「……レナ!魅音!沙都子!梨花ちゃん!詩音!……誰かいないか!?俺は前原圭一だ!誰か返事してくれ!」
草原を駆けまわる少年が、いた。
殺し合いの場で、大声で叫んで走り回るなんて自殺行為だ。彼もそのことは理解している。理解していても―――それでも、行動せずにはいられなかった。
自分のプライドが許さない。
自分の中の---正義感が許せない。
「俺は、殺し合いになんて、乗らない!首輪なんかに屈してたまるかよ!」
熱い少年の名前は、前原圭一。
雛見沢村で、奇跡を起こした少年だ。
何故、彼がここまで慌てているのか?
それは、少し前、―――圭一が気絶から目覚める前にさかのぼる。
あの、青い髪の男の頭が吹っ飛んだ豪勢な部屋。
圭一が目覚めてすぐ、あの男が言った『殺し合い』の言葉。
初めは夢でも見ているのだと思っていた。寝ぼけていたのだ。
しかし、あの男が知らない青年の首を飛ばしたことで、完全に目が覚めた。
首輪を爆発させたのだ。
しかも―――あの青髪の青年と男は知り合いだったように見えた。自分の知り合いを殺すなんて―――しばらくはショックで茫然としていた圭一だったが、
その後の主催者の『魔法』を見ながら、ふつふつと怒りを煮え滾らせていた。
―――ふざけるな。
―――自分の知り合いを殺した挙句。『魔法』なんてものの実験台にするなんて、どういう神経してやがる!
今すぐにでも殴りに行こうと思ったが、しかし自分も殺されるのではないか、そう思うと恐怖で動けなかった。そんな自分に苛立っていた。
歯噛みしながら、視線をわずかにそらしたその時。
(……あれは、魅音……?)
そこで、圭一は、魅音によく似た人物を見ていた気がしたのだ。
はっきりとそうか、と言われれば確信はない。しかし、別人だと完全に割り切れない程度には似ていた。
少なくとも圭一はあれを、魅音だと思った。
もしあれが魅音だったら―――魅音もこの殺し合いに巻き込まれている。
いや、自分がいて魅音もいるのなら、他のメンバーだってこの殺し合いにいる可能性は十分にある。
そう思うと、圭一は更に憤りを隠せず―――ここに連れてこられてすぐ、動かずにはいられなかった。
理性では危険だと分かっていても、止まってなどいられるはずもない。
それに、先ほどの部屋で何もできなかった無力感も同時にあったのだろう。
もし、自分が動かず、彼女たちも同じように首を爆発されたら―――
そう考えると、恐ろしかった。
だから、圭一は叫ぶ。
圭一は走る。
仲間を探すために―――
会えるかどうかのあてはない。
危険だと言う自覚はある。
それでも、前原圭一は、止まれなかった。
※
そして、彼は、一人の少女と出会った。
これは、彼が仲間を探そうとしなければ起こらなかった出来事であろう。
しかし、残念ながら彼女は圭一の言葉に応えたわけではなかった。
彼女は―――花畑の上にあおむけに倒れていたのだ。
※
それに圭一はすぐに気付いた。
「……君、大丈夫か!?」
このまま、彼女を放っておいてはいけない。
その使命感からか、圭一は、すぐさまその少女に駈けよった。
緑色の大きめなツインテール。
どこかのアイドルだと言われても差し支えのない特徴的な衣装と、愛らしい顔立ち。
圭一は知る由もないが、彼女の名前は初音ミクという、ボーカロイド―――電子の歌姫である。
まさか、もう殺されているのでは―――という最悪な想像が頭をよぎる。
慌てて脈をとる。……大丈夫、生きている。それだけでまずよかった。
怪我もないので、おそらくまだここに来てから目覚めていないだけだろう。
ほっと安堵の息を漏らす―――が、しかしこんなところで気絶したままでは殺し合いにのった人間に殺されてしまうかもしれない。こんなに開けた広野なら尚更だ。
すぐに彼女を覚醒させ、一緒にどこかに逃げるべきだ。
いくら仲間を探したいとは言え、眠っている女の子を無視していけるほど冷酷には到底なれない。
圭一はそう判断し、彼女を起こしにかかった。
頭を打っているかもしれないので、強く揺さぶることはせず、肩を優しく叩く。
「……ん……」
やがて、少女が声を漏らした。
「気がついたか……よかった。大丈夫か?」
ほっとし、優しい声で少女に声をかける圭一。
「……んー……えっと、えっと、ここは―――」
瞳をこすりながら体を起こす少女。
未だ覚醒しきれていない様子でぼんやりと空を見上げながら呟き、
「……ここは……っ!」
途端、少女の顔色が変わった。
現実を、思いだしたのだ。
みるみる顔面蒼白になり、がたがたと震えだす少女。
「……っ、いや、いや、……嫌あああああ!」
「お、落ち着いてくれ!ここは危険だ、今すぐ逃げよう!」
おそらく、彼女は自分が見えていない。
ただ、自分が殺し合いの場にいることを思いだして―――あの青年の首が飛ぶ瞬間を思いだして―――パニックを起こしているだけなのだ。
「……いや、いや、兄さん、兄さん、兄さんっ!」
しかし、少女に圭一の声は届かない。
「ここで叫ぶと危険だ、だから落ち着いて!」
兄さん、とは、もしかしてあの時死んだ青年のことだろうか?
となると、彼女とあの男は身内―――それならば、これほどにショックを受けても当然だろう。
わざわざ知り合いを見せしめにするなんて、と圭一は更に激しい怒りを抱くが、今は自分の感情より彼女が先決だ。
「落ち着けって!」
彼女の肩を引き寄せ、視線を合わせる。
びくんと肩を震わせる少女。初めて―――彼女は圭一の存在を認識した。愛らしい青色の瞳が大きく見開かれる。
「……い、いや、たすけっ」
「だから落ち着け!俺は殺し合いになんか乗っていない!本当だ!信じてくれ!」
「……や……あ……」
駄目か、圭一は舌打ちする。
兄が殺されたのだ、しばらくはショックで何も信じられない可能性もある。
でもそれでも、諦めない。
彼女が絶対に分かってくれると信じる。
諦めないことで―――今まで圭一は、『奇跡』を勝ち取ってきたのだから!
「聞いてくれ、俺が君を守るから!」
そう、力強く宣言する。
目の前の少女が、決して聞き逃すことのないように。
「だから、俺を、信じてくれ」
少女の瞳が、動く。
そして―――ゆっくりと、少女は頷いた。
よかった、分かってくれた。
それが、何より嬉しかった。
安堵のあまり胸をなでおろす。本当に、良かった。
「……だから、君の名前を教えて」
圭一が、そこまで口にした時。
どこからともなく、甲高い銃声が響き―――
それは、圭一の左胸を綺麗に貫いていた。
何が起こったのかも分からないまま、彼はそのままあっさりと―――絶命した。
彼は、数々の奇跡を起こしてきた。
それは、『魔女』にすら力を与え、歓喜させるほどに。
しかし残念ながら―――それが、殺し合いの場においては起こせなかった。
ただ、それだけの話だ。
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に 死亡】
※
「……まず、一人」
霧島翔子は、ぽつりとそう呟き銃を下ろした。
かたかたと、右手が震えていた。
彼女は、あの場に集められた時、すぐに気付いた。
彼女は、自分の安否より、あの女の話より、知らない男の首が飛んだことより、ずっと一点を見つめていたのだ。
―――坂本雄二が、いる。
翔子は、ここに自分だけでなく、彼女の最愛の恋人―――否、『未来の夫』である雄二がいることを知っていた。見間違えるなど、学年一位の天才としても、恋する一人の乙女としてもありえなかった。
大切な雄二が。
雄二までもが、こんな殺し合いなんかに巻き込まれている。
―――生き残れるのは、たった一人。
―――まあ、最終的に2人生き残ったのなら、2人くらいなら生還させてやってもまあ、いいけどな。
そんな主催の言葉を聞いた翔子の答えは、1つだった。
早くこんなところから帰る―――もちろん、雄二と一緒に。
向こうに帰らなければ、彼と結婚することができないのだから。
「……他の人には悪いけど」
翔子とて、優等生であることとやや愛情が深すぎることを除いては、ただの高校生だ。人殺しなどしたことはないし、できればしたくはない。
今だって落ち着いているように見えるが、内心はかなり動揺しているしショックを受けている。
しかし、雄二と自分の将来のためには、多少の犠牲はやむをえない。……こんな状況ならば、尚更だ。
345 :彼と彼女と彼女の事情 ◆FqMKkvAsCA :2010/03/25(木) 23:03:58 ID:TiRX/zYE
「……雄二を探す」
当面の目的は、何があっても彼を探すことだ。
雄二は喧嘩も強いし、そこらへんの男に負けるとは思えない。しかし、やはり万が一がありえないとも言い切れないし―――第一、他の女と一緒にいられても、嫌だ。
というより八割がた、『雄二が浮気していたら許さない』という感情だった。
「……ごめんなさい」
最後に、軽く少年へと頭を下げて。
翔子は、愛のために修羅になる道を歩み始めたのだった。
だから、翔子は気付いていない。
圭一がちょうど、覆い隠していたそのすぐ前に。
一人の、夢と現実をさまよう少女が生きていたことにも。
【霧島翔子@バカとテストと召喚獣】
【状態】健康、精神的ショック(小)
【所持品】金蔵の銃@うみねこのなく頃に、ディパック一式
【スタンス】マーダー(奉仕)
【基本方針】雄二を生き残らせるため人を殺す。本当は……
※参加時期は少なくとも3、5巻『俺と翔子と如月ハイランド』以降。
【金蔵の銃@うみねこのなく頃に】
六軒島の主、右代宮金蔵のコレクションの1つ。殺人事件が起こるたび、大人達が金蔵の書斎から持ち出してくる。デザインは高級そうで重量もありそうに見えるが、本編的におそらく女性でも難なく扱える。銃弾を食らいたい奴は前に出ろよおおおお!のあれ。
※
兄さんのことを思い出した。
あれは本当に夢だったの?
そう少しでも考えると怖くなって、私は思わず叫んでいた。
夢なのかと思ったのに怖いなんて変な話だけど―――自分でもなんで突然兄さんなんて言い出したのか分からなかったんだ。
本当に、これは夢なの?
そうだとしたらどうして、今私は怯えているの?
そうしたら、知らない黒髪の男の子が私に落ち着け、って言ってくれて。
救われた気分だった。ああ、この人は私を助けてくれる、って。
本当は、そう、私だって分かっていたんだ。
これが夢なんかじゃなくて―――現実だって。
兄さんの首が飛ばされたのを見たときは、夢だって思っていたけれど。
でも本当はあんな夢があるはずないって知っていた。
これは現実……認めたくないけど、現実だとしたら。
じゃあ、私はどうすればいいの?どうしたらいいの?
兄さんが死んだのに、私はどうすればいいのよ!
この男の子は、私にそれを教えてくれるのかな、と思って。
だから私は、彼の話を聞くことにして―――
そうしたら、おかしいの。
男の子が突然、頭から血を流して倒れちゃって。
……ゆすっても、何も言わなくなってしまった。
この男の子は、どうして寝ちゃったの?
………………死んじゃったの?
どうして?どうしてなの?どうしてどうしてどうして?
だって、兄さんも死んで、今度はこの子も?
私と会ったから?私と知り合ってしまったから?何それ、私のせいなの!?
そんなはずない。
そう思うのに、思うのに。
もう、―――何をすればいいのか、分からない。
私はこれから、どうすればいいの……?
今は、もう叫ぶ力もないや。
誰か、教えてくれるかなあ?
これから、私がどうすればいいのか。
ここがどこで―――何をすればいいのか、どうしたら救われるのか―――誰かに教えてほしい。
誰でもいい。リンちゃん、レン君、ルカさん、メイコ姉さん、……マスター。
「…………だれか、」
誰か、助けて。
私に教えて。
私がどうすればいいのか。
私を、助けて。
【初音ミク@VOCALOID】
【状態】健康、精神的ショック(大)、虚ろ
【所持品】???
【スタンス】???
【基本方針】私はどうすればいいの?誰か助けて……
最終更新:2010年03月25日 23:23