22話 死神も大変なんだ
エリアD-2に存在する、三階建ての廃精神病院。
ほぼ全ての窓には頑丈な金網が設置され、普通の病院とは全く違う雰囲気を醸し出している。
精神に異常を来した患者を収容し、治療するのが目的の医療施設だったが、
脱走防止用の金網や、強固な錠前が取り付けられた分厚い鉄製の病室の扉、
至る所に設置された監視カメラは、医療施設と言うよりは監獄と形容した方がしっくりくるかもしれない。
事実、ここに入院していた患者の一部にとっては「監獄」以外の何物でもなかったかもしれないが。
懐中電灯で先を照らしながら、黒を基調とした水着のような格好の上に、
青いローブを羽織った黒髪の少女――死神五世は廃精神病院内を探索していた。
彼女は今でこそ扇情的な格好をしたグラマーな少女の姿をしているが、
実際の姿は魔王軍四天王の一角、骸骨の風貌を持った死神の男なのだ。
だがこの
殺し合いに呼ばれた時から、彼女は元の姿に戻れなくなっており、
その上特殊能力も一切使えなくなり、得物である大鎌も今、手元にはない。
故に死神五世の今の得物は、支給品である脇差と、
今はデイパックの中に入っているノートパソコンの二つ。
「何もねぇな…」
埃を被ったベッドが整然と置かれている病室をぐるりと見回し、死神五世が溜息を漏らす。
廃業してそれなりの年月が経っているようだが、然程荒れてはいない。
何か医療道具など、使える物は残っていないかと廃精神病院内を歩き回っていたが、
やはり使えそうな物はあらかた撤去されたか、盗み出されてしまっているようだ。
「他の病室探しても同じかな。まぁ、もう一個探して何もなかったら、
もうこの病院出よう…」
たった今探索を終えた病室を後にし、隣の病室の扉を開け、中に入る。
「……ッ!」
入った瞬間、死神五世はこめかみに銃口を向けられた。
銃を持った主は、すぐさま引き金を引いた。
ダァン!!
部屋が一瞬、閃光に包まれ、銃声が響いた。
だが銃弾は死神五世の頭を貫く事はなかった。寸での所でしゃがみ込み、
銃弾を避ける事に成功したのだ。
「えっ、な……」
拳銃を発砲した当人にとっては、一瞬で相手が消えたように見えたのか、
何が起こったのか分からず動揺しているようだった。
その隙に死神五世は脇差を鞘から引き抜き、襲撃者の腹部を下から抉るように突き刺した。
「ぐ、あ、ああああ」
襲撃者は苦鳴を上げ、手に持っていた拳銃を床に落とす。
死神五世が脇差を引き抜くと、襲撃者は刺され腹を押さえながら崩れ落ち、
しばらく悶え苦しんだ後、血溜まりを作って息絶えた。
突然の襲撃に少し上がった心拍数を落ち着かせながら死神五世が襲撃者の死体を懐中電灯で照らす。
それはサラリーマン風の格好をした若い男だった。
身を守るためとは言え、見ず知らずの男の命を奪ってしまった事に多少罪悪感は感じつつ、
死神五世は男の持っていた拳銃――マカロフを拾い上げ、
男のデイパックからマカロフのリロードマガジン、水と食糧を抜き取った死神五世は、病室を後にした。
「全く殺し合いとは、面倒な事になっちまったなぁ…」
やれやれといった感じで死神五世が呟いた。
いつものように仲間の四天王とプレイルームでカード遊びやテレビゲームに耽る、
そんな日常が続くと思っていたのだが、気付けば爆弾付きの首輪をはめられ、
見ず知らずのリリアと名乗る女に殺し合いを強要されるという事態。
しかも、先刻確認した参加者名簿には自分と同じく魔王軍四天王である、
ドラゴナス、ムシャの二人と、魔王軍のモンスター、デスシープの名前。
他にも魔王軍と敵対し、何度か戦った事もあり、最近では魔王軍より凶悪な存在とも思える、
勇者アレックスと、その仲間数人の名前があった。
計7人の仲間及び知人。いずれもこんな殺し合いを受け入れるような人物ではない。
そう死神五世は思ったが、よく考えてみれば、それはあくまで自身の希望的観測に過ぎない事に気付く。
最後の一人しか生き残れない。生き残るためには他者を蹴落とし、殺すしかないという状況で、
いつまでも正常な判断力を保っていられる者はそうはいない。
例えばドラゴナス。家に妻子と義理の妹がおり、再び会うために殺し合いに乗る可能性もある。
ムシャ。空気キャラ扱いされ続け、最近は本人もそれを受け入れているかのような節も見受けられたが、
もしかしたら心の奥底ではそれを良しとせず、存在感のあるキャラになりたいがために――。
「おいおい、何考えてるんだ俺は」
そこまで考えて、死神五世は思考を止める。
疑おうと思えばどこまでも疑う事はできる。そして疑い始めたらキリがない。
大切な仲間を信じられなくなればそれこそリリアの思う壷ではないのか。
「こんな陰気臭い廃病院にいるからこんな考え起こしちまうんだな。
いや、死神の俺が言う事じゃねぇか…さっさと出て、あいつら探しに行くとしよう」
魔王軍四天王の仲間であるムシャ、ドラゴナス。そして魔王軍モンスターのデスシープ。
三人と合流するため、死神五世は精神病院出口へと向かった。
【島崎隆博@オリキャラ 死亡確認】
【残り40人】
【一日目深夜/D-4廃精神病院】
【死神五世@VIPRPG】
[状態]:健康、女体化
[装備]:脇差、マカロフ(7/8)
[持物]:基本支給品一式、ノートパソコン、マカロフのリロードマガジン(8×5)、島崎隆博の水と食糧
[思考]:
0:仲間と共に殺し合いからの脱出。
1:ドラゴナス、ムシャ、デスシープの三人を捜す。勇者(アレックス)達はとりあえず放置。
2:襲われたら戦う。できる事なら説得してみる。
※能力に制限がかかっている事に気づきました。
※女体化から元に戻れません。
※銃声は廃精神病院の外にはほとんど漏れていないようです。
※D-4廃精神病院の病室の一つに島崎隆博の死体とデイパック(水と食糧抜きの基本支給品一式入り)が放置されています。
≪支給品紹介≫
【脇差】
刀身が短い小型の刀。本ロワに登場する物は、
1尺3寸以上1尺8寸未満(40cm~54.5cm)の「中脇差」。
【ノートパソコン】
ユーザーが任意の場所へ持ち運び使用する事を前提として設計された軽量のパソコン。
本ロワに登場する物はシルバーカラーでキーボードの色は黒。
内部に何らかの特殊プログラムが入っている可能性有り。
【マカロフ】
旧ソ連軍が1952年に開発した軍用小型拳銃。
携帯性に優れ、取り回しが良い銃として評価が高い。
使用弾薬:9㎜×18弾 装弾数:8発
≪オリキャラ紹介≫
【名前】島崎隆博(しまざき・たかひろ)
【年齢】25
【性別】男
【職業】物流会社社員
【性格】卑屈
【身体的特徴】黒髪。特徴のない顔付き。痩せ型
【服装】濃い灰色のスーツ
【趣味】パチンコ、インターネット、映画観賞
【特技】暗算
【経歴】小中高といじめの対象になり続けてきた
【備考】日本風異世界国家出身
最終更新:2010年04月17日 17:16