱いされると困ることも知ってるはず。もしかしたら他の参加者にも知らせるかもしれねえ)

 それはガルファにとってとても困る事だ。

(だが、それは仕方ねえ。あいつは魔女だ。今の俺にどうこうできる問題じゃねえ。だから大切なのは奴らの攻撃力を抑えることだ)

 彼は歩きはじめる。

(マリアの家にはおそらく魔術に使う……まあ何かがあるんだろうよ。おそらくあの異民族の魔女がいるってことは他に魔女もいるはずだ。そいつらに対抗するには、武器庫にも等しいあの家を破壊することだ)

 つまりガルファはマリアの家を、焼き払う気なのである。

(それに、こんな意味のわからねえものが大量にある街なんざ、いたら精神がまいっちまうぜ。少なくとも、ここでうだうだしている暇はねえ。あの魔女の家を焼き切ってやる)

 それは彼の中で一種の復讐でもあった。
 彼も実のところ、このどう考えてもフランスではない土地で、あるはずのないマリアの家があるのか不可解である。
 だが、ここにマリアがいるし、それに胸の中の鬱憤を解消するための行動であるので、家を焼くことも彼の中で「復讐」の内に入っているのだ。
 彼自身もそれを薄々気づいている。
 だがそれでいいのである。
 イライラしている状態で、あのような魔女を殺せるとは思えない。
 冷静に、確実に、あの魔女たちは殺さねばならないのだ。
 彼は道を歩く。確実な復讐のため。



「ハァ~……疲れたわね~」

 不二子は溜息と言葉を呟く。
 撒けたことを確認すると、彼女はベッドに横たわった。
 おそらく読者の皆様はわかるだろうが、彼女は次元方陣シャンバラを使って、ガルファから逃げたのである。
 具体的にいえば窓の外に予めマークしていて、そこから別の家へ逃げたのである。
 泥棒で鍛えた真夜中に身を隠すスキルは、ラビットハウスから出て、遠くへと足を進める彼の様子を確かめるのに、大きな役にたった。
 どうしてかは知らないが、この店内にはまるで興味がないようだった。
 不二子は包丁を持って呟く。この店内を色々と物色し、見つけたものだ。一応の武器にはなるだろう。

(それにしても、この『シャンバラ』ってのは思った以上に体を酷使するわね)

 体力には自信があったが、やはりこの道具はかなり体力を消耗するものだと彼女は気付く。
 近くに住居があってよかったが、だだっ広い場所ではロクに動けず、かえって的になるだろう。
 便利だが、あまり多用できないものだと思った。別の移動手段も彼女は望むところである。
 もしくは重火器。疲れていても飛び道具なら反撃に困らないところもある。
 だが、現在いる、この「サンタマリノ風の都市」ではそんなものは期待できない。
 期待できるとすれば……。

(自衛隊駐屯地、ね。一国の防衛組織なんだから可能性はあるわ。その近くにある『門』ってのが不可解だけど……)

 不可解なことはまだある。

(あの男、おそらく『昔の時代』から来た人間ね)

 彼女がガルファに対して予想していることだ。
 先ほどの自分の支給品が「ラジオ」と嘘をついたのも、それを確かめるためである。
 現に、彼はラジオに対して全く存在を知らなさそうな回答をした。答えを考えるのはたやすいものだ。
 なぜそう思ったかには経験がある。
 この殺し合いの参加者「レオナルド・ダ・ヴィンチ」だ。
 彼は実際、600年も昔にいた人間である。そして彼自身でもある。
 ただ、正確にいえば、その「人格」が現代に蘇ったわけであり、タイムスリップをしたというわけがない。
 もっといえば「ダ・ヴィンチ本体」というわけではない。
 細かい説明を省けば、彼はクローン人間の身体にダ・ヴィンチといった「過去の偉人たちの人格」を入れた存在なのだ。
 ガルファの妙に昔風の出で立ちから、もしかすると、と不二子は考えていたのだ。
 ついでに少しは体力を回復させる時間稼ぎにもなったし、十分である。

(だけどダ・ヴィンチのクローンを何体も生み出すなんてそうとうな手間じゃないのかしら。『最高のエージェント』を生み出そうとしたMI-6はそんな金銭的に余裕があるわけ? ……それはありそうね)

 それに、あの男が単なる狂人で、自分が百年戦争を生きていた兵士と錯覚しているかもしれない。
 ただ、クローンにしろ、狂人にしろ、はたまた「タイムスリップ」したものにしろ、それは仮説にしかすぎないのだ。

(けれど、こんなわけのわかんない状況下じゃ『情報』は持つにこしたことはないけどね)

 そう思いながら彼女は服を脱ぐ。豊満なその乳房や、麗しい肉体が露わになった。
 別に彼女が痴女というわけではない。ここは脱衣所だ。
 そう、彼女はこの場でも風呂に入ろうとしているのだ。
 先ほどの戦闘の流れから体も汗でいっぱいである。洗いたい気持ちはわかる。
 もちろん、護身用に包丁は用意しているし、敵に発覚されないよう電気もつけていない。

(大体、この店に敵が侵入してきたら、寝ててもわかるけどね)

 それはもはや不二子という幾多の修羅場をまるでショッピングに行くような感覚でこなす、その野性動物並みの感覚でできる話だった。
 もっとも、相手が侵入のプロだったら、それは確かではない。
 そのために不二子は店じゅうに逃走用のマーキングしている。
 シャンバラでいざというとき、脱出できるのだ。
 更衣室や自分の寝ている部屋に鍵をかければ、それをこじ開けようとする敵に気付かない程、彼女も鈍ってない。

(それに今は夜中の12時よ。寝たいところだわ)

 彼女にとってこれは修羅場ではあるが、修羅場というのは日常のようなものだった。
 何か外に出る必要があるなら出るが、今は体は疲れているし、別段出る用もない。
 どうせルパンらもどっかで生きているだろう、と不二子は思いながらシャワーを浴びる。
 そのきめ細かい肌から染みだす汗を、水がしたたり流していく。

(自衛隊のところには行きたいところだけど、他の参加者だって『外れ』の支給品だったら、そこに向かうはずだわ。それを狙ってくる殺し合いに乗ってる……まあ言うなら『マーダー』だっているはずだしね。そんな状況を、今の身体で行ったところで対した収穫はないわ)

 おそらく一時間も仮眠すれば、自分の体力は全開だろうと不二子は思う。
 夜はなんだかんだで自分が活動する上で最も優れている時だ。
 その状態ならおそらく自衛隊駐屯地で成果を得やすいと踏んだのである。
 重火器やら、場合によっては仲間も手に入れば、あとは寝るだけだ。
 安全を確保できたなら、殺し合いという異常な状況下、体力というのは大切な要素になる。
 睡眠は体力を温存するのに必要なものだ。だから寝るのだ。

(それに、こんな意味不明なゲームで必死になるってのも、なんか癪だしね)

 そう思いながら彼女は体を拭く。
 そしていつのものように、下着を着るのだ。

 悪女は殺し合いの場でも「いつも通り」行動していた。


【一日目・午前0時頃/B-4・ラビットハウス(浴室)】

【峰不二子@ルパン三世】
【状態】健康 疲労(大) 風呂上り 下着姿
【装備】次元方陣シャンバラ@アカメが斬る! 包丁@現地調達
【道具】通常支給品
【思考】基本:生存したいので、脱出するしかない。
1:寝て体力を回復したい。
2:自衛隊駐屯地に言って武器や仲間など、何か得たい。
3:どっかでルパン達と合流したい。
※最終回後からの参加です。
※ガルファを「過去の人物」と関わりがあるものと予想しています。


【次元方陣シャンバラ@アカメが斬る!】
シュラの持っていた帝具。マーキングしたところに瞬間移動できる。
とても便利だけど身体能力がめっちゃあるシュラでも多用は体力を使う。
ところでこれって、一体何を模してるんですかね。

【包丁@現地調達】
ラビットハウスの台所から調達。普通の包丁。


【一日目・午前0時頃/B-4・サンタマリノ風の都市(街道)】

【ガルファ@純潔のマリア】
【状態】健康 イライラ
【装備】S&W M19(1/6)@ルパン三世 ピニャの剣@GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり ガルファの義手(飛び道具1/1)@純潔のマリア
【道具】バックラー@純潔のマリア 「えくそだすっ!9話」のカット袋@SHIROBAKO S&W M19のスピードローダー×3@ルパン三世 通常支給品
【思考】基本:殺し合いに乗って生き残る。
1:マリアを殺したい。
2:魔女を殺すには武器が足りないので集める。
3:マリアの家を燃やす。
4:可能なら徒党を組んで数を減らしたい。
5:魔女に対する強い嫌悪感。
※11話でジョセフにボコボコにされて気を失った直後の参加です。
※峰不二子を魔女と思っています。
※現代的なものの扱いは「ある程度」は理解しました。


【S&W M19@ルパン三世】
次元の愛銃。六発装弾。回転式拳銃。
マグナム弾が撃てるパワーの強さと、携帯しやすさがいいらしい。
警察とかも使ったりしているらしいですね。

【ピニャの剣@GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり】
ピニャが持っていた両刃剣。
劇中でそんなに使ってたイメージはないけど、フィギュアではあったので。

【ガルファの義手@純潔のマリア】
支給品というより備えているもの。鉄製の義手。
もう片方の手で操作する必要はあるが、剣も持てるし、指の部分から刃が出るし、よくわからない飛び道具も撃てる。

【バックラー@純潔のマリア】
小型の盾。劇中でもよく使われていた。
防御は勿論、相手をパンチしたりと攻撃にもなる。

【「えくそだすっ!9話」のカット袋@SHIROBAKO】
武蔵野アニメーションが製作しているアニメの原画とかが色々入ったファイル。
制作進攻は宮森がやっていた。

【S&W M19のスピードローダー@ルパン三世】
リボルバーでもわりと早く装弾できる代物。なんか丸いやつですね。

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最終更新:2016年03月29日 01:24
ツールボックス

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