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魔法少女キャスター☆メディア参・上!

ファンシーなキャラクターが所狭しと並んでいる、ファンシーゾーンと呼ばれるエリアの一角で、一人の女性が佇んでいた。
流れる紫の長髪に、尖ったエルフ耳、そしてローブに身を包んだ女性の名はキャスター。

「また殺し合いに呼ばれるなんて、ねぇ……」

憂鬱な表情を浮かべるキャスター、その脳裏には聖杯戦争での自分の最後の映像が浮かぶ。
無数の剣から、マスターであり、心から慕っていた夫、葛木宗一郎を庇い倒れ伏す自分。
そこで彼女の聖杯戦争は終わりを告げたと思えば、似たような殺し合いに召還された。

「まあ、殺し合いに乗ること自体は構わないのだけど……」

そうボヤきながら彼女はおもむろに、手頃な距離にあった銅像――腹部にGMと書かれたド○ンパの亜種の様な形状――へと手を翳す。
次の瞬間、彼女の手から魔力が迸り、魔力のレーザーがその頭部を破壊した。
頭部が消失した銅像を尻目にキャスターは形のいい眉根を寄せ、溜め息を一つ吐いた。

「燃費が悪くなってるわね。まあ、英霊のワンサイドゲームになるのはあの自称大公の望むところでは無いって事なんでしょう」

通常よりも明らかに魔力を多く消費した事に、キャスターの表情は自然と苦い物になる。
サーヴァントの中でもこのキャスターは接近戦は不得手である。
元来彼女の戦闘方法は、竜牙兵と呼ばれる骸骨を用いた人海戦術と様々な魔術。どちらにしろ魔力を消費するこの戦法が、現状取りづらくなってしまったのだ。
試しにキャスターは竜牙兵を召還できるかどうかを試みてみる。が、魔力の消費も無ければ竜牙兵の出る気配もない。
次に自らの宝具「破棄すべき全ての符」(ルールブレイカー)を出そうと試みたがそちらも何の反応もない。

「そしてこの2つにはプロテクト。ガチガチに固められたこの状態が他のサーヴァントにも適用されていたら、魔術師の坊やや、柊蓮司と呼ばれた坊やにも勝機は出てくるでしょうね」

キャスターはあの場で見つけた衛宮士郎・ライダー・バーサーカーの三名を思い浮かべる。
竜牙兵とルールブレイカーが使用不能であり、残された戦闘手段はアウトレンジからの魔法攻撃のみ。その魔法攻撃でさえ消耗が激しいときた。
本人が言う通りこの様な制限が他二名のサーヴァントにも適用されているとすれば、人間であっても彼女達の打倒はできるかもしれない。

「ただ、藤村大河やさっきの交渉人みたいな一般人では厳しい話ではあるわね」

あの説明の場で周囲を観察していたキャスターは、自分達のような規格外の存在を多数感じとっていた。そして、それと同じくらいにただの人間としか思えない存在も感じとっていたいたのだ。

「……何故主催者はわざわざ制限をつけてまで私達と彼らを同じ殺し合いの場に呼びよせたのかしら」

規格外同士で殺し合わせてもいい。一般人同士で殺し合わせてもいい。寧ろその方が制限という物を付けなくていい分負担が少ない筈だ。
では何故、制限という手間をかけてまでこのような殺し合いを開いたのか。

単純な話では終わりそうにない事をキャスターは感じた。

「なんにしろ情報が少ないわね。とりあえずこの状況で殺し合いに乗るのは下策。最終的な乗る乗らないの判断は当分様子見ね。」

元々キャスターは暗躍を得意としており、力を温存してここぞという時に一気に使うタイプである。故に安易に乗るという選択肢は早々に無くなった。

「そして一番の問題はこの枷ね。サァーヴァントと呼ばれこそすれ、ここまで奴隷扱いされるのは流石に腹が立つわ」

聖杯戦争では自分の意志で殺し合いに参加した。そこには他者の意志の介在は無い。
だが今回は違う。目的こそ不明だが他者の意志により自分は殺し合いに強制参加させられた。おまけに色々な制限を付与された上に枷までつけられて。
キャスターはそこまでされて他人の掌の上で踊るつもりは毛頭ない。
彼女は今の自分にとって枷となっている首輪を指でなぞる。
無機質で冷たい金属の触感を持つそれを、少しでも解析できないかと魔力を使いアプローチしてみる。

「駄目ね、魔力的なプロテクトも搭載されてるみたい。……だけど、どうも私達のとは系統が違うようね。
これはあの主催者と顔見知りのようだった坊や達と接触するか、誰かから首輪を手に入れる必要ができたわ。まあ、後者はできるなら死体から回収するのが望ましいのだけれど」

柊蓮司と彼が主催者に殴りかかるのを止めようとした巫女服の少女、主催者を知っていたあの二人なら何らかの情報を持っているだろう。
そして何より大事なのは首輪の解析。この首輪が外せなければ、主催者と同じ土俵にあがるのは不可能になる。

「情報を集められるだけ集めてそれでも駄目だった時、殺し合いに乗るのはそれからでも遅くないわ。その場合は真っ向勝負ができない以上、隠れ蓑を準備しなくちゃ」

彼女のいう隠れ蓑とは言い換えれば殺し合いに乗っていない集団。
面識のある衛宮士郎と夫の同僚である藤村大河や、ベール=ゼファーに食ってかかったネゴシエーターと柊蓮司と彼を止めようとしていた巫女服の少女。乗りそうには見えない人間があの場に存在していた。
うまくその中に入り込み、信頼を勝ち取れば。乗った後も疑われにくくなるし、暗躍もしやすい。いざとなれば盾にする事もできる。

「それにしても願い事、ね……。あれが本気で叶えるのか疑わしくはあるのだけれど――」

――けれど、もし叶うのだとしたら、自分は何を願うだろうか。
聖杯戦争が始まった直後は、故郷に帰る事が願いだった。
だが、葛木宗一郎と出会ってからは違う願いが出来た。
葛木宗一郎と送る生活、それが彼女の幸せへとなっていった。

――だって、私の望みはもう叶っているんですもの――

いまわの際に彼女が告げた言葉は本心である。
また、彼と一緒に暮らせるのなら……。そんな甘美な誘惑がキャスターの脳裏を過ぎり、彼女は頭を振った。

「……今はそんな事を考えても仕方ないわね」

何も情報のない現状、聖杯と違い主催者が必ず願いを叶える保証もない。
キャスターは溜め息をつきながら魔法瓶のお茶を口にした。

「……お茶?」

キャスターは疑問に思う、お茶の入った魔法瓶なんてどこにあったのか。そして彼女は膝の上の口が開いている自分のデイパックを見た。

考え事をしている最中や動揺している時に、咄嗟に何か作業をし始め通常ではありえない失敗をしたり、『自分は今何をしたかったんだ?』と疑問に思った経験があるだろう。今のキャスターに起こった事もそれである。
もし、葛木宗一郎との生活を送る事ができたら。そう考えてしまったキャスターは気を紛らわせようと無意識の内にデイパックを漁って支給品の魔法瓶を取り出していたのだ。
無意識の内に取り出した魔法瓶に付属していた説明書が、ようやくキャスターの目に入る。説明書にはこう書かれていた。

『下がるお茶。飲んだ人の何かが下がります。戻すには上がるお茶が必要です』

何かってなに? ってゆうかどうゆう原理よ。青くなった顔でそんなツッコミを心の中で行っていたキャスターの体を何かが蝕みはじめた。

(魔力じゃない!? まずい、侵食され――)
「あ――!」

得体のしれない力によって自ら体が変質していくのを感じた、次の瞬間。彼女の肉体は彼女の少女時代へと『下がって』いた。
突然の、それも予想外の出来事にキャスターの思考が完全に停止する。

「な……」

ようやく思考が再開し、耳まで赤く染まったキャスターの体がわなわなと震えている。おまけにちょっぴり涙目だ。
クシャッと下がるお茶の説明書を手に取り怒りを込めて握りつぶす。

「なによそれぇーっ!!!」

殺し合いの場にいる事も忘れ、キャスターは力の限り叫んだ。

数分後、落ち着いたキャスターは、『イコ=スーの跳ねる家』と書かれた、うさ耳少女の姿が描かれているトランポリンハウスの中に潜んでいた。
勢いで叫んでしまったが、自分のしでかした事の危険性に気付き、背が縮み、多少だぼだぼの服のせいで何度か転びそうになりながらも慌ててこの場所に避難したのだ。

「不覚だわ……、開始早々こんな事」

床に手をつき深く頭を垂らしてキャスターはうなだれている。
予想の斜め上を天元突破で貫いたような残念で迂闊な失態を犯し、自己嫌悪のスパイラルに陥りそうな自分を、彼女は何とか思いとどまらせる。

「で、でも、子供の姿なら油断させられるかも知れないわね。この下がるお茶だって相手に飲ませる手があるわ。それに上がるお茶っていうのがあれば戻れるし。大丈夫、大丈夫よ私、この程度で挫けてなる物ですか!」

必死にこの状態でのメリットを見つけまだ大丈夫と自分にいい聞かせるキャスター。その姿は端から見た場合同情を禁じ得ない。

「そ、そうだ!他の支給品が無いか確認しないと……」

逃避じみた格好で思考を切り替え、キャスターは支給品を漁り始めた。

入っていたのは『夢使いの衣装(女性用)』と説明書に書かれた、へそが見える形状の服にマント・ミニスカートが合わさった、『夢使い』と呼ばれる職業の制服らしい、奇抜な服。
そしてもう一つは持ち主の魔術を補助する『ホワイトロッド』という杖。夢使いの衣装はともかくホワイトロッドは彼女にとって当たり支給品に分類されるだろう。

「代えの服があったのは僥倖だけれどこれは……」

夢使いの衣装を見ながら彼女は複雑な顔になる。
現在、彼女は年齢が下がり背も縮んだ事で、今来ているローブがだぼだぼになり、些か動きづらい。
それを差し置いてもローブという服装は一人で行動し、いつ襲われるかもわからないこの状況ではあまりお勧めできる服装ではない。
その点ローブよりかは動きやすそうなこの夢使いの衣装は幾分マシである。マシではあるのだが問題はその奇抜なデザインだ。
常識的な観点から見ればこのような服を平然と来ている人間がいれば、それは間違いなく『変態』か『異常者』のレッテルを貼られるだろうその服装。

「……まあ、背に腹は代えられないわよね」

どんなに恥ずかしい格好でも、少しでも生存率を上げるために。
たっぷりと悩み抜いた末、キャスターは着替える事を決意した。

「あの主催者、初めからこうなることを見越してたんじゃないでしょうね……」

夢使いの衣装に着替えたキャスターが心底不機嫌な表情で呟く。
へそ出しルックに加えバストやヒップのラインがくっきりと浮き出、どこかエロチックな雰囲気を漂わせるキャスター。ちなみにブラジャーのサイズも合わなかったのでノーブラだ。
しかしこの衣装、ヤケにキャスターにピッタリフィットなサイズである。現在キャスターは下がるお茶の効果で大体14、5歳くらいにまで若返っている。
キャスターの見た限りではこの年齢に該当しそうな女性はあの場にはそこまでいなかったように見えた。
であるのに、この衣装はこのサイズで支給されたのである。まるでキャスターがこうなる事を予測していたようにも見える。
仮にそうだとすれば敵の中にこの状況を予測または預言できる者がいる事になる。

「やめましょう。単なる主催者の嫌がらせの可能性もあるし」

浮かんだ仮定をキャスターは振り払うようにかき消していく。今はまだ情報が足りないのだ、あれこれ悩んでも仕方がない。
考える事は後でもできる。そう思い直し、キャスターは地図を広げた。

「A-8、端も端、末端じゃない。流石にこんな所に人は来ないだろうし、人の集まりそうな場所は……」

キャスターの目にG-8地点の救急医療センターが目に留まる。ここならば怪我人を連れた乗っていない人間がいるかもしれない。
もっともそこに乗った参加者が来る可能性もあるのだが、その可能性はどこも同じである以上、多少のリスクには目を瞑る。

「さて、それじゃあいきましょうか」

デイパックを担ぎ、彼女は行動を開始する。
奇抜な衣装に身を包みホワイトロッドを片手に持った彼女の姿。
その姿、まるで魔法少女。


【一日目/深夜/A-8 ファンシーゾーン イコ=スーの跳ねる家】

【キャスター@fate/staynight】
[状態]若返り(14、5歳)、健康
[装備]夢使いの衣装@ナイトウィザード THE ANIMATION、ホワイトロッド@ナイトウィザード THE ANIMATION
[道具]支給品一式、下がるお茶@ナイトウィザード THE ANIMATION
[思考・状況]基本思考:当面殺し合いには乗らないが、主催打倒が不利と感じたら殺し合いに乗る。
1:主催者及び首輪の情報を集める、柊蓮司及びその知り合いとの接触。
2:上がるお茶を探す。
3:G-8の緊急医療センターに向かう。
4:殺し合いに乗っていない参加者と接触。

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最終更新:2009年04月18日 20:20
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