アットウィキロゴ

ですろり。

強いこと、それは素晴らしいことだと思う。
でもね、それだけじゃ生き残れないんだ。
強くても、弱くてもどちらだっていい。
大切なことは―――何かを『曲げる』覚悟ができるかどうか、だよ。


「……落ち着いた?」
「う、うん……ありがとう……一ちゃん……」
噴水のある、やや大きめの公園。
そこに、2人の幼い少女の人影があった。
揃って顔色が悪い様子だったが、特に一人の顔色はひどく青い。
「……本当に大丈夫?」
「……あ、うん……ごめんね……あたし……迷惑かけて……」

一人は、黒髪。
頬の星型マークが目を引く、露出度の高い夏服を纏った小柄な少女。
一人は、金髪。
短めの金髪に白いリボンが可愛らしい、活動的な印象の短パンの少女。
黒髪の少女の名前は、国広一。
金髪の少女の名前は、鏡音リン。
この殺し合いで目覚め、すぐに出会った2人は、今ベンチに腰掛け、2人で会話を交わしている。
リンは初め、茫然とした様子で、喋る元気すらなかったのだが、相手を年下のか弱い少女だと判断した一が優しくなだめ、なんとか落ち着かせるに至ったのだ。
……もっとも、リンは一を年上だと思っていないが。

「仕方ないよ、だってあの人―――リンちゃんのお兄さんだったんでしょ?」
「…………カイト兄……」
一がその名前を出すと、再び表情を暗くして俯くリン。
一が彼女から聞いたことはまだそれほどない。そのうちの1つが―――あの時殺されたのが、自分の兄であること、そして主催者の男が彼女の『主人』だということだった。
初めは彼女も主催の仲間ではないかと疑った、が、ショックを受けていた彼女の表情を見ると、とてもそうは思えなかった。
「……マスター、普段はあんな人じゃないもん!もっと優しくて、カイト兄にあんなひどいこと言ったりしない!きっと誰かに命令されて仕方なくやってるのよ!あたしは、あたしはマスターを信じてる!あたしだけはマスターの味方だもん!」

親しい人が死んでしまった、可哀想な年下の無力な女の子。
一は、リンをそう認識していた。
何を言えばいいのか、分からなかった。
もしあの場で死んだのがリンの兄ではなく、たとえば透華だったら、―――と思うと、彼女の狼狽ぶりも納得できる。自分なら、ショックでその場で自殺してしまうかもしれない。
ああ、この子は、強い。そう思った。

「だから、一ちゃんも、マスターのこと悪く思わないでね……き、きっと皆マスターのこと悪く言うと思うけど、でも、でも本当に普段のマスターはカイト兄にあんなことしたりする人じゃない!」
そして、自分の信じていた主人に半ば裏切られたと言うのに、リンは彼をかばおうとする。
彼女と男の間には、よっぽどの信頼があったのだろう。

でも、―――あの顔は、あの男の顔は、操られている人間の顔じゃ、なかった。
一もその手のことに詳しいわけではない。ただ、……麻雀を極めている人間として、リンよりは駆け引き慣れしていた、というだけである。
あの男の顔には、自らの意思しか感じられなかった。従わされているとすれば、それこそ【魔法】だ。信じられないが、それくらいしかあるまい。
リンには悪いが、一はリンの意見に賛同できない。
それでも面と向かって否定などできるはずもない。彼女は自分より年下であるからだ。
「……お、落ち着いて、水でも飲もう、ね?」
できたのは、せいぜい話をそらすことくらい。
一は、リンに支給品である水の入ったペットボトルを差し出した。
「……うん……」
リンが一のペットボトルに口をつけた。
精神的に参っていて喉が渇いていたのか、それを全部飲み干す。
「………………あ、あのさ……一ちゃん、」
そして、ぎゅっと空になったペットボトルを握りしめたまま、ぽつりと一に向かってゆっくりと口を開いた。
その唇は、はっきりと震えていたけれど、しかし確かな強さを感じた。

「なに?」
「……よければ、あたしの家族を探すの、手伝ってくれないかな……」
まだ幼く、保護を求めてもおかしくない彼女が口にしたのは、知り合いの捜索。
「レンとか他の人は分からないけれど……ここにはミク姉がいるのは間違いないの」
曰く、あの見せしめに殺された青年を見たときに、その視線の先に自分の知り合いの姿が見えたのだと言う。
特徴的な髪の色、髪型。多分間違いなくミク姉だと思う、とリンはうつむいた。
嬉しいはずもないだろう。カイトという青年のみならず、別の姉妹までこの場にいたとなれば―――また一人、家族を失うかもしれないと思えば。
「ミク姉、ボケボケだから……あたしがしっかりしないとやばいと思うんだ……」
年下の少女が、決意を語る。
それはまだ迷っている一にとっては、眩しく思えた。
同時に、年上なのに未だに臆病な感情を抱いている自分が恥ずかしくなる。

ああ、そうだね。

―――ボクも、もうさすがに覚悟決めなきゃ、ね。
一は、リンの言葉を聞いてそう心に決めた。

「……だからお願い!一ちゃん、あたしと一緒に、」
―――それは、リンの強い願いだった。
心からの、叫びだった。
仲間を思い、マスターを思う、心優しく気丈な言葉。
だから彼女は、声を荒げた。勢いある口調で、一に頼み込む。
だから、信じられなかった。
少なくとも―――鏡音リン本人は。


「……ミクっ、……ね…………あれ、」

……まさか、その口から、赤い何かが吐きだされたという事実に。
「……げほっ、げほげほごほっ!な、なにげえっ……ぐ……」
ごぽり、と、リンの口からせりあがるそれは、赤い血で。
呼吸もままならず、リンは普段は歌を紡ぐその口から吐血を繰り返す。
何でこんなことに、という言葉は、紡げない。

やがてぐたり、とリンの幼い体は地に倒れ伏す。
白いリボンが、自らの鮮血によって赤く染まって行く。

それを一は―――黙って見ていた。
指先が震える。喉に熱いものがこみ上げてくる、それでも―――彼女は、リンが息絶えるその瞬間まで、じっとリンを見つめ続けた。
それが、一の覚悟。

彼女を、殺してしまう自分に対する―――誓い。

「……は、じ…………ちゃ……」
やがて、彼女は一に対して泣き出しそうな表情を向け、もう一度喉から赤黒い物体を吐きだし、そのまま―――動かなくなった。
「……ごめんね」
……しばらくその場に座り込んでいた一は、やがてゆっくりと立ち上がり、リンの荷物を抱えて、

「ボクも、しっかりしなきゃだめなんだよ」
そして。

うっすらと頬を涙に濡らしたまま―――国広一はその場から、立ち去った。

【鏡音リン@VOCALOID 死亡】



初めは、迷っていた。
こんなことやっていいなんて思わなかったし、ボクはこれ以上悪事を働きたくなかった。
だからできれば、人殺しなんてしたくないし、そんな簡単にできるはずない、って思ってた。
でも―――
『あたしだけは、マスターの味方だもん!』
ああ、そうか、と思った。
その瞬間、何かが分かった気がしたんだ。
彼女は、彼女の『主人』の一番の理解者であろうとした。
彼女のマスターが悪人としか思えなくても、それでも彼女は今まで信じた『主人』を信じ続けていたかったんだ。
それなら、ボクも同じだ。
ボクの『主人』は、透華だ。
ボクは、透華を一番理解しないといけない。ボクだけは何があっても、透華を信じなければいけない。
たとえ、透華がボクより衣を気にかけているとしても、それが『メイド』であるボクの使命だ。
もし、ボクがここで死んでしまったら……?
もうボクは透華を理解できなくなってしまう。ううんそれ以前に―――

もう透華に会えなくなるだなんて、絶対に嫌だ!
そうだ、細かいことなんてどうでもいいんだ、ボクのバカ。
ただボクが、純粋に―――透華にまた会いたいだけなんだ。

だから、水に毒を仕込んだ。ボクの支給品だ。
抵抗されるかと思ったけど、全く疑わずに飲んでくれてよかった。……だからこそ、余計に心が痛むんだけど。
どれくらいの量入れればいいのか分からなくて、全部入れちゃったからもう何もないけど……リンちゃんの袋になら何か入っているかな?
そういえば、彼女からは何が配られたか聞いていなかったっけ。
武器はあるにこしたことはないからね。いくらなんでも、イカサマだけで殺し合いに勝ち残れるとは思えないし……。

そう、だから、決めたんだ。
もうボクは迷わないって。
透華に会うためなら、ボクは手でも染めて生き延びてやる。
それを透華は望まないだろうけど、それでも。
ボクはやる。やってやるんだ!
これで、僕が次の放送まで死ぬことはないはず……でも、休んではいられない。
一刻も早く、透華のところに帰るんだ。

もう、真っすぐなボクではいれないけれど。
でも、少なくとも透華に対するこの気持ちだけは、―――真っすぐでありたいんだ。
だから、透華、待ってて。
ボクは絶対、君のもとに帰ってみせるから―――

だから、君を―――

【国広一@咲-Saki-】
【状態】健康、強い後悔と決意
【所持品】青酸カリ@現実(残り0)、ディパック×2(リン、一)
【スタンス】マーダー(奉仕?)
【基本方針】生きて帰って透華に会いたい(透華がここにいるかもしれないとは考えていない)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年03月23日 00:48
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。